2019 W杯・備忘録 137
〜 TMO 〜
先週末のJPN/FRA戦、73分:20番・タタフがトライし、20-20の同点に追いついた!その後、TMOでインゴール・ノックオンが発見・確認され、ノートライに。フランス戦初勝利は幻となった。そして、TMOのおかげで、FRAはWRランキングで初めて1位になった。TMOがなければ…
先週末も、前週同様、北半球(というか欧州六か国のうちの4チーム)対南半球4チームの「南北対決」と日仏戦の5試合が行われた。南北対決は、前週と真逆、いずれも「北」が勝利。二連勝したのはFRAのみ。点数は次のとおり。()内は前週の試合のもの。
NZ/IRE | AUS/ENG | RSA/WAL | ARG/SCO | FRA/JPN | |
勝者 | 23(42) | 25(30) | 13(32) | 29(26) | 20(42) |
敗者 | 12(19) | 17(28) | 12(29) | 6(18) | 15(23) |
ペナルティを犯した数は次のとおり
NZ/IRE | AUS/ENG | RSA/WAL | ARG/SCO | FRA/JPN | |
勝者 | 14(10) | 10(13) | 11(14) | 8(10) | 11(14) |
敗者 | 14(14) | 15(13) | 12( 7) | 11(10) | 11(10) |
TMOの回数は各試合次のとおり。
NZ/IRE | AUS/ENG | RSA/WAL | ARG/SCO | FRA/JPN | |
トライ関連 | 3(3) | 0(0) | 0(1) | 2(2) | 1(0) |
不正プレー | 3(0) | 4(2) | 1(0) | 0(0) | 0(2) |
その他 | - | 1 | - | - | - |
カードが出された回数は次のとおり。
NZ/IRE | AUS/ENG | RSA/WAL | ARG/SCO | FRA/JPN | |
勝者 | Y1(Y1) | Y1(R1Y1) | Y1(-) | -(-) | -(-) |
敗者 | R1Y2(-) | Y1(Y2) | -(Y4) | Y1(-) | -(-) |
NZ/IREとAUS/ENGで、タックラーが敵のボールキャリアーに頭をぶつけて脳震盪で倒れるシーンがあった。いずれもTMOで確認され、次のような判定が下された。
- NZ/IRE(30分)ではタックラー(N・18)の頭とボールキャリアー(IRE・13)の頭が当たったとしてN・18にレッドカード。
- AUS/ENG(39分)ではタックラー(E・4)の頭がボールキャリアー(AUS・13)の肩に当たったとして「お咎めなし」
大前提として、「頭と頭」がぶつかったら、タックラーに「レッド」という決まりがあ
る。これ自体を議論すべきとの意見もあろうが、少なくとも、現下の「脳震盪軽減キャンペーン」では所与のものと考えるべきだろう。そうなれば、誰が判断するのか、ということになる。すなわち、リアルタイムの肉眼か、記録に残される映像か、どちらを選択するのか。ことは「レッド」に関わる重大事でもある。と考えると、TMOを活用せざるをえない。
TMO(テレビジョンマッチオフィシャル)は、マッチオフィシャル(レフリー・アシスタントレフリー)の構成員である。すなわち、「ヒト」である。一方、慣用的には、機器で見返される「映像」を指しても使われている。すなわち、「ヒト」と「機器・映像」の二つの含意がある。
「ヒト」としてのTMOの権限がどこまでなのか、あれっと感じたのが、AUS/ENG(12分)。TMOからのレポートだけで、映像で確認せずに、レフリーがAUS・3のデンジャラスプレーのPを取ったシーン。こうなると、レフリーよりも「ヒト」としてのTMOが権限を持っているかのように思えてくる。
さらに面妖だったのが、AUS/ENG(55分)。53分:TMOでENG・10に「イエロー」そのPGをAUSが決め、22-17と5点差に詰め寄り、ENGのキックオフからの展開の中でAUS・9のキックで「50:22」、ENGゴール前でのAUSボール・ラインアウトと判定された。場内、大歓声が渦巻き、逆転への期待が… 直後、なぜかTMOで確認され、ENGボールに変更された。この「状況」は、映像としてのTMOを使用すると定めた競技規則a.〜e.に該当しない。競技規則に反した越権行為としか思えない。
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TMOで状況を明確にするのは、競技規則第6条15.で以下のように規定されている。
- インゴール内でのボールのグラウンディング
- ボールをグラウンディングする動き、または、ボールがデッドになる際における、タッチ、または、タッチインゴール。
- ゴールキックが成功したかどうか、疑いがある場合。
- マッチオフィシャルが、トライにつながる、または、トライを妨げる反則が起きたかもしれないと考える場合。
- 不正なプレー。罰の確定を含む。
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見事に「水を差した」。これがなければ、流れはAUSに大きく傾いたと思われる。まさに試合を決めたTMOだった。
では、競技規則通り=レフリー・アシスタントレフリーの肉眼で見た判断で試合を進めるべきだったのだろうか。事実としては、「映像」で確認された通り、AUSが一旦ボールをセンターライン越えに動かしている=50:22にならない=レフリー・アシスタントレフリーは間違った判断を下していた。問題は、事実をどこまで追求すべきかなのだろう。一般映像が普及していなければ、レフリーの肉眼に信頼するしかない。しかし、これだけ機器が発達してしまえば、それを利用せざるを得ない。現に、その一歩を踏む出してしまっている。そして、使用規則めいたものを定めているが、それを逸脱した行為がなされ、試合結果を変えた。悩ましい問題だ…
TMOなしの試合に戻せるのだろうか。そのためには、レフリーが信頼に値する存在でなければならないだろう。それは無いものねだりだ。どこまでいっても生身の人間は間違いを犯す。レフリーの笛一つで試合は変わる。人びとはどんどん狭量になってきて、間違いを厳しく指弾するような世界になってしまった。
そもそも、人類の機器・テクノロジーとの付き合い方は、不可逆的だ。後戻りできない一本道。前に進むしかない。
便利なものを使わない手はない。TMOの有無を論ずるよりも、TMOの存在を所与の事項として、その使い方を論ずべきであろう。
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(参考)
7月第2週5試合の各チームのリスタート数
NZ/IRE | AUS/ENG | RSA/WAL | ARG/SCO | FRA/JPN | ||||||
KO | 6 | 2 | 8 | 4 | 4 | 5 | 6 | 3 | 3 | 5 |
S | 7 | 10 | 4 | 5 | 9 | 4 | 6 | 12 | 13 | 9 |
LO | 17 | 11 | 12 | 15 | 12 | 16 | 7 | 15 | 17 | 16 |
PK | 14 | 14 | 10 | 15 | 11 | 12 | 8 | 11 | 11 | 11 |
FK | - | - | 3 | 1 | 1 | 2 | 2 | 1 | 2 | 1 |
DO | - | 1 | 1 | - | 3 | 2 | - | - | 1 | - |
計 | 44 | 38 | 38 | 40 | 40 | 41 | 29 | 42 | 47 | 42 |
7月第1週5試合の各チームのリスタート数
NZ/ IRE | AUS/ ENG | RSA/ WAL | ARG/ SCO | FRA/ JPN | ||||||
KO | 4 | 7 | 6 | 6 | 8 | 6 | 5 | 7 | 5 | 9 |
S | 9 | 4 | 5 | 4 | 2 | 5 | 9 | 7 | 7 | 5 |
LO | 9 | 17 | 12 | 12 | 12 | 13 | 9 | 13 | 12 | 9 |
PK | 10 | 14 | 13 | 13 | 14 | 7 | 10 | 10 | 10 | 14 |
FK | 1 | 2 | 1 | 0 | 2 | 0 | 2 | 2 | 1 | 1 |
DO | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 | 0 | 2 | 1 | 0 |
計 | 34 | 44 | 38 | 35 | 38 | 34 | 35 | 41 | 36 | 38 |
令和4年7月16日
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