2019W杯・備忘録 89
~ LIO/RSA(2) ~
2021ライオンズRSA遠征・テストマッチ第2戦が7月31日に行われた。
試合経過は次の通り。RSAの得点は「○」、失点は「●」、得点を逃したのは「×」。
分 | 得点 | 種類 | 起点となった(リ)スタート | |
〇 ● ● × ○ ● | 4 9 15 17 22 24 30 35 | 3- 0 3- 3 3- 6 6- 6 6- 9 | PG PG PG PG TMO¹ TMO² PG TMO³ PG | RSAのキックオフで試合開始。 LIOのP(オフサイド)。RSA・10がPG。 RSA・8のP(ノーバインドタックル)。LIO・10がPG。 RSAのP(オフサイド)。LIO・10がPG。 LIOのP(オフサイド)。RSA・10が外す。 TMOでLIO・11の足払いを確認。イエローカード。 TMOでRSA・14の危険なタックルを確認。イエローカード。 LIO・15のP(ノットリリース)。RSA・10のPG。 オン・フィールド・デシジョン(以下、「OFD」)はノートライでTMO。ノートライでPに戻る。 RSA・2のP(ラック)。LIO・10のPG。 |
〇 × ○ ○ ○ ○ | 44 50 59 70 75 76 80 | 11- 9 18- 9 21- 9 24- 9 27- 9 | T PG TMO⁴ T+G PG PG TMO⁵ PG | RSA・10のショートパントを11がキャッチしT。Gは外す。 RSA・21がP(ハンド)。LIO・10が外す。 OFDはトライでTMO。トライが認められる。 RSA・9のゴロパントを13が押さえる。10がG。 LIOのP(スクラムコラプシング)。RSA・10がPG。 LIOのP(スクラムコラプシング)。RSA・10がPG。 RSA・5のLIO・22に対するタックルの危険度。問題なし。 LIOのP(オフサイド)。RSA・10がPG。 |
RSAが2019W杯優勝時を彷彿とさせる力強さでノートライに抑えての完勝。特に、後半は完封している。
Pについて、第1戦は次の通り。
0-20min | 20-40min | 40-60min | 60-80min | Total | |
LIO | 4 (2) | 3 (2) | - | 1 | 8 (4) |
RSA | 2 (1) | 4 | 5 (2) | 3 (2) | 14 (5) |
(注)下段の()内の数字は、相手チームにPGを決められた数。
これに対して、第2戦は次の通り。
0-20min | 20-40min | 40-60min | 60-80min | Total | |
LIO | 3 (1) | 3 (1) | 2 | 7 (3) | 15 (5) |
RSA | 5 (2) | 4 (1) | 1 | - | 10 (3) |
両チームの後半のPが、二試合で真逆になっている。その原因の大きなものは、フィジカル・フィットネスであろう。ただし、このシリーズ、マッチオフィシャルに対する両チームからの批判・非難が大きく影響している感がある。まさに場外乱闘…
この試合を報じたMidolの記事では、前半35分のRSA・9のLIO・9に対するタックルはレッドカードもので、これを見過ごしたことが試合を決めたとしている。それも一理。では、それ以外にミスジャッジがなかったのかというと、相当数あったことも事実。
今回の3試合の主審を務める第1試合:ベリー(AUS)、第2試合:オキーフ(NZ)、第3試合:レイナル(FRA)は、2019W杯の予選プールで主審を務めたものの決勝ラウンドの笛は任されなかった。それぞれ、明らかなミスが取りざたされていた。オキーフは、M3:FRA/ARG、M18:JPN/IREの主審であった。未だ成熟途上のレフリーである。W杯後、チーム同様、各レフリーも次期大会に向けて成長する機会が必要であった。そこにコロナが発生した。彼らは彼らでコロナの影響を大きく受けている。それがこのシリーズでも如実に出ている。一口に言って、「下手な笛」、困ったものだ。
第3戦、レイナルは、フランス人レフリーの中でも「癖のある笛を吹く」印象が強い。どんな展開になるのか、楽しみである。
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マッチオフィシャルに対する批判をMidolの記事から抜き出すと次の通り。
1. ガットランドLIO・HCが、第1戦の前の記者会見で、RSAのヨンカーがTMOを務めることにクレームをつける。クレームの内容は、①7月17日のLIO/RSA-A戦で、デクラークの危険なタックルを見過ごしたこと ②ヨンカーがRSA人であること。
2. 第1戦終了後、SNS上で、Jaco Johan名で、RSAに不利な判定シーンのビデオ・クリップが流される。英メディアは、エラスムスRSA・HCが偽名を使って発信していると批判。
3. 7月29日(木)の記者会見で、エラスムスは次のように反論。
(1) ヨンカーがRSA人だからTMOにふさわしくないという批判は容認できない。
(2) Jaco Johanは、自分ではない。彼の動画はよく出来ているので見ている。
(3) RSAドクターから第1戦コルビが大けがをする危険があったとの報告を受けた。(注:60分、LIO・9がジャンプキャッチするコルビの足を引きずり落とし倒している。これは明らかにカードもの。ただし、試合ではPにもならず何のお咎めもなし。)絶対に青少年があんな危険なプレーをしないようにしなければならない。
(4) 第1戦のLIOの勝利への不満は一切ない。
(5) 第1戦の翌日・日曜日に、レフリングについての疑問点についてビデオ・クリップを添えてWRに質問したが、やっと返事が返ってきたのが火曜日だった。これは6か国対抗と同じ扱いらしい。ただし、次の試合のプレーに反映させるためには、遅すぎる。
4. エラスムスは、第1戦のレフリングの問題点・36シーンを1時間余りの動画に編集し、SNS上で公開。
5. 8月2日(月)、WRはエラスムスとRSA協会を規律委員会にかけるとの声明を発表。
(注:WRのホームページに掲載されたリリースからは『両チームからマッチオフィシャルの「選定」「判定」「態度」に対する公開での非難(public criticism)が出されたのは容認できない。』として、「喧嘩両成敗」的に両チームを断じた上で、RSAは「度が過ぎている」として規律委員会にかける、と読み取れる。)
この経緯を踏まえて、あらためて第1戦を見返してみる(RSA寄りに見てしまう)と、たしかに次々に判定がおかしく見えてくる。特に、エラスムスが3-(3)で指摘したプレーはその通り。
そして、第2戦のレフリー団の行動を見ていると、明らかにエラスムス動画の効果が出ている。たとえば、第1戦、レフリーはLIOのキャプテンには優しく・丁寧に、RSAのキャプテンには冷たく・素っ気なく接しているのが、第2戦は、どちらのキャプテンにも丁寧に説明している。
もちろん、ニッポン流に「世間を騒がせたら」ごめんなさい、で「蓋をする」ことも一つの解決策なのかもしれない。ただし、それではレフリングの向上に結び付かない。
一方、正否を明らかにすることを旨とすれば、エラスムスが指摘した問題点・36シーンが本件の「肝」となる。そして、エラスムスは準備万端で公開しているので、エラスムスの主張そのものを間違いだとすることは困難であろう。
かつてエディー・ジョーンズがエラスムスを“Cunning”と称した面目躍如、どう推移していくのか。みんなで「よりよいレフリング」のための建設的な議論が積み重ねられることを願っている。
令和3年8月7日
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