2022年3月13日日曜日

岡島レポート・ 2019 W杯・備忘録 119

                                            2019 W杯・備忘録 119

  ENG/WAL 
 
 六か国対抗:第3節と第4節の間に一週間の休みがある。前回は第3SCO/FRAに焦点を当てたが、今回はENG/WALを中心に見ていく。
 スタッツを見ていて、アレっと思ったのが「Lineouts Won」と「Opposition Lineouts Stolen
次のようになっている。
 
-1 Lineouts Won
 
 
ENG
WAL
 
SCO
FRA
 
IRE
ITA
2020
 
   5
  14
 
  11
  12
 
   9
  15
2021
 
   4
  16
 
  18
  12
 
  13
  12
2022
 
   6
  14
 
  14
  12
 
  18
  12
 なぜか、ENGだけが少ない。しかも、この3年間、同じ傾向である。同一チームの対戦は、同じような試合内容になるのだろうか。
 
-2  Opposition Lineouts Stolen
 
 
ENG
WAL
 
SCO
FRA
 
IRE
ITA
2020
 
   1
   0
 
   0
   0
 
   3
   1
2021
 
   1
   1
 
   1
   2
 
   1
   0
2022
 
   2
   2
 
   1
   0
 
   1
   1
 素人目には、ENGのラインアウトだけが優ってる気はしない。現に、スチール数も飛びぬけているわけではない。でありながら、ENGのラインアウト数が少ないということは、WALが意図的にタッチに蹴り出さないと考えられうる。
 ラインアウトの原因は、㈰攻め込まれたチームが自陣22m内からタッチに蹴り出したことによる相手ボールラインアウト ㈪PKを得たチームがタッチに蹴り出すことによるマイボールラインアウトの二つが多い。
 このうち、㈪については、次のような数値が参考となる。
 
-3 PGを狙った回数/PKを得た回数
 
 
ENG
WAL
 
SCO
FRA
 
IRE
ITA
2020
 
  4/ 6
  3/10
 
  3/11
  2/ 7
 
  1/10
  1/ 8
2021
 
  5/ 9
  4/14
 
  2/15
  2/15
 
  2/18
  1/10
2022
 
  7/13
  0/13
 
  2/ 9
  6/12
 
  0/ 8
  3/ 9
 
-4 PKを得たうち、PGを狙わなかった回数
 
 
ENG
WAL
 
SCO
FRA
 
IRE
ITA
2020
 
   2
   7
 
   8
   5
 
   9
   7
2021
 
   4
  10
 
  13
  13
 
  16
   9
2022
 
   6
  13
 
   7
   6
 
   8
   6
 これらからは、WAL、攻め込まれても「安直に(?)」タッチに蹴り出さないということが推測される。それを直接表しているわけではないが、パス総数は次のとおりである。もちろん、天候・グランドコンディションなどに左右される。
 
-5 パス総数
 
 
ENG
WAL
 
SCO
FRA
 
IRE
ITA
2020
 
  119
  240
 
   98
  131
 
  164
  139
2021
 
  127
  126
 
  147
  137
 
  144
  157
2022
 
  159
  220
 
  187
   97
 
  280
   83
 2019W杯前後でHCがエディー・ジョーンズで変わっていないENGHCが変わったWALWALは、2019W杯までのガットランドのラグビーから脱皮しようと模索しているように見受けられる。それが特徴的に出ているのが、オフロード数。
 
-6 オフロード数
 
 
ENG
WAL
 
SCO
FRA
 
IRE
ITA
2020
 
   4
   8
 
   3
  13
 
   8
   5
2021
 
   3
   1
 
   7
   6
 
   5
   6
2022
 
   6
  14
 
   5
  10
 
  10
   4
 2019W杯では、WALIREのオフロード数はRSAと並んで少なかった。それが両チームともにHCが変わって戦術も変わってきている。
 六か国対抗、手の内を知り尽くした同士の戦いである。新人が出てきても、ほとんどの選手はどこかで戦っている。癖・弱点は周知のことだ。新戦術を試しても、1週間もあればかなりの分析されてしまう。
真の戦いの場は、次のW杯。各チームが何を試し・求めているのか、気になる今年の六か国対抗である。
 
( 参考-1 )
2022-6-3 ENG/WAL経過表
二列目:EENGの得点経過
三列目:WWALの得点経過
四列目:EPENGP
五列目:WPWALP
Pのうち「R+」はマイボールラックでのP、「R-」は相手ボールラックでのP
G-」はPGを狙い外したもの。
 
前半
1
1
4
9
11
12
13
15
20
22
29
35
40
E
 
3
6
9
12
W
 
EP
F
 
 
S
M
 
 
G-
 
S
 
R+
 
WP
 
R+
R+
 
 
R+
M
R-
R-
 
R+
 
R-
 得点経過だけから見れば、ENG、好調と言えるかもしれない。しかし、20分のWALPは、WALゴールライン付近のENGボールラックで手を使ったものでイエローカードが出された。このPENGはスクラムを選択して・コラプシングのPを取られている。結局、シンビンの10分間の最後にPGを決めて3点を加点しただけに留まった。結果論かもしれないが、イエローカードが出されたPはペナルティトライが正当な気もする。そう判定されていたら、試合はワンサイドになっていたかもしれない。
 
後半
42
47
50
51
52
57
58
58
66
69
70
74
75
77
79
79
83
E
17
20
23
W
 
5
12
19
EP
 
S
 
F
 
O
M
 
 
 
 
 
R+
R-
R-
 
F
WP
 
 
R+
 
 
 
 
 
R+
S
L
S
 
 
 
 
 
 後半最初のENGの得点は、WALゴール前WALボールラインアウトでのスローミス(?)からのトライ。ここでワンサイドゲームになるかと思われたが、なぜかWALが盛り返す。不思議な力を持ったチームだ。70分、23-12となって、このまま終わるのかと思っていたら、79分にWALがトライ・ゴールで4点差に。ENGのキックオフからWALはフェーズを重ね、ただし、地域的にはほとんど前進できず、時間の問題と思ったら、ENGに故意のノックオンのP。それをタッチに蹴り出してENG陣内のWALボールラインアウトで再開。そこで力尽きた。最後、守り抜いたENGも流石だし、試合を捨てずにノーサイドまで愚直にプレーするWAL、どちらもすごい。
 
( 参考-2 )
2022-6-3 ENG/WAL KSLPFD
「分」は得点時間
大文字は勝者 小文字は敗者のボール支配
K:キックオフ
S:スクラム
L:ラインアウト(L*は、50:22)
P:ペナルティ (PG*PGを狙って外したもの)
F:フリーキック
D:ドロップアウト (D*はゴールライン・ドロップアウト)
- :関連するリスタート
 
 
得点
2
4
30
41
K P p=PG
k p=PG
k s-f-s-P-l-P-l p-L-p-L p-PG* d L p-S-P-l S l S l p=PG
k s L L* P-l p=PG
3- 0
6- 0
9- 0
12- 0
42
53
60
67
71
79
k l T
k l s-P-l l p-L P-l l t
K P-l-P-l tg
K p=PG
k S-p-L-p=PG
k S-p-L P-l P-l P tg
K P-l
17- 0
17- 5
17-12
20-12
23-12
23-19
 
 前後半、開始早々、ENGが得点している。今年から試験的に導入されている「50:22」、威力抜群だ。この試合では、1回。前半35分、ENG12のキックでWALゴール前6mのラインアウトになっている。ただし、そのラインアウトからは得点に至らなかった。
 この試合、というか、両チームの「意地の張り合い」が端的に出たのが、60WALのトライゴールで5点差になった直後のシーン。テレビの時計では「6134秒」にENGがリスタートのキックオフ。次に笛が吹かれたのは「6617秒」。5分弱ゲームが止まらずにボールが動き続けている。このプレー中、両チーム1回ずつノックオンをしているが相手チームが瞬時に反応してプレー継続⇒アドバンテージ解消となっている。WAL、何度か22m内からタッチに蹴り出し=ゲームを切る選択があったが、すべてフィールド内に蹴り返している。時間帯、ゲームの流れ、彼我のリザーブ(=選手層の厚さの相違)などから、結果論だけれど、試合を切る選択もあったのではないか、と思われる。
 
平成4312
 

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