2019 W杯・備忘録 146
〜 オセアニア 〜
AUS/NZ オセアニア・ダービーマッチなのか。ワールドラグビー界に輝いていたNZ、AUS,「両雄」と言っても過言でない時代もあった。もはや過去形で語られる「歴史のひとこま」になったのだろうか。
今週の木曜日(9月15日)、AUS/NZ戦が行われた。予想通り、ミスが多く、試合は二転三転し、想定外の結末で終わった。前半10-10の同点で折り返し、最終的には37-39、トライは「9」、よく点の入る試合であった。イエローカードが「4」。見る分には実に面白い、しかし、W杯1年前に、両チームがこんな雑な内容の試合をしているなんて、ある意味信じられない。
試合後、両チームとも敗者だと感じた。
事実として負けたAUS、実質的に負けたNZ。変なレフリーの断固たる笛とルールの不備がNZに勝利をプレゼントした。試合経過は(参考)にある通り。
9月15日の直接対決前の両チームの直近9試合の戦績は次のとおり。
G1 | G2 | G3 | G4 | G5 | G6 | G7 | G8 | G9 | |
AUS | ● ENG 15-32 | ● WAL 28-29 | 〇 ENG 30-28 | ● ENG 17-25 | ● ENG 17-21 | 〇 ARG 41-26 | ● ARG 17-48 | 〇 RSA 25-17 | ● RSA 8-24 |
NZ | ● IRE 20-29 | ● FRA 25-40 | 〇 IRE 42-19 | ● IRE 12-23 | ● IRE 22-32 | ● RSA 10-26 | 〇 RSA 35-23 | ● ARG 18-25 | 〇 ARG 53- 3 |
(注)G1・G2:昨秋のテストマッチ G3・G4:今夏のテストマッチ G5〜G9:現在のザ・ラグビー・チャンピオンシップ
いずれも3勝6敗。よく負けている。負けるのは、点を取れない結果でもあり、点を多く取られた結果でもある。
NZの負け試合を見ているとラスト20分の弱さ(得点できない・失点を重ねる)が気になった。リザーブ8人がうまく機能していないのだろうか。負け試合、どの時間帯に失点しているのかを表にしてみた。
表-㈵ 負け試合6試合の時間帯ごとの失点の割合 (単位:%)
㈰ | ㈪ | ㈫ | ㈬ | ㈭ | ㈮ | ㈯ | ㉀ | |
AUS | 22.9 | 8.4 | 11.2 | 13.4 | 11.7 | 5.6 | 8.9 | 17.9 |
NZ | 16.6 | 10.3 | 7.4 | 13.1 | 16.6 | 10.3 | 14.9 | 10.9 |
(注)㈰:0~10分 ㈪:10~20分 ㈫:20~30分 ㈬:30~40分 ㈭:40~50分
㈮:50~60分 ㈯:60~70分 ㉀:70~80分
同じように負け試合での得点について表にしてみた。
表-㈼ 負け試合6試合の時間帯ごとの得点の割合 (単位:%)
㈰ | ㈪ | ㈫ | ㈬ | ㈭ | ㈮ | ㈯ | ㉀ | |
AUS | 9.8 | 18.6 | 12.7 | 12.7 | 9.8 | 9.8 | 18.6 | 7.8 |
NZ | 10.3 | 2.8 | 5.6 | 22.4 | 14.0 | 24.3 | 9.3 | 11.2 |
表-1、表-2をもとに、この試合の得点を見てみた。
表-㈽ 2行目:表-2のNZの数値 3行目:15日の試合でのNZの得点 4行目:表-1のAUSの数値
㈰ | ㈪ | ㈫ | ㈬ | ㈭ | ㈮ | ㈯ | ㉀ | |
NZ | 10.3 | 2.8 | 5.6 | 22.4 | 14.0 | 24.3 | 9.3 | 11.2 |
NZ点 | 7 | 3 | 0 | 0 | 7 | 14 | 3 | 5 |
AUS | 22.9 | 8.4 | 11.2 | 13.4 | 11.7 | 5.6 | 8.9 | 17.9 |
表-㈿ 2行目:表-2のAUSの数値 3行目:15日の試合でのAUSの得点 4行目:表-1のNZの数値
㈰ | ㈪ | ㈫ | ㈬ | ㈭ | ㈮ | ㈯ | ㉀ | |
AUS | 9.8 | 18.6 | 12.7 | 12.7 | 9.8 | 9.8 | 18.6 | 7.8 |
AUS点 | 0 | 3 | 7 | 0 | 3 | 7 | 7 | 10 |
NZ | 16.6 | 10.3 | 7.4 | 13.1 | 16.6 | 10.3 | 14.9 | 10.9 |
NZ、やはりラスト20分、実に弱かった。
この試合、最大の事件は78分のレフリーの判断(3点差AUSリードでのAUSゴール前でのNZ猛攻時NZのPを吹いた後、AUSが「遅延行為」をしたためにAUSのPKを取り消し、NZにスクラムを与えた⇒このスクラムからNZがトライを取りノーサイド、2点差での勝利をものにした)であろう。
競技規則では、次のように規定されている。
㈰第19条スクラム1.「制限時間内にペナルティキックが行われなった」場合に「反則をしなかったチーム」ボールのスクラムとなる。
㈪第20条ペナルティキックおよびフリーキック5.「ペナルティ、または、フリーキックは、遅延なく行われなければならない」
問題なのは、「制限時間」は何分なのか? これ自体は決められていない(≒レフリーの判断に委ねられている)
「制限時間」を類推させる次のような規定がある。
㈰第8条得点「ペナルティゴール」21.「キックは、チームがキックの意思表示をしてから60秒以内(競技時間)に行われなければならない。ボールが転がり、置き直した場合も同様である。罰:キックを認めず、スクラムを与える」
㈪第19条「スクラム」1.「マークの後、1分以内に、プレーヤーがフリーキックを蹴ることができなかった」場合に「フリーキックを与えられたプレーヤーのチーム」ボールのスクラムとなる。
1つの目安は「1分=60秒」であろう。
では、この試合でどう時間が経過したのか?
NZのPに対して笛を吹いたのが、「78分25秒」、レフリーが「遅延行為」として次の笛を吹いたのが「79分5秒」。その間、「40秒」である。ある意味、レフリーがNZ寄りに急がせる必要を過度に感じ、結果として、レフリーの体内時計が狂っていた感がある。
ちなみに、2019W杯JPN/IREの姫野のジャッカルが決まって笛が吹かれたのが「64分45秒」田村が蹴ったのが「65分21秒」。その間「36秒」。ただし、このシーンではラックの下敷きになっていたJPNの選手が傷んでメディカルが入り、一旦時計は止められていた。その時間も含めると「1分37秒」経過していた。あの至福の時間を「遅延」だと感じたJPNサポーターは皆無だろう。
問題なのは、「遅延」がレフリーの主観・判断に委ねられていること。そして、この試合を吹いたレイナル(FRA)は、もともと唯我独尊的な人でコミュニケーション能力に欠けるきらいがあったこと(フランスの解説を聴いていると、よく「カタルーニア出身(≒頑固者というイメージか)」と形容詞がついてくる。)フランス人レフリーの中では英語が堪能と見なされているが、英語圏の人びとにスッと入っているのか疑問だ。
次のNZ/AUSのレフリーは、この試合でARを勤めていたブライス(IRE)。このレフリーもレイナルとは違った意味で「?」の笛が多い。さてどうなるのやら…
( 参考 )
2022-9-15 AUS/NZ KSLPFD図
「分」は得点時間
大文字はAUS 小文字はNZのボール支配
K:キックオフ
S:スクラム
L:ラインアウト
P:ペナルティ (PG*はPGを狙って外したもの、PYはイエローカード)
F:フリーキック
D:ドロップアウト (D*はゴールライン・ドロップアウト)
- :関連するリスタート
分 | 得点 | |
3 11 17 25 | k l P-l P-l tg K S-P-pg* D P-pg K L P-l l L p-PG k l L-F g* s-p-L p-L TG(py) k S L s-p-L P-l PY(2)-l G* S p-L S-F | 0- 7 0-10 3-10 10-10 |
40 46 51 54 60 66 70 72 76 79 | K tg K p-L p-PG k S P-l-PY-l tg K L tg K p-L s p-L TG k-S-p-L-p-L TG k l P-pg K TG k l p-PG k P-l p-s t | 10-17 13-17 13-24 13-31 20-31 27-31 27-34 34-34 37-34 37-39 |
後半の各一行がこんなに短いのは滅多にない。
令和4年9月17日
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