2022年7月9日土曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 136

2019 W杯・備忘録 136
  一時的退出 〜
 
 先週末、北半球(というか欧州六か国のうちの4チーム)対南半球4チームの「南北対決」と日仏戦の5試合が行われた。南北対決はいずれも「南」が勝利。点数は次のとおり。
 
 
NZ/IRE
AUS/ENG
RSA/WAL
ARG/SCO
FRA/JPN
勝者
   42
   30
   32
   26
   42
敗者
   19
   28
   29
   18
   23
 
 ペナルティを犯した数は次のとおり
 
NZ/IRE
AUS/ENG
RSA/WAL
ARG/SCO
FRA/JPN
勝者
   14
   13
    7
   10
   14
敗者
   10
   13
   14
   10
   10
 
 「ディシプリン」は世界共通語になった。NZ/IREFRA/JPNPの数が勝者・敗者同数というのも興味深い。
 「カード」に関しては、千差万別。NZIRE:イエロー1、AUS/ENG:レッド1・イエロー3RSA/WAL:イエロー4が出された。試合順の具体的なプレーは以下のとおり。
 
時間
対象選手
対象行為
TMO
78
NZ17
チームとしての反則の繰り返し
Y
×
33
ENG5
不正なプレー(髪を引っ張る)
Y
33 
AUS4
不正なプレー(頭突き)
R
67
ENG8
ハイタックル
Y
80
AUS10
故意のノックオン
Y
×
37
WAL10
トライの妨害
Y
×
63
WAL19
トライの妨害←ADを出してトライ
Y
×
73
WAL14
トライの妨害
Y
×
74
WAL17
トライの妨害→ペナルティ・トライ
Y
×
 
 AUS/ENGは、033分まで15人対15人、その後141420分間、141527分間であった。
 RSA/WALは、一時的に1512になっている。
 
 AUS/ENG、現代を象徴するかのような「カード」の出され方。テクノロジーの活用と「コレクトネス(≒お行儀の良さ≒偽善…)」。
その典型例を見た気がしたのが33分。㈰ENGボール・ランアウト→モール ㈪AUS4番が割って入ろうとしてENG5番が後頭部の髪をひっぱって剥がそうとする ㈫ボールが出て展開している(=プレーは進んでいる)が二人は小競り合い ㈬別れ際にAUS4番がENG5番に軽い頭突き ㈭ENG5番がびっくりした表情を見せタッチジャッジにアピール ㈮ゲームが止まったところでTMO という流れであった。「原因を作った者(ENG5番)」と「行為を行った者(AUS4番)」、どちらを罰するかは永遠の課題なのかもしれない。プロ化前であれば、笑って済ませていた小さなアクシデントであったろう。どちらも痛んでいないのだから。ラグビー精神的には、ENG5番を罰すべきだ。ところが、驚いたことに、まずENG5番にイエロー、次にAUS4番にレッドが示された。空気を読む・「喧嘩両成敗」はニッポンのお家芸だと思っていたのだが… 
 この試合、67分には㈰ボールを持ってランしているAUS7番にENG8番がタックル ㈪AUS7番はレフリーにTMOで見るようにとの仕草をしている ㈫TMOENG8番にイエローが出される。選手のTMOアピールが日常化してきている。なんとなく寂しい。
 
 これに対して、RSA/WALの笛は見ていて、痛快、小気味良かった。もちろん、WALサポーターからすれば憤懣やるかたない気になっているのかもしれないが… レフリーが自らの目で見た瞬間に、問答無用、不法行為に対して毅然とイエローを情け容赦なく連発する。後半の後半の一連のシーン、これが見たかった気がする。WALを嫌っているわけではない。しかし、WALの自陣ゴール前でのトライを防ぐためのPは目に余るものがあった。これを「P」どまりにしていたことが、ある意味、WALがトライを取られないチームにしてきた。この試合のレフリング(自陣22m内のトライ妨害目的のPにイエロー)が標準化されれば、これからの試合展開も変わって来る気さえする。
 
 この時期、選手同様、レフリーも試練の時である。次のW杯に向けていいパフォーマンスを示さなければならない。
 レフリー・TMOの所属協会、2019W杯参加の有無は次のとおり。
 
 
NZ/IRE
AUS/ENG
RSA/WAL
ARG/SCO
FRA/JPN
主審
ENG**
NZ
GEO
AUS
IRE
副審
 
ENG
AUS
IRE**
WAL
AUS
ITA
FRA
FRA
IRE
JPN**
TMO
RSA
NZ
IRE
RSA
WAL
(注)「*」:2019W杯、主審・TMOとして参加
   「**」:2019W杯、副審として参加
 
 おそらく、4人セットで今夏3試合を回すものと思われる。RSA/WALの主審は、ジョージアのアマシュケリ。2020以降、何試合かの笛を見ているが、ぶれない。トップレフリーになる資質を持ち合わせている。
 
 あらためて、イエローカードとは如何なる存在なのか気になった。そもそも、昔はこんな中途半端なもの(=玉虫色的な存在)はなかった。それが定着すると、たしかに意味あるものとなっている。
 
 WR競技規則・定義の中で「イエローカード(Yellow card):レフリーが、警告を受け一時的退出を命ぜられたプレーヤーに、そのことを示すために見せるカード。」「シン-ビン(Sin-bin):一時的退出を命じられたプレーヤーがその中にとどまっていなければならない、競技区域外の指定された区域。」と規定されている。
 
 「一次的退出」者が出ている間、どうプレーするのか、これが勝敗を分けることがある。上記のAUS/ENGRSA/WALはその典型的な試合だったのかもしれない。2023W杯に向けての重要な教訓が得られそうな試合であった。
 
********************
 
(参考)7月第1週5試合の各チームのリスタート数
 
 
  NZ/ IRE
AUS/ ENG
RSA/ WAL
ARG/ SCO
FRA/ JPN
KO
  4
  7
  6
  6
  8
  6
  5
  7
  5
  9
S
  9
  4
  5
  4
  2
  5
  9
  7
  7
  5
LO
  9
17
12
12
12
13
  9
13
12
  9
PK
10
14
13
13
14
  7
10
10
10
14
FK
  1
  2
  1
  0
  2
  0
  2
  2
  1
  1
DO
  1
  0
  1
  0
  0
  3
  0
  2
  1
  0
 計
34
44
38
35
38
34
35
41
36
38
 
 この数値だけを見比べてみると、大差ないと感じる。どうだろうか。
 
令和479 

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