2019 W杯・備忘録 144
~ 負け癖 ~
またまた、オールブラックスが負けた。弱いから負けた。こう負け続けるのを見ていると、負け癖がついた気がする。先週末のNZ(18-25)ARG戦を見ていて、負け癖、いろいろな要素が複合的に絡み合っているのだろうけど、肝心な時に最適な選択ができない、というのも大きな要素ではないかと感じた。
プレー選択という意味では、相手がPを犯した後、どうリスタートするかは冷静に考えて選択できる機会である。相手がPを犯し、PKを得た時、選択肢は大きくは次の四種類。①タッチに蹴り出して・地域を獲得(前進)し・マイボールラインアウトで再開する ②PG(=3点)を狙う ③スクラムを選択する ④クイックリスタート
Pの数はよく解説でも取り上げられる。一方で、PKを得たチームがどのリスタートを選択するかを掘り下げての解説はあまりない。この試合、Pの数はNZ:14、ARG:12。相手よりPの数が多いからだけで負けたとは考えられない。現在のこのレベルの試合では、相手陣での相手のPは3点につながる可能性が高い。その観点でこの試合のPに関してNZ側から見ると、
NZのPのうち、自陣でのものが7、そのうち6回PGを狙われ・すべて成功し・18失点。
ARGのPのうち、自陣でのものが8、そのうち3回PGを狙い・2回成功し・6得点。
この試合、スクラム機会はNZボール:3、ARGボール:7。NZボールの3回はすべてNZがボール投入後に押してARGがPを犯している。一方、ARGボールでは1回ARGが押すもアングルでのPを犯している。スクラムで見る限り、NZが完勝している。ただし、スクラム機会数で見てみると、NZのハンドリングエラーが多いとも言える。
この試合、ボール保持率は、NZ:61% ARG:39%。テリトリーは、NZ:71% ARG:29%。つまり、NZがほぼ一方的に相手陣でボールを回している。パス数は、NZ:179 ARG:85。ランメーターは、NZ:418 ARG:187。
でありながら、トライを取り切れない。攻撃が単調だった。見ていて「つまらない」。フェーズを重ねて、最後にターンオーバーかPでARGボールになる、という繰り返し。
それを象徴しているのが、「Turnovers conceded」NZ:10 ARG:5 「Turnovers Won」
NZ:1 ARG:7。
この試合のトライは、NZ:2(①10分:ARGのPで得たPKをタッチに蹴り出し、ARGゴール前のマイボールラインアウトからモールを組み・そのままトライ ②31分:センターライン付近のARGボール・ラインアウトで投入されたボールが並んでいる選手を越えて抜け・NZ2が拾い・大外まで回してトライ)、ARG:1(46分:ARG・キックオフをNZ22mあたりに蹴り・ARG14がタップして・ARG6が落ちてきたボールを胸に入れそのままゴールラインまで走り切ってトライ)。
NZの最初のトライと同じような状況(=ARGのP→NZがPKをタッチに蹴り出す→ARGゴール前のNZボール・ラインアウト)が、リードされてから、51分・59分・74分・78分と4回もあった。そして、いずれもミスから(51分:自らのP、59分:投入ミス、74分:相手スチール、78分:ノットストレート)得点できなかった。
一方、ARGのキックオフは、この試合5回。いずれも、ARGから見て右サイド:NZ22mライン付近に蹴っている。12分:2回目のキックオフでARG14がタップするもノックオンを取られる。これと酷似しているのが46分:5回目のキックオフでトライに結び付いた。
試合中の修正力の差なのだろうか。
中継を見ながら、アレと思ったのが、15-12でリードしての後半開始早々、NZ陣内でのARGのPでNZがPGを選択したこと。もちろん、いろいろな解釈がありうるだろうし、チーム内でどんな決め事があったのかもわからない。定跡は、キックを選択して・タッチに蹴り出し・相手陣マイボールラインアウトでの再開、であろう。おそらくほとんどのチームがそう選択するだろう。であるにも拘わらず、なぜPGを選択したのか?もちろん、外れたのは、結果論かもしれない。ただ、ARGの選手に「NZは自分たちを恐れていて、得点を刻もうとしている」と感じさせたであろう。残り時間が少なくなっていて、2点差以内でリードされていれば、PGを選択する可能性は高まる。その時を想定して、練習の意味も込めて選択したのだろうか…
この試合のそれぞれのPについて表にすると次のようになる。
分:Pが吹かれた時間 得点:Pが吹かれた時点でのNZから見た得点 *:Pを犯したチーム 場所:それぞれのゴールラインからの目分量のメーター数(例:「A42」はARGゴールラインから42m) #:Pの原因(Of:オフサイド DT:危険なタックル S:スクラム Na:ノットロールアウェイ HT:ハイタックル Rse:ラックサイドエントリー Nb:ノットリリースザボール NT:ノーボールタックル) 選択:PGかキックかなど
分 | 得点 | * | 場所 | # | 選択 | 結果 |
1 | 0- 0 | A | A42 | Of | PG | ×:届かず、Aがタッチキック |
5 | 0- 0 | N | N42 | Of | PG | 〇(0-3) |
9 | 0- 3 | A | A38 | DT | Kick | N・LO(A10)→モールでトライ(5-3) |
13 | 5- 3 | A | N20 | S | Kick | N・LO(A40) |
16 | 5- 3 | N | N45 | Na | Kick | A・LO(N10) |
17 | 5- 3 | N | N7 | Of | PG | 〇(5-6) |
18 | 5- 6 | N | A20 | HT | Kick | A・LO(A20) |
23 | 5- 6 | A | N35 | S | Kick | N・LO(A24) |
24 | 5- 6 | N | A24 | Rse | Kick | A・LO(N35) |
27 | 5- 6 | A | A20 | Na | PG | 〇(8-6) |
34 | 15- 6 | N | N49 | Nb | PG | 〇(15-9) |
36 | 15- 9 | N | A37 | Of | Kick | A・LO(N17) |
38 | 15- 9 | N | N17 | NT | PG | 〇(15-12) |
40 | 15-12 | N | A30 | Na | Kick | A・LO(N35) |
42 | 15-12 | A | N45 | Nb | PG | ×→A・DO |
46 | 15-12 | A | A17 | NT | PG | 〇(18-12) |
51 | 18-19 | A | A20 | S | Kick | N・LO(A5)→次項のNZのP |
52 | 18-19 | N | A5 | Ob | Kick | A・LO(A39) |
55 | 18-19 | N | N42 | Nb | PG | 〇(18-22) |
59 | 18-22 | A | A40 | Of | Kick | N・LO(A15)→投入したボールが抜けて、Aボールに |
64 | 18-22 | N | N30 | NT | PG | 〇(18-25) |
68 | 18-25 | N | A10 | Rof | Kick | A・LO(A38) |
70 | 18-25 | N | CL | MC | Kick | 反則の繰返しでN6にイエロー A・LO(N35) |
71 | 18-25 | A | N30 | Rof | Kick | N・LO(A41) |
74 | 18-25 | A | A45 | S | Kick | N・LO(A20)→Aにスチールされる |
78 | 18-25 | A | A22 | HT | Kick | N・LO(A7)→ノットストレートでA・スクラムに |
こうして書いていくと、「NZ、弱いなぁ」と再確認してしまう。寂しいかぎりだ。やはり、オールブラックスは輝いていてほしい。負け癖がつかないことを祈るばかりだ。
( 参考-2 )
2022-8-27 NZ/ARG KSLPFD図
「分」は得点時間
大文字はNZ 小文字はARGのボール支配
K:キックオフ
S:スクラム
L:ラインアウト
P:ペナルティ (PG*はPGを狙って外したもの)
F:フリーキック
D:ドロップアウト (D*はゴールライン・ドロップアウト)
- :関連するリスタート
分 | 得点 | |
6 10 17 28 31 35 39 | k p-PG* L l P-pg K p-L-T k S-p-L P-l P-pg K P-l s L L S-p-L P-l p-PG k l l TG k P-pg K P-l P-pg | 0- 3 5- 3 5- 6 8- 6 15- 6 15- 9 15-12 |
46 46 56 65 | K P-l p-PG* d p-PG k tg K S-p-L-P-l s P-pg K s p-L s l s P-pg K P-l-P-l p-L s-p-L L p-L s | 18-12 18-19 18-22 18-25 |
NZ、46分以降、得点できていない。単に、歯車が嚙み合っていない、ということだけではなさそうだ。
令和4年9月3日
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