2019 W杯・備忘録 187
~ 常識 ~
汗が噴き出ている暑い日、「水を飲むな!」と言われ・素直に従っていたことを思い出す。
「デブ」は走らない!? 走らない「デブ」の姿形は、すぐに浮かんでくる。華麗に走る「デブ」は、にわかには浮かんでこない…
ともかく、「デブ」が走れば戦力になる、すごい戦力になる。
Midolを読んでいたら、ガルティエFRAは、「重くて・機動的な」FWを目指してきた、とあった。その一つの到達点が、今年の六か国対抗FRA/IRE、FWの総重量がFRA:953kg、IRE:881kg、とのこと。
欧州クラブ選手権、2年連続で、IRE代表をずらりと並べたレンスターを破って優勝したラロッシェル、3番:アトニオ(196cm・145kg、元U20NZ代表・現FRA代表)+5番スケルトン(203cm・140kg、現AUS代表)が効いていた。「デブ」で「ノッポ」で走れる! 少なくともボールキャリアとして簡単に倒されず・前に出られる+ブレイクダウンできちんと仕事をする+ラインアウトでリフターとして機能し(スケルトンはキャッチャーでもある!)モールの核になる。照ノ富士がグランドを走っているようなものだ。現代版「巨神兵」・理想的な選手だ。
この一年、FRAラグビー界でよく話題に上っているのが、トゥールーズの5番:メアフー(203㎝・145㎏)、フランス選手権優勝チームでのトライ王でもある。そして、現在U20の5番を背負っているトゥイラギ(ペルピニヤン所属、192cm・149kg)。「デブ」で「ノッポ」で走れるこれら4選手、いずれもサモア系である。
ちなみに、先週末の前哨戦、JPNXV/NZXV、RSA/AUS、ARG/NZの先発FW8人の総重量は次の通り。
(単位:kg)
JPNXV | NZXV | RSA | AUS | ARG | NZ |
885 | 907 | 932 | 928 | 911 | 886 |
これをどう見るか。NZ、機動力のあるFWを優先しているのだろうか。FRA・RSAなどの重いFWとの闘いがどうなるのか、今年のW杯の注目ポイントではないだろうか。AUSは、HCが交代し、重くて機動力のあるスケルトンが先発出場した。彼を軸にしたゲームプランが浸透するか否か、気になる。
FWの消耗度はBKの比ではない。とすれば、リザーブにFWを多く置く方が理にかなっている気がする。現に、2019大会優勝のRSAは、それで勝ったと言っても過言ではない。であるにも拘わらず、多くのチームは「リザーブ(フィニッシャー)8人はFW:5人・BK:3人」を墨守している。
先週末の前哨戦3試合のリザーブの交替状況は以下の通り。
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | |
JPNXV | 2 46’ | 1 60’ | 3 46’ | 6 60’ | 8 46’ | 9 60’ | 10 56’ | 12 66’ |
NZXV | 2 57’ | 1 57’ | 3 68’ | 8 63’ | 7 48’ | 9 57’ | 10 57’ | 12 68’ |
RSA | 2 62’ | 1 62’ | 3 62’ | 5 53’ | 4 69’ | 6 64’ | 9 64’ | 15 72’ |
AUS | 2 64’ | 1 62’ | 3 62’ | 5 52’ | 6 38’ | 9 59’ | 12 52’ | 10 69’ |
ARG | 2 69’ | 1 65’ | 3 65’ | 5 62’ | 7 61’ | 9 65’ | 14 49’ | 13 53’ |
NZ | 2 46’ | 1 54’ | 3 61’ | 5 54’ | 6 67’ | 9 61’ | 15 61’ | 13 69’ |
(注)上段:交替背番号、下段:時間
本番でなく、各選手を試している段階なのだけれども、JPN(そしてNZXVだけ)は4番・5番ともに80分フル出場している。いささか気になる点である。
さて、消耗戦を戦い・試合を決める時間帯がやってくる。ガルティエFRA・HCは、この重要な時間帯を「プライム・タイム」と名付けて説明している。大会にとっての「プライム・タイム」は、夜。大会の試合は、①日中 ②薄暮 ③夜=ナイターで行われる。JPNの予選プール4試合のキックオフ時間は、13時・21時・21時・13時。ちなみに、各チームのキックオフ時間は次の通り。
ランキング | A | B | C | D |
1 | 21-21-21-21 | 17-15-21-21 | 21-17-21-15 | 21-21-17-17 |
2 | 21-21-21-21 | 15-21-21-21 | 18-17-21-17 | 13-21-21-13 |
3 | 13-17-21-21 | 17-17-21-21 | 21-17-17-21 | 21-17-15-13 |
4 | 21-17-17-21 | 21-17-21-17 | 18-14-17-15 | 15-17-21-17 |
5 | 13-21-21-17 | 15-15-21-17 | 17-14-17-21 | 13-15-17-15 |
予選プールの4試合、FRAは全試合・21時キックオフ。NZも全試合・21時キックオフ(NZ国内のテレビ視聴者は、どんな時間帯であっても起きて観る、ということなのだろうか)。それに対して、夜の試合がないのが、Pool・C:ランキング・4のジョージアとPool・D:ランキング・5のチリ。なんとなくわかる気もする。
今の暑さが9月以降どうなっているか?気になるところである。
おそらく、「革新」なるものは「常識破り」から生ずる。いつの間にか、センターは「抜きにかか」らず・ぶち当たることが常態化し、ウィングは両サイドにはっておらず・神出鬼没にボールにからみにくるようになってきた。RSAが幾たびか試みているグランド中央でモールを作りに行くプレー、熟度が増すと脅威になる気がしている。
令和5年7月15日
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