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2019 W杯・備忘録 209
〜 M44 RSA/FRA 1 〜
2023年10月15日 W杯準々決勝 RSA 29-28 FRA
試合後の記者会見で、FRA主将デュポンは「レフリングが、この試合のレベルじゃなかった」と発言する。この夜の投稿サイトは、レフリー批判に満ち溢れていた。
翌日以降、敗因について、語られ続けている。以下、Midol紙上(ほぼ毎号、何らかの形でこの試合の敗因に触れている)での興味深いものを抜粋してみる。
10月20日付:
(6・7面)「TMO 5つの決定的な判定」と題して、ポワト(2019W杯レフリー)が解説している。
㈰ 7分:エツベツのノックオン
㈪ 17分:ダンティへのヘッドコンタクト
㈫ 22分:コルビのチャージ
㈬ 25分:ボールキャリアー・クリエルのタックラー・デュポンへの肘打ち
㈭ 47分:デュトイのノックオン
「WRが試合直後のレフリーミーティングで確認した5つのミス」と題して(ジャッジWR責任者は1月12日のロングインタビューの中で本件のWRの関与を否定している)
(FRAに不利なものとして)
㈰ 17分:ダンティへのヘッドコンタクト
㈪ 22分:コルビのチャージ
㈫ 68分:スミスのジャッカル
(RSAに不利なものとして)
㈬ 9分:プノーのタックル
㈭ 78分:ウォキのオフサイド
(6・7面)「FRAの7つの敗因」として
㈰ 7-0とリードしている時間帯のフィクーとプノーの連係ミス
㈪ RSAに3トライを45秒間で与えたこと
㈫ スクラム、試合が進むにつれて劣勢になったこと
㈬ 数的有利時に攻めきれなかったこと
㈭ ジャリベールとラモスのミス
㈮ エツベツのトライ時にジャリベールが孤立していたこと
㈯ 適切なコーチングの欠如・リザーブプレーヤーのインパクトのなさ
10月23日付:
(6面)「FRAは不利な笛を吹かれたか」と題して、「ウィ:そのとおり(=FRAに不利)」として1991・1995・2011・2023大会を、「ノン:逆(=FRAに有利)」として1987・2007・2011の事例を挙げている。
なお、1995主将・2015HCのサンタンドレは、「今回の敗北は、1995のRSA・2011のNZのような「ホームタウンデシジョン」の恩恵に預かれなかったことだ」と発言し、人びとの共感を呼んだ。
11月10日付:ガルティエ記者会見(試合後の会見後、沈黙を守っていたガルティエが8日記者会見を開き、その模様を記事にしている)で注目すべき点として「試合後、スタッフのガルセス(2019決勝レフリー・現FRAスタッフ)と詳細に試合を分析し、レフリングの疑わしい9シーンについて、ジャッジ・オキーフチームに送付し、彼らの解説を受けとった」と大過去で語っている。具体的な敗因は語らず、一部から批判を浴びた。
12月4日付:ハンセン(元NZ・HC)インタビュー
「ガルティエは準々決勝の敗北を踏まえて新チームを作り上げなければならない」という見出しで、「2007大会のNZはラグビー的には素晴らしいチームだったが、大勝負に向けてのメンタルの調整が欠けていた」と語っている。
12月25日付:ブロンカン(80歳、かつて「魔術師」と呼ばれたフランスクラブチームの名将。デュポン父・ヌタマック母などとも旧知の仲)インタビュー
Q:レフリーに関して、RSA戦をオキーフが吹いたことについてどう思われますか?
A:あの試合、バイリンガルのアルドリット(父親がスコットランド人)をキャプテンにすべきだった。あのような大舞台、レフリーは、とてつもない重荷を背負っている。そのレフリーの話す言語を使いこなせなければならない。キャプテンの務めは、レフリーの脳細胞に入り込むことだ、インフルエンサーとして。デュポンのようなアプローチではだめだ((注)デュポン父から7歳のデュポンの自慢話を聞いたこともこのインタビューの中で触れている)。そういうことを試合前に考えなかったことが悔やまれる。どんなレベルの試合でも、私はレフリングについて細心の注意を払ってきた。これは、大会前に私だけでなく何人かが言っていたことだが、レフリングにバラつきがある。レフリーは全てを正しくは吹けない。現代ラグビーは、ラックとスクラムについて、制御不能だ。
Q:何がFRAに欠けていたのでしょう?
A:大会初戦は「はじまり」にすぎない。1月経ってチームを頂点に持っていかなければならなかった。デュポンのケガが大きく報じられ続けた。これはスクラムハーフのルクー・クイユーをはじめチーム全体に悪影響を与えた。デュポンなしじゃ戦えない?ラグビーは、そんなもんじゃない。チームスポーツなんだ。一人がケガしたら、別の誰かが埋める。そういうもんだ。みんなが存在感を示す。それがチームなんだ。
Q:敗北については、どう分析されてますか?
A:フランスの地で戦うことで過剰なプレッシャーがあった。国民性として、些細なことでもドラマにしてしまう。フランス人は団結することが苦手だ。勝ってる時でも、攻撃が足りない・蹴りすぎだ・タックルに入ってない、というような紋切り型の批判がなされる。自由の代償だ。結果として、ベスト8敗退というこれまでの大会で最低の結果に終わった。
Q:ガルティエよりもエラスムスを評価しているようですが?
A:ガルティエは悪くはない。しかし、RSAの辿った軌跡、素晴らしいじゃないか、なんというチームだ。スミス、ポラード、ラインアウトスローの出来ないフーリー、大好きだ。エラスムスは、チームが大したことなくても限りない信頼感をチーム内に醸し出していた。
1月12日付:ジャッジ(現WRレフリー部門最高責任者、元コロミエのスクラムハーフ(ガルティエがジュニアチームのスクラムハーフ時の1軍プレーヤー)→国際レフリー(2007大会WAL/JPN戦も吹く)→2011大会FRAスタッフ→現職に)ロングインタビュー
Q:フランスでは、多くの人びとがレフリーのせいで負けたと思っているのだが?
A:大会前、フランスチームが人びとにどう受け止められていたのか。ピッチ上での良好なパフォーマンス・スタッフからの絶妙なコミュニケーション・黄金世代の出現・自国開催などなど、フランスは勝つはずだ、と思い込んでた。しかし、ラグビーは楕円球で争われる。バウンドは気まぐれだ。ルールも複雑だ。予想外のことも起きるよ。
Q:かつてチームスタッフでもあったから、試合後のデュポンの発言は理解できるのでは?
A:レフリーの責任者の立場で、あの発言に賛同することはできない。なんてたって、あの発言でオキーフに対する批判が激化したわけだし。もちろん、デュポンのことは理解しているし、彼のモラルを疑ってはいない。
Q:オキーフはいくつかのミスを犯し、それによって試合が覆ったのでは?
A:私たちは、試合後、彼のパフォーマンスをレビューした。その後、両チームのHCと私の間では、フランスの敗北はレフリングのせいではない、と了解し合っている。もちろん、我々もミスを認めるし、各試合後、両チームとレビューしている。関係者間での透明性は確保されているし、信頼に基づいて、両チーム関係者と話し合っている(部外秘)。本件に関しては、特にフランスサポーターから非難されている。しかし、フランスチームの選手・スタッフは、我々と同じ認識でいる。
Q:大会中、しばしば試合前のミーティングやメディアを通じてのレフリーに対する「ロビイング」が話題になりました。実際のところ、影響はあったのでしょうか?
A:試合前と後、信頼関係を基にしてミーティングを持っている。そこでは、両チームコーチ陣と率直に話し合ってる。たとえば、それぞれのチームが感じているレフリングの疑問点とか相手チームの疑わしいプレーとか。そういうのを質問され答えてる。こうしたことは継続されてきていて、コーチ陣の当面の関心事がわかるし、レフリングの向上に繋がっている。よき習慣だと考えている。
1月19日付:ガルティエ・ロングインタビュー(今年の六か国対抗前)
Q:これからのチームビルディングは?
A:選手たちにSNSで次のメッセージを送った。「フランスでは、失望が反抗を生み、反抗が戦闘を生み、戦闘が勝利を生む」。とても情熱的だ。また「恐れ、疑わなければ:向き合うこと:空中戦で勝つ:我が身を省みず」とか、チーム内ではシンプルにリスト化している。
Q:今後のチーム強化策は?
A:近年のWRとの共同作業で成果を得てきた。確かに、準々決勝の敗退で論議を巻き起こしたが、それは問題じゃないんだ。大会中、FRAは一番規律を守っていた(1試合平均Pは7)。一方で、違った分野を強化しなければと考えている。それはメンタルの強化だ。2年前から取り組み始めたのだが。
Q:具体的には?
A:メンタルの強さが試合結果に反映する。分析的に言うと、まず「点数化」する:一方のチームが「勢いのある時間帯」に得点するかできないか、それによって心理面でのポジティブ・ネガティブな影響が出る。それを数値化するんだ。ほかにも、ミスで笛を吹かれるか否か、自チームがボールを失った時とか、カードや「50-22」とか、試合中に生ずるシーンでのメンタル面での影響を数値化するんだ。これまでの試合で勝った時はこの数値も上回っており、負けた時は下回っていた。あのRSA戦もね。
Q:どういうことですか?
A:もっと冷静でいなきゃいけなかったんだ。特に、勢いのある時間帯で得点できなくても。たとえば? あのエツベツのプレー((注)おそらく6分のノックオンもどき)。あの時点でフランスはリードしていた、にもかかわらず心理面ではダメージを受けた。レフリーが笛を吹かなかったことにメンタルでネガティブな影響を受けちゃいけないんだ。なぜなら、フラストレーションが溜まるから。試合全般はよく戦ったんだが、余計なフラストレーションにエネルギーを使っちゃってたんだ。
Q:どうするんですか?
A:トレーニングするんだ。フラストレーションは伝染するっていうことを。誰かが頭を下げたら他の選手もそうしちゃうとか。どのラグビーチームにも起こることなんだ。だから、ピッチ上では一人の選手だけが話すべきなんだ。一人の選手だけがレフリーに気の利いた質問をするんだ、感情に流されずに。
Q:これからの4年間のゲームプランは?
A:ラグビーは3つの次元の高さで争われる:地面上、ヒトの高さ、空中。強化すべき点は明確に特定できている。それは地面上のプレー、ボール保持の有無にかかわらず。もちろん、ヒトの高さのプレーも向上させなければならないし、空中戦も大切だけどね。たとえば、RSA戦。空中戦では両チームとも33%((注)獲得率?)だった。でも、FRAは空中戦で負けたと思われている。なぜか? 空中戦直後の地上戦で負けていたのだ。一対一の空中戦でのコンテストの直後の地上戦、そこに改善の余地がある。
令和6年2月3日
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