2022年10月1日土曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 148

                                                 2019 W杯・備忘録 148

  公平性・一貫性 (その2)〜
 
先週末で2022ザ・ラグビー・チャンピオンシップ全12試合(以下、「今シリーズ」)が終了した。結果としては、NZが優勝した。それが記録され記憶に残るのであろう。
 
 
P
W
D
L
PF
PA
TF
TA
TB
LB
+/-
BP
Pts
1NZ
6
4
0
2
195
128
24
11
2
1
67
3
19
2RSA
6
4
0
2
164
119
20
14
2
0
45
2
18
3AUS
6
2
0
4
142
194
17
25
1
1
-52
2
10
4ARG
6
2
0
4
143
203
15
26
1
0
-60
1
8
 
強いから勝ったのか? どのチームも強くもあり弱くもあった気がする。実力差がどんどんなくなってきている。それは、NZが、相対的に、力を落とし(あるいは、他のチームほど成長しなかったと言った方が正しいのかもしれない)、ARGが力をつけた(あるいは、他のチーム以上に成長した)からなのだろう。以前に比べて「勝負は時の運」めいてきた。
 
その一つの要因がレフリング。今シリーズ、すべて違うレフリーが笛を吹いた。当然のことながら十人十色(1212色)、当たり外れがある。
大相撲の行司が、「立行司」「三役行司」「幕内行司」「十両行司」…と格付けされているように、ラグビーのレフリーにも「格」があるなぁと感じてしまう。そして、格下のレフリーが格上の試合を吹くと試合が壊れてしまう。R5R64試合を見ていて痛感した。
 
各チームの笛を吹かれた「P」の数は次のとおり。
 
  R1
  R2
  R3
  R4
  R5
  R6
 計
NZ
  12
  12
  14
  11
  13
  13
  75
RSA
   7
   7
   9
  13
  16
  16
  68
AUS
  16
  13
  16
  13
  11
  16
  85
ARG
  14
   9
  12
  12
  18
  22
  87
 
プロ化(=選手はプロ、レフリーは「?」)の時代。選手の方が競技規則を熟知している。R5、R6の各試合、選手はレフリーを信頼せず(できず)・面従腹背、レフリーは「その任にあらず」というか「荷が重すぎて」権威を振り回し・試合を壊していた。特に、RSA/ARG戦の「P」の数、特異値と言ってもいい。もう一つの表われがイエローカード。
 
各チームの突きつけられたイエローカードの数は次のとおり。(RSAR1(1*)」はレッドカードで外数)
 
  R1
  R2
  R3
  R4
  R5
  R6
  
NZ
   0
   1
   1
   1
   1
   0
   4
RSA
  (1*)
   1
   1
   2
   2
   2
   8(1*)
AUS
   0
   1
   2
   1
   3
   2
   9
ARG
   1
   0
   0
   1
   2
   4
   8
 
イエローカードは今シリーズ「29」出ている。そのうち、R5R6で「16」。「乱れ飛んだ」とでも形容できよう。象徴的である。そして、ペナルティトライ。
 
今シリーズ、ペナルティトライは「6」。内容は次のとおり。
 
カード
原因
イエロー
R1
ARG/AUS
ラインアウト・モール・コラプシング
  有
R5
ARG/RSA
ラック・オフサイドの位置からタックル
  有
R5
ARG/RSA
ゴール前ラックでネックロール
  有
R6
NZ/AUS
ラインアウト・モール・コラプシング
  有
R6
RSA/ARG
ラインアウト・モール・コラプシング
  有
R6
RSA/ARG
ラインアウト・モール・コラプシング
  有
 
「ラインアウト・モール・コラプシング」と書いたが、詳細に書くと㈰一方のチーム(以下「甲」)が「P」を犯し ㈪相手チーム(以下「乙」)がPKでタッチに蹴り出し ㈫甲陣内22m内での乙ボールラインアウトになり ㈬乙がラインアウトを獲得し ㈭乙がモールを組み ㈮モールが甲ゴールラインに向かって前進し ㈯乙が「P」で止める 一連の流れである。上記の4事例のうち、最初の事例は㈯の「P」が二回目で、R6:3事例は㈯の「P」が一回目でペナルティトライが相手に与えられた。
R2RSA/NZ50分からのNZゴール前の攻防では㈯のNZの「P」が二回あり、二回ともレフリーが注意するだけで終わった。このシーンを記憶している人びとはどれぐらいいるのだろうか。あのシーンで上記の試合同様、ペナルティトライ(+イエロー)が出されていれば、その後のワールドラグビー界は大きく変わったと思われる。少なくとも、今シリーズの「公平性・一貫性」は損なわれている。
インプレー中は「ありうること」に満ちている。それが「あったこと」と「ありえたこと」に分かれる。「あったこと」は必ずしも「あるべきこと」「あってほしいこと」ばかりではない。「あったこと」だけが記録され「ありえたこと」は忘れられてゆく。歴史とは、こういう偶有性の中の事実の集積であり、「ありえたけれども起こらなかったこと」は記憶から消し去られてゆくのであろう。
かつて、楕円球(のバウンド)がラグビーの不確実性の象徴としてよく語られていた。近年、あまり聞かなくなったのは気のせいなのだろうか。
 
各チームの犯した「P」を対戦相手別にすると次のようになる(横方向に犯した数、縦方向に与えられたPKの数)
 
NZ
RSA
AUS
ARG
  計
NZ
    @
   24
   26
   25
   75
RSA
   14
   @
   22
   32
   68
AUS
   27
   29
   @
   29
   85
ARG
   24
   40
   23
   @
   87
  計
   65
   93
   71
   86
  315
 
NZ:自ら犯した「P」が75、相手が犯したのが「65」。相手を上回る「P」でありながら、勝っている。NZらしい象徴的な数字である。試合ごとに見ていくと、相手より多い「P」が4試合:R1・負け R2・勝ち R3・負け R5・勝ち。
RSAだけが自ら犯した「P」(=68)より相手の犯した「P」(=93)が多い。
AUS:相手より少ない「P」の試合はR5AUS/NZのみ。
ARGNZAUSに対しては、相手より少ない「P」しか犯していない。めきめき進化している。
 
各チームの「イエローカード」数を表にすると次のようになる。
 
NZ
RSA
AUS
ARG
  計
NZ
    @
    1
    1
    2
    4
RSA
    11*
   @
    3
    4
    81*
AUS
    5
    3
   @
    1
    9
ARG
    1
    6
    1
   @
    8
  計
    7
   10
    5
    7
   29
 
NZの勝因の一つが「カード」の少なさ。これがなぜなのか、NZ、本当に強いのか、気になるところである。
 
世界は狭くなり、様々な情報が瞬時に駆け巡る。それもあって、各チームの実力差が接近してきた気がしている。そして、予選リーグは、様々な「格」のレフリーが笛を吹く。「カード」「ペナルティトライ」の重みは増し、不確実性も増してきている。来年のW杯、この4か国のどこが優勝しても不思議ではない。一方で、どのチームが予選リーグで敗退しても不思議ではない。
令和4101

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