2019 W杯・備忘録 37
~ M29 RSA/CAN ~
これまでも度々引用してきたエレロ『ラグビー愛好辞典』が書かれたのが2003年。「Springboks」の項の書き出しは、次の通りである。
… Springboks、軽快な足取りの繊細なガゼル、は、南アフリカ代表チームのエンブレムとしてふさわしくない、と私はしばしば思ってきた。醜い顔つきの獰猛な怪獣こそ、お似合いである。 …
たしかに、1995年国際ラグビー社会に復帰したRSAは、強力なFWが目を引くフィジカル・バトル専門のチームだった。様相が変わったのは、ブライアン・ハバナが出現してからだろうか。俊敏な「Springbok」がウィングに入り、トライを量産するチームになってきた。今大会もコルビをはじめ、アイランダー系とは一味違う「バネ」を持つウィングが目をひいた。
対するCANは、NZと大分で戦い、中5日で、神戸にやってきた。勝敗は度返しして「一矢を報いる」ことができるのか、見どころは何なのか、そんなことは吹っ飛んで、お祭り騒ぎ、W杯の熱狂がこの国を蔽った大会16日の試合である。
10月8日(火)、神戸に28,014人を集めてキックオフ。神戸での4試合目、前3試合よりも観客数が増えている。かなりの人々が、「W杯の現場にいたい」とお祭り気分のノリでやってきたのだろう。
CANボール・キックオフで始まった試合は、RSAの「怒涛の攻撃」で、17分にして4トライ目を押さえ、前半の20分までに5トライ。13番、11番がトライし、その後、9番が3トライ続けて押さえている。FW・BK一体となったランニング・ラグビー。「あっという間」の出来事、というのだろうか。前回の備忘録のM20 NZ/CAN戦は、後半の前半の20分でNZが5トライ押さえている。この時のNZは、FWが2トライ、BKが3トライ。RSAのランニング・スキル、NZと遜色がない。
攻め疲れたのか、CANの意地が出てきたのか、前半の後半は、27分にRSA・14番がトライしただけで、やがて、CANの時間帯がやってきた。RSAゴール前にせまり、トライなるか、というシーンでノックオンがあり、笛が吹かれ、スクラムが告げられる。その段階でTMO、審判団の確認の結果、CAN・19番にレッド・カードが出される。以後、15人対14人の試合に。この後、RSAは12番が1トライ追加し、47-0でハーフタイム。
後半、RSAのキックオフではじまる。一体どこまで点数が伸びるのか、ひょっとしたら、あの悪夢の「145」を超えるのでは、と期待を持って見始める。でも、なんのことはない、RSAが次々に反則を犯す。40分・ノットリリースのP、42分・オフ・ザ・フィートのP、42分・ラインアウトでのギャップ不足(こんな反則、こんなところで取るのか?とチャチャを入れたくなる…)でFK献上、44分・ノットリリースのP。実に「つまらない」反則を続ける。挙句の果てに、45分・CAN・7番がトライ。いやはや… このトライも、TMOでCANのオブストラクションが問題となるもお咎めなし、のトライ。審判団をあげて試合を盛り上げようとしている!?
それにしても、RSAの「気の緩み」なのか、CANの「気合」なのか、不思議な時間帯である。と言って、47-0で一人少ない相手に「本気で戦え!」なんて、所詮、無理なのかもしれないが。RSAの辞書には「チンタラ、プレーする」なんていうのはない気がするのだが… 謎である。
ともかく、CANが一矢を報い、その後は再びRSAが加点して、66-7でノーサイド。
RSAから見れば、控え選手が躍動した試合であったことは確かである。
この試合と決勝戦 M48 RSA/ENGの出場選手の関係を図にすると次のようになる。
ENG戦
先発
|
ENG戦
リザーブ
|
ENG戦
ベンチ外
| |
CAN戦
先発
|
2人
|
5人
|
8人
|
CAN戦
リザーブ
|
5人
|
3人
|
-
|
CAN戦
ベンチ外
|
8人
|
-
|
-
|
召集メンバー31人は、この試合か、最終戦かのいずれかには出場している。
RSA、この試合では、リザーブ8人のうち、FW・5人、BK・3人を登録していた。そして、試合に出場したのは、FW・3人、BK・2人の5人だけ。FWは前三人が交代しただけで、バック・ファイヴの4番から8番は、80分間ピッチに立っている。リザーブ8人のうち、3人が試合に出場しなかったのは、この試合のRSAのみ。
NZ/CAN戦の同じ表と見比べても、RSAの選手間の「序列」は、はっきりしていた気がする。この試合、第3フッカーと第3スクラム・ハーフが大活躍する。RSA10トライのうち、7トライは決勝戦でベンチ外の選手があげている。
CANからすれば、ITA・NZ・RSAと「胸を借りて」、さあ決戦、釜石でのNAM戦のはずだったのが、台風で中止となってしまった。返す返すも、釜石でのCAN/NAM戦は、試合日を延期してでも行ってほしかった。
CAN戦の前半だけで比較すると、Meter carried(ボールを持って走った総距離)、M20のNZが337mに対して、M29のRSAは379m。Tackles Madeが、M20のNZ・43回に対して、N29のRSA・17回。ほぼ「完璧」の前半だった。
後半で比較すると、Meter carried:M20 NZ 583m 、M29 RSA 290m
Tackles Made:M20 NZ 43回 、M29 RSA 51回
どうして、後半、RSAは減速したのか、意図したものだったのか、それとも、偶然なのか、はたまた、CANの頑張りなのか、やはり謎である。
巣ごもり、というか、日本のラグビー・シーンが止まってしまっているので、こういう試合(?)もじっくり見ることができる。
RSAの優勝という結果を知った上で観ているせいもあるのだろうが、あらためて、RSAバックスの充実ぶりが印象に残る。
令和2年8月1日・記
( 参考 )
RSAボール
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
KO
|
-
|
-
|
2
|
-
|
2
|
S
|
2/2
|
2/2
|
-
|
2/2
|
6/6
|
LO
|
1/1
|
3/3
|
2/2
|
2/2
|
8/8
|
PK
|
1
|
3
|
2
|
2
|
8
|
FK
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
DO
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
計
|
4
|
8
|
6
|
6
|
24
|
(注) KOのうち1回は、後半開始時のもの。
S、LOの分母は、マイボールでの投入回数。分子は、そのうちのボール獲得回数。
PKの回数は、相手チームのペナルティ(反則)によって獲得したPKの回数。
RSAの得点
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
トライ(T)
|
5
|
2
|
1
|
2
|
10
|
T後のG
|
4
|
2
|
1
|
1
|
8
|
PG
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
CANボール
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
KO
|
5
|
2
|
1
|
2
|
10
|
S
|
1/1
|
2/2
|
2/3
|
-
|
5/6
|
LO
|
1/2
|
4/4
|
4/5
|
3/4
|
12/15
|
PK
|
-
|
1
|
4
|
-
|
5
|
FK
|
-
|
1
|
1
|
-
|
2
|
DO
|
1
|
1
|
-
|
-
|
2
|
計
|
9
|
11
|
14
|
6
|
40
|
前半36分、5番にレッド・カードが出ている。
CANの得点
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
T
|
-
|
-
|
1
|
-
|
1
|
T後のG
|
-
|
-
|
1
|
-
|
1
|
PG
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
後半の前半だけ見てみると、「互角に戦っている」ようにも見える。
RSAのPが、前半は1つだけ。Disciplineが徹底している気がする。それだけに、後半の前半の4つは不思議だ。ほんとうに、何があったのだろうか?単なる「ゲームの流れ」と片付けてしまえそうな気もするが、どうなのだろうか?
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