2020年11月21日土曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 53

               2019 W杯・備忘録 53

                   ~  勝利の涙 ~

  久しぶりに、いい涙を見た。

 2019109日熊谷でのM30 予選Pool C 対USA戦以来、402日ぶりの公式戦、2020The Rugby ChampionshipRound3NZ戦で、ARGが予想を覆す歴史的勝利をものにした。ノーサイド直前、レデスマHCが感極まって涙するシーンが映し出された。

  試合経過は次の通り。ARGの得点は「○」失点は「●」、狙ったが外したのは「×」。

 

得点

種類

起点となった(リ)スタート

×

 

 

 

 

×

 

2

3 

10

17

 

 

 

 

21

 

25

31

0 - 0

3 - 0

3 - 3

10 - 3

 

 

 

 

 

 

13 - 3

16 - 3

DG

PG

PG

TG

 

 

 

 

PG

 

PG

PG

ARGLOから6フェーズ目

NZ・ラックに横から入ってP

ARG・ラインオフサイドのP

NZARGゴール前でノットリリースのPARGPKをタッチに蹴り出しLO→そのLONZPARGPKをタッチに蹴り出しLOARG15フェーズを重ね、Pのアドバンテージが出て、スタンドオフがディフェンス背後にショートパント、自ら押さえる。

ラックでのARGの入り方にP、直後にNZ2番が相手選手を軽く叩いて、Pの差し替え

NZ、レイトチャージのP

ARGNZインゴールでグラウンディング出来ずに5mスクラムに。そのスクラムでNZ1番コラプシングのP

 

 

 

 

 

 

 

46

 

 

52

 

 

 

57

75

 

 

81

19 - 3

 

 

19-10

 

 

 

22-10

25-10

 

 

25-15

PG

 

 

TG

 

 

 

PG

PG

 

 

T

N15番のノックオンでARGのスクラム→スクラムでNZのコラプシングのPARGPKをタッチに蹴り出しLOARGLO後モールを押し、NZ・モールコラプシングのP

ARG・ラックに横から入ってPNZPKをタッチに蹴り出しLONZLOからモール、ARG・モールに横から入りPNZPKをタッチに蹴り出しLONZLOモールから押し込む

ARGLOから展開、NZ・ラインオフサイド

ARG・自陣22m内でラインオフサイドのPNZ・クイックで展開・ラックでノットリリースのPARGPKをタッチに蹴り出しLONZLOP

ARGPNZ・クイックで展開→ARGPNZ・クイックで展開→ARG・ノット10mNZPKをタッチに蹴り出しLOARGPNZ・クイックで展開

  トライ数だけ見れば、NZ・2に対してARG・1。

  備忘録・49でも取り上げたマイボールリスタートであるSLPで見てみると、

 

     S

     L

     P

S+L+P回数

ARG

    5/5

    8/9

     13

    27

NZ

    3/3

   17/19

     16

    38

  S:L:P比で見ると、ARG 1 : 1.8 : 2.6NZ 1 : 6.3 : 5.3 となる。

(ちなみに、W杯決勝ラウンドの勝者 1 : 1.4 : 1.2、 敗者は 1 : 2.3 : 1.7

 SL+Pの回数は、勝者 25、敗者 25 と 同数であった。 )

  NZは、かなりのマイボールリスタートの機会がありながら、それを得点に結びつけることができなかった。よく言われるように、「NZはアンストラクチャーから得点する」ということは、裏返せば「NZはストラクチャー(=マイボールリスタート)から得点できない」ということの表れなのかもしれない。

  この試合を象徴しているのが、NZボールスクラムが3回。ARGは「つまらない・些細なミス」をほとんどしなかった。長く実践から遠ざかっていたチームとは思えない精度・集中力の賜物であろう。

 もう一つの象徴が、NZが得たPK16回。それでいてPG1回・3点のみ。結果論に過ぎないのだろうが、勝ちに拘るのであれば、PGで得点を積み重ねていくべきであっただろう。国内の試合でもしばしば見受けられるが、狙えるところで狙わずにPKを蹴り出し、ラインアウトからのトライを狙うという戦術、うまくいけばチームに勢いをもたらす。しかし、相手に阻止されれば、相手に勢いをつけるとともに悪循環に陥る。そういう典型的な展開でもあった。

  スタッツ(The Rugby Championshipを主宰するSanzarのホームページに直後に掲載されている)で目を見張るのは、ARG6番・7番の働き。

 

       6

       7

    T

   MT

   PC

    T

   MT

   PC

ARG

   10

    2

    2

   28

    3

    4

NZ

    4

    1

    1

   10

    3

    -

(注)T:タックル数 MT:ミスタックル数 PC:ペナルティを犯した回数

  「刺さりまくる」とともに、6番・7番二人で6回のペナルティ。これをどう評価するか、人それぞれなのだろう。ともかく、勝利の立役者である。

  2019W杯で一敗地に塗れたARG。それを率いたHC・レデスマの横には大会後「くびになった」AUSHCチェイカが。リベンジ組の勝利であった。この試合の全得点をあげたスタンドオフ・サンチェスも、あの対FRA戦の戦犯として名指しされスタメン落ちした。いろんな思いが駆け巡った400日余であったことだろう。そして「涙」。

  もう一人、書かずにいられないのが、ガードナー(AUS)。ARGからすれば、あの2点差で負けたFRA/ARG戦を吹いた「憎っくき」レフリーである。

2020The Rugby Championshipは、オーストラリア一国開催。レフリー陣はW杯で笛を吹いたガードナー、ベリーの二人のAUS人とオキーフ、ウィリアムスの二人のNZ人で構成され、この四人が各試合、それぞれ主審・副審2・TMOの役割を分担している。

選りによって、この試合は主審:ガードナー、副審1:ベリー、副審2:ウィリアムス、TMO:オキーフで行わることになった。

試合は、開始早々荒れ模様。3分両チームの「小競り合い」が。ガードナーは、両チームキャプテンと当事者・NZ6番を呼んで(ARGの当事者はキャプテン・6番・マテーラ)、まず、NZ側に注意を促し、次にARG・キャプテンに「落ち着くように。あなたがキャプテンなのだから模範を示すように…」と注意したところ、ニコリともせず「俺は母国をリスペクトしているんだ。国の為にプレーしているんだ」(半分想像です…)と言い返してプレーが再開される。そういえば、「愛想のいい」アルゼンチン人って見たことない。

ともかく、W杯・M3 FRA/ARG戦では口数の多くなかったガードナーが、この試合、NZの試合ということもあり、英語でしゃべり続けていた。そして、ぶれずに笛を吹いた。Pの数の多さが、それを物語っている。この試合のPは、両チーム合わせて29W杯でのM3 FRA/ARG戦・18ARG5)、M14 JPN/IRE15M39 WAL/URG21に比べると多い。ガードナーにとっても忘れられない試合となったことであろう。

  世界のラグビーシーンは動いている、一本道を歩むが如く。W杯の各大会は、世界のラグビーシーンの貴重な「一里塚」のように思えてきた。

 WRランキングを決める各国の持ち点、勝てば増え・負ければ減る。この試合では、NZが持ち点を2減らし91.17から88.17になり、2位から3位に落ち、ARGは持ち点が78.31から80.31になり、10位からWALJPNを抜いて8位になっている。

W杯後、その持ち点が動かない(=試合を行っていない)のは、RSA94.20)とJPN79.29)の二カ国である。いつになったら、持ち点が動くのか、気になるところである。

  ARGはオールブラックスから勝利した7番目の国となった。JPN8番目の国となる日は、いつ来るのだろうか?

                                                                                           令和21121

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