2019 W杯・備忘録 69
~ 勝ち点 ~
「勝ち点」、手元にある広辞苑で見てみると、第5版(1998年)には掲載がなく、第6版(2008年)から出現する。たしかに、国内でメジャーな大相撲やプロ野球には、勝ち点などという野暮(?)なものは存在しない。多くの人が日常的に「勝ち点」を耳にするようになったのは、Jリーグがはじまり、2002サッカーW杯の時であった気がする。
第7版(2018年)では「スポーツで、リーグ戦やシーズンの順位を決めるために、勝敗・点差・勝ち方などによって付けるポイント。」と解説されている。広辞苑では、「かちてん」を「勝点」ではなく「勝ち点」としている。
ラグビーW杯予選プールでは第1回大会から「勝ち点」による順位付けが行われている。付与される点数は、次のように変化してきている。
| 勝 | 引き分け | 負 | ボーナスP |
第1回(1987) | 2 | 1 | 0 | 無 |
第2回(1991) ~ 第4回(1999) |
3 |
2 |
1 |
無 |
第5回(2003) ~ 第9回(2019) |
4 |
2 |
0 |
有 |
第2回から第4回までは、負けても「勝ち点1」が与えられていた。
JPNは、第2回大会ではジンバブエに勝利して1勝2敗で勝ち点・5、第3回大会は3敗で勝ち点・3、第4回は3敗で勝ち点・3を得ている(?)。
第5回大会以降、予選プールでの満点は20点(各試合4トライ以上で勝利し勝ち点:5を獲得する)となった。満点で決勝ラウンドに進出したのは、第5回大会:FRA・NZ、第6回大会:AUS・NZ、第7回大会:NZの5チーム。
今大会の予選1位通過は、JPN:19点、NZ:16点、ENG:17点、WAL:19点。
ちなみに、第5回大会から今大会までの予選での勝ち点総計の満点は100点。
NZは、95点(失点(?)は、前回大会のARG戦(26-16)・今大会のRSA戦(23-13)での4トライ以下の勝利2試合と今大会の不戦・引き分け扱いのITA戦)
80点台が、AUS:86、RSA:83。
70点台が、ENG:79、FRA:75、IRE:74、WAL:73。
60点台が、ARG:69、SCO:64。
JPNは0+3+2+12+19の36となっている。
現在の勝ち点では、引き分けの場合、勝利の半分の2点が付与される。ラグビー的感覚からすれば、まぁそんなものだろうな、と思われる。一方、勝ち点の本家(?)サッカーでは、勝利:3、引き分け:1が定着している。勝利に対するウェイト付けとしては、こちらの方が適切な気がしないでもない。
第1回大会から第8回大会までの予選プールの試合数は262試合。このうち、引き分けの試合数は3試合。第1回大会のFRA/SCO、第6回大会・第7回大会のJPN/CAN。
サッカーには引き分け狙いの戦術がありうるのだろうが、ラグビーでは専守防衛では引き分けにも至らない。そういう点からすれば、ボーナスポイントで「色をつける」現行方式はラグビーの特性にマッチしているのだろう。
今大会は、実際に戦われて引き分けになった試合はなかったが、台風による「不戦」での引き分け扱いの試合が3試合あった。前回大会までは、さいわいにも不戦・引き分け扱い試合はなかった。
もちろん、不戦はないに越したことはない。今大会に関して言えば、ITAパリセ主将の的確な指摘があったにもかかわらず、大きな問題とならずに過ぎていった。しかし、まさにパリセが指摘した通り、仮にM4 NZ/RSAでNZが負けていたならば、NZ:2勝1敗1不戦=ITA:2勝1敗1不戦となっていた。NZ、ITAともにCAN・NAMからボーナスポイント付きの勝利を得ており、勝ち点で並んでしまう。こうなっていたらどうしていたのであろうか。仮定の物語として様々な展開が考えられる。
想定外のことは起こりうる→だから、PlanBを準備しておく(パリセの指摘)。これはこれで重要な指摘だ。
それでも不戦の試合があった時に勝ち点をどうするのか? 次回大会でどのような扱いになっているのだろうか。現行方式では、不戦=「引き分け」みなしで、両チームに勝ち点:2が付与される。これは妥当なのだろうか。
勝ち点の本質が予選プールの順位付けにあるのであれば、総勝ち点で順位付けするのではなく、1試合当たりの勝ち点で順位付けする(すなわち、不戦の試合はカウントしない)のはどうであろうか。今大会のプールBは、NZ:3試合:4.67、RSA:4試合:3.75、ITA:3試合:3.33、NAM:3試合:0、CAN:3試合:0の順位になる。
NAMは、6大会連続出場・無勝利。初出場の第4回大会は3敗で勝ち点:3、以後の大会も負け続け、第8回大会GEOに17-16で敗れ、初めて、ボーナスポイント(勝ち点):1を自力で獲得している。今大会CAN戦が不戦・引き分け扱いで勝ち点:2を得ているが、これって嬉しいのだろうか… 次回大会でのNAMの初勝利は見られるのだろうか。それともアフリカ予選を他のチームが勝ちあがってくるのだろうか。
直近5大会で見ると、JPNが無勝利・最下位・5位から1位に駆け上がったのに比べ、ITAは常に3位と安定している。ITAは、第1回~第3回も予選プールで3位。第4回大会だけが予選プール4チーム中4位に沈んでいる。
栄枯盛衰は世の常ながら、いつの日にか「ITAの時代」がやってくるのだろうか。
令和3年3月20日
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