2019 W杯・備忘録 140
〜 トライを分類する 〜
理想のトライ、どんなものだろうか。
自陣からの独走90メートル!スカッとする。15人全員がパスでつないだもの、あったら素晴らしい。 あるいは 逆転トライ。スクラムトライは見応えがある。いろいろなトライシーンが浮かんでくる、得点シーンとして。
美しいトライ、それとも、試合を決めるトライ…
なぜトライが取れたのか(=得点)という視点で見るのか、それとも、なぜトライを取られたのか(=失点)という視点で見るのか、試合の見方も変わってくる。「負けに不思議の負けなし」ではないが、「失トライに不思議の失トライなし」ではないだろうか。
スーパーラグビーの画面では、’TRY ORIGINS’として、「Line Out」「Scrum」「Turnover Won」「Kick Return」「Counter Attack」「Tap Kick」の六分類に分けている。これはこれでなるほどとよく出来た分類だ。
2019W杯の前、「NZはアンストラクチャーからの攻撃に長けている」と言われていた。では現在のNZ、どうなのだろうか? 今夏のNZ/IRE三連戦のトライを見てみる。三連戦で、NZは11トライ、IREは9トライを取っている。トライ数では、NZが上回っている。それでも、トライの取られ方が悪かった気がする。
トライがどのような状況で生まれたのか、次の各項目を見た。
「分」:ゲーム開始時からの時間
「人数」:+は相手チームのカードでのピッチ外の人数、−は味方の人数
「P」:起点となるリスタートを導いたペナルティの有無
「起点」:大文字はマイボール 小文字は相手ボールでのリスタート
「位置」:相手ゴールラインからの距離(m)
「PH」:トライに至るフェーズ数
「AD」:トライまでの間に出されたP・アドバンテージの数
「KR」:キックに起因するボール保持の変更回数
「TO」:ジャッカル・ノックオンなどによるボール保持の変更回数
「番号」:トライした選手の番号
NZのトライは次のとおり。
第1戦
分 | 人数 | P | 起点 | 位置 | PH | AD | KR | TO | 番号 | |
N-1 | 20 | - | - | S | 33 | 6 | - | - | - | 15 |
N-2 | 29 | - | - | L | 75 | 0 | - | - | 2 | 14 |
N-3 | 35 | - | - | l | 13 | 0 | - | - | 1 | 12 |
N-4 | 37 | - | 〇 | L | 45 | 7 | 1 | - | - | 8 |
N-5 | 52 | - | - | L | 30 | 3 | - | - | - | 8 |
N-6 | 70 | - | 〇 | S | 5 | 0 | - | - | - | 19 |
第2戦
分 | 人数 | P | 起点 | 位置 | PH | AD | KR | TO | 番号 | |
N-1 | 39 | +1-1 | 〇 | PK | 5 | 10 | 1 | - | - | 10 |
N-2 | 77 | -1 | - | S | 38 | 5 | - | - | - | 23 |
第3戦
分 | 人数 | P | 起点 | 位置 | PH | AD | KR | TO | 番号 | |
N-1 | 43 | - | - | K | 50 | 24 | 2 | 1 | - | 8 |
N-2 | 51 | +1 | 〇 | L | 20 | 3 | - | - | - | 6 |
N-3 | 58 | +1 | * | pg | 50 | 2 | - | 2 | - | 14 |
意外(?)と「アンストラクチャー(=KRかTOが生じる)」からのトライが少ない。それと、PKを蹴って相手ゴールライン近くからのラインアウト(からモールを組んで)起点のトライがない。トライの取り方も凡庸(他のチームと変わりない)になってきたのだろうか。
三連戦 IREのトライは次のとおり
第1戦
分 | 人数 | P | 起点 | 位置 | PH | AD | KR | TO | 番号 | |
I-1 | 6 | - | 〇 | L | 35 | 18 | 1 | - | - | 14 |
I-2 | 43 | - | 〇 | L | 5 | 7 | 1 | - | - | 13 |
I-3 | 76 | - | - | gldo | 0 | 9 | - | 1 | - | 23 |
第2戦
分 | 人数 | P | 起点 | 位置 | PH | AD | KR | TO | 番号 | |
I-1 | 2 | - | - | l | 52 | 11 | 2 | 1 | - | 1 |
I-2 | 44 | +1-1 | - | S | 49 | 12 | - | - | - | 1 |
第3戦
分 | 人数 | P | 起点 | 位置 | PH | AD | KR | TO | 番号 | |
I-1 | 3 | - | 〇 | L | 5 | 0 | - | - | - | 7 |
I-2 | 27 | - | 〇 | L | 41 | 3 | 1 | - | - | 15 |
I-3 | 36 | - | - | S | 15 | 3 | - | - | - | 13 |
I-4 | 64 | - | 〇 | L | 5 | 0 | - | - | - | 16 |
三戦で9トライ。このうち、5トライは相手・Pからのもの。(NZは11トライ中4トライ)。「PH」の項目を見ていると、第1戦・第2戦は、フェーズを重ねて(NZ側から見れば、手数をかけさせて)のトライ。一方、第3戦は「実にあっさり(=無抵抗!?)」トライしている(NZ側から見れば、ディフェンスに欠陥あり!)。NZの歯車が微妙に変調を来した現れのようである。
最強軍団と誰もが認めていたNZ、ただの強いチームになり下がった感がある。W杯までの1年間、どういう軌跡を描くのだろうか。
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「現在のNZの低迷は必然である」としてMidolでは、いくつかの要因をあげている。興味深かったのは、㈰マオリ・アイランダー(サモア・フィジー・トンガ)系の選手はボディコンタクトを好み15人制ラグビーのヘッドコンタクトに対する厳罰化に嫌気がさして13人制ラグビー(リーグ)へ有望選手が流れている ㈪近年のU-20・W杯の成績から予想できたことである、という2点。
U-20・W杯の近年の順位は次のとおり(2020以降はCovidのため未開催)
年 | 優勝 | 準優勝 | 3位 | 4位 |
2015 | NZ | ENG | RSA | FRA |
2016 | ENG | IRE | ARG | RSA |
2017 | NZ | ENG | RSA | FRA |
2018 | FRA | ENG | RSA | NZ |
2019 | FRA | AUS | RSA | ARG |
これを見ていると、2019W杯の決勝がRSA/ENGであったのは「必然」だった気がしてくる。となると、2023はRSA・ENG・FRAの三つ巴になるのだろうか。
令和4年8月6日
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