2019 W杯・備忘録 99
~ 第6回大会・決勝 RSA/ENG ~
南半球・北半球の順に行われてきたW杯、第6回は北半球の番であった。第6回大会の開催地として手を挙げたのが、ENGとFRA。2003年4月10日、18票対3票という大差で、FRA中心開催が決定された。Midol編集長・ヴェルディエ・日誌には「ENGが数字とおカネのことだけを強調したのに対して、FRAがラグビーの価値・意義を世界に訴えたのが勝因だ」と記されている。
2007年、9月7日(金)から10月20日(土)に行われた。第5回AUS大会に比べて、およそ一月早くなっている。
この大会も20チーム・4グループに分かれての予選プール方式で行われた。
決勝は、予選ラウンド・同じプールで試合し、36-0という大差がついたRSAとENGの両チームで行われた。ちなみに、予選プールで1位通過せず(=予選プールで負け試合がある)決勝まで上り詰めたのは、第2回大会のENG(この時は、予選プールにおいて18-12でNZに敗北していた)に続いて2度目のケースであった。(2019W杯では、RSAが予選プールでNZに敗北し、優勝した。予選プールで敗北して優勝したのは初めてのこと)。
予選プールで戦ったチームで決勝が争われる初めてのケースであった。
また、それまでの大会で、準決勝に進出したチームで予選プール「1抜け」でなかったのも、第2回のENGのみ。それがこの大会では、ENGと準決勝で戦ったFRAも開幕戦:予選プールでARGに17-12で敗れて準決勝まで進出している。その意味では、荒れた(?)大会だったと言えるのかもしれない。
決勝は、10月20日、パリで行われた。RSA・HCの隣には、チーム・アドバイザーのエディー・ジョーンズが座っている。
試合経過は次の通り。RSAの得点は「○」、失点は「●」、RSAが得点を逃したのは「×」、ENGが得点を逃したのは「*」。
分 | 得点 | 種類 | 起点となった(リ)スタート | |
〇 ● ○ × × ○ | 6 11 14 16 20 39 | 3- 0 3- 3 6- 3 9- 3 | PG PG PG DG PG PG | ENGのキックオフで試合開始。 ENGのP(ノットリリース)。RSA・15・PG RSAのP(ノットロールアウェイ)。ENG・⑩・PG ENGのP(オブストラクション)。RSA・15・PG ENGラインアウト⑦←④(ラック・ターンオーバー)9→3(ラック)9→10・22mライン上右寄りDG外す ENGのP(倒れ込み)。RSA・12・センターライン付近からのPG外す ENGゴール前のENGスクラム:4回組み直して、5度目のsスクラム回ったとしてRSAスクラムに。8がサイドをついてゴール前1m(ラック)9→5(ラック)9→2(ラック)9→3(ラック)ENGのP(ハンド)。RSA・15・PG |
● ○ ○ * | 43 49 60 70 | 9- 6 12- 6 15- 6 | PG PG PG DG | ENGラインアウトからモール⑨のパスが乱れて⑬へ⑬がラインブレイクし40mランRSAゴール前3m(ラック)⑨→⑫→⑪・トライか?ビデオ判定で足が出ていたとして、その前のRSAのP(倒れ込み)。ENG・⑩・PG ENGのP(ラック・ハンド)。RSA・15・PG ENGのP(オブストラクション)。RSA・12・PG ENGラインアウトをRSAスチール:ラックでターンオーバーENGボールに⑨→⑩DG届かず |
(注)「→」は順目のパス。「←」は内返しのパス。
○に入った数字はENG選手の背番号。
「つまらない」試合をすると評判の2チームの戦い。案の定、ノートライ、淡白な試合と言えるのかもしれない。トライ・チャンスは、限られていて、そこを凌げばノートライに抑えることができる。得点チャンスは、PGとDG。意外性のあるDGも決まらなかったこの試合。得点はPGのみ。「つまらない」と一刀両断することもできる。
プロ化によって、まず進化・深化したのが、選手の肉体とディフェンス。その到達点でもあり、ある種、必然の結果にも思える。
この大会のRSA、予選プールでTONに30-25と辛勝した以外は、大差で勝ち続け(大会最多得点・最多トライ選手がともに優勝チームから出たのは、第1回大会以来。「つまらない」試合をするとはいえ、ハバナが8トライし最多トライゲッターとなっている)、準々決勝はFIJに37-20、準決勝はARGに37-13と危なげなく勝利している。
一方のENGは予選プールでRSAに「ぼろ負け」し、期待されていなかったのが、準々決勝でAUSに「まさかの」12-10の勝利で決勝に駒を進めていた。
RSAの優位は揺るがないと思われていたが、「勝負は水物」、決勝戦の緊張感は独特のものであり、試合内容は濃く、一つ一つのプレーを見ていくと緊迫感溢れる好ゲームでもある。やはり、決勝戦は決勝戦なりの面白さがある。
「たられば」的に言えば、後半最初のENGのトライ・チャンス。ビデオ判定も実に微妙に見えて、あれがトライであれば、試合の緊迫度は最高に増していた気がする。
プロ化が数字面で顕著に出てくるのが、Pの数。決勝戦の両チーム合わせてのPの数を第1回大会決勝から、決勝戦に限ってみると17⇒22⇒16⇒28⇒16⇒12となっている。
前回大会決勝とこの試合のPの取られた内容を見てみると次のようになる。
第5回決勝 (レフリー:ワトソン(RSA))
スクラム | ラック | その他 | 計 | |
ENG(勝者) | 4 | 5 | 1 | 10 |
AUS(敗者) | 1 | 4 | 1 | 6 |
第6回決勝 (レフリー:ローランド(IRE))
スクラム | ラック | その他 | 計 | |
RSA(勝者) | - | 3 | 2 | 5 |
ENG(敗者) | - | 5 | 2 | 7 |
この二試合を比較してみると、スクラムでのP。これを ①レフリーの個性 ②北半球と南半球の笛の違い ③試合展開 と見るか 興味深いものがある。
ちなみにスクラムの回数は、第5回:23(ENG・7、AUS・16)、第6回:15(RSA・9、ENG・6)であった。
両試合とも、ラインアウトでのPはゼロ。その他のPは、ノーボール・タックル(第5回のAUS)とオブストラクションによるもの。ラインオフサイドもゼロであった。
「規律が守れるチームが決勝に進む」、そんな時代になっていたのかもしれない。
令和3年10月16日
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