2020年5月31日日曜日

Parc de Montsouris が解放されて・・・

昨日からパリの公園は封鎖からやっと解放されて、今日も午前中に公園内を一周して帰宅すると5キロメートルの距離に成り、運動不足には最適、やっと歩ける様に成り太陽を浴びて午前中の方が風も冷たく散歩には最適、体感気温23度、湿度30%、気分爽快です!皆様、未だ未だ、新型コロナウイルス感染に注意して、パリではマスク着用が当たり前に成りました。

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 28

 2019 W杯・備忘録 28
  ~  M38 TON/USA戦 ~
  1013日(日)、予選プール最終日、日本各地で4試合が予定され、19:45キックオフのJPN/SCO戦に日本中の関心が集まっていた。
 その日の午後、花園に22,012人の観客を集めて行われたのが、「死の組・プールC」の4位決定戦(?)TON/USA戦(14:45キックオフ)。
    W杯は、世界最強チームを決める(ためだけの)大会なのか? 
では、どうして、花園に大観衆が集まったのか、また、どうして、TON/USA戦は密度の濃い試合内容になったのか。
  W杯は、参加することに意義がある大会なのか?
TON/USA戦の魂のぶつかり合いからは、「勝ちにこだわること」と「ノーサイドの後の立ち居振る舞い」の大切さが伝わってきた。
  毎大会、「一勝を賭けて」下位チーム間の熱い戦いが行われる。かつて、ジャパンはその常連だった。一勝が遠かった…
    大会前のWR・ランキングは、USA14位に対してTOG15位。
 今大会のTON、とにかくPの数が少なかった。それでいて、持ち味のフィジカル・バトルの激しさは持ち続けている。一週間前に熊本で行われたトンガとしての第3戦・FRA戦は、最後に追い上げて、2点差という僅差の負け。いいチームに仕上がっていた。
 これに対して、USAは、中三日での試合。選手層がさほど厚くないチームは、先発15人中12人が連続出場。前半は競った試合になるかもしれないが、後半突き放されるだろうと予想された。

  試合は、予想通り(?)の展開に。得点経過だけを書いてみると次の通り。
      TON

      USA
16分 T+G          
7-0
7-
7-12

21分 T+G
25分 T
50分 PG
57分 T+G
61分 T+G
10-12
17-12
24-12

  ラスト20分に入って、ダブルスコアに。勝負あった、ワンサイドゲームになるのか、と思っていたら、なんと77分、USAT+G! 5点差に迫る。 

このトライ、USAがフェーズを重ねてTON・ゴール前に迫り、USA6番がゴール前ラックからゴールポストに巻かれたカバーにタッチしたもの。 技あり!?のトライ。 TMOで確認の上、トライが認められる。((注)大会後のルール改正で、ゴールポスト・カバーへのタッチではトライが認められなくなった。)ともかく、意地のぶつかり合いが最後の最後まで続く。これぞ、ラグビー。
  試合はラストシーンへ。TOGのキックオフでリスタート。USAが確保し展開するもノックオン(ありふれた形容詞をつければ「痛恨の」だけれど、TONの気魄・圧力が勝っていた)。USAゴール前のTONボールのスクラムでUSA・コラプシングのPTONがスクラムを選択したところで、「銅鑼の音」。
(選手入場時の太鼓・拍子木とタイムアップを知らせる銅鑼の音。和とラグビーの融合、ということなのか。記憶に残る・記憶に留めておきたい「音」)

余裕のTONはスクラムを押し込んでPのアドバンテージを得た上でバックスへ。10番が相手バックスの背後へのゴロパントを蹴って、TON15番が押えてトライ!
コンバージョンキック時には、TON・全選手がピッチ内に入りキッカーの後ろに並ぶ。規則ではダメなんだろうけど、すごく暖かい雰囲気を醸し出す。ゴールが決まって,31-19、ノーサイド。
TON選手は、いつも通り、みんな膝をついてのお祈り。主審・オーエンスはUSAの選手一人ひとりと握手している。
 彼らのとっての「お祭り」は終わった。
  ところで、両チームのHC、いずれもジャパン・トップリーグでの経験がある。
 TONHCのケフーは、元AUS代表選手(1999W杯優勝メンバー)。クボタで選手・HCとして活躍。一方、USAHCのゴードンは元神戸製鋼HC。あらためて、ジャパンラグビーの存在の大きさを感じる。
  負けたUSA。「伸びしろ」が大きい。これから強くなっていく可能性が高い。五輪種目になったセブンズでは、すでに強豪国の仲間入りを果たしている。
  HSBC World Rugby Sevens Series Standings20203月時点)

1
2
3
4
5
6
7
8
Men
NZ
RSA
FIJ
AUS
ENG
FRA
USA
CAN
Women
NZ
AUS
CAN
FRA
USA
RUS
FIJ
ENG
  ちなみに、JPNは、Men16位、Women11位。
 
 大国が、間違わずに強化すれば、結果が出る、そういう時代になっている。
  一方のTON、今回のチーム・メンバーで240日間の事前合宿を行っていたら、どんなチームになっていたのだろうか?
   人口10万人のTONラグビーの未来は、どうなるのであろうか?

2020年5月30日土曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 27

            2019 W杯・備忘録 27
           ~ 負けに不思議の負けなし 3 
  
    M48 今大会のラストゲーム RSA/ENG戦。321220点差の負け、ENGの完敗である。ノー・トライ、試合後のセレモニーでのメダル授与時のふるまいといい、決勝戦の敗者に相応しかったENG

とはいえ、後半18分、ENG12番・ファレルがPGを決めて、18126点差まで追い上げている。この時点では、両チームともノー・トライ、勝負の帰趨は見えていない。
 この時点までの両チームのPは、RSA7ENG9。((参考)に20分ごとのPKを記載しています。)
 内容を見ていくと、スクラム関連、ラック関連、ラインオフサイド等で分類すると次の通り。
スクラム関連
ラック関連
ラインオフサイド等
RSAP
      1(1PG)
      5(3PG)
       1
ENGP
      5(3PG)
      4(3PG)
       1
 スクラムは、RSAボール11回、ENGボール3回。

RSAボール・スクラム11回のうち60分までに7回組まれ、そのうち5回でENGPを取られている。さらに、2分のRSAボール・スクラムではレフリーが手をあげPがあったことを示しながらアドバンテージで流し結局アドバンテージ・オーバーとなったため記録には残らなかった。つまり、7回中6回でコラプシング等のPを取られている。スクラムが弱かったから負けた、のか。後半18分、ENGボールのスクラムでRSAPを取る意地もあった。スクラムも一つの要因だろうけれど、それ以外にもいくつかの点があげられる。
    
 まず、スクラム数が11回対3回ということは、それだけ細かなミスが多かった、ということが言える。スクラムで不利になることがわかっているのであれば、出来るだけスクラムの回数を減らす戦術を取るべきだった!?

 RSA相手では、どのチームもラインアウトを避ける傾向にあり、タッチキックを少なくする。この試合でもRSAボールのラインアウトは6回で、ENGSFNZに与えた11回の半分である。ラインアウト数を制御したのであれば、スクラム数を制御する戦術というのは、考えられないのであろうか?
  
  スタッツを見ていて興味深かったのが、まずRucks wonの回数。(ゴシック体がRSA
   F
  SF1
  SF2
  QF1
  QF2
  QF3
  QF4
勝者
  64
 110
  55
  48
 100
  75
  68
敗者
  93
  89
  97
 113
  98
  90
  87
   RSAは、3試合とも相手チームより少ないRucks won数で勝っている。
     QFJPN戦)68SFWAL戦)55F64
これに対して、ENGは、QFAUS戦)ではRSA同様、少ないRucks won48)で勝利し、SFNZ戦)では相手を上回る110で勝利している。

    決勝ラウンド7試合のRucks数から見えてくることは、NZがらみの試合は多く(=よくボールが動き接点が数多く出現する)、RSAがらみの試合は少なくなっている。RSARucks獲得数は絶対数が少なく、かつ、相手チームに比べても少ない(=ボールを相手に渡して、リサイクルさせながら、ディフェンスで相手を押し込んでいく)。

 こういう視点から見ると、QF1ENG/AUS戦は示唆に富んでいる。ENG(48)に対してAUS113)。すなわち、ENGは、QFAUS戦では、RSAばりの戦い方をして、ラスト20分に相手を突き放したが、決勝では、そのAUSと同じ役回りを演じて、RSAに敗れたように見受けられる。
  
   次に、Mauls wonの回数。
   F
  SF1
  SF2
  QF1
  QF2
  QF3
  QF4
勝者
   3
   6
   4
   3
   1
   7
  10
敗者
   1
   1
   5
   -
   7
   7
   -
    RSAが苦戦したのが、SFWAL戦。ENGは、WALのように戦えば、少なくとも善戦したのでは、と思わせる。

    オフロード・パスの回数は、次の通り。
   F
  SF1
  SF2
  QF1
  QF2
  QF3
  QF4
勝者
   4
   8
   2
   2
  14
   3
   2
敗者
  12
  15
   2
   8
   3
  11
  12

 RSAのオフロード・パスの回数は常に少ない。これに対して、ENGは、QFAUS戦は2回、と封印(?)したのが、SFでは8回、Fでは12回となっている。ここでも、SFRSA/WAL戦のWAL2回だったのが、RSAとの戦い方を暗示している気がする。RSA相手にスクラム数を減らそうとするのであれば、オフロードを封印すべきだったのではないか。

 ENGは、QF1AUS戦では、オフロード2回と封印したのではないか。この点からも、決勝でも、AUS戦と同じような戦い方をすれば、どうなっていたのか?という気がする。

  2003WENG優勝時のHC・ウッドワードが嫌うスクラムハーフからのキック。確かに、指摘のように「試合をつまらなくしている」かもしれないが、戦術的に有効だと近年認識されるようになったから「多用され、目につくようになった」のも事実である。

   スタッツには、Kick From Hand(KFH)という項目がある。スクラムハーフからの回数は次の通り。
   F
  SF1
  SF2
  QF1
  QF2
  QF3
  QF4
勝者
   9
  13
  19
   7
   4
   9
  18
敗者
   8
   5
  18
   4
   8
   8
   2

    また、チーム全体のKFHに占めるスクラムハーフからの割合は次の通り。
   F
  SF1
  SF2
  QF1
  QF2
  QF3
  QF4
勝者
  38
  41
  51
  35
  14
  28
  60
敗者
  42
  21
  50
  27
  35
  22
  20
   RSA9番・デクラークからのキック、ENGは、ある程度抑え込めたのかもしれない。この点では、他のチーム比べて、対策が講じられていた感がある。
  
    DVDで見返してみて、ラスト20分で「力尽きた」感じが強い。そこまでは、まだまだ試合になっていた。結果としての20点差は予想できなかった。ではあるが、勝てそうな気配はなかった。それを端的に表しているのがリザーブの投入時間とポジション。ENGの決勝ラウンド3試合のリザーブの投入時間・ポジションは次の通り。
16
17
18
19
20
21
22
23
AUS
 68(2)
 68(1)
 63(3)
 63(5)
 68(7)
 72(9)
60(13)
73(12)
NZ
 69(2)
 69(1)
 46(3)
 54(5)
 69(7)
 62(9)
44(11)
73(13)
RSA
 59(2)
 45(1)
  2(3)
 40(5)
 59(7)
 75(9)
49(10)
69(11)
  前半・2分の3番・シンクラーの脳震盪・HIA・退場は想定外で痛かった。しかし、それ以外の交代時間帯も10分程度早くなっている。また、準決勝・決勝と11番・メイがケガをおしての出場だったせいもあり、後半に交代せざるを得ないというのも後半の後半の力を削いでいる。
  
一方のRSAのリザーブの投入時間帯・ポジションは次の通り。
16
17
18
19
20
21
22
23
JPN
 36(2)
 53(1)
 53(1)
 62(4)
 66(5)
 67(8)
 73(9)
71(14)
WAL
 47(2)
 47(1)
 47(3)
 52(4)
 57(5)
 68(7)
  -
68(15)
ENG
 21(2)
 43(1)
 43(3)
 59(4)
 21(5)
 63(7)
 76(9)
67(15)
  前半21分、2番、5番のケガによる交代というアクシデントはあっても、微動だにしない感じで「常と同じ」戦略的投入が遂行された。ケガの14番・コルビをSFでは外せるだけの選手層の厚さがあったことも挙げられる。
  
今大会のENG、若いチームと言われていた。まだまだ、フィジカル・メンタル・チーム力ともに「伸びしろ」が沢山ある。今回の敗戦が次の勝利につながるのか、楽しみである。
   ( 参考 )
 ラグビーは、レフリーが笛を吹くと、一旦ゲームが中断し、セットプレーで再開される(リスタート)。

セットプレーの種類は、スクラム(S)、ラインアウト(LO)、ペナルティ・キック(PK)、フリーキック(FK)、ドロップ・アウト(DO)とキック・オフ(KO)。
   時間帯別のリスタートと得点は次の通り。

ENGボール
0-20min.
20-40min.
40-60min.
60-80min.
  計
   KO
    1       
    2       
    3       
    2       
    8       
   S
    1/1     
    -     
    1/1     
    1/1     
    3/3     
   LO
    2/3     
    2/2     
    1/1     
    2/2     
    7/8    
   PK
    2       
    2       
    3       
    1       
    8       
   FK
    1       
    -       
    -       
    -       
    1       
   DO
    1       
    -       
    -       
    1       
    2       
  計
    9       
    6       
    8       
    7       
   30       
() KOのうち、1回は、後半開始時のもの。

SLOの分母は、マイボールでの投入回数。分子は、そのうちのボール獲得回数。
PKの回数は、相手チームのペナルティ(反則)によって獲得したPKの回数。

ENGの得点
 0-20min.
 20-40min.
 40-60min.
 60-80min.
  計
 トライ(T)
    -
    -
    -
    -
    -
 T後のG
    -
    -
    -
    -
    -
 PG
    -
    2
    2
    -
    4
 RSAボール
 0-20min.
 20-40min.
 40-60min.
 60-80min.
  計
   KO
    1       
    2       
    2       
    -       
    5       
   S
    3/3     
    2/2     
    2/2-     
    4/4-     
   11/11     
   LO
    2/2     
    1/1     
    2/2     
    1/1     
    6/6     
   PK
    3       
    3       
    3       
    1       
   10       
   FK
    -       
    -       
    1       
    -       
    1       
   DO
    -       
    -       
    1       
    -       
    1       
  計
    9       
    8       
   11       
    6       
   34       
 RSAの得点
 0-20min.
 20-40min.
 40-60min.
 60-80min.
  計
  T
    -
    -
    -
    2
    2
 T後のG
    -
    -
    -
    2
    2
 PG
    1
    3
    2
    -
    6