SFM研究会
解決の目途が見えない原発災害、、我々はこの事故だけには手を出せない、、ただ、ただ政府の広報を信じるのみで良いのか、、考えれば考えるほど憂鬱になります。でも、真実だけはどうしても知りたいですね。最悪のシナリオが当たってない事を祈るだけです。
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みなさま
このレポートは、原発事故先進国米国の専門家の見解ではありますが、的を得ているように
思います。日本政府の曖昧としている部分についても鋭いく言及しています。
例えば、現在の放水についても、燃料保管プールのに注水と冷却が目的であり、原子炉格納器への注水ではないのでは(ここは電源でしか注水・冷却はできないのでは、、)、、など、また、このレポートでは既に炉心溶融(ベルトダウン)は既に発生していると記述されているが、これは日本政府との見解の相違と思います。
いずれにしても、第三者からの客観的な見方でもあり、我々は認めたく�ないところもありますが、日本政府の発表と本レポートを比較すると核心となる問題が浮き上がってきます。注目すべき部分についてはレポートにアンダーラインで明示しています。
福島第一原子力発電所における津波後の状況
(~事実・分析・推測される結末~)
エネルギー・環境研究所(IEER) アージュン・マキジャニ所
(2011年3月14日 メリーランド州タコマ・パーク発)
2011年3月11日、福島第一原発と福島第二原発は激しい地震と津波に襲われた。本分析では、執筆時点で知る限り(米国東部標準時間2011年3月13日午後9時)、より深刻な問題を抱えている第一原発に言及する。
外部電源からの電力供給が途絶え、原子炉は非常事態の一環として無事運転を停止した。しかしながら、原子炉の熱を取り除くためには、依然として施設を稼働させる電力が必要だった。
第一原発には稼働中の沸騰水型原子炉が6基ある。最も古いものが1号機で(部分的に燃料の炉心溶融が起こっているように思われる)、1970年に初臨界に達し、1971年には電力供給を開始した。3号機も1号機と同様の問題を抱えているようだが、この原子炉は、燃料にプルトニウム・ウラン混合酸化物燃料(「MOX燃料」)を含み、1976年に初臨界に達している。両原子炉とも、形式は沸騰水型マークIであり、最新型の原子炉に見られる、厚さ数フィートの丈夫なコンクリート製二次格納施設を伴っていない。
(3月14日午前6時半現在:3号機も爆発。2号機が冷却機能を失った模様。ここで記述されている問題は、3号機にも当てはまるだろう。なお、2号機が同様の問題に向かっている可能性あり)マークI形式の特徴は、利用された燃料(使用済み燃料)が、原子炉建屋内で保管されていることだ。この燃料は、原子炉格納容器上部付近の、水泳プールのようなコンクリート製構造物の内部にある。
原子炉に燃料が補給されるとき、使用済み燃料は大きなクレーンで原子炉から取り除かれると、プールへと移され、何年か水中で保管される。この使用済み燃料は、大量の放射能放出を避けるなどさまざまな理由から、水中で保管されなけれ
ばならない。使用済み燃料プールの冷却機能が失われれば、溶融だけでなく火災も発生する可能性が生じる。使用済み燃料プールの水と原子炉建屋の屋根が、使用済み燃料の放射能放出を阻む主な遮へい壁である。
1号機に関係する爆発は3月12日午後3時36分に発生した。当初、この爆発は原子炉建屋に隣接するタービン建屋で起きたものだと当局は発表していた。しかしながら、完全に吹き飛んだのは、原子炉建屋の屋根と、壁の一部であり、建屋の上部には鉄筋の骨組みしか残らなかった。
このことから、原子炉建屋内部で爆発が発生したことがうかがえる――おそらく水素爆発だろう。水素は空気よりもはるかに軽いため、建屋の上部に溜まるものだからである。そのため、この爆発は、マークI原子炉内の使用済み燃料プールが置かれている付近で発生したものと思われる。
日本政府当局は、原子炉格納容器はまだ無傷であると発表している一方、使用済み燃料プールの構造物の状態に関して、間接的に触れているものの、一切言及していない(下記参照)。原子炉格納容器は今でもまだ無傷なのか。原子炉事故の結末を予測するにあたり、これは極めて重要な問いである。
原子炉内の燃料が冷却水から露出すると、原子炉内に水素が発生する。燃料ペレットを収める燃料被覆管はジルコニウム合金製である。ジルコニウムは水蒸気と反応して、酸化ジルコニウムと水素ガスを生成する。さらに、これは発熱反応である。つまり、大量の熱を放出し、そのために、問題をさらに悪化させる自己強化型のフィードバックを生み出して、温度を上昇させる。冷却水がなくなると、同じ現象が使用済み燃料プールでも起こる可能性がある。また、火災が起こる可能性もある。このような事故のメカニズムと影響はかなりよく知られている。2006年に公表された全米学術研究会議の研究は、長く引用するに値する。
(以下、引用)
水位が下がると、とくに燃料集合体の頂部より下まで低下した場合には、使用済み燃料から崩壊熱を除去する能力も低下するだろう。こうなると、燃料集合体の温度上昇が引き起こされ、酸化ウランのペレットを覆っているジルコニウム合金
(ジルカロイ)製の被覆管の酸化が加速されることになる。
この酸化反応は、空気と水蒸気の両方がある場合に起こり得るもので、非常に多くの発熱を伴う。つまり、この反応は大量の熱を放出し、それが被覆管の温度をさらに上昇させる可能性がある。また、この蒸気反応は大量の水素も生み出す……
[冷却水の減少に伴う]このような酸化反応は、酸素および水蒸気が供給されて反応の持続が可能になると、……局所的に自己持続的に高温(つまり、水の沸点の約10倍高い温度)状態が保たれることになる可能性がある……。その結果、酸化反応の暴走――本報告書では「ジルコニウム製被覆管の発火」と呼ばれている――が起こり得る。それは、燃料棒の軸に沿って、酸化源(空気や水蒸気)に向かって燃焼前線(例えば、山火事や花火に見られるようなもの)となって進んでいく……。
燃料棒の温度が上昇すると、内部のガス圧が高まり、ついには被覆管の膨張と破裂を引き起こす可能性がある。高温状態(約1800℃)では、ジルコニウム製被覆管は、酸化ウラン燃料と反応して、ジルコニウムと酸化ウランを含む複雑な溶融段階を形成する。
こういった事象は、被覆管の破裂に始まり、使用済み燃料プールを格納する建屋内に放射性の核分裂ガスや燃料の粒子状放射性物質の一部が放出されることにつながり、ことによると環境中に放出されることにもつながるだろう。1つの燃料集合体が燃えることによって発生する熱が散逸しなければ、プール内にある他の使用済み燃料集合体に燃え広がり、ジルコニウム製被覆管の発火の伝搬が起こる。ジルコニウムと水蒸気の高温反応は、少なくとも1960年代前半以降、定量的に記述されてきている。
(以上、引用)
放出の程度は、冷却水がどのくらい失われているか、プール内に使用済み燃料がどのくらいあるか、使用済み燃料の一部が取り出されたのがどのくらい最近であるかによるだろう。今回の事故のメカニズムは、同じく火災が起こったチェルノブイリとは大きく異なるし、放射性核種の混合も大きく異なっているだろう。短寿命放射性核種――とくにヨウ素131――の量ははるかに少ないであろうが、一方、セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素129、プルトニウム239などの長寿命放射性核種があるために、長期的な影響はより恐ろしいものになる可能性がある。
このような放射性核種は通常、原子炉そのものよりも、使用済み燃料プールの中にはるかに多く存在する。この点を考えると、日本の政府当局がこの問題についてほとんど触れていないのは驚くべきことだ。入手できるわずかな情報から判断すると、使用済み燃料の冷却に問題があるようだ。
3月13日午後9時(日本時間)に発表された東京電力のプレスリリースには、以下のようにある。
“”現在、使用済み核燃料プールに冷却水を確保することについて、関係各所と調整を進めております。“”
これは、使用済み燃料の冷却に問題が生じていることを示している。だが、それがどのくらい深刻なものか、プールが損傷しているのか、漏えいがあるのかについての情報はまったくない。外側から原子炉建屋への海水注入は、原子炉ではなく使用済み燃料プールに向けたものと推測するのが妥当だ。東京電力によれば、1号機の原子炉格納容器への海水注入はうまくいったという。これを書いている時点では、3号機についても同じであるようだ。臨界事故を防ぐために海水にはホウ酸が加えられている。臨界は原子炉内または使用済み燃料プール内で起こる可能性がある。おそらく、原子炉から放射性を帯びた水蒸気を排出させる作業は継続しなければならないだろう。
1号機の使用済み燃料プールから放射性核種の排出があったかどうかは、この段階では不明だ。原子炉からの排気が行われたことは当局が認めている。発電所の外で、1200マイクロシーベルト/時を超えるかなり高レベルの放射線――海抜ゼロの自然な環境における放射線量の1万倍以上――が報告されている。
このレベルでは、一般人の放射線の年間許容限度を1時間もたたないうちに超えてしまうだろう。この数値は、1号機で、あるいは、ことによると3号機で部分的な炉心溶融が起こっていることを示すものだ。だが、放射線は原子炉格納容器だけから発せられていると広く考えられているようだが、その一部が、爆発で損傷を受けた可能性のある1号機の使用済み燃料プールからも放出されているかどうかは明らかではない。米国の閉鎖された原子炉で起きた使用済み燃料プールの深刻な事故がもたらした影響について、ブルックヘブン国立研究所が米国原子力規制委員会のために準備した1997年の報告書で調査されている。
その結果によれば、米国の沸騰水型原子炉(BWR)のこのような事故がもたらす損害は7億~5460億ドルになる可能性がある。これは現在の価値にすると、およそ9億~7000億ドルになるだろう。小さい方の数字が当てはまるのは、貯蔵量を最大限にするために使用済み燃料が詰め込まれている満杯のプールに、古い使用済み燃料が1本しか存在しない場合であろう。その他の変数は、取り出したばかりの使用済み燃料がプール内にあるかどうかであろう。それがある場合、放射能の放出量が大きく増加することになる。事故後数十年間に予想される潜在的なガン死亡者数は、発電所から50キロメートル以内で1300~31900人、半径500キロメートル以内で1900~138000人と推測されている。
第一原子力発電所の使用済み燃料プールの容量は、1号機が約50トン、2号機で約81トン、3号機で約88トンである。混合酸化物燃料(MOX燃料)は、3号機の使用済み燃料プールには含まれない。
米国の典型的な原子炉では、年間20トンの使用済み燃料が放出され、その場に貯蔵される。ほとんどすべての場合、湿式もしくは乾式貯蔵である。日本における一連の結果は、ブルックヘブン報告書で概説されたものとは多少異なったものになるだろう。というのも、原子力発電所から50キロ圏と500キロ圏それぞれの人口密度やリラッキング方針(re-racking policy:稠密化=搬出先が確保できないために、やむをえず使用済み燃料の配置密度を高める方法)、その他いくつかの変数によって結果が違ってくるからだ。
また、第一原発の1号機の出力定格(power rating)は、米国にある多くの原子炉の約半分であるため、ほかの条件がすべて同じであれば、貯蔵プールの放射能量は通常の約半分だろうことにも注目すべきである。しかし、ブルックヘブンの研究が一般的に示しているのは、最も深刻な場合の被害規模は甚大になり得ることだと解釈できる。
1号機の使用済み燃料プールが水で満たされ、既に起こっている結果を上回る惨事にならないよう、ほかの原子炉は十分に冷却されてもらいたい(報道によれば、作業員のひどい被曝や、一部の国民の被曝がすでに起こっている)。
しかし、この事故で明らかになったのは、軽水炉が非常に深刻な結果をもたらし得るという情報や分析が十分あるということだ。軽水炉は、日本や米国、その他世界の多くの国々で使われている設計である。
使用済み燃料プールは、設計の細かい違いによって、それぞれ違った脆弱性があるのだが、すべてのタイプが、最悪の事故やテロ攻撃によって、深刻な結果を招くというリスクをある程度はらんでいる(この件については、米国学術研究会議による2006年の報告書で調査されている)。>
米国は、できるだけ多くの使用済み燃料を、貯蔵プールから堅牢な地下サイロの乾式貯蔵庫に移すべきである。
日本での悲劇はまた、水を沸騰させるためだけに(これが原子炉の行っていることなのだが)プルトニウムや核分裂生成物を生成することが、電力を生み出す賢明な方法ではないことを思い出させてくれる。 (日本で起こった地震と津波による大災害からも明らかなように)安定的な電力供給のためには、当面は既存の原子炉が必要だろうが、新規の原子炉計画は中止し、現在ある原子炉も、石炭や石油とともに段階的に廃止していくべきである。
こうしたことを向こう数十年のうちに経済的に行うことは可能である。電力システムの信頼を維持し、その安全性を大きく改善しながら行えることは、2007年に刊行された拙著『仮邦題:化石燃料・原子力からの脱却――米国エネルギー政策> のロードマップ』(Carbon-Free and Nuclear Free: A Roadmap for U.S. Energy Policy)や、その後の一連の研究(IEERのウェブサイトで公開中)で示した通りである。拙著は以下のURLより無料でダウンロードできる。
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