SATORUさま
このところ 「軍縮」 まったく 語られていません 人類って ほんと 愚か!?
2019W 杯・備忘録 266
〜 バスク 2 〜
現フランス代表のバスク人 オリボンとルキュー。同い年の二人は バスク地方の人口7000人の同じ町クラブで ラグビーを始める。その後 オリボンは バイヨンヌからトゥーロンへ ルキューは ビアリッツからボルドーへ移籍し 代表選手まで登り詰める。 代表戦・国歌斉唱時 常に隣り合わせで肩を組んで歌っている。
「エリサルド」 バスク語で「教会の前」 元日本代表HC:エリサルドは バスク人の父・ブルターニュ人の母から フランス中西部・ラロッシェルで生まれた。自己規定は バスク人。日本から戻って バスクに住み始めた。
2012年・2014年 スペイン国境 ピレネー山脈のフランス・バスクの村:バイゴリーのエリサルドの家に しばらく 居候した。当時 彼は テレビ解説者で 試合のある時はパリに出かけるが 平日は ご近所をぶらぶらして あちこちで「油を売っていた」。朝 起きると 村のカフェに行く。顔なじみの先客に「カフェ?」と尋ね 「ウィ」と答えてくると 珈琲を振舞う。席についていると 後から来た顔なじみが やはり 「カフェ?」と尋ねてくる。「ウィ」と答えると 珈琲を振舞ってもらう。なんだ 贈与互酬の連鎖だ。
西洋中世史研究者・阿部謹也(元一橋大学総長)が主張していた ㈰『私たち(注:日本人)は皆「世間」の中で生きている。この「世間」は欧米にはないもので、日本独自の生活の形である。』(阿部謹也『日本人の歴史意識』岩波新書874 2004年 p4) ㈪『「世間」の中に生きる人々の行動の原理は三つの原則によっている。贈与・互酬の原則と長幼の序、共通の時間意識である。』(同 p7)という「三つの原則」 バスクの村の日々の生活にも貫徹していた。バスクの村にも 「社会」はなくて 「世間」がある!?
エリサルドにくっ付いて歩いていると 村の中の至る所で 老人が日向ぼっこしている。エリサルドは 丁寧に 挨拶してゆく。「年寄りを大切にしなければ…」
村の中心には 教会。塔があり・鐘が鳴る。♪ や〜ま〜のお寺の鐘が鳴る ♪ と 同じような 時間が 村に流れている。
エリサルドが ふと こんなことを言った。「パリとここ パリは 格差が25倍 ここは 2倍。パリは 競争社会 ここは 分かち合うコミュニティだ。どちらが 幸せなんだろう。自分にとっては ここの方が住みやすい。」 で 「分かち合うって どういうこと?」と尋ねると 「現在 ここのジュニアのラグビーチームのコーチをしている。もう一人 コーチをしたいのがいるので 彼とコーチを分け合って それぞれ 別の曜日に コーチしてるんだ」 エリサルドが単独でコーチした方が 強くなるであろうに… 椅子取りゲームに狂奔しているパリ vs 必要な数の椅子を揃えるバスク か。
昼前になると 車で 別のカフェに行く。そこは ビアリッツ・サポーターの女将さんがやっていて ひとしきり ラグビー談議(主として ビアリッツとバイヨンヌの褒め・貶しあい)。「○○が文化として根付いている」って 床屋談議・井戸端会議の話題に上るということ でもある…
プロ化以前 長年にわたり 隣町:バイヨンヌ(人口5万人余)とビアリッツ(人口3万人弱)は ライバルでありながら フランス・ラグビー「圏」では バスクを代表する2チームであった。それが プロ化直後 ブランコの魅力で おカネを獲得したビアリッツが トップチームに上り詰めた。その当時 バイヨンヌは 1・2部の昇降格を繰り返すエレベーター・チーム 降格危機のときに エリサルドがHCになったこともあった。 2015年 「カネの切れ目」から ビアリッツは財政難に陥り ブランコが 「バイヨンヌとの合併・バスクに一つのビッグクラブを!」と提案するも 否決され 独自路線を模索し 2部に低迷している。一方 バイヨンヌは 地道な強化が実を結び始め(もちろん スポンサーも着実に増やしてきた) バスク出身の元代表選手:ロペス、イチュリアなどを移籍で獲得し 現在は 1部の中堅に位置するようになっている。
バイヨンヌは 現在1部14チーム中4位(直近のホームゲーム:観客13,291人)。ビアリッツは 2部16チーム中11位(同:5,000人)。
オリボンとルキュー バスクに戻って プレーする日がやってきてほしい。
今週のMidolの社説で 「かつての「村の鐘のラグビー」から クラブ主義へ移行しつつある」と フランスラグビー界の現状を解説している。プロ化の大先達:サッカー界では ビッグクラブのユニホームは全世界で販売され・サポーターも全世界に広がっている。もちろん 地域に根を張ったままでのことでもあるが マーケティングの対象は 広域化し続けている。ラグビー界も 同様に 「我が村・町のチーム」から プロ化・選手の移籍の加速があり 各チームの「地に根差した」固有のものが消えつつある。一方で ビッグクラブは 自らのアイデンティティーを確立すべく努力し続け・地域を超えたサポーター獲得を目指している と。地域人口を超えた関係人口の獲得が急務になってきている。
不可逆の世の流れに乗って ラグビーは どう変わってゆくのだろうか。
令和7年3月8日
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