2019 W杯・備忘録 70
~ TRY ~
トライシーンは感動的だ。ラグビーをラグビーたらしめているもの、一つだけ挙げるとすれば、トライなのだろうか。
ヒトが霊長類に含まれるように、ラグビーは蹴球類・Football類に含まれる。
日本ラグビー協会は、JRFU=Japan Rugby Football Unionであり、本家のイングランド協会はRFU=Rugby Football Unionである。
エレロ『ラグビー愛好辞典』Essaiの項では、次のように解説されている。
「 ラグビーは信じられないオリジナリティを有するスポーツである:団体スポーツの中で唯一、複数の方法で得点することが認められている、足を使って、あるいは手を使って。今日、トライは得点の女王だ、最大の得点、今のところ5点が与えられる。しかし、常にこうだったわけではない。ラグビーが始まった頃は、Hポールの上の間にボールを蹴り入れた時にだけ得点が与えられた。相手陣のインゴールにボールをグランディングしても得点は与えられなかった。当時、キッカーが王様だった。
TRYという奇妙な名称は19世紀にENGで初めて定められた規則に由来する。当初、フットボール-ラグビーでは手を使うことが許されていなかった。しかし、手でボールを持って相手インゴールまで駆け込むことは素晴らしいことだと認められるようになった。では、どのような対価が適切なのか:そこで、ゴールを狙う権利を与えることになった。そして、キッカーがHポールの上の間にボールを蹴り入れれば1点が与えられることとなった。TRYという行為自体は、単に相手インゴールにボールをグランディングするという一つのプレーに過ぎない。得点を得るためには、ゴールキック(コンバージョンキック)にTRYし、ゴールを決め、得点化(conversion)しなければならない。これがこの奇妙な名称の由来である。
1886年、Cheltenhamの会議でTRYの規定が改正された。その日、ENGのラグビー関係者が集い、競技規則を議論した。彼らの関心は、手を使ったプレーを奨励することであった、そして、勝利の栄光をキッカーではなくチーム全体のものにすることを狙っていた。TRY、それはチーム全体のプレーで取るものだ、だから得点を与えてしかるべきだ、ということで、TRYそのものに初めて1点が与えられることになった。
TRYだけで得点が与えられるようになって、TRYを取ることが目的化し、戦術も大きく変化した。地域を獲得することが重要になり、各人が固有のポジショニングをするようになった:FWとBKが分かれ、それを繋ぎゲームコントロールするハーフ団が生まれた。ディフェンスも一新された、TRYを防ぐために。1894年、TRYは3点になる。それから80年近くTRYとPGは同じ得点が与えられた。ラグビーは足を使ったスポーツであることを放棄しなかった。
1971年、TRYに4点が与えられることになり、真にラグビーの「華」となった。ジャン・クロード・スクレラがトゥルーズのスタジアム・対AUS戦で押さえたTRYに国際試合で初めて4点が与えられた。中世は過ぎ去った…
1992年にはTRYに5点が与えられるようになった。それによって展開ラグビーが盛んになった。キッカーは今でも重要であるが、チームで唯一の得点源ではなくなった。TRYは、「成功した!」という意味の言葉に変える必要があるのかもしれない。しかし、ラグビーの原点を想起させるためには、このままTRYを使い続けた方がいいのだろう。
TRYは冒険の目的であり、最上の到達点であり、真の地域制覇である。敵のインゴールはしばしば「約束の地」と呼ばれる、あたかも荒れ狂う海のかなたの桃源郷の小島のように。」
そして、「観客の前で歓喜のタッチダウンを決めるためには、格闘し・策略を施し・戦い合わなければならない。TRYは、相手チームが不正なプレーでTRYを防いだ時にも与えられる。ノーボールタックル・足掛け・オブストラクション・ジャージを引っ張る・エルボースマッシュ…これらの行為によってタッチダウンが阻止される。これを『ペナルティTRY』と言う。コンバージョンキックはゴールポストの真ん中から蹴られる。」と続く。
このペナルティトライに自動的に7点が与えられるようになったのが2017年。これによって、最大の得点は「ペナルティトライ」になった。
今大会がペナルティトライ=7点後の初のW杯であった。予選プール37試合では7ペナルティトライが、決勝ラウンド7試合では1ペナルティトライが記録されている。
ヒトがホモ・サピエンス、ホモ・ファーベル、ホモ・ルーデンスなどと称されるように、ラグビーはフットボール・トラーーーイとでも言うのだろうか…
トライの得点数がインフレ化し、今の5点が6点、7点となる日が来るのかもしれない。あるいは、ペナルティトライが8点、9点になるのかもしれない。その時、ボーナスポイントの見直しも行われるのだろう。どのあたりが適切なのだろうか。
(参考)
ラグビーとサッカーの競技規則を読むたびに、同根のスポーツだなぁという感想がわいてくる。参考までに、現在のラグビーとサッカーの競技規則の条文構成を比較した表を掲載する。
ラグビー競技規則 | サッカー競技規則 |
第1条 グラウンド 第2条 ボール 第3条 チーム 第4条 プレーヤーの服装 第5条 試合時間 第6条 マッチオフィシャル 第7条 アドバンテージ 第8条 得点 | 第1条 競技のフィールド 第2条 ボール 第3条 競技者 第4条 競技者の用具 第5条 主審 第6条 その他の審判 第7条 試合時間 第8条 プレーの開始および再開 第9条 ボールインプレーおよびボールアウトオブプレー 第10条 試合結果の決定 |
第9条 不正なプレー 第10条 オープンプレーにおけるオフサイドとオンサイド 第11条 ノックオンまたはスローフォワード 第12条 キックオフと試合再開のキック 第13条 オープンプレーにおいて地面に横たわっているプレーヤー 第14条 タックル 第15条 ラック 第16条 モール 第17条 マーク 第18条 タッチ、クイックスロー、および、ラインアウト 第19条 スクラム 第20条 ペナルティキックおよびフリーキック 第21条 インゴール | 第11条 オフサイド 第12条 ファウルと不正行為 第13条 フリーキック 第14条 ペナルティキック 第15条 スローイン 第16条 ゴールキック 第17条 コーナーキック |
ラグビーの得点は、
第8条で「1.得点の方法と点数
a. トライ5点
b. コンバージョン2点
c. ペナルティトライ7点
d. ペナルティゴール3点
e. ドロップゴール3点 」と規定されている。
サッカーの得点は、
第10条で「1.得点 ゴールポストの間とクロスバーの下でボール全体がゴールラインを越えたとき、ゴールにボールを入れたチームが反則を犯していなければ、1得点となる。」と規定されている。
令和3年3月27日
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