2022年7月16日土曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 137

 2019 W杯・備忘録 137

  TMO 
 
 先週末のJPN/FRA戦、73分:20番・タタフがトライし、20-20の同点に追いついた!その後、TMOでインゴール・ノックオンが発見・確認され、ノートライに。フランス戦初勝利は幻となった。そして、TMOのおかげで、FRAWRランキングで初めて1位になった。TMOがなければ… 
 
先週末も、前週同様、北半球(というか欧州六か国のうちの4チーム)対南半球4チームの「南北対決」と日仏戦の5試合が行われた。南北対決は、前週と真逆、いずれも「北」が勝利。二連勝したのはFRAのみ。点数は次のとおり。()内は前週の試合のもの。
 
 
NZ/IRE
AUS/ENG
RSA/WAL
ARG/SCO
FRA/JPN
勝者
   23(42)
   25(30)
   13(32)
   29(26)
   20(42)
敗者
   12(19)
   17(28)
   12(29)
    6(18)
   15(23)
 
 ペナルティを犯した数は次のとおり
 
NZ/IRE
AUS/ENG
RSA/WAL
ARG/SCO
FRA/JPN
勝者
   14(10)
   10(13)
   11(14)
    8(10)
   11(14)
敗者
   14(14)
   15(13)
   12( 7)
   11(10)
   11(10)
 
TMOの回数は各試合次のとおり。
 
NZ/IRE
AUS/ENG
RSA/WAL
ARG/SCO
FRA/JPN
トライ関連
   3(3)
   0(0)
   0(1)
   2(2)
   1(0)
不正プレー
   3(0)
   4(2)
   1(0)
   0(0)
   0(2)
その他
   -
   1
   -
   -
   -
 
 カードが出された回数は次のとおり。
 
NZ/IRE
AUS/ENG
RSA/WAL
ARG/SCO
FRA/JPN
勝者
  Y1(Y1)
  Y1(R1Y1)
  Y1(-)
    -(-)
   -(-)
敗者
R1Y2(-)
  Y1(Y2)
   -(Y4)
  Y1(-)
   -(-)
 
 NZ/IREAUS/ENGで、タックラーが敵のボールキャリアーに頭をぶつけて脳震盪で倒れるシーンがあった。いずれもTMOで確認され、次のような判定が下された。
  • NZ/IRE30分)ではタックラー(N18)の頭とボールキャリアー(IRE13)の頭が当たったとしてN18にレッドカード。
  • AUS/ENG39分)ではタックラー(E4)の頭がボールキャリアー(AUS13)の肩に当たったとして「お咎めなし」
 
大前提として、「頭と頭」がぶつかったら、タックラーに「レッド」という決まりがあ
る。これ自体を議論すべきとの意見もあろうが、少なくとも、現下の「脳震盪軽減キャンペーン」では所与のものと考えるべきだろう。そうなれば、誰が判断するのか、ということになる。すなわち、リアルタイムの肉眼か、記録に残される映像か、どちらを選択するのか。ことは「レッド」に関わる重大事でもある。と考えると、TMOを活用せざるをえない。
 
 TMO(テレビジョンマッチオフィシャル)は、マッチオフィシャル(レフリー・アシスタントレフリー)の構成員である。すなわち、「ヒト」である。一方、慣用的には、機器で見返される「映像」を指しても使われている。すなわち、「ヒト」と「機器・映像」の二つの含意がある。
 
 「ヒト」としてのTMOの権限がどこまでなのか、あれっと感じたのが、AUS/ENG12分)。TMOからのレポートだけで、映像で確認せずに、レフリーがAUS3のデンジャラスプレーのPを取ったシーン。こうなると、レフリーよりも「ヒト」としてのTMOが権限を持っているかのように思えてくる。
 
 さらに面妖だったのが、AUS/ENG55分)。53分:TMOENG10に「イエロー」そのPGAUSが決め、22-175点差に詰め寄り、ENGのキックオフからの展開の中でAUS9のキックで「50:22」、ENGゴール前でのAUSボール・ラインアウトと判定された。場内、大歓声が渦巻き、逆転への期待が… 直後、なぜかTMOで確認され、ENGボールに変更された。この「状況」は、映像としてのTMOを使用すると定めた競技規則a.e.に該当しない。競技規則に反した越権行為としか思えない。
*********
 TMOで状況を明確にするのは、競技規則第615.で以下のように規定されている。
  1. インゴール内でのボールのグラウンディング
  2. ボールをグラウンディングする動き、または、ボールがデッドになる際における、タッチ、または、タッチインゴール。
  3. ゴールキックが成功したかどうか、疑いがある場合。
  4. マッチオフィシャルが、トライにつながる、または、トライを妨げる反則が起きたかもしれないと考える場合。
  5. 不正なプレー。罰の確定を含む。
**********
 
 見事に「水を差した」。これがなければ、流れはAUSに大きく傾いたと思われる。まさに試合を決めたTMOだった。
 では、競技規則通り=レフリー・アシスタントレフリーの肉眼で見た判断で試合を進めるべきだったのだろうか。事実としては、「映像」で確認された通り、AUSが一旦ボールをセンターライン越えに動かしている=50:22にならない=レフリー・アシスタントレフリーは間違った判断を下していた。問題は、事実をどこまで追求すべきかなのだろう。一般映像が普及していなければ、レフリーの肉眼に信頼するしかない。しかし、これだけ機器が発達してしまえば、それを利用せざるを得ない。現に、その一歩を踏む出してしまっている。そして、使用規則めいたものを定めているが、それを逸脱した行為がなされ、試合結果を変えた。悩ましい問題だ…
 
 TMOなしの試合に戻せるのだろうか。そのためには、レフリーが信頼に値する存在でなければならないだろう。それは無いものねだりだ。どこまでいっても生身の人間は間違いを犯す。レフリーの笛一つで試合は変わる。人びとはどんどん狭量になってきて、間違いを厳しく指弾するような世界になってしまった。
そもそも、人類の機器・テクノロジーとの付き合い方は、不可逆的だ。後戻りできない一本道。前に進むしかない。
便利なものを使わない手はない。TMOの有無を論ずるよりも、TMOの存在を所与の事項として、その使い方を論ずべきであろう。
 
********************
 
(参考)
 
7月第25試合の各チームのリスタート数
 
 
NZ/IRE
AUS/ENG
RSA/WAL
ARG/SCO
FRA/JPN
KO
  6
  2
  8
  4
  4
  5
  6
  3
  3
  5
S
  7
10
  4
  5
  9
  4
  6
12
13
  9
LO
17
11
12
15
12
16
  7
15
17
16
PK
14
14
10
15
11
12
  8
11
11
11
FK
  -
  -
  3
  1
  1
  2
  2
  1
  2
  1
DO
  -
  1
  1
  -
  3
  2
  -
  -
  1
  -
44
38
38
40
40
41
29
42
47
42
 
 
7月第1週5試合の各チームのリスタート数
 
 
  NZ/ IRE
AUS/ ENG
RSA/ WAL
ARG/ SCO
FRA/ JPN
KO
  4
  7
  6
  6
  8
  6
  5
  7
  5
  9
S
  9
  4
  5
  4
  2
  5
  9
  7
  7
  5
LO
  9
17
12
12
12
13
  9
13
12
  9
PK
10
14
13
13
14
  7
10
10
10
14
FK
  1
  2
  1
  0
  2
  0
  2
  2
  1
  1
DO
  1
  0
  1
  0
  0
  3
  0
  2
  1
  0
 計
34
44
38
35
38
34
35
41
36
38
 
令和4716

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