2020年8月23日日曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 39

      2019W杯・備忘録 39
  ~  M31 SCO/RUS ~

 スコットランド人以外のラグビー愛好者で、スコットランド・ラグビーを応援している人っているのだろうか?あまりにも「地味」すぎる、「華がない」。憎らしいほど強いわけでもない。敵意を抱くほどのこともない。よく言えば基本に忠実、要するに見ていても面白くない。だから、熱く応援するほどのこともない…

 1987年、W杯創設に最後まで反対したのが、ENG協会とSCO協会。よくも悪しくも保守的、進取の気性のかけらもない人びと!? なのだろうか。

 対するロシアも、いろいろな意味で人気がない。今大会は、「棚ぼた」出場。それにしても、弱い。開幕試合で、JPN相手に健闘し、中3日の対SAM戦前半は9-6とリードして折り返すも、後半は3-29と大差をつけられ、第3戦・IRE戦はゼロ敗(0-35)。弱点がどんどん露わになってきた、ということか。

 こんなチーム同士の対戦なのに(?)、なぜか会場は収容人員が横浜に次ぐ5万人余のエコパ。平日(水曜日)の1615分キックオフなのに、44,123人が観戦している。J-スポーツのアナウンサーによれば、16千人の小・中・高校生が招待されていたとか。それにしても、10日前のJPN/IRE戦(47,813人)で「聖地」となったエコパにこれだけの人々が観戦に来るとは、大会前、誰が予想できたであろうか。

 RUSボールでのキックオフ。終わってみれば、SCO9トライ・8ゴールの完封勝利。得点だけみれば、備忘録36で取り上げたM20 NZ/CANNZ9トライ・9ゴール・完封勝利に酷似している。NZ10番のモウンガがすべてのコンバージョンキックを決め、SCO10番のヘイスティングが一本外しただけが違う。この一本は、左サイドライン際からのもので「外れても仕方がない」。むしろ、右ライン際から2本決めていてヘイスティングのアタリもすごかった。そして、player of the matchは、モウンガであり、ヘイスティング。
 一方で、M20では、CANが相手ゴール前のPKを狙わずに得点機会を失している。J-スポーツの解説・田辺さんが後半開始早々「カナダはボーナスポイントを目指して4トライを目標に」といい、アナウンサーは残り10分あたりで「カナダの1トライを期待する声援が聞こえてきます」と言っている。それに対して、この試合、RUSの得点機会は皆無に等しかった。SCOは、完璧に抑え込んでいた。

 SCOのタックル成功率は、97%で全チーム最高値。ミスタックル数が3回。観ていても、「抜かれるシーン」がない。だから、RUSは、フェーズを重ねても前進できず、仕方なく蹴る以外の選択肢がなくなり、相手にボールを渡し攻め込まれる…

 それと、Pの数。SCO4回(ラック内でのハンド3回、ラインアウトでの越境1回)、RUS3回(ハイタックル、スクラムコラプシング、ショルダーチャージ)。両チームとも、おとなしすぎる。両チーム計7回というのは、今大会最小P数。

この試合と中3日後の M40 JPN戦の出場選手の関係を図にすると次のようになる。


JPN
先発
JPN
リザーブ
JPN
ベンチ外
RUS
先発

   3

   7

   5
RUS
リザーブ

   5

   1

   2
RUS
ベンチ外

   7

    -

   1

 興味深いのは、RUS戦のリザーブは、FW6人にBK2人。FWのうちの21番・リッチーはこの試合出場せず、中3日後のJPN戦で活躍する。また、BKのリザーブ22番・ピアゴズを後半6分・スクラムハーフのポジションにいれ、9番・ホーンをウィングに回して後半24分までの18分間、ウィングのポジションに慣れさしている。M14 JPN/IRE戦で、IREが後半20分にBKのリザーブ3人のうちの2人を投入し、28分、15番・カーニーが負傷交代する際、残っていたリザーブ・21番(スクラムハーフの予備)をウィングに入れざるを得なかったのを見ての「お試し」だったのか?

 この試合のレフリーは、当初レイナル(FRA)が割り当てられていたが、急遽、バーンズ(ENG)に変更になっている。安定した笛で、違和感を覚えることなく、安心して試合を見ていた。TMOになったのが、2回。いずれも、バーンズがSCOのトライを認めて笛を吹いた後でのTMO。そして、二度とも、ラストパスがスローフォワードと認められ、トライが取り消された。バーンズでスローフォワードとくれば、2007QFFRA/NZFRAの決勝トライを思い出さずにはいられない。
この試合のスローフォワードは、TMOでゆっくりと見ると、なるほど前にパスしているな、とわかる程度。それに対して、2007年は、明らかなスローフォワード。であるのに、当時はTMOがなかったので、トライが有効となり、NZは敗れ去った。あの敗戦があったから(?)、王者・NZは覚醒した気がしないでもない。
負けるが勝ち、失敗と書いて成長と読む…
 SCOの未来は明るい。すごくいいチームとなって次回大会のダークホース的存在になる可能性がある。SCOが独立したら、どうなるのか、どのような影響がラグビー界にあるのか、これも気になるところである。

 RUSは、短期間に強くなる可能性は低い反面、長期的には、どう見ても強くなる要素が多々ある。おそらく、いつの日か、W杯を開催することとなり、その時に、今回のJPN同様、少し高みに登れるのではないだろうか。

 反則の少ないチームの「伸びしろ」は、意図した反則をどれだけ行えるか、にかかっている気がしている。SCORUSともに、まだまだ強くなれる、そんな期待をもたせるクリーンな(言葉を換えれば「淡泊な」)試合だった。
            令和2815日・記

( 参考 )

SCOボール

0-20min.
20-40min.
40-60min.
60-80min.
  計
   KO
    -       
    -       
    1       
    -       
    1       
   S
    1/1     
    3/3     
    2/2     
    1/1     
    7/7     
   LO
    1/1     
    2/2     
    4/4     
    2/3     
    9/10    
   PK
    1       
    -       
    -       
    2       
    3       
   FK
    -       
    -       
    -       
    -       
    -       
   DO
    -       
    -       
    -       
    -       
    -       
  計
    3       
    5       
    7       
    6       
   21       
() KOのうち1回は、後半開始時のもの。
SLOの分母は、マイボールでの投入回数。分子は、そのうちのボール獲得回数。
PKの回数は、相手チームのペナルティ(反則)によって獲得したPKの回数。

SCOの得点

 0-20min.
 20-40min.
 40-60min.
 60-80min.
  計
 トライ(T)
    2
    1
    4
    2
    9
 T後のG
    2
    1
    3
    2
    8
 PG
    -
    -
    -
    -
    -

RUSボール

 0-20min.
 20-40min.
 40-60min.
 60-80min.
  計
   KO
    3       
    1       
    3       
    3       
   10       
   S
    2/2     
    2/2     
    1/1     
    2/2-        
    7/7     
   LO
    2/3     
    6/7     
    2/2     
    0/1     
   10/13     
   PK
    2       
    1       
    -       
    1       
    4       
   FK
    1       
    -       
    -       
    -       
    1       
   DO
    1       
    -       
    -       
    -       
    1       
    
   12
   11
    6
    7
   36

RUSの得点

 0-20min.
 20-40min.
 40-60min.
 60-80min.
  計
  T
    -
    -
    -
    -
    -
 T後のG
    -
    -
    -
    -
    -
 PG
    -
    -
    -
    -
    -

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