2019W杯・備忘録 39
~ M31 SCO/RUS ~
スコットランド人以外のラグビー愛好者で、スコットランド・ラグビーを応援している人っているのだろうか?あまりにも「地味」すぎる、「華がない」。憎らしいほど強いわけでもない。敵意を抱くほどのこともない。よく言えば基本に忠実、要するに見ていても面白くない。だから、熱く応援するほどのこともない…
1987年、W杯創設に最後まで反対したのが、ENG協会とSCO協会。よくも悪しくも保守的、進取の気性のかけらもない人びと!? なのだろうか。
対するロシアも、いろいろな意味で人気がない。今大会は、「棚ぼた」出場。それにしても、弱い。開幕試合で、JPN相手に健闘し、中3日の対SAM戦前半は9-6とリードして折り返すも、後半は3-29と大差をつけられ、第3戦・IRE戦はゼロ敗(0-35)。弱点がどんどん露わになってきた、ということか。
こんなチーム同士の対戦なのに(?)、なぜか会場は収容人員が横浜に次ぐ5万人余のエコパ。平日(水曜日)の16時15分キックオフなのに、44,123人が観戦している。J-スポーツのアナウンサーによれば、1万6千人の小・中・高校生が招待されていたとか。それにしても、10日前のJPN/IRE戦(47,813人)で「聖地」となったエコパにこれだけの人々が観戦に来るとは、大会前、誰が予想できたであろうか。
RUSボールでのキックオフ。終わってみれば、SCOが9トライ・8ゴールの完封勝利。得点だけみれば、備忘録36で取り上げたM20 NZ/CANのNZの9トライ・9ゴール・完封勝利に酷似している。NZ・10番のモウンガがすべてのコンバージョンキックを決め、SCO・10番のヘイスティングが一本外しただけが違う。この一本は、左サイドライン際からのもので「外れても仕方がない」。むしろ、右ライン際から2本決めていてヘイスティングのアタリもすごかった。そして、player of the matchは、モウンガであり、ヘイスティング。
一方で、M20では、CANが相手ゴール前のPKを狙わずに得点機会を失している。J-スポーツの解説・田辺さんが後半開始早々「カナダはボーナスポイントを目指して4トライを目標に」といい、アナウンサーは残り10分あたりで「カナダの1トライを期待する声援が聞こえてきます」と言っている。それに対して、この試合、RUSの得点機会は皆無に等しかった。SCOは、完璧に抑え込んでいた。
SCOのタックル成功率は、97%で全チーム最高値。ミスタックル数が3回。観ていても、「抜かれるシーン」がない。だから、RUSは、フェーズを重ねても前進できず、仕方なく蹴る以外の選択肢がなくなり、相手にボールを渡し攻め込まれる…
それと、Pの数。SCOが4回(ラック内でのハンド3回、ラインアウトでの越境1回)、RUSが3回(ハイタックル、スクラムコラプシング、ショルダーチャージ)。両チームとも、おとなしすぎる。両チーム計7回というのは、今大会最小P数。
この試合と中3日後の M40 JPN戦の出場選手の関係を図にすると次のようになる。
JPN戦
先発
|
JPN戦
リザーブ
|
JPN戦
ベンチ外
| |
RUS戦
先発
|
3人
|
7人
|
5人
|
RUS戦
リザーブ
|
5人
|
1人
|
2人
|
RUS戦
ベンチ外
|
7人
|
-
|
1人
|
興味深いのは、RUS戦のリザーブは、FW・6人にBK・2人。FWのうちの21番・リッチーはこの試合出場せず、中3日後のJPN戦で活躍する。また、BKのリザーブ22番・ピアゴズを後半6分・スクラムハーフのポジションにいれ、9番・ホーンをウィングに回して後半24分までの18分間、ウィングのポジションに慣れさしている。M14 JPN/IRE戦で、IREが後半20分にBKのリザーブ3人のうちの2人を投入し、28分、15番・カーニーが負傷交代する際、残っていたリザーブ・21番(スクラムハーフの予備)をウィングに入れざるを得なかったのを見ての「お試し」だったのか?
この試合のレフリーは、当初レイナル(FRA)が割り当てられていたが、急遽、バーンズ(ENG)に変更になっている。安定した笛で、違和感を覚えることなく、安心して試合を見ていた。TMOになったのが、2回。いずれも、バーンズがSCOのトライを認めて笛を吹いた後でのTMO。そして、二度とも、ラストパスがスローフォワードと認められ、トライが取り消された。バーンズでスローフォワードとくれば、2007年QF・FRA/NZのFRAの決勝トライを思い出さずにはいられない。
この試合のスローフォワードは、TMOでゆっくりと見ると、なるほど前にパスしているな、とわかる程度。それに対して、2007年は、明らかなスローフォワード。であるのに、当時はTMOがなかったので、トライが有効となり、NZは敗れ去った。あの敗戦があったから(?)、王者・NZは覚醒した気がしないでもない。
負けるが勝ち、失敗と書いて成長と読む…
SCOの未来は明るい。すごくいいチームとなって次回大会のダークホース的存在になる可能性がある。SCOが独立したら、どうなるのか、どのような影響がラグビー界にあるのか、これも気になるところである。
RUSは、短期間に強くなる可能性は低い反面、長期的には、どう見ても強くなる要素が多々ある。おそらく、いつの日か、W杯を開催することとなり、その時に、今回のJPN同様、少し高みに登れるのではないだろうか。
反則の少ないチームの「伸びしろ」は、意図した反則をどれだけ行えるか、にかかっている気がしている。SCO、RUSともに、まだまだ強くなれる、そんな期待をもたせるクリーンな(言葉を換えれば「淡泊な」)試合だった。
令和2年8月15日・記
( 参考 )
SCOボール
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
KO
|
-
|
-
|
1
|
-
|
1
|
S
|
1/1
|
3/3
|
2/2
|
1/1
|
7/7
|
LO
|
1/1
|
2/2
|
4/4
|
2/3
|
9/10
|
PK
|
1
|
-
|
-
|
2
|
3
|
FK
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
DO
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
計
|
3
|
5
|
7
|
6
|
21
|
(注) KOのうち1回は、後半開始時のもの。
S、LOの分母は、マイボールでの投入回数。分子は、そのうちのボール獲得回数。
PKの回数は、相手チームのペナルティ(反則)によって獲得したPKの回数。
SCOの得点
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
トライ(T)
|
2
|
1
|
4
|
2
|
9
|
T後のG
|
2
|
1
|
3
|
2
|
8
|
PG
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
RUSボール
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
KO
|
3
|
1
|
3
|
3
|
10
|
S
|
2/2
|
2/2
|
1/1
|
2/2-
|
7/7
|
LO
|
2/3
|
6/7
|
2/2
|
0/1
|
10/13
|
PK
|
2
|
1
|
-
|
1
|
4
|
FK
|
1
|
-
|
-
|
-
|
1
|
DO
|
1
|
-
|
-
|
-
|
1
|
計
|
12
|
11
|
6
|
7
|
36
|
RUSの得点
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
T
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
T後のG
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
PG
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
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