2019 W杯・備忘録 136
〜 一時的退出 〜
先週末、北半球(というか欧州六か国のうちの4チーム)対南半球4チームの「南北対決」と日仏戦の5試合が行われた。南北対決はいずれも「南」が勝利。点数は次のとおり。
NZ/IRE | AUS/ENG | RSA/WAL | ARG/SCO | FRA/JPN | |
勝者 | 42 | 30 | 32 | 26 | 42 |
敗者 | 19 | 28 | 29 | 18 | 23 |
ペナルティを犯した数は次のとおり
NZ/IRE | AUS/ENG | RSA/WAL | ARG/SCO | FRA/JPN | |
勝者 | 14 | 13 | 7 | 10 | 14 |
敗者 | 10 | 13 | 14 | 10 | 10 |
「ディシプリン」は世界共通語になった。NZ/IRE、FRA/JPN、Pの数が勝者・敗者同数というのも興味深い。
「カード」に関しては、千差万別。NZ・IRE:イエロー1、AUS/ENG:レッド1・イエロー3、RSA/WAL:イエロー4が出された。試合順の具体的なプレーは以下のとおり。
時間 | 対象選手 | 対象行為 | 色 | TMO |
78 | NZ・17 | チームとしての反則の繰り返し | Y | × |
33 | ENG・5 | 不正なプレー(髪を引っ張る) | Y | ○ |
33 | AUS・4 | 不正なプレー(頭突き) | R | ○ |
67 | ENG・8 | ハイタックル | Y | ○ |
80 | AUS・10 | 故意のノックオン | Y | × |
37 | WAL・10 | トライの妨害 | Y | × |
63 | WAL・19 | トライの妨害←ADを出してトライ | Y | × |
73 | WAL・14 | トライの妨害 | Y | × |
74 | WAL・17 | トライの妨害→ペナルティ・トライ | Y | × |
AUS/ENGは、0〜33分まで15人対15人、その後14対14が20分間、14対15が27分間であった。
RSA/WALは、一時的に15対12になっている。
AUS/ENG、現代を象徴するかのような「カード」の出され方。テクノロジーの活用と「コレクトネス(≒お行儀の良さ≒偽善…)」。
その典型例を見た気がしたのが33分。㈰ENGボール・ランアウト→モール ㈪AUS・4番が割って入ろうとしてENG・5番が後頭部の髪をひっぱって剥がそうとする ㈫ボールが出て展開している(=プレーは進んでいる)が二人は小競り合い ㈬別れ際にAUS・4番がENG・5番に軽い頭突き ㈭ENG・5番がびっくりした表情を見せタッチジャッジにアピール ㈮ゲームが止まったところでTMO という流れであった。「原因を作った者(ENG・5番)」と「行為を行った者(AUS・4番)」、どちらを罰するかは永遠の課題なのかもしれない。プロ化前であれば、笑って済ませていた小さなアクシデントであったろう。どちらも痛んでいないのだから。ラグビー精神的には、ENG・5番を罰すべきだ。ところが、驚いたことに、まずENG・5番にイエロー、次にAUS・4番にレッドが示された。空気を読む・「喧嘩両成敗」はニッポンのお家芸だと思っていたのだが…
この試合、67分には㈰ボールを持ってランしているAUS・7番にENG・8番がタックル ㈪AUS・7番はレフリーにTMOで見るようにとの仕草をしている ㈫TMOでENG・8番にイエローが出される。選手のTMOアピールが日常化してきている。なんとなく寂しい。
これに対して、RSA/WALの笛は見ていて、痛快、小気味良かった。もちろん、WALサポーターからすれば憤懣やるかたない気になっているのかもしれないが… レフリーが自らの目で見た瞬間に、問答無用、不法行為に対して毅然とイエローを情け容赦なく連発する。後半の後半の一連のシーン、これが見たかった気がする。WALを嫌っているわけではない。しかし、WALの自陣ゴール前でのトライを防ぐためのPは目に余るものがあった。これを「P」どまりにしていたことが、ある意味、WALがトライを取られないチームにしてきた。この試合のレフリング(自陣22m内のトライ妨害目的のPにイエロー)が標準化されれば、これからの試合展開も変わって来る気さえする。
この時期、選手同様、レフリーも試練の時である。次のW杯に向けていいパフォーマンスを示さなければならない。
レフリー・TMOの所属協会、2019W杯参加の有無は次のとおり。
NZ/IRE | AUS/ENG | RSA/WAL | ARG/SCO | FRA/JPN | |
主審 | ENG** | NZ | GEO | AUS* | IRE |
副審 | ENG* AUS | IRE** WAL | AUS* ITA | FRA* FRA | IRE JPN** |
TMO | RSA | NZ | IRE | RSA* | WAL |
(注)「*」:2019W杯、主審・TMOとして参加
「**」:2019W杯、副審として参加
おそらく、4人セットで今夏3試合を回すものと思われる。RSA/WALの主審は、ジョージアのアマシュケリ。2020以降、何試合かの笛を見ているが、ぶれない。トップレフリーになる資質を持ち合わせている。
あらためて、イエローカードとは如何なる存在なのか気になった。そもそも、昔はこんな中途半端なもの(=玉虫色的な存在)はなかった。それが定着すると、たしかに意味あるものとなっている。
WR競技規則・定義の中で「イエローカード(Yellow card):レフリーが、警告を受け一時的退出を命ぜられたプレーヤーに、そのことを示すために見せるカード。」「シン-ビン(Sin-bin):一時的退出を命じられたプレーヤーがその中にとどまっていなければならない、競技区域外の指定された区域。」と規定されている。
「一次的退出」者が出ている間、どうプレーするのか、これが勝敗を分けることがある。上記のAUS/ENG、RSA/WALはその典型的な試合だったのかもしれない。2023W杯に向けての重要な教訓が得られそうな試合であった。
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(参考)7月第1週5試合の各チームのリスタート数
NZ/ IRE | AUS/ ENG | RSA/ WAL | ARG/ SCO | FRA/ JPN | ||||||
KO | 4 | 7 | 6 | 6 | 8 | 6 | 5 | 7 | 5 | 9 |
S | 9 | 4 | 5 | 4 | 2 | 5 | 9 | 7 | 7 | 5 |
LO | 9 | 17 | 12 | 12 | 12 | 13 | 9 | 13 | 12 | 9 |
PK | 10 | 14 | 13 | 13 | 14 | 7 | 10 | 10 | 10 | 14 |
FK | 1 | 2 | 1 | 0 | 2 | 0 | 2 | 2 | 1 | 1 |
DO | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 | 0 | 2 | 1 | 0 |
計 | 34 | 44 | 38 | 35 | 38 | 34 | 35 | 41 | 36 | 38 |
この数値だけを見比べてみると、大差ないと感じる。どうだろうか。
令和4年7月9日
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