2019W杯・備忘録22
~ 筋書きのないドラマ ~
試合は、筋書きのないドラマ。脚本家はいない。GODが書いたものもない。
二度目に見れば、筋書きのあったドラマになる。演者たちが、己の意思、思いをぶつけあう。「流れ」が生じる。そこに、気まぐれな風、ラグビーボールの不可解なバウンドが重なり合う。
すべてが必然なのか、はたまた、偶然の積み重ねなのか。
サモア戦、もどかしい展開、じりじりする時間帯が続き、ラスト・ワンプレーの輝き、ノーサイドの笛を高揚感とともに聞いた。
レフリーのノットストレートの笛は、必然だったのか、偶然だったのか? M26 JPN/SAM戦を見返してみる。
この試合の得点経過は、次の通り。
3-0(3分)、6-0(8分)、6-3(10分)、6-6(16分)、9-6(24分)、14-6(ラファエレのトライ・28分)、16-6(30分)、16-9(34分) ハーフタイム
16-12(45分)、19-12(51分)、24-12(姫野のトライ・54分)、26-12(56分)、26-17(73分)、26-19(74分)、31-19(福岡のトライ・76分)、36-19(松島のトライ・85分)、38-19(87分)
それにしても、ラスト6分で7点差に詰め寄られていた。ボーナスポイント以前に勝ち点すら危うくなりかけていた…
53分、SAMゴール前10mのJPNボール・ラインアウト。ここでJPNは、この大会初めて、7番・ラブスカフニに投げ入れた。 WRのスタッツによれば、それ以前の2試合のJPN・ラインアウトのFWのキャッチャーは次の通り。
RUS戦:4番(ヴァルト)・2回、5番(ムーア)・6回、6番(リーチ)・3回
IRE戦:5番(ムーア)・1回、6番(姫野)・3回、20番(リーチ)・2回
①ラブスカフニがクリーンキャッチし、②モールを組み、③バックスもモールに入り、④ゴールラインまで押し切り、⑤トライを取る(姫野のトライ)。
事前に準備していたスペシャルなプレーがピタッと決まった!
トライを取りきった!!
必殺技が冴えた!!!
78分、再びSAMゴール前7mのJPNボール・ラインアウト。
再び、7番・ラブスカフニに投げ入れた。
WRのスタッツによれば、この試合のJPN・ラインアウトのFWのキャッチャーは次の通り。
4番(ヴァルト)・1回、5番(ムーア)・4回、6番(リーチ)・3回、20番(ツイ)・2回、7番(ラブスカフニ)・2回
①ラブスカフニがクリーンキャッチし、②モールを組み、③バックスもモールに入り、までは再現できたが、ゴール前で崩れて、パイルアップ。サモアボールのスクラムに。
53分のラインアウトと78分のラインアウト、何が違ったのか?バックスが入りすぎて(78分のモールは最終的に13人が押している)バランスが崩れたのか? SAMの意地なのか??必殺技が決まらずに、相手ボールスクラムに。取りきらなければならないプレーで取りきれなかった、両チームの選手たちの内心は好対照だったのでは…
79分、SAMゴール前のSAMボールスクラム。JPNのアーリープッシュで、SAMにフリーキックが与えられる。この場面までに、スクラム機会は、JPNボール・2回、SAMボール・4回。レフリーの笛は、見たままに即座に吹かれている。アーリープッシュも無条件反射的に吹かれた。この時点で、31-19。SAMとしての無難な(?)選択は、キックを蹴り出してノーサイドにすることだった。現に、キャプテン・8番は、ボールを持って、タッチラインに向いて、キックする意思を表していた。そこに、後ろから途中出場の22番・ピシが声をかけて、スクラムを選択する。SAM・FWの心境は、どうだったのか。7点を取りに攻め続けるのであれば、①タップキックでパスを継続して前進する ②ハイパントを蹴って前進する ③スクラムの選択肢がありうる。ピシは、スクラムから出たボールをどう展開するつもりだったのだろうか?この時点で、80分の銅鑼の音が… レフリーがこの時点で何を考えていたのか?
80分34秒のSAMのボールインがノットストレートの笛に。レフリーの忖度!?
82分10秒のJPNボールスクラムでSAMがコラプシングのペナルティ。このスクラム、JPNがボール支配し、押している最中に笛。通常であれば、ペナルティ・アドバンテージを示し、プレーを流すはず。レフリーもおかしくなっていたのか?? この笛からすると「忖度」はなかったのか、それとも、バランスを取ったのか?
84分7秒のJPNボールスクラムから8番・姫野が持ち出して、ラックが出来、田中からフルバックの位置に回っていた14番・松島にパスされトライ。
ラスト・ワンプレー、田村のコンバージョンキックはポストに当たって入った。何かを暗示しているかのように…絶品のドラマを創ったピシの意思、レフリーの笛の真実が語られる日は来るのだろうか。
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時間帯ごとの日本ボールの(リ)スタート回数は次の通り。
0-20分
|
20-40分
|
40-60分
|
60-80分
|
計
| |
スクラム
|
1
|
1
|
-
|
2
|
4
|
ラインアウト
|
4
|
4
|
1
|
5
|
14
|
ペナルティキック
|
2
|
3
|
3
|
2
|
10
|
フリーキック
|
-
|
-
|
-
|
1
|
1
|
キックオフ
|
3
|
1
|
1
|
1
|
6
|
ドロップアウト
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
時間帯ごとのサモアボールの(リ)スタート回数は次の通り。
0-20分
|
20-40分
|
40-60分
|
60-80分
|
計
| |
スクラム
|
1
|
1
|
1
|
3
|
6
|
ラインアウト
|
3
|
1
|
-
|
3
|
7
|
ペナルティキック
|
4
|
2
|
2
|
2
|
10
|
フリーキック
|
-
|
-
|
-
|
1
|
1
|
キックオフ
|
2
|
2
|
3
|
1
|
8
|
ドロップアウト
|
-
|
-
|
1
|
-
|
1
|
イエローカードは一枚、SAM・6番に25分に出されている。
TMOは、2回。一回が、SAM・6番のレイトチャージのレフリーからの要請での確認。もう一回が、32分、JPN・5番のレイトチャージのTMOからの要請での確認。ペナルティを取られる。なお、このチャージを受けたSAM・15番は、8分間ピッチ上でプレーし、40分にH.I.A.を指示され、そのまま交代。
両チーム、二ケタのペナルティを取られた試合は、今大会、この試合とM18 SCO(10)/SAM(14)の二試合のみ。いずれもSAM戦。レフリーが忖度せずに笛を吹いた証なのか?
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ノットストレートの笛を聞いた瞬間、1999年大会の準決勝・FRA/NZ戦でガルティエのボールインがノットストレートと判定されたことを思い出した。あれは、何度見直しても、レフリーの「忖度」だ…
2017年6か国対抗FRA/WAL戦は、99分55秒FRAのトライで同点になりその後のゴールキックが決まり、FRAの勝利に。80分を過ぎても何度もスクラムが繰り返され、81分のスクラム・コラプシング・イエローカード・シンビンで10分間退場した選手が再出場しても試合が続いていた珍妙な試合。(YouTubeで見れます。)
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今週のミディオリンピックにピショットWR副会長(ARG)のインタビュー記事が載っている。
WRの会長選挙が4月26日電子投票で実施され、5月12日に開票結果が示されるとのこと。今回の会長選挙は、ビューモント現会長(ENG)対ピショットの対決。ピショットによれば、保守派(守旧派)対改革派の争い。ピショットは、グローバルでの発展を指向するとともに現在の国際試合カレンダーの改革を掲げている。彼によれば、現行の夏、秋の国際試合はまったく意味がない、とのこと。選手、コーチを交えて、よりよいカレンダーにすべきだと主張している。
日本協会、どういう考えなのだろうか?
Covid-19でWHOのあり方に世界の関心が集まっているが、ラグビー界にとってはWRのあり方も重要である。ルールを守るのに長けているがルールを創ることが不得手なジャパン。日本ラグビーにとって望ましいカレンダーは、どういうものなのだろうか。
令和2年4月18日
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