2022年9月3日土曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 144

2019 W杯・備忘録 144
  負け癖 ~
 
またまた、オールブラックスが負けた。弱いから負けた。こう負け続けるのを見ていると、負け癖がついた気がする。先週末のNZ18-25ARG戦を見ていて、負け癖、いろいろな要素が複合的に絡み合っているのだろうけど、肝心な時に最適な選択ができない、というのも大きな要素ではないかと感じた。
 
プレー選択という意味では、相手がPを犯した後、どうリスタートするかは冷静に考えて選択できる機会である。相手がPを犯し、PKを得た時、選択肢は大きくは次の四種類。①タッチに蹴り出して・地域を獲得(前進)し・マイボールラインアウトで再開する ②PG(=3点)を狙う ③スクラムを選択する ④クイックリスタート 
 
Pの数はよく解説でも取り上げられる。一方で、PKを得たチームがどのリスタートを選択するかを掘り下げての解説はあまりない。この試合、Pの数はNZ:14、ARG:12。相手よりPの数が多いからだけで負けたとは考えられない。現在のこのレベルの試合では、相手陣での相手のP3点につながる可能性が高い。その観点でこの試合のPに関してNZ側から見ると、
NZPのうち、自陣でのものが7、そのうち6PGを狙われ・すべて成功し・18失点。
ARGPのうち、自陣でのものが8、そのうち3PGを狙い・2回成功し・6得点。
 
この試合、スクラム機会はNZボール:3ARGボール:7NZボールの3回はすべてNZがボール投入後に押してARGPを犯している。一方、ARGボールでは1ARGが押すもアングルでのPを犯している。スクラムで見る限り、NZが完勝している。ただし、スクラム機会数で見てみると、NZのハンドリングエラーが多いとも言える。
 
この試合、ボール保持率は、NZ61% ARG39%。テリトリーは、NZ71% ARG29%。つまり、NZがほぼ一方的に相手陣でボールを回している。パス数は、NZ179 ARG85。ランメーターは、NZ418 ARG187
でありながら、トライを取り切れない。攻撃が単調だった。見ていて「つまらない」。フェーズを重ねて、最後にターンオーバーかPARGボールになる、という繰り返し。
それを象徴しているのが、「Turnovers concededNZ10 ARG5 「Turnovers Won
NZ1 ARG7
 
この試合のトライは、NZ2(①10分:ARGPで得たPKをタッチに蹴り出し、ARGゴール前のマイボールラインアウトからモールを組み・そのままトライ ②31分:センターライン付近のARGボール・ラインアウトで投入されたボールが並んでいる選手を越えて抜け・NZ2が拾い・大外まで回してトライ)、ARG146分:ARG・キックオフをNZ22mあたりに蹴り・ARG14がタップして・ARG6が落ちてきたボールを胸に入れそのままゴールラインまで走り切ってトライ)。
NZの最初のトライと同じような状況(=ARGPNZPKをタッチに蹴り出す→ARGゴール前のNZボール・ラインアウト)が、リードされてから、51分・59分・74分・78分と4回もあった。そして、いずれもミスから(51分:自らのP59分:投入ミス、74分:相手スチール、78分:ノットストレート)得点できなかった。
一方、ARGのキックオフは、この試合5回。いずれも、ARGから見て右サイド:NZ22mライン付近に蹴っている。12分:2回目のキックオフでARG14がタップするもノックオンを取られる。これと酷似しているのが46分:5回目のキックオフでトライに結び付いた。
 
試合中の修正力の差なのだろうか。
 
中継を見ながら、アレと思ったのが、15-12でリードしての後半開始早々、NZ陣内でのARGのPでNZがPGを選択したこと。もちろん、いろいろな解釈がありうるだろうし、チーム内でどんな決め事があったのかもわからない。定跡は、キックを選択して・タッチに蹴り出し・相手陣マイボールラインアウトでの再開、であろう。おそらくほとんどのチームがそう選択するだろう。であるにも拘わらず、なぜPGを選択したのか?もちろん、外れたのは、結果論かもしれない。ただ、ARGの選手に「NZは自分たちを恐れていて、得点を刻もうとしている」と感じさせたであろう。残り時間が少なくなっていて、2点差以内でリードされていれば、PGを選択する可能性は高まる。その時を想定して、練習の意味も込めて選択したのだろうか… 
 
この試合のそれぞれのPについて表にすると次のようになる。
分:Pが吹かれた時間 得点:Pが吹かれた時点でのNZから見た得点 *:Pを犯したチーム 場所:それぞれのゴールラインからの目分量のメーター数(例:「A42」はARGゴールラインから42m) #:Pの原因(Of:オフサイド DT:危険なタックル S:スクラム Na:ノットロールアウェイ HT:ハイタックル Rse:ラックサイドエントリー Nb:ノットリリースザボール NT:ノーボールタックル) 選択:PGかキックかなど 
得点
場所
選択
結果
1
0- 0
A
A42
Of
PG
×:届かず、Aがタッチキック
5
0- 0
N
N42
Of
PG
〇(0-3
9
0- 3
A
A38
DT
Kick
NLO(A10)→モールでトライ(5-3
13
5- 3
A
N20
S
Kick
NLO(A40)
16
5- 3
N
N45
Na
Kick
ALON10
17
5- 3
N
N7
Of
PG
〇(5-6
18
5- 6
N
A20
HT
Kick
ALO(A20)
23
5- 6
A
N35
S
Kick
NLO(A24)
24
5- 6
N
A24
Rse
Kick
ALON35
27
5- 6
A
A20
Na
PG
〇(8-6
34
15- 6
N
N49
Nb
PG
〇(15-9
36
15- 9
N
A37
Of
Kick
ALO(N17)
38
15- 9
N
N17
NT
PG
〇(15-12
 
 
 
 
 
 
 
40
15-12
N
A30
Na
Kick
ALO(N35)
42
15-12
A
N45
Nb
PG
×→ADO
46
15-12
A
A17
NT
PG
〇(18-12
51
18-19
A
A20
S
Kick
NLOA5)→次項のNZP
52
18-19
N
A5
Ob
Kick
ALO(A39)
55
18-19
N
N42
Nb
PG
〇(18-22
59
18-22
A
A40
Of
Kick
NLOA15)→投入したボールが抜けて、Aボールに
64
18-22
N
N30
NT
PG
〇(18-25
68
18-25
N
A10
Rof
Kick
ALO(A38)
70
18-25
N
CL
MC
Kick
反則の繰返しでN6にイエロー ALON35
71
18-25
A
N30
Rof
Kick
NLO(A41)
74
18-25
A
A45
S
Kick
NLO(A20)Aにスチールされる
78
18-25
A
A22
HT
Kick
NLO(A7)→ノットストレートでA・スクラムに
 
こうして書いていくと、「NZ、弱いなぁ」と再確認してしまう。寂しいかぎりだ。やはり、オールブラックスは輝いていてほしい。負け癖がつかないことを祈るばかりだ。
 
 
( 参考-2 )
2022-8-27 NZ/ARG KSLPFD
「分」は得点時間
大文字はNZ 小文字はARGのボール支配
K:キックオフ
S:スクラム
L:ラインアウト
P:ペナルティ (PG*PGを狙って外したもの)
F:フリーキック
D:ドロップアウト (D*はゴールライン・ドロップアウト)
- :関連するリスタート
 
 
得点
6
10
17
28
31
35
39
k p-PG* L l P-pg
K p-L-T
k S-p-L P-l P-pg
K P-l s L L S-p-L P-l p-PG
k l l TG
k P-pg
K P-l P-pg
0- 3
5- 3
5- 6
8- 6
15- 6
15- 9
15-12
46
46
56
65
K P-l p-PG* d p-PG
k tg
K S-p-L-P-l s P-pg
K s p-L s l s P-pg
K P-l-P-l p-L s-p-L L p-L s
18-12
18-19
18-22
18-25
 
NZ46分以降、得点できていない。単に、歯車が嚙み合っていない、ということだけではなさそうだ。
 
令和4年9月3日

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