2019 W杯・備忘録 106
〜 FRA/NZ 〜
2023W杯の開幕戦と同じ場所・カード、前哨戦である。チケット完売・満員のスタンド。79,041人、マスクをしている人が見当たらない。現時点で最高のレフリー・バーンズ(ENG)が主審を務める。役者は揃った。
試合前の国歌斉唱。ラ・マルセイエーズの途中から「無伴奏」に。Midolによれば、先日のSCOのテストマッチで試みられ大反響があったのに倣ったとのこと。アカペラで選手・サポーターが大声で歌い上げる。次のW杯、どうするのだろうか…
スタンドでは、ラポルト仏ラグビー協会会長とカステックス仏首相が、もちろんマスクなしで並んで観戦している。首相は、長年、地元ピレネーの村の名もないラグビークラブの会長を務めている。フランスラグビーの大切な「根」である。
試合経過は次の通り。FRAの得点は「○」、失点は「●」、FRAが得点を逃したのは「×」、NZが得点を逃したのは「*」。
分 | 得点 | 種類 | 起点となった(リ)スタート | |
○ ● ● ○ × ○ ○ * | 2 5 8 11 18 24 31 37 | 7- 0 7- 3 7- 6 14- 6 17- 6 24- 6 | T+G PG PG T+G DG PG T+G | FRAのキックオフで試合開始。 NZゴール前FRAラインアウトからモールを押し2・トライ。 G・15。 FRAのP(オフフィート)。PG・㈾ FRAのP(オフサイド)。PG・㈾ 10・トライ。G・15 DG・10、すべって転んでゴールに届かず NZのP(ノットリリース)。PG・15 NZゴール前FRAラインアウトからモールを押し2・トライ。G・15 FRAのP(オフサイド)⇒PGを狙わずにタッチに蹴る⇒FRAゴール前NZラインアウト⇒展開してノックオン⇒FRAスクラムに |
* ● ● ○ ● ○ ○ ○ | 41 45 51 53 58 63 67 80 | 24-11 24-18 27-18 27-25 30-25 37-25 40-25 | T T+G PG T+G PG T+G PG | FRAのP(オフフィート)⇒PGを狙わずにタッチに蹴る⇒FRAゴール前NZラインアウト⇒NZキャッチ後モールを組むもFRAが押す⇒NZのP(モールコラプシング) トライ・㈾。G・㈾外す。 トライ・㈺。G・㈾ PG・15 トライ・㉀。G・㈾ NZのP。㉀にイエロー。PG・15 トライ・14。G・15 NZのP(オフフィート)。PG・15 |
(注)「→」は順目のパス。「←」は内返しのパス。
80分のラグビーの試合、基本は20分ごとの4章構成だろう。そして、いい試合は起承転結がある。この試合は、その典型例。
得点経過は次のとおり。
㈵(0-20) | ㈼(20-40) | ㈽(40-60) | ㈿(60-80) | |
FRA | 14 (2T.2G) | 10 (1T.1G.1PG) | 3 (1PG) | 13 (1T,1G,2PG) |
NZ | 6 (2PG) | - | 19 (3T,2G) | - |
前半を終えて24-6、18点差で楽勝感の漂ったスタジアム。それが後半の前半、13分間に3トライ取られて2点差に。スタジアムは静まり返り、FRAの解説者は「打つ手なし」アナウンサーは「試合がリセットされた」。NZ恐るべし。
結果だけ見れば、FRAの快勝・完勝。15点差=2トライ・2ゴールでは追い付けない
「大差」でNZを破っている。それでも見返しているうちにNZの強さを随所に見つけていくことになる。やはり2試合連続で負けただけで大ニュースになるチームだ。試合翌日、FRA主将・デュポンは「子供の頃、いつかオールブラックスと闘えればと願っていた、でも、多分勝てないだろうとも思っていた」と話している。
トライ数はFRA・4、NZ・3。それぞれについて、㈰起点となったリスタート ㈪途中経過 ㈫トライゲッターを表にしてみると次のとおり。
㈰ | ㈪ | ㈫ | |
F1 | Nゴール前F・LO | モールを押す | 2 |
F2 | Nフェアーキャッチ後のFK | Fキャッチ後3フェーズでビックゲイン・FWのピック&ゴー、ゴール前に・ラックでNのPアドバンテージ・展開 | 10 |
F3 | NのP⇒Nゴール前F・LO | モールから飛び出す | 2 |
F4 | N陣内F・LO | FのノックオンをNが展開・インターセプト | 14 |
㈰ | ㈪ | ㈫ | |
N1 | N50:22でF22m内N・LO | N・ピック&ゴー・12フェーズ途中FのPでアドバンテージ・ラックからのワンパス | 15 |
N2 | F陣内F・LO | Fラックからターンオーバー・展開 | 13 |
N3 | FのP⇒Fゴール前N・LO | Nモールを組み崩れ㈴ラック㉀飛び込む | 8 |
こうして並べてみてみると、起点は圧倒的にラインアウト(「LO」)。それも相手ゴール前のLOからのトライが多い。そこで取り切れるか否かが試合を分ける大きなポイントになっている。
この試合、トライに至らなかった=取り切れなかった=守り切ったシーンが2回、前半の最後と後半の最初にあった。いずれもNZが攻め込んでFRAが守り切った。
2019W杯のFRA、LOで苦しんだ。準々決勝のFRA・5のレッドカードもLOのプレーだった。大会後、コーチングスタッフにFRAとしては初めてLOコーチが入り、現時点までは顕著な進化が表れている。次のW杯までその優位性が保てるのか?
この試合、ラインアウトの回数は、FRA・13、NZ・11。それに比べて、スクラムの回数は、FRA・5、NZ・2。前回取り上げたENG/RSAもスクラムは合計7回。どちらの試合もスクラムが組まれるのは特定の時間帯に限られている。なぜか? この試合のスクラムの時間帯・原因・結果は次のとおり
1. 21分:F(ノックオン)⇒Nが押すもFが出して展開
2. 26分:N(ノックオン)⇒FのアーリーエンゲージでNにFK
3. 39分:F(ノックオン)⇒Nが押して組み直し・F8がピックしてタッチへ蹴る
4. 70分:F(ノックオン)⇒崩れて組み直し・F展開してビックゲイン
5. 72分:N(ノックオン)⇒Fが押してN9・自陣ゴールでタッチダウン
6. 75分:F(キャリーバック)⇒Fサイドを突いてフェーズを重ねるもトライに至らず
7. 77分:F(キャリーバック)⇒Fサイドを突いてフェーズを重ねるも23がタックルを受けP
まず、ノックオンなどのミスが少ない。そして、そういったミスがあったら直ぐに付け込んで展開されるので「アドバンテージが解消される」ケースが散見される。特に、試合が高密度で戦われているとそうなる傾向がありそうだ。
残り20分、なぜFRAは息を吹き返したのか? もちろんいくつもの要因が挙げられる。特に、60分、2点差に迫られ、マイボールラインアウト・ノックオンから相手にボールを渡し展開されインゴールへのゴロパンが蹴られた逆転かと思われたその時、FRAインゴールからのFRA・10の快走しボールを繋いでNZ22m内へ。このシーン一つでもいろいろな要素が凝縮している。
気になったのは、この試合、FRAのリザーブ8人は、FW:6人、BK:2人。それぞれの交替時間(上段)、交替背番号(下段)は次のとおり。
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | |
FRA | 59 2 | 49 1 | 48 3 | 48 5 | 60 8 | 73 4 | 76 9 | 67 10 |
NZ | 48 2 | 48 1 | 48 3 | 65 5 | 60 6 | 60 9 | 71 10 | 53 14 |
ちなみに、前回取り上げたENG/RSAもリザーブに関して同じようなFW・BK構成だった。
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | |
ENG | 60 2 | 48 1 | 56 3 | 60 5 | 73 6 | 55 7 | 55 9 | 9 12 |
RSA | 45 2 | 45 1 | 45 3 | 64 5 | 64 7 | 67 9 | 56 10 | 51 15 |
これが残り20分、どう影響していると考えるのか、興味深い。次のW杯、どのようなリザーブ構成が主流になっていくのだろうか。
2007W杯フランス大会は、同じスタジアムで開幕戦FRA/ARGが行われ、なんと三位決定戦で再び対戦した。歴史は繰り返すのか…
2023W杯決勝、どのチームがピッチに立っているのか? その時の笛は誰が吹いているのか?
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この週末、NHK総合で早明戦が放送される。公共放送が、日本代表戦は放送せずに「伝統の定期戦」を放送する。これぞ、日本ラグビー。早明戦や花園、日本ラグビーの大切な「根」を枯らしてはならない…
令和3年12月4日
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