2019 W杯・備忘録 118
〜 SCO/FRA 〜
先週末、六か国対抗第3節の3試合が行われた。2019W杯後の3年間の同一カードの得点は次のとおり。
表-1 得点
SCO | FRA | ENG | WAL | IRE | ITA | ||||
2020 | 28 | 17 | 33 | 30 | 50 | 17 | |||
2021 | 27 | 23 | 24 | 40 | 48 | 10 | |||
2022 | 17 | 36 | 23 | 19 | 57 | 6 |
過去2年、SCOに苦杯を飲まされたFRAが敵地で快勝し、第3節が終わって、3連勝、首位に立っている。第4節IRE(ダブリン)、第5節ENG(パリ)、グランドスラムのかかる試合が待っている。
各試合のボール保持率は次のとおり。
表-2 ボール保持率
SCO | FRA | ENG | WAL | IRE | ITA | ||||
2020 | 47 | 53 | 39 | 61 | 48 | 52 | |||
2021 | 56 | 44 | 44 | 56 | 53 | 47 | |||
2022 | 58 | 42 | 49 | 51 | 60 | 40 |
各チームの特性、お互いの相性もあり、各チーム「ボールを保持≒早いリサイクルを繰り返し・敵陣に迫る」のか、「(将棋で言う)手を渡し(=ボールを相手に渡し)・攻撃的防御で相手を押し込めていくのか」興味深い。世界の潮流は、前者から後者へ変わってきている。それを顕著に感ずるのがIRE。HCの交代を受け、前者から少しずつ移行してきている。
各試合の地域支配率は次のとおり。
表-3 地域支配率
SCO | FRA | ENG | WAL | IRE | ITA | ||||
2020 | 44 | 56 | 50 | 50 | 47 | 53 | |||
2021 | 61 | 39 | 46 | 54 | 52 | 48 | |||
2022 | 49 | 51 | 52 | 48 | 65 | 35 |
今年のSCO/FRA、ENG/WALは共に、「ボール保持率:小・地域支配率:大」のチームが勝っている。これが成り立つには、キッキングゲームで勝ることと前に出るアグレッシブなディフェンス、これを支える15人のポジショニングの精度。
ペナルティ数は次のとおり。(カッコ内は、イエローカード・レッドカードの数)
表-4 ペナルティを犯した数
SCO | FRA | ENG | WAL | IRE | ITA | ||||
2020 | 7(0,0) | 11(1,1) | 10(1,1) | 6(0,0) | 8(1,0) | 10(0,0) | |||
2021 | 15(1,1) | 15(1,0) | 14(0,0) | 9(0,0) | 10(0,0) | 18(2,0) | |||
2022 | 12(0,0) | 9(0,0) | 13(0,0) | 13(1,0) | 9(0,0) | 8(1,1) |
カードが出されると劣勢になる。どのレフリーが吹いたかでも、かなりの数の変動がある気がしている。
タックル成功率、WOWOWの解説で栗原さんが「90%が一つの目安」と語っていた。
表-5 タックル成功率
SCO | FRA | ENG | WAL | IRE | ITA | ||||
2020 | 92.56 | 90.91 | 91.53 | 92.68 | 91 | 85 | |||
2021 | 87 | 92 | 93 | 89 | 91.84 | 86.03 | |||
2022 | 78.2 | 86.0 | 89.1 | 89.8 | 89.7 | 87.7 |
興味深いのは、2022の3試合では、どのチームも90%以下であること。見ていて感ずるのは、FRA・ENG・IREは「躊躇せずに飛び込んでいる」。
信じられないスタッツがあったのが、ラック獲得数。
表-6 ラック数
SCO | FRA | ENG | WAL | IRE | ITA | ||||
2020 | 49 | 99 | 64 | 126 | 93 | 84 | |||
2021 | 121 | 71 | 70 | 83 | 104 | 91 | |||
2022 | 95 | 37 | 110 | 109 | 118 | 68 |
今回のFRAは「37」で大勝(6トライ)している。2019W杯決勝ラウンド7試合では、準々決勝ENG/AUSでENGが「48」(4トライ)で勝っている。
ラックは攻撃の起点になるが、一方で、ターンオーバーの危険とともにPを冒す危険も伴っている。タックルされても倒されずにボールをパスする(オフロード)のスキルが目覚ましく向上している。2023に向けてこの傾向は強まる気がする。
( 参考-1 )
2022-6-3 SCO/FRA経過表
二列目:S:SCOの得点経過
三列目:F:FRAの得点経過
四列目:SP:SCOのP
五列目:FP:FRAのP
Pのうち「R+」はマイボールラックでのP、「R-」は相手ボールラックでのP
「G-」はPGを狙い外したもの。
前半
分 | 5 | 7 | 10 | 12 | 19 | 21 | 23 | 26 | 27 | 28 | 30 | 32 | 38 | 40 | 42 |
S | 3 | 10 | |||||||||||||
F | 7 | 12 | 19 | ||||||||||||
SP | R+ | R+ | L | S | L | ||||||||||
FP | G= | R- | S | F | F | R- | R+ |
7分のFRA・TGは、SCOのロングキックをキャッチしたFRA・9番のビッグゲインから。12分のFRA・Tは、キックの蹴り合いでFRA・15番のロングキックで「50:22」のラインアウトから。これでFRAの制空権が確立した。
後半
分 | 41 | 47 | 48 | 52 | 53 | 56 | 59 | 62 | 64 | 67 | 70 | 72 | 73 | 78 |
S | 17 | |||||||||||||
F | 26 | 31 | 36 | |||||||||||
SP | R+ | R+ | L | R+ | R+ | R+ | S | |||||||
FP | R- | G- | R- | R+ |
後半、SCOは、制空権を持てないまま、「ボールを持たされて」「パスを回して・クラッシュしてラックを形成し・再びパスを回して…」マイボールラックでジャッカルに会い「P」を重ねている。
( 参考-2 )
2022-6-2 FRA/IRE KSLPFD図
「分」は得点時間
大文字は勝者 小文字は敗者のボール支配
K:キックオフ
S:スクラム
L:ラインアウト
P:ペナルティ (PG*はPGを狙って外したもの)
F:フリーキック
D:ドロップアウト (D*はゴールライン・ドロップアウト)
- :関連するリスタート
分 | 得点 | |
7 10 12 28 42 | K-s s-F p-PG* d TG k P=pg K L T k L l S p-L s-P-l L-p-L P l P tg K P-l S P-l s S S-p-L-p-L TG | 7- 0 7- 3 12- 3 12-10 19-10 |
41 59 74 79 | k l TG k S s P-l p-L l l l l p-L-p-PG* d p-L T k l P-l p-L s p-L d* P-l-s-p-L T k l-f l s tg K | 26-10 31-10 36-10 36-17 |
この日のFRA・15番と7番は、これまでで最悪の出来。それでも勝ってしまうところにFRAの選手層の厚さが出ている。この日もFRAのリザーブ(ガルティエ体制になってからは「フィニッシャー」と呼んでいる)は、FW・6人、BK・2人。試合中にケガ人が出ず、ほぼ想定通りの選手交代が出来、フレッシュレッグが期待通りのインパクトを与えていた。
平成4年3月5日
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