2022年7月30日土曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 139

2019 W杯・備忘録 139
  審判団 〜
 
 今夏のNZ/IRE:三連戦の勝敗を決めた第3戦・50分からの「流れ」の中で、「えっ!?」と首を傾げざるを得ない笛が三度続いた。
 
  1. 50分:TMOIRE1に対する(レッドではなく)イエローカード
  2. 62分:アシスタントレフリーからのレポートでNZのノックオン・IREスクラムで再開
  3. 63分:ラックでのオフサイドでNZ8P
 
なぜ「えっ!?」と感じたのか?
  1. 2戦のヘッドコンタクトではレッドだったのに今回はイエローなのは?
  2. アシスタントレフリーからのレポートで判定を変えてもいいものなのか?
  3. オフサイドではなく、NZ・8のファインプレーだ。
 
さらに詳しく書いてみる。
1.については、第2戦・第3戦、同じ人物がTMOとしてマッチオフィシャルになっている。第230分:ボールキャリアーのIRE13NZ18がヘッドコンタクト。両者、脳震盪を起こす。TMOの結果、NZ18にレッド。第350分:ボールキャリアーNZ4の頭とタックルに入ったIRE1の頭がぶつかり、NZ4が脳震盪で倒れ、NZのメディカルが入り診断しているもプレーは続行(これ自体、問題)。ゲームが切れたところでTMOの映像で確認し、議論なくイエローで決定。二つの事象を比べてみると、どちらも「頭」と「頭」がぶつかったことによって脳震盪が生じている。第2戦では「問答無用」でレッド、第3戦ではボールキャリアーに脳震盪を起こさせて・直後にHIAで交代選手が入り・結局ノーサイドまで戻ってこずという明確な被害を相手に与えていてもイエロー。本当に、釈然としない。
 
2.については、アシスタントレフリーの役割・権限は何かをいうことと関連している。競技規則第6条マッチオフィシャルで、アシスタントレフリーの役割として明示されているのは、㈰ゴールキックの判定 ㈪タッチの合図 ㈫不正なプレーの指摘の3点だけである。すなわち、「ノックオン」の判断は役割の中に明示されていない。これらの条項を、(a)限定列挙と捉え=それ以外のプレーの判定に関与できないと考えるのか、それとも、(b)例示と捉え=それ以外でもレフリーのアピールできると考えるのか、統一していくべきだろうと痛感した。というのも、各試合でばらばらな状況だ(アシスタントレフリーの眼前での「ノックオン」「スローフォワード」が見過ごされている=役割・権限がないから!?)と感じているからでもある。この試合のレフリー・アシスタントレフリー2名・TMOは全員ENG協会所属。同一協会所属のマッチオフィシャルで行われた試合は、今夏の南北対決12試合のうち、この試合だけ。他の試合は、すべて南北の複数の協会所属のマッチオフィシャルの混成チームであった。(興味ある方は(参考)をご覧ください)いい意味で、この試合のマッチオフィシャルはチームワークが取れていたとも感じた。
 
3.については、NZ8:サベアのファインプレーで、オフサイドでなかったと思われる。スーパーラグビーなどで普段から彼のプレーに接している南半球のレフリーであれば「OK」だと判断したはずだ。スローモーションで見返しても、サベアの反射神経の鋭さにレフリーの視神経が劣っていた気がしてならない。
 
もちろん、前回の備忘録で書いたようにIREが素晴らしかったことは紛れもない事実だ、一方で、これらの笛が微妙であったことも事実だ。こういう「たられば」を語っても意味はない、というのは一つの立場だ。一方で、笛一つで試合の流れは変わったであろうことを思いながら試合を振り返ることを愉しむのも一興であろう。
 
サッカーの国際試合の場合、レフリー・アシスタントレフリーは「審判団」として同一協会所属の面々が試合を裁く。NZ/IRE3戦を見ていると、ラグビーも同一協会の「審判団」に委ねた方がいいのではないかと感じた。
サッカーでは、分業化が進み、レフリーとアシスタントレフリー(タッチジャッジ・副審)は別のライセンスとなっている。そもそもサッカー競技規則は17条から成り、第5条主審、第6条その他の審判員と書き分けられている。
 
サッカー競技規則を見ていたら、「競技規則の適用」という文章の中に次の一節があった。
『審判やその他の試合参加者に競技規則を教育する方々は、次のことを強調する必要がある。
・ 審判はフェアで安全な試合が行われるよう、競技の「精神」に基づいて競技規則を適用すべきである。
・ 誰もが審判は人間であって間違いも犯すことを想い起こし、審判とその判定をリスペクトしなければならない。』
 
ラグビーの「精神」から書き下せば、どういう文章になるのだろうか。おそらく、プロ化以前とプロ化後で大きく異なるものになるのではないだろうか。それを変質・劣化とみるか、たんなる進化とするか、それとも進歩・発展と捉えるか、自問自答が続く。
 
 
 
( 参考 )
 
(注)*  :2019W杯・レフリーとして参加
   ** :2019W杯・アシスタントレフリーとして参加
   ***:2019W杯・TMOとして参加
 
NZ/IRE
 
  第1
  第2
  第3
レフリー
ディクソン(E)**
ペイパー(R)*
バーンズ(E)*
アシスタントレフリー
バーンズ(E)*
ウェイ(A
ディクソン(E)**
ウェイ(A
ディクソン(E)**
リドリー(E
TMO
ヴェストハイゼン(R
フォーリー(E
フォーリー(E
 
AUS/ENG
 
  第1
  第2
  第3
レフリー
ドールマン(N
ブレイス(Ir)**
ウィリアムズ(N)*
アシスタントレフリー
ブレイス(Ir)**
エヴァンズ(W
ウィリアムズ(N)*
エヴァンズ(W
ブレイス(Ir)**
ドールマン(N
TMO
ピッカリル(N)**
ネヴィル(Ir
ハート(N
 
RSA/WAL
 
  第1
  第2
  第3
レフリー
アマシュケリ(G
ガードナー(A)*
カーリー(E)**
アシスタントレフリー
ガードナー(A
ピアルディ(It
カーリー(E)**
ピアルディ(It
ガードナー(A)*
アマシュケリ(G
TMO
ネヴィル(Ir
クローニー(A
クローニー(A
 
ARG/SCO
 
  第1
  第2
  第3
レフリー
ベリー(A)*
レイナル(F)*
オキーフ(N)*
アシスタントレフリー
レイナル(F)*
ブルゼ(F
オキーフ(N)*
ブルゼ(F
レイナル(F)*
トレニニ(F
TMO
ヨンカー(R)***
マクニース(Ir
マクニース(Ir
 
令和4年7月30 

0 件のコメント:

コメントを投稿