2019 W杯・備忘録 92
~ 第1回大会準決勝 FRA/AUS ~
1987年6月17日、シドニー・コンコードオーバルスタジアム(定員:2万5千人)に1万7,768人の観客を集めて、第1回大会準決勝 FRA/AUS戦が行われた。映像で見返すと、空席が目立つ。
この大会の優勝候補筆頭はAUSだった。W杯が始まるまでは、北半球と南半球の強豪国のテストマッチが個別に春と秋に行われるだけで、一同に会して大会が開かれることはなかった。もちろん現在のような「ランキング」も存在していなかった。そんな状況下、AUSの独自の・革新的な(≒ボールを積極的に動かし、かつ、選手のポジショニングを計画的に事前に組み立てる)戦術が人びとの関心を引いていた。
試合経過は次の通り。FRAの得点は「○」、失点は「●」、FRAが得点を逃したのは「×」、AUSが得点を逃したのは「*」。
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分 |
得点 |
種類 |
起点となった(リ)スタート |
● ● × * ● * ○ |
5 8 14 25 30 37 39 |
0 – 3 0- 6 0- 9 6- 9 |
DG PG PG DG PG PG T+G |
FRAのキックオフで試合開始。 FRA陣内AUSラインアウトから9→10・DG FRAのP(モール・コラプシング)。AUS・10・PG AUSのP(オブストラクション)。FRA・14・PGを外す。 FRA陣内AUSラインアウトからモール・9→10・DG、チャージされる。 FRAのP(スクラムでの9・オフサイド)。AUS・10・PG FRAのP(オブストラクション)。AUS・10・PGを外す。 AUSゴール前のAUSラインアウト。AUSがキャッチしモールになりかかるがFRA・4がもぎ取りAUS・9を跳ね飛ばしタッチライン傍にトライ。14・G。 |
○ ● * * ○ ○ ● × ● ○ ○ |
51 53 57 58 60 67 70 72 74 77 79 |
12- 9 12-15 18-15 21-15 21-21 21-24 24-24 30-24 |
T+G T+G DG PG T+G PG T+G DG PG PG T+G |
FRAラインアウト。5人並んで最後尾の6がキャッチ→9→10←12。12がAUS・10にパスしてしまうもラックに。FRA・4がピックして9が縦をついてラック。再び4がピック&ゴーしてラック。9→10→13。13が内に切れ込んでトライ。14・G。 AUSラインアウト。タップして9→10→17(ラック)9→10が縦をついて20mラン→14←15・トライ。10・G FRAラインアウトをAUSスチールし9→10・DGをチャージ。 FRAのP(ラックでのハンド)。22mライン上ポスト正面のPGを10がポストに当てて外す。 FRA22m内のFRAスクラム9→15ハイパント・AUSキャッチしてハイパント・FRAキャッチするもモール~ラックへ。AUS・9→10がつかまりラック。FRA・9→12(ラン)→15(ラン)→11・トライ。14・G。 AUSのP(ラインオフサイド)。FRA・14・PG。 FRAゴール前1mのAUSラインアウト。タップしラックに。AUS・18ラックサイドをついてトライ。10・G。 FRAキックオフ・AUSインゴールへ。AUSタッチダウンしAUSドロップアウト。短いキックでFRAラックから9→10・DGを外す。 FRAのP。AUS・PKをFRA22m内ライン際に蹴る。FRA・15カウンターを狙い→11→14がつかまりラックでFRAのP。AUS・10・PG。 FRAのキックオフ・AUSインゴールへ。AUSタッチダウンしAUSドロップアウト。これがタッチに出てFRAラインアウト。7人並んで最後尾の6がキャッチし→2→10(ラック)9→13→14。14がライン際でハイパント。これにレイトチャージに入りAUSのP。FRA・14・PG。 FRA陣内AUSラインアウト。AUSタップし9→10(DGをできずに)→17→18(ラック)FRAボールになり9→15→11・ハイパント。FRA・4がよく追いかけラック。FRA・7がピックし6→1(タックルにあうも)→3→8→12(つかまり)→9→11(つかまり)8が拾って15へ。15がゴール隅にトライ。14・G。 |
(注)「→」は順目のパス。「←」は内返しのパス。
五転した試合、しかも、後半の40分の間に。得点経過だけを見ても面白い。両チーム合わせて、前半20分までに6点、前半の後半に9点、後半の前半に18点、後半の後半に21点が入れられた。
戦術的入れ替えによる選手交替は認められておらず、負傷交替だけが認められていた時代。この試合では前半8分、21分にAUSのFWが負傷交替している。両チームの先発メンバーが格闘し、お互いの体力を削っていく。最後は「意地の張り合い」の様相に…
得点シーンを中心としたダイジェストで見ると実に面白い。ところが80分を通して見てみると、この試合も「ぶつ切り」の試合であった。 この試合では、S:21回、L:52回、P:18回であった。これにリスタートのキックオフ:12回、フリーキック:2回、ドロップアウト:8回を加えると、レフリーの笛が吹かれて、試合が止められたのは、116回。ほぼ40秒に1回は試合が止まっている。これは、前回の備忘録で取り上げた決勝の数字とほぼ同じである。ラグビーの面白さとは何か? あらためて考えさせられる。近未来に、今よりもプレーが継続され・インプレーの時間が長くなれば、現在のラグビーも過去のものとなり、つまらない「代物」と化すのだろうか…
後半70分に21-21の同点に、77分に24-24の同点になっている。この時代はトライ=4点だった。仮に今と同じようにトライ=5点とすると、21-21は24-23のFRAリードに、24-24は27-26のFRAリードに、最終結果30-24(=1トライ・1ゴール差)は34-26(=1トライ・1ゴールでは追い付かない差)となる。トライの重みは「4点」より「5点」の方が適している気がする。
FRAチームの11人がボールに触れたと語り継がれている試合を決めた最後のトライ、痛快なシーンである。今回、じっくり見ていて、AUSボールがラックでFRAボールになる起点、どうもFRA・13の倒れ込みによるボール獲得だ、という気がした。当時のラックの裁き方がどうだったか定かでないが、かなりグレーなプレーだと思われる。そうでありながら、試合後、AUS・HCは「ラグビーの栄光(the glory for the rugby)」とFRAを讃えた。古き良き時代の最良質な試合だった。
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アマチュアの時代。FRAの選手たちはエコノミークラスでの、役員はファーストクラスでの移動だった。選手たちはアマチュア、もちろん「職に就いていて」「休暇を取って」の大会参加。だから、選手たちには「休業補償」として金銭が支払われていた。
この試合で爆発したFRA・4・ロリオー。必ずと言っていいぐらい「消防士・ロリオー」として書かれている。
手探りで始まったW杯。フランス選手団・選手は26人で構成されていて、NZに到着し直後の練習は、ホテル傍のグランドで。対面をつけた試合形式の練習を行うために、近所の公園にいたNZ人を練習に参加させる。そして、この「素人」のNZ人のタックルで正ウィングがケガをして、追加の選手を本国から呼び寄せることに。今では考えられないようなことが起きていた。
令和3年8月28日
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