2022年9月10日土曜日

岡島レポート・ 2019 W杯・備忘録 145

            2019 W杯・備忘録 145

  進化 〜
 
南半球4か国のザ・ラグビー・チャンピオンシップ、第4節を終えて、全チーム2勝2敗、メディアは「今年の優勝はどこか」を第一に報じ続けている。一方、W杯至上史観から見れば、どのチームが成長しているのか、が気になるところである。どのチームも勝ちにこだわりながら、2023W杯決勝から逆算して、今、試すべきことを実行している気がする。
先週末の第4節二連戦の第2戦、チームの修正力・適応力が問われる試合。番付どおり、NZARGに大勝(53-3)し、RSAAUSに完勝(24-8)した。どのチームも「進化」を求めて、試行錯誤が続いている。
 
 広辞苑(第7版)では、「進化」が次のように解説されている。
㈰進歩し発展すること。⇔退化
㈪〔生〕生物個体群の形質が、世代を経るにつれて遺伝的に変異し、元の種との差異が増大してゆくこと。⇒退化㈪を含む。
㈫〔社〕生物における進化の観念を社会に適用した発展の観念。社会は同質のものから異質のものへ、未分化のものから分化したものへ一方向的に進むとする。H.スペンサーが提唱。社会進化。
 
どのチームも「進化㈰(=発展)」を目指している。
では、「チーム」の進化って何なのだろうか。チームは「(一つの)生きもの(=進化㈪・退化も生じる)」でもあり「(人の集団である)社会」でもある。進化の種を、個々人に見出すのか、それともチーム戦略・戦術に見出すのか、これまた各人各様であろう。進化した結果、負けることもあるのだろう。
 
4節の試合を見て、まず感じたのは、NZがキックを普通に使いだしたこと。もちろん、雨(第4節の2試合は、いずれもこのシリーズ初めての雨天での試合)の影響もあったのであろうが、意図して蹴っているように思えた。逆に言うと、それ以前の試合では「禁欲的」に蹴ることを避けていたように感じていた。
各チーム・各試合の「Kicks in play」の数は次のとおり。
-1
 
 第1
 第2
 第3
 第4
  NZ
    16
    19
    15
    32
  AUS
    16
    12
    21
    25
  RSA
    30
    23
    20
    31
  ARG
    15
    29
    25
    25
各チームのstatsを見比べてみると、雨の影響だけではないような気がする。では、NZ、意図して変えてきたのであろうか。もともと、キックを一旦封じてチーム力向上を目指したとも思えるし、アタック担当コーチにシュミット(前IREHC)が就任した効果なのかもしれないし、選手の瞬時の判断が反映したのかもしれない。NZ3戦続けて同じ先発メンバーの中での変化(これが「進化」か否かは議論の余地が大いにあるだろう)、対戦チームがどう捉えているかも気になるところである。次戦、AUSがどう対応するのか興味深い。
これまでの8試合のうち7試合で、相手チームよりキック数が多いチームが勝っている。たまたまなのだろうか?
 
キックが多くなれば、パスは少なくなるのか?
各チーム・各試合の「Passes」の数は次のとおり。
-2
 
 第1
 第2
 第3
 第4
  NZ
   158
   169
   179
   163
  AUS
   135
   139
   105
   125
  RSA
    92
    99
   123
   119
  ARG
   114
   123
    85
   128
 
少なくとも、展開志向の強さとパス数は、ある程度、相関しているようだ。NZは、全試合、相手チームよりもパス数は多い。興味深いのは、RSAが相手チームよりも多いパス数の試合は1試合(第3節 RSA123 vs AUS105)でこの試合は負けている。
これまでの8試合では、パス数が相手チームより多かったチームの勝利は「3」。これまた、たまたまなのだろうか?
 
各チーム・各試合のスクラムハーフの選手の「Kicks in play」の数は次のとおり。
(数値上段:実数 下段:表-1実数に占める割合(単位:%))
-3
 
 第1
 第2
 第3
 第4
  NZ
     2
    12.5
     -
     0
     4
    26.7
     5
    15.6
  AUS
    11
    68.8
     4
    33.3
    10
    47.6
    12
    48.0
  RSA
    13
    43.3
    13
    56.5
     4
    20.0
     7
    22.6
  ARG
     2
    13.3
     5
    17.2
     4
    16.0
     4
    16.0
近年目につくのが、ハーフのボックスキック。これを多用するチーム(AUSRSA)とそうでないチーム(NZARG)は、はっきり分かれる。RSAが第3戦・第4戦とボックスキックが激減したのがチーム戦略なのか、それとも選手の交代(後述)によるものなのか、気になるところである。
 
各チーム・各試合のスクラムハーフの選手の「Passes」の数は次のとおり。
(数値上段:実数 下段:表-2実数に占める割合(単位:%))
-4
 
 第1
 第2
 第3
 第4
  NZ
    78
    49.4
    78
    46.2
   100
    55.9
    86
    52.8
  AUS
    61
    45.2
    76
   54.7
    53
    50.5
    68
    54.4
  RSA
    57
    60.0
    43
    43.4
    57
    46.3
    57
    47.9
  ARG
    41
    36.0
    59
    48.0
    47
    55.3
    73
    57.0
 
どのチームも、パス数のほぼ半分がスクラムハーフによるもの、実感に合っている。
 
「進化」という点では、選手の新陳代謝がどのように起こって来るのかも興味深い。RSAのスクラムハーフ、2019W杯時点では、㈰デクラーク ㈪ヤンチース ㈫ライナーの序列で使われていた。先発で使われていたデクラーク、このシリーズ第1戦:0分、自らの逆ヘッドタックルで脳震盪を起こし退場・交代、第2戦:脳震盪の影響で欠場、第3戦:先発で出場するも相手9番にビンタを食らわせTMOでイエローカードをもらい・60分で交代、第4戦:ベンチ外に(これが何を意味するのか、今後判明してくるのだろう)。第1戦:デクラークの不測の事態に交代で入ったのがヘンドリクセ、80分間見事にプレーし、第2戦:先発、第3戦:リザーブで20分プレー、第4戦:先発、と新旧交代をうかがわせる使われ方をされ、チームに完全に溶け込んできた感がある。こういうのを「持っている」というのだろうか。
 
「進化」は思わぬことからも生じるのかもしれない。
どのチームが「進化㈰」を達成しているのか、来年のW杯の結果で定まる。
 
令和4910
 

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