2019W杯・備忘録26
~ 負けに不思議の負けなし 2 ~
準決勝第1試合、M45 ENG/NZ。
試合前のハカの時の「越境」から終始ENGペースで、「手も足も出なかった」というのがスタジアム で見た印象だった。NZの「いいところ」がまったく見えなかった…
あらためて、スタッツを見て驚く。
まず、ラン・メーター(ボールを持って走った距離)。
NZは639mで、決勝ラウンド7試合・14チーム中、一番長い距離を走っている。
ちなみに、各チームの走行距離は、次の通り。(太字が勝者)
600m台 ; NZ・SF1(639)
500m台 : AUS・QF1(578)
400m台 : FRA・QF3(498)、NZ・QF2(488)、ENG・SF1(406)
300m台 : RSA・F(369)、WAL・QF3(333)
200m台 : RSA・SF2(296)、RSA・QF4(295)、ENG・QF1(275)、JPN・QF4(274)、
IRE・QF2(239)、ENG・F(201)
100m台 : WAL(182)
参考までに、JPNの予選リーグでのラン・メーターは次の通り。
対RUS(653)、対IRE(503)、対SAM(433)、対SCO(559)
そして、タックル成功率。
ENGの81%は、決勝ラウンド7試合・14チーム中、最低値。
ちなみに、各チームのタックル成功率は、次の通り。(太字が勝者)
90%以上 : RSA・SF2(93)、RSA・F(92)、NZ・QF2(92)、ENG・QF1(90)
85~90% : ENG・F(89)、NZ・SF1(89)、RSA・QF4(88)、AUS・QF1(87)、
JPN・QF4(87)、FRA・QF3(86)、WAL・QF3(85)
85%未満 : WAL・SF2(82)、IRE・QF2(82)、ENG・SF1(81)
参考までに、JPNの予選リーグでのタックル成句率は次の通り。
対RUS(86)、対IRE(93)、対SAM(90)、対SCO(84)
決勝ラウンドで一番走ったチームが、一番タックルをミスったチームに負けた!
11番から14番のタックル成功率を見てみると、NZが完勝したQF2のIREが71%であるのに対して、NZが完敗したSF1のENGは70%。
IRE戦、ENG戦におけるNZバックスのポジション別のラン・メーターは次の通り。
(単位:m)
10番
|
11番
|
12番
|
13番
|
14番
|
15番
|
計
| |
対IRE
|
12
|
117
|
38
|
19
|
70
|
69
|
325
|
対ENG
|
60
|
70
|
67
|
76
|
65
|
105
|
443
|
パスもキックも出来ずに、無駄に走らされていた、ということなのだろうか?
現代ラグビーは、全員で守るので、「対面」という概念が薄れているのだろうけど、対面のIRE、ENGバックスのポジション別のタックル成功率は次の通り。
(単位:%)
10番
|
11番
|
12番
|
13番
|
14番
|
15番
| |
IRE
|
60
|
38
|
67
|
86
|
82
|
78
|
ENG
|
87
|
40
|
71
|
73
|
86
|
100
|
数字の上からは、ENGバックスもIREバックス同様、よく抜かれている。
DVDで試合を見返してみる。
トライ・シーンだけだと、野球で言う「スミ1」の試合なのか!? 開始早々、ENGがトライ・ゴールで7点リード。その後、30分以上、点が動かない。
前半24分、ENG・7番がトライするもTMOで取消し。後半4分、ENG・ラインアウトモールからトライするもTMOで取消し。二度のトライがTMOで取り消された後、後半16分、ENGゴール前のENGラインアウトで、まさかのミスが出て、NZ・初トライ、ゴールも決めて、13-7と7点差以内に。普通(?)であれば、ここで大きく「流れ」が変わるはずである。どう考えても、NZペースにならなければおかしい!?
であるはずなのに、この時間帯のNZ選手の顔に生気がない。虚ろな目線。昔見たことのある既視感がおそってくる。そうだ、前々々回大会の準々決勝、FRAに番狂わせの敗退を喫した時、後半途中で交代してベンチに下がったカーター(10番)、ケラハー(9番)、オリバー(2番)たちの呆然とした表情とまったく同じ表情だ。「こんなはずじゃなかった」という悔恨が顔中・体中から滲み出ている。なぜ、負けたと決まったわけじゃないのに、ああいう表情になってしまうのか?ああいう顔を見てしまうと、相手チームは「勇気百倍」。
ともかく、後半の後半は、バラバラなチームになっていった。Jスポーツの解説で試合前・野沢さんが準々決勝IRE戦でのNZを評して「アタックの玉手箱。総合商社。みんなが司令塔。みんな足が早く、決定力がある。」と絶賛したその長所が見事なまでに弱点になっていた。みんながバラバラに好き勝手に走るだけは走る。個々のスキルは高いから、それなりに抜ける。ラン・メーターは加算され、相手のミスタックルは増える。だけれども、得点には至らない。分散型の弱みが如実に出た。そして、時間を重ねるたびに焦りが出てくる。それを証明しているのが後半の後半・20分間でP・5回。
今週のMidolでNZ・ハンセン・HCのインタビューが掲載された。
ハンセンは、オールブラックスのHCとして107試合戦って負けたのは10試合だけ。
「私がコーチした中で2015オールブラックスが最強かって?そうだな、当時、他のどのチームもディフェンスできないプレースタイルだったからな。2019オールブラックスも同じようにとても強かった。
唯一の問題は、W杯前に困難に直面しなかったことだ。
2011、2015の連中は、2007年大会・準々決勝、カーディフでのFRA戦の手酷い敗戦を体験していた。
今大会前、口を酸っぱくして「W杯は、お前たちがやってきたどの競技大会とも全く異なる大会だ」と言い続けたが、奴らは聞き流していたんだな」
百聞は一見に如かず 百見は一体験に如かず
負けるが勝ち、なのか…
( 参考 )ラグビーは、レフリーが笛を吹くと、一旦ゲームが中断し、セットプレーで再開される(リスタート)。
セットプレーの種類は、スクラム(S)、ラインアウト(LO)、ペナルティ・キック(PK)、フリーキック(FK)、ドロップ・アウト(DO)とキック・オフ(KO)。
時間帯別のリスタートと得点は次の通り。
NZボール
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
KO
|
1
|
1
|
2
|
2
|
6
|
S
|
-
|
1/1
|
1/1
|
2/2
|
4/4
|
LO
|
5/6
|
2/3
|
1/1
|
1/1
|
9/11
|
PK
|
2
|
1
|
1
|
1
|
5
|
FK
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
DO
|
-
|
1
|
1
|
-
|
2
|
計
|
9
|
7
|
6
|
6
|
28
|
(注) KOのうち、1回は、後半開始時のもの。
S、LOの分母は、マイボールでの投入回数。分子は、そのうちのボール獲得回数。
PKの回数は、相手チームのペナルティ(反則)によって獲得したPKの回数。
NZの得点
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
トライ(T)
|
-
|
-
|
1
|
-
|
1
|
T後のG
|
-
|
-
|
1
|
-
|
1
|
PG
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
ENGボール
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
KO
|
1
|
-
|
1
|
-
|
2
|
S
|
1/1
|
2/2
|
-
|
-
|
3/3
|
LO
|
4/4
|
6/7
|
5/6
|
3/3
|
18/20
|
PK
|
-
|
3
|
3
|
5
|
11
|
FK
|
2
|
-
|
-
|
-
|
2
|
DO
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
計
|
8
|
12
|
10
|
8
|
38
|
ENGの得点
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
T
|
1
|
-
|
-
|
-
|
1
|
T後のG
|
1
|
-
|
-
|
-
|
1
|
PG
|
-
|
1
|
1
|
2
|
4
|
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