2019W杯・備忘録 24
~ Penalty ~
国内の試合では、激しい攻防の時によく「ノー・ペナ!」という叫び声が聞かれる。
「ペナルティをするな!」という注意喚起。では、ペナルティという名詞に相応しい動詞は何だろうか? する、犯す、取る …
「する、犯す」では、ペナルティ=過ち・規則違反を意味する。
「取る」では、ペナルティ=ペナルティ・キックの権利を意味する。
ペナルティという名詞は、プラスとマイナスの両義性を有している。
競技規則の定義は、次の通りである。
ペナルティ:重大な反則に対して、一方のチームに与えられる。
英語の原文は次の通りである。
Penalty: Awarded against a team for a serious infringement.
なるほど、競技規則はレフリーの目線だから、「与える」なのか。与えるのは、プラスとしてのペナルティ、正確に言えば、ペナルティ・キックなのだろう。
レフリーと両チームの三角関係にペナルティは存在する。
かつて、日本代表HCのエリサルドがこんなことを言っていた。
― 日本社会はクリーンだ。それは素晴らしいことだ。
ジャパンラグビーは、クリーンすぎる。
ペナルティをしなければ(=ペナルティをレフリーに取られなければ =ペナルティ・キックを相手に与えなければ)勝てるのだろうか?
今大会、ペナルティの数と勝敗の関係は次の通りである。
(注)WRのスタッツは、Penalty concededで数えられいる。規則違反の回数である。
予選リーグ
Pが多いチームが勝利した試合
|
Pが少ないチームが勝利した試合
| |
Group A
|
4
|
4
|
Group B
|
1
|
7
|
Group C
|
4
|
4
|
Group D
|
4
|
6
|
チーム毎に、一試合平均のPの回数は次の通り。(太字が、決勝ラウンド進出)
最小が、SCO、RUS、NZの6回。
6回台は、RSA(6,75)
7回が、JPN、IRE、TON
7回台が、USA(7,25)、ENG(7,3)、ITA(7,3)
8回台が、ARG(8,5)、NAM(8,7)、WAL(8,75)、AUS(8,75)
9回台が、FIJ(9,25)、CAN(9,3)
10回以上が、GEO(10,25)、FRA(10,3)、URG(11)、SAM(12,5)
ちなみに、各Groupの一試合平均のP(両チーム合計)の回数は、
A : 15,4 B : 15,1 C : 16 D : 19
P最小の試合は、M31 SCO(4)/RUS(3)の7回。次が、M38 TON(3)/USA(6)
の9回、M1 JPN(5)/RUS(5)の10回、M40 JPN(7)/SCO(4)の11回と続く。
最多は、M39 WAL(8)/URG(15)の23回。
決勝ラウンド(三位決定戦を除く)7試合では、
Pが多い方が勝った試合が3試合
M41 ENG(8)/AUS(5) M42 NZ(13)/IRE(6) M46 RSA(9)/WAL(8)
Pが少ない方が勝った試合が3試合
M43 WAL(6)/FRA(8) M45 ENG(6)/NZ(11) M48 RSA(8)/ENG(10)
上位4チームの予選ラウンド・決勝ラウンドのPの回数は次の通り。
予選ラウンド
|
QF
|
SF
|
F
| |
RSA
|
9(NZ) , 6(NAM) , 7(ITA) , 5(CAN)
|
8
|
9
|
8
|
ENG
|
10(TON) , 4(USA) , 8(ARG)
|
8
|
6
|
10
|
WAL
|
10(GEO), 8(AUS), 9(FIJ), 8(URG)
|
6
|
8
|
-
|
NZ
|
4(RSA) , 6(CAN) , 8(NAM)
|
13
|
11
|
-
|
これを見ると、RSAの安定感が際立つ気がした。どのチームを相手にしても熱くならずに試合を運ぶ(?)。この対極にあるのが、NZ。予選ラウンドからギアチェンジした決勝ラウンド。IREに対して、P13回で快勝。そして、ENG戦、P11回で完敗。
決勝ラウンド各試合・チーム毎の総得点に占めるPGの得点の割合は、次の通り。
(単位:%)
QF1
|
QF2
|
QF3
|
QF4
|
SF1
|
SF2
|
F
| |
勝者
|
30
|
7
|
30
|
35
|
63
|
63
|
56
|
敗者
|
56
|
-
|
-
|
100
|
-
|
56
|
100
|
同じく、決めたPGの数は、次の通り。
QF1
|
QF2
|
QF3
|
QF4
|
SF1
|
SF2
|
F
| |
勝者
|
3
|
1
|
2
|
3
|
4
|
4
|
6
|
敗者
|
3
|
-
|
-
|
1
|
-
|
3
|
4
|
同じく、トライ数は、次の通り。
QF1
|
QF2
|
QF3
|
QF4
|
SF1
|
SF2
|
F
| |
勝者
|
4
|
7
|
2
|
3
|
1
|
1
|
2
|
敗者
|
1
|
2
|
3
|
-
|
1
|
1
|
-
|
たかがPenalty、されどPenalty。
試合は生き物、ひとつひとつの試合に個性がある。勝利の方程式など、存在しない。
一方で、チーム・フィロソフィー、チーム・アイデンティティが血肉化していないと、おたおたする。「ノー・ペナ」は、誇るべき倫理観である。勝敗を度外視しても規則を遵守するのは、コンプライアンスが声高に叫ばれている現代において、望ましいことでもある!?
日本サッカーミュージアムには、各種国際大会で獲得したフェアプレー・トロフィーが、数多く展示されている。誇らしくはあるのだが…
ペナルティを「与えてもらう」、そのためにペナルティを「誘う」ことも頭の片隅に入れておく柔軟性も必要なのか。勝つことを最優先にするのか、ルールを厳格に守ることに価値を見出すのか、ラグビーの究極の価値は何と考えるかにかかってくるのであろう。
レフリーの判断・笛が吹かれて、ペナルティは成立する。
それにしても、今大会、両チーム同数のPの試合が予選ラウンド3試合、決勝ラウンド1試合あった。そのうちの3試合が日本戦。
M1 JPN/RUS M26 JPN/SAM M44 JPN/RSA
偶然なのかなぁ …
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