2020年8月7日金曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 37

         2019 W杯・備忘録 37
              ~   M29 RSA/CAN  

 これまでも度々引用してきたエレロ『ラグビー愛好辞典』が書かれたのが2003年。「Springboks」の項の書き出しは、次の通りである。
… Springboks、軽快な足取りの繊細なガゼル、は、南アフリカ代表チームのエンブレムとしてふさわしくない、と私はしばしば思ってきた。醜い顔つきの獰猛な怪獣こそ、お似合いである。 …

 たしかに、1995年国際ラグビー社会に復帰したRSAは、強力なFWが目を引くフィジカル・バトル専門のチームだった。様相が変わったのは、ブライアン・ハバナが出現してからだろうか。俊敏な「Springbok」がウィングに入り、トライを量産するチームになってきた。今大会もコルビをはじめ、アイランダー系とは一味違う「バネ」を持つウィングが目をひいた。

 対するCANは、NZと大分で戦い、中5日で、神戸にやってきた。勝敗は度返しして「一矢を報いる」ことができるのか、見どころは何なのか、そんなことは吹っ飛んで、お祭り騒ぎ、W杯の熱狂がこの国を蔽った大会16日の試合である。

 108日(火)、神戸に28,014人を集めてキックオフ。神戸での4試合目、前3試合よりも観客数が増えている。かなりの人々が、「W杯の現場にいたい」とお祭り気分のノリでやってきたのだろう。

 CANボール・キックオフで始まった試合は、RSAの「怒涛の攻撃」で、17分にして4トライ目を押さえ、前半の20分までに5トライ。13番、11番がトライし、その後、9番が3トライ続けて押さえている。FWBK一体となったランニング・ラグビー。「あっという間」の出来事、というのだろうか。前回の備忘録のM20 NZ/CAN戦は、後半の前半の20分でNZ5トライ押さえている。この時のNZは、FW2トライ、BK3トライ。RSAのランニング・スキル、NZと遜色がない。
 攻め疲れたのか、CANの意地が出てきたのか、前半の後半は、27分にRSA14番がトライしただけで、やがて、CANの時間帯がやってきた。RSAゴール前にせまり、トライなるか、というシーンでノックオンがあり、笛が吹かれ、スクラムが告げられる。その段階でTMO、審判団の確認の結果、CAN19番にレッド・カードが出される。以後、15人対14人の試合に。この後、RSA12番が1トライ追加し、470でハーフタイム。

 後半、RSAのキックオフではじまる。一体どこまで点数が伸びるのか、ひょっとしたら、あの悪夢の「145」を超えるのでは、と期待を持って見始める。でも、なんのことはない、RSAが次々に反則を犯す。40分・ノットリリースのP42分・オフ・ザ・フィートのP42分・ラインアウトでのギャップ不足(こんな反則、こんなところで取るのか?とチャチャを入れたくなる…)でFK献上、44分・ノットリリースのP。実に「つまらない」反則を続ける。挙句の果てに、45分・CAN7番がトライ。いやはや… このトライも、TMOCANのオブストラクションが問題となるもお咎めなし、のトライ。審判団をあげて試合を盛り上げようとしている!?
それにしても、RSAの「気の緩み」なのか、CANの「気合」なのか、不思議な時間帯である。と言って、47-0で一人少ない相手に「本気で戦え!」なんて、所詮、無理なのかもしれないが。RSAの辞書には「チンタラ、プレーする」なんていうのはない気がするのだが… 謎である。
 ともかく、CANが一矢を報い、その後は再びRSAが加点して、66-7でノーサイド。

 RSAから見れば、控え選手が躍動した試合であったことは確かである。
 この試合と決勝戦 M48 RSA/ENGの出場選手の関係を図にすると次のようになる。


ENG
先発
ENG
リザーブ
ENG
ベンチ外
CAN
先発

   2

   5

   8
CAN
リザーブ

   5

   3

     -
CAN
ベンチ外

   8

    -

    -

 召集メンバー31人は、この試合か、最終戦かのいずれかには出場している。
 RSA、この試合では、リザーブ8人のうち、FW5人、BK3人を登録していた。そして、試合に出場したのは、FW3人、BK2人の5人だけ。FWは前三人が交代しただけで、バック・ファイヴの4番から8番は、80分間ピッチに立っている。リザーブ8人のうち、3人が試合に出場しなかったのは、この試合のRSAのみ。
 NZ/CAN戦の同じ表と見比べても、RSAの選手間の「序列」は、はっきりしていた気がする。この試合、第3フッカーと第3スクラム・ハーフが大活躍する。RSA10トライのうち、7トライは決勝戦でベンチ外の選手があげている。


 CANからすれば、ITANZRSAと「胸を借りて」、さあ決戦、釜石でのNAM戦のはずだったのが、台風で中止となってしまった。返す返すも、釜石でのCAN/NAM戦は、試合日を延期してでも行ってほしかった。

 CAN戦の前半だけで比較すると、Meter carried(ボールを持って走った総距離)、M20NZ337mに対して、M29RSA379mTackles Madeが、M20NZ43回に対して、N29RSA17回。ほぼ「完璧」の前半だった。
 後半で比較すると、Meter carriedM20 NZ 583m   、M29 RSA 290m
          Tackles MadeM20 NZ  43回   、M29 RSA  51
どうして、後半、RSAは減速したのか、意図したものだったのか、それとも、偶然なのか、はたまた、CANの頑張りなのか、やはり謎である。

 巣ごもり、というか、日本のラグビー・シーンが止まってしまっているので、こういう試合(?)もじっくり見ることができる。
 RSAの優勝という結果を知った上で観ているせいもあるのだろうが、あらためて、RSAバックスの充実ぶりが印象に残る。

令和281日・記

( 参考 )

RSAボール

0-20min.
20-40min.
40-60min.
60-80min.
  計
   KO
    -       
    -       
    2       
    -       
    2       
   S
    2/2     
    2/2     
    -     
    2/2     
    6/6     
   LO
    1/1     
    3/3     
    2/2     
    2/2     
    8/8    
   PK
    1       
    3       
    2       
    2       
    8       
   FK
    -       
    -       
    -       
    -       
    -       
   DO
    -       
    -       
    -       
    -       
    -       
  計
    4       
    8       
    6       
    6       
   24       
() KOのうち1回は、後半開始時のもの。
SLOの分母は、マイボールでの投入回数。分子は、そのうちのボール獲得回数。
PKの回数は、相手チームのペナルティ(反則)によって獲得したPKの回数。

RSAの得点

 0-20min.
 20-40min.
 40-60min.
 60-80min.
  計
 トライ(T)
    5
    2
    1
    2
   10
 T後のG
    4
    2
    1
    1
    8
 PG
    -
    -
    -
    -
    -

CANボール

 0-20min.
 20-40min.
 40-60min.
 60-80min.
  計
   KO
    5       
    2       
    1       
    2       
   10       
   S
    1/1     
    2/2     
    2/3     
    -        
    5/6     
   LO
    1/2     
    4/4     
    4/5     
    3/4     
   12/15     
   PK
    -       
    1       
    4       
    -       
    5       
   FK
    -       
    1       
    1       
    -       
    2       
   DO
    1       
    1       
    -       
    -       
    2       
    
    9
   11
   14
    6
   40
 前半36分、5番にレッド・カードが出ている。

CANの得点

 0-20min.
 20-40min.
 40-60min.
 60-80min.
  計
  T
    -
    -
    1
    -
    1
 T後のG
    -
    -
    1
    -
    1
 PG
    -
    -
    -
    -
    -

 後半の前半だけ見てみると、「互角に戦っている」ようにも見える。
 RSAPが、前半は1つだけ。Disciplineが徹底している気がする。それだけに、後半の前半の4つは不思議だ。ほんとうに、何があったのだろうか?単なる「ゲームの流れ」と片付けてしまえそうな気もするが、どうなのだろうか?

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