河北新報.宮城のニュース、より
東京電力福島第1原発から半径20キロの警戒区域内で野生化した牛の筋肉に蓄積された放射性セシウムの濃度は、血液中の20~30倍に 上ることが、東北大加齢医学研究所の福本学教授(病理学)らのグループの調査で分かった。大学は2012年度、調査牛の臓器や血液などを冷凍保存した「組織バンク」を整備。グループは今後、どの臓器に放射性物質がどれだけ蓄積するのか詳しく解析し、人体の内部被ばくの研究に応用していく。
調査は昨年8月下旬に着手。これまでに殺処分された88頭の牛を所有者の同意を得て解剖し、内臓や筋肉、血液に含まれる放射性物質を調べた。
その結果、血液から1キロ当たり60ベクレルが検出された牛のモモから1800ベクレルが測定されるなど、骨格筋に20~30倍の濃度で放射性セシウムが蓄積していることが確認された。舌や肝臓などの臓器は血液濃度の約10倍だった。蓄積が心配されていた甲状腺ではほとんど測定されなかった。
また、ガンマ線を放出する「放射性銀」は肝臓に、化学毒性が強い「放射性テルル」は腎臓に、それぞれたまっていた。牛の胎児の各臓器に蓄積した放射性セシウムの濃度が、親牛より1.3倍ほど高いことも分かった。 こうした臓器などを多くの研究者に活用してもらおうと、加齢医学研究所内に組織バンクが新設される。12の臓器などを冷凍保管する。精子と卵子も凍結保存し、人工授精して生まれた子牛の遺伝子に影響があるかどうかも検証することにしている。
研究グループは昨年6月発足。現在は東北大のほか、山形大、新潟大、宮城大、日本遺伝子研究所などで構成する。
研究成果は、同じように筋肉や臓器を持つ人体の内部被ばくを考える上で役立つという。福本教授は「内部被ばくの多角的な評価はこれまでなく、事故から学ぶことが大切。3月までに300頭を目標に調査を続け、12年度以降に多くの研究者に材料を活用してもらえるよう体制を整えたい」と話している。 2012年01月15日日曜日
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