2019 W杯・備忘録 142
〜 紙一重 〜
先週末(2022年8月13日)のRSA/NZ、実に面白い試合だった。NZ:テストマッチ三連敗・直近6試合で5敗・WRランキング5位、という有史以来「初」の弱いNZをRSAが聖地・ヨハネスバーグで迎え撃つ試合、おそらくかなりの人がRSA有利と見ていただろう。ところが、ラグビー!「下駄を履く」までわからない…
結果はNZ(4T・3G・3PG)35-23(2T・2G・3PG)RSA。
NZ:強いから勝ったのか、勝ったから強いのか…
試合が終われば一つの事実:実際の起こった出来事の連鎖だけが記録される。そして、試合結果:得点・失点・得点差が残る。12点差、4トライ対2トライ、NZが圧勝した。しかし、圧勝だったのだろうか?試合中、起こりえたことは無数にある。「たられば」を語っても意味がないのかもしれないが…紙一重のせめぎ合い、そこで何が起こったのか?
この試合のハイライトは、66分:NZ・ボーデンバレットにイエローカードが出され・それで得たPGをRSAが決めて・逆転(この試合初めてリード)・数的不利に陥った絶体絶命のNZ、が次に得点(トライ)したのはNZ、この10分弱に凝縮されるのだろう。あそこで試合が決した。NZの14人が15人のRSAを破り、オールブラックスを救った…流れが変わった劇的瞬間だった。
では、この試合、どんな「流れ」があったのだろうか?
試合開始から20分余、流れが定まらず、無得点で過ぎていった(=どちらも決定機がありながら決めきれなかった)。
そして、24分〜36分にNZが15点(1PG・1T・1TG)を挙げている。堅守を誇るRSAがこんな短時間に大量点を奪われるなんて… RSAにとって「魔の時間帯」。何があったのか?
その後、覚醒した(?)RSAが得点し15-10、NZリードでハーフタイム。
後半もRSAの流れ。でありながら、TMO3回、いずれもRSAに不利な判定への差し替え。
㈰47分:NZ・ラックでのPに対して笛。TMOで笛の後にRSA・8がNZ・9にタックルしたとして判定が覆り、RSAのPに⇒NZがPGを決めて18-13に。
㈪51分:RSA・13のトライを視認して笛。TMOでトライ前にタッチラインを踏んでいたことが確認されトライ取り消し。NZのラインアウトで再開。
㈫55分:RSA・11のトライを視認して笛。TMOでトライ前の攻防でRSA・9のオブストラクションが認定され(前半6分のNZのオブストラクションの方が「はっきりした」オブストラクションであったにもかかわらず、これは見過ごされた)RSAのP⇒NZがPGを決めて21-13に。
その直後のRSA・キックオフからRSAがトライ・ゴールし・点差を詰め、67分NZのP(イエロー)⇒RSAがPGを決め逆転。
というRSAの時間帯(良い流れ)があった。
両チームの選手・スタッフがどう考えているのか興味深いのが、50〜53分の攻防。NZが3連続P、レフリーからキャプテンに警告が出された。この流れの中でRSA、得点できない。ある意味で、NZが実に効果的なPを意図して繰り返すことにより失点を防いだ!?
取れるとき・取るべきときにきちんと得点しておかないといくら強いチームでも負ける。逆に言えば、どんなことをしても得点を取られなければ勝機は見いだせる。
「負けに不思議の負けなし」。NZの勝因は、いくつも挙げられる。RSAの敗因も、いくつも挙げられる。そのうちの一つがメンバー選定。RSAは第1戦の楽勝を受けて、第2戦では先発メンバーを何人か変更した。このメンバーが機能しなかった。リザーブ8人の投入時間が如実にこれを表している。(上段:交代時間、下段:交代ポジション)
RSA
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | |
第1戦 | 55m 2 | 40m 1 | 50m 3 | 75m 4 | 46m 5 | 49m 7 | 1m 9 | 79m 13 |
第2戦 | 32m 2 | 35m 1 | 51m 3 | 50m 5 | 35m 8 | 51m 6 | 77m 9 | 10m 14 |
(注)第1戦・22、第2戦・23はケガによるもの。
NZ
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | |
第1戦 | 55m 2 | 62m 1 | 49m 3 | 72m 5 | 55m 6 | 70m 9 | 53m 15 | 62m 13 |
第2戦 | 56m 2 | 55m 1 | 55m 3 | 78m 13 | 60m 6 | 77m 9 | 61m 11 | 69m 7 |
第2戦・RSAだけに前半での戦術的交代(1・2・8、いずれも第1戦は出ていない)。RSAと言えども、うまく機能しない選手がいれば勝てないということなのだろうか。
なぜ機能しなかったのか?RSA・第2戦・2番先発はドゥエバ(仏・ボルドー所属の選手)。仏リーグで大活躍してRSA代表に選ばれた。試合前の表情からもその緊張感がうかがえた。NZのキックオフで始まった試合。RSAがキャッチしてRSA・9がボックスキック、これをNZがノックオンして0分にファースト・スクラム。このスクラムでドゥエバ「ブレーキ・フット」の反則を取られNZにフリーキックが与えられる。「ブレーキ・フット」、たまに取られているのを見ることがあったが、よりによってこんな場面で(この試合では、NZ・2も6分、RSAゴール前のスクラムで取られている。同日行われたARG/AUS戦でもARG・2が1回取られている。「ブレーキ・フット」撲滅日なのか!?)この試合の主審はピアース(ENG)、おそらく現時点ではW杯決勝ラウンドに最も近いレフリーの一人。不意打ちを食らったドゥエバ、本来の力を発揮できなかった。神は細部に宿る…
いろいろな思いがよぎる試合であった。
NZのラインアウト(・モール)のディフェンスが改善された!? 手元集計のNZのPは11回。そのうち、6回はラインアウト由来。どうなのだろうか?
それにしても、強いのはどちらなのだろうか?そして、W杯で勝ち切れるのはどちらなのだろうか?
( 参考-1 )
2022-8-13 NZ/RSA経過表
二列目:N:NZの得点経過
三列目:R:RSAの得点経過
四列目:NP:NZのP
五列目:RP:RSAのP
Pのうち「R+」はマイボールラックでのP、「R-」は相手ボールラックでのP
「G-」はPGを狙い外したもの。
前半
分 | 3 | 4 | 11 | 14 | 20 | 23 | 27 | 32 | 36 | 38 |
N | 3 | 8 | 15 | |||||||
R | 7 | 10 | ||||||||
NP | L | L | S | |||||||
RP | R- | R- | S | Os |
3分:RPでR・15にイエロー
後半
分 | 41 | 43 | 47 | 50 | 51 | 53 | 56 | 58 | 62 | 66 | 70 | 71 | 78 |
N | 18 | 21 | 28 | 35 | |||||||||
R | 13 | 20 | 23 | ||||||||||
NP | L | F | L | L | L | S | F | S | |||||
RP | F | Ob |
66分:NPでN・22(ボーデン・バレット)にイエロー
( 参考-2 )
2022-8-13 NZ/RSA KSLPFD図
「分」は得点時間
大文字は勝者 小文字は敗者のボール支配
K:キックオフ
S:スクラム
L:ラインアウト
P:ペナルティ (PG*はPGを狙って外したもの)
F:フリーキック
D:ドロップアウト (D*はゴールライン・ドロップアウト)
- :関連するリスタート
分 | 得点 | |
24 27 32 36 41 | K s-F-S L p-S-f L D* F l-P-l S-p L L l L L P-l-S p-PG k T k L TG k l tg K s-P-pg | 3- 0 8- 0 15- 0 15- 7 15-10 |
45 48 56 58 67 73 78 | k l-P-l P-pg K p-L p-PG k l P-l-P-l-P-l l p-PG k tg K s-P-l l P-pg K L-s-P-l F TG k l L TG | 15-13 18-13 21-13 21-20 21-23 28-23 35-23 |
令和4年8月20日
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