2020年5月15日金曜日

岡島レポート・2019W杯・備忘録 24

   2019W杯・備忘録 24
   ~ Penalty 

   国内の試合では、激しい攻防の時によく「ノー・ペナ!」という叫び声が聞かれる。
「ペナルティをするな!」という注意喚起。では、ペナルティという名詞に相応しい動詞は何だろうか?               する、犯す、取る …
「する、犯す」では、ペナルティ=過ち・規則違反を意味する。
「取る」では、ペナルティ=ペナルティ・キックの権利を意味する。
ペナルティという名詞は、プラスとマイナスの両義性を有している。
   競技規則の定義は、次の通りである。
ペナルティ:重大な反則に対して、一方のチームに与えられる。
英語の原文は次の通りである。
Penalty: Awarded against a team for a serious infringement.
   なるほど、競技規則はレフリーの目線だから、「与える」なのか。与えるのは、プラスとしてのペナルティ、正確に言えば、ペナルティ・キックなのだろう。
 レフリーと両チームの三角関係にペナルティは存在する。
   かつて、日本代表HCのエリサルドがこんなことを言っていた。
― 日本社会はクリーンだ。それは素晴らしいことだ。
  ジャパンラグビーは、クリーンすぎる。
   ペナルティをしなければ(=ペナルティをレフリーに取られなければ =ペナルティ・キックを相手に与えなければ)勝てるのだろうか?
   今大会、ペナルティの数と勝敗の関係は次の通りである。
(注)WRのスタッツは、Penalty concededで数えられいる。規則違反の回数である。
予選リーグ

Pが多いチームが勝利した試合
Pが少ないチームが勝利した試合
Group A
            4        
              4         
Group B
            1        
              7         
Group C
            4        
              4         
Group D
            4        
              6         
 チーム毎に、一試合平均のPの回数は次の通り。(太字が、決勝ラウンド進出)
最小が、SCORUSNZ6回。
6回台は、RSA6,75
7回が、JPNIRETON
7回台が、USA7,25)、ENG7,3)、ITA7,3
8回台が、ARG8,5)、NAM8,7)、WAL8,75)、AUS8,75
9回台が、FIJ9,25)、CAN9,3
10回以上が、GEO10,25)、FRA10,3)、URG11)、SAM12,5
   ちなみに、各Groupの一試合平均のP(両チーム合計)の回数は、
A : 15,4   B : 15,1  C : 16  D : 19
   P最小の試合は、M31 SCO4/RUS3)の7回。次が、M38 TON3/USA6
9回、M1 JPN5/RUS5)の10回、M40 JPN7/SCO4)の11回と続く。
   最多は、M39 WAL8/URG15)の23回。
   決勝ラウンド(三位決定戦を除く)7試合では、
Pが多い方が勝った試合が3試合
M41 ENG8/AUS(5)  M42 NZ13/IRE6)  M46 RSA9/WAL8

Pが少ない方が勝った試合が3試合
M43 WAL6/FRA8) M45 ENG6/NZ11) M48 RSA8/ENG(10)

上位4チームの予選ラウンド・決勝ラウンドのPの回数は次の通り。

予選ラウンド
  QF
 SF
 F
RSA
9(NZ) , 6(NAM) , 7(ITA) , 5(CAN)
   8   
   9  
  8  
ENG
10(TON) , 4(USA) , 8(ARG)
   8   
   6  
 10  
WAL
10(GEO), 8(AUS), 9(FIJ), 8(URG)
   6   
   8  
  -  
NZ
4(RSA) , 6(CAN) , 8(NAM)
  13   
  11  
  -  

 これを見ると、RSAの安定感が際立つ気がした。どのチームを相手にしても熱くならずに試合を運ぶ(?)。この対極にあるのが、NZ。予選ラウンドからギアチェンジした決勝ラウンド。IREに対して、P13回で快勝。そして、ENG戦、P11回で完敗。
   決勝ラウンド各試合・チーム毎の総得点に占めるPGの得点の割合は、次の通り。
                                                                   (単位:%)

 QF1
 QF2
 QF3
 QF4
 SF1
 SF2
   F
勝者
   30  
    7  
   30  
   35  
   63  
   63  
   56  
敗者
   56  
    -  
    -  
  100  
    -  
   56  
  100  

同じく、決めたPGの数は、次の通り。

 QF1
 QF2
 QF3
 QF4
 SF1
 SF2
   F
勝者
   3   
   1   
   2   
   3   
   4   
   4   
   6   
敗者
   3   
   -   
   -   
   1   
   -   
   3   
   4   

同じく、トライ数は、次の通り。

 QF1
 QF2
 QF3
 QF4
 SF1
 SF2
   F
勝者
   4   
   7   
   2   
   3   
   1   
   1   
   2   
敗者
   1   
   2   
   3   
   -   
   1   
   1   
   -   
 たかがPenalty、されどPenalty
試合は生き物、ひとつひとつの試合に個性がある。勝利の方程式など、存在しない。
    一方で、チーム・フィロソフィー、チーム・アイデンティティが血肉化していないと、おたおたする。「ノー・ペナ」は、誇るべき倫理観である。勝敗を度外視しても規則を遵守するのは、コンプライアンスが声高に叫ばれている現代において、望ましいことでもある!?
    日本サッカーミュージアムには、各種国際大会で獲得したフェアプレー・トロフィーが、数多く展示されている。誇らしくはあるのだが…
   ペナルティを「与えてもらう」、そのためにペナルティを「誘う」ことも頭の片隅に入れておく柔軟性も必要なのか。勝つことを最優先にするのか、ルールを厳格に守ることに価値を見出すのか、ラグビーの究極の価値は何と考えるかにかかってくるのであろう。
   レフリーの判断・笛が吹かれて、ペナルティは成立する。
   それにしても、今大会、両チーム同数のPの試合が予選ラウンド3試合、決勝ラウンド1試合あった。そのうちの3試合が日本戦。
 M1 JPN/RUS  M26 JPN/SAM  M44 JPN/RSA
 偶然なのかなぁ …

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