2019W杯・備忘録25
~ 負けに不思議の負けなし1 ~
事実上の決勝戦とも言われたM42 NZ/IRE戦 46-14の大差で敗れ大会を去ったIRE。
なぜ、IREは大敗したのか? 1.なぜ、点が取れなかったのか? 2.なぜ、失点を重ねたのか? 3.なぜ、流れを変えられなかったのか? の3視点で 試合を見返してみた。
1. なぜ、点が取れなかったのか?
IREの特徴の一つが、セットプレーからの多彩な攻撃でトライを取ることにあると言われたきた。この試合、IREボールでのリスタートが45回、NZボールのリスタートが24回。
そして、マイボールでのスクラム、ラインアウトはすべて獲得している。(p3からの(参考)に時間帯別の回数を表にしています。マニアックで恐縮です。)それでいて、68分まで無得点。
基点としてのセットプレーは、想定通り。そこからの展開で、NZディフェンスを突破できなかった。ゴールラインを割れなかった。
すべてを読み切られていた感が強い。それを痛感させられるのが次のシーン。
0-10とリードされていた前半16分、NZ陣・中盤でNZがP(ノーボールタックル)。絶好の位置でのPKを得る。PGで確実に3点を取る選択もあっただろうが、タッチキックでゴール前ラインアウトを狙う。IRE・10番・セクストンがタッチキックを蹴る。狙い通りに、寸分たがわずゴールライン手前に飛んでいく。そこに待ち構えていたNZ・10番・モウンガがジャンプ一番、タッチラインを超えていたボールを内側に叩き落とす。あえなくIREのチャンスが潰える。
セクストンのキックの精度が余りにも高すぎる。だから、モウンガは微動だにせず待ち構えている所に落下する。そして、相手ボールとなってしまった。セットプレーからの展開も初期設定どおりに作動する。そして、想定内のプレーは相手に読み切られる。「機械仕掛け」の弱さを垣間見る…
2. なぜ、失点を重ねたのか?
ミスタックルが多かったのが直接的な原因であろう。この試合のIREのタックル成功率は82%。低い数字である。ただし、準決勝のNZ戦で勝利したENGのタックル成功率は、81%。IREよりも低い成功率で勝利している。
ゴール前での「粘り」に欠けている気がして仕方がない。淡泊だ。この試合、Pの数は、IRE・6に対して、NZは13。やってはいけないだけの反則と「意味ある」反則。
逆説的だけれど、印象に残ったのが76分。41-7で大量リードのNZゴールポスト直下へのIREのグランディングを阻止しようとNZ・20番が体を入れる。結果としては、ペナルティ・トライの判定となり、20番はイエローカードで10分間のシンビン。この20番は、無用なプレー・おバカなことをしたのかもしれないけれど、ゴールラインを死守する気概を体現していた。
決勝ラウンドで7トライ取られるというのは、技術面の問題だけではない気がする。体を張る、言うは易く行うは難し。「行くしかないだろ」と後先考えずに「紙一重」のプレーに賭ける。「機械」にはそんな芸当はできない…
3. なぜ、流れを変えられなかったのか?
かつて、エリサルドに「どうしたらメンタルを強く出来るか?」と尋ねたら、「メンタルを強くすることはできない。出来ることは、強いメンタルを矯正することだけだ。」と言っていた。彼の体験からすると、強いメンタルを「躾ける」ことはできても、並のメンタルを強くすることは難しい。
IREは、躾けられすぎた気がしてならない、「Discipline、Discipline」と。そして、優等生だけのチームになってしまった!? あの泥臭いSpiritが去勢されてしまった…
歯車が噛合わなくなった時、グランドで誰が軌道修正するのか? ベストがキャプテンでよかったのか? フッカーというポジションはキャプテンに相応しいのか? 37歳という年齢は問題なかったのか? この試合、ベストは司令塔のセクストンとともに63分で交代している。試合を見返してみると、「タラ・レバ」の連続である。とはいえ、あまりにも負けっぷりが良すぎる。何をやってもうまくいかない、そんな一日だったのか!?
Irelandは、永遠に「敗者の美学」を世界に発信し続けるのだろうか。
(参考)ラグビーは、レフリーが笛を吹くと、一旦ゲームが中断し、セットプレーで再開される(リスタート)。
セットプレーの種類は、スクラム(S)、ラインアウト(LO)、ペナルティ・キック(PK)、フリーキック(FK)、ドロップ・アウト(DO)とキック・オフ(KO)。
時間帯別のリスタートと得点は次の通り。
IREボール
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
KO
|
2
|
2
|
2
|
2
|
8
|
S
|
1/1
|
3/3
|
2/2
|
1/1
|
7/7
|
LO
|
4/4
|
5/5
|
4/4
|
2/2
|
15/15
|
PK
|
2
|
4
|
3
|
4
|
13
|
FK
|
-
|
1
|
-
|
-
|
1
|
DO
|
-
|
-
|
1
|
-
|
1
|
計
|
9
|
15
|
12
|
9
|
45
|
(注) KOのうち、1回は、後半開始時のもの。
S、LOの分母は、マイボールでの投入回数。分子は、そのうちのボール獲得回数。
PKの回数は、相手チームのペナルティ(反則)によって獲得したPKの回数。
IREの得点
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
トライ(T)
|
-
|
-
|
-
|
2
|
2
|
T後のG
|
-
|
-
|
-
|
2
|
2
|
PG
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
NZボール
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
KO
|
1
|
-
|
-
|
2
|
3
|
S
|
3/3
|
1/1
|
1/1
|
1/1
|
6/6
|
LO
|
1/1
|
1/2
|
3/3
|
2/2
|
7/8
|
PK
|
1
|
4
|
1
|
-
|
6
|
FK
|
1
|
-
|
-
|
-
|
1
|
DO
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
計
|
7
|
7
|
5
|
5
|
24
|
NZの得点
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
T
|
2
|
1
|
1
|
3
|
7
|
T後のG
|
2
|
-
|
1
|
1
|
4
|
PG
|
1
|
-
|
-
|
-
|
********************
WRの会長選挙が行われ、ビューモント会長が再選された。
Midolによれば、両候補の得票内訳は次の通り。
・ ビューモント(ENG) : 28票
ENG、SCO、WAL、IRE、FRA、ITA × 3票 =18票
JPN × 2票 =2票
欧州協会、アフリカ協会 × 2票 =4票
FIJ、SAM、CAN × 1票 =3票
北アメリカ協会 × 1票 =1票
・ ピショット(ARG) : 23票
NZ、AUS、RSA、ARG × 3票 =12票
アジア協会、南米協会、オセアニア協会 × 2票 =6票
GEO、RUM、USA、URG × 1票 =4票
北米協会 × 1票 =1票
世界のラグビー界は、2大勢力の争いが続きそうである。
気になるのは、日本協会がビューモントに投票し、アジア協会がピショットに投票したこと。うまく連携が取れてのことであればいいのだが。
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