2020年10月11日日曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 47

  2019 W杯・備忘録 47

        ~  オフロード ~

  近年の戦術として、ボックスキックと同じく「革命的」なのがオフロード。

 大会前に出版されたフランスの本では、「オフロード、それは現代ラグビーの必然的・運命的な武器である。しかし、それは少し誇張が過ぎるのかもしれない。アイルランドは、ほとんど試みないのにランキングの最上位にいる。一方、フランスは、近年、多用しているが、よく試合に負けている」と紹介されている。

  今大会の予選プール、IREは、SCO戦・2JPN戦・6RUS戦・13SAM戦・6であり、FRAは、ARG戦・13USA戦・14TON戦・14であった。

  ワールドラグビーのスタッツのうち、攻撃は9項目がカウントされている。そのうちの一つが「オフロード」。決勝ラウンド7試合のオフロード回数は次の通り。

 

 QF1

 QF2

 QF3

 QF4

 SF1

 SF2

  F

勝者

   2

  14

   3

   2

   8

   2

   4

敗者

   8

   3

  11

  12

  15

   2

  12

  オフロード大国NZは、戦略・戦術に組み込まれている。だから、どの試合でも、二ケタのオフロードがある。うまくいったのが、QF2・対IRE戦、逆に機能しなかったのがSF1・対ENG戦。NZにして、「諸刃の剣」でしかないのかもしれない。

  オフロードがハイリスクであることは間違いなさそうである。準決勝第2試合 RSA/WALは、両チームとも「勝ちに徹して」リスクを避け、オフロードは使っていない。これがオフロードの象徴的数値のような気がしている。

  ちなみに、予選プールでは、RSAは、NZ戦・2NAM戦・12ITA戦・10CAN戦・9WALは、GEO戦・6AUS戦・5FIJ戦・5URG戦・12であり、やろうと思えば十分できるテクニックは身につけている。

  ENGは、準々決勝対AUS戦は2回、準決勝対NZ戦は8回に対して、決勝では12回使っている。「リスクを取ってでも」という攻めの姿勢の表れのような気がする。

  数値で見ると、JPNも、対戦相手に応じて、使い分けていた。

 JPNのオフロードの内訳は次の通り。

 

 RUS

 IRE

 SAM

 SCO

 RSA

F

W

中島 ・1

堀江 ・1

リーチ・2

ツイ ・1

リーチ・1

ムーア・1

ラブス・1

堀江 ・1

トンプ・1

ムーア・2

トンプ・2

リーチ・3

ラブス・2

姫野 ・2

B

K

中村 ・1

ラファ・3

レメキ・2

ラファ・1

松島 ・1

福岡 ・2

トゥポ・2

松田 ・1

福岡 ・1

中村 ・1

    9

    4

    3

    8

    12

  偏見と言われるかもしれないが、片仮名名の選手の回数が多いなと感ずる。

 準々決勝RSA戦の12回という「リスクを取ってでも」という戦う姿勢、そのうちの9回はFWの選手だったというのは印象的である。

  今大会のJPN200日余の事前合宿中にさまざまな準備がなされ、その中にオフロードのテクニック向上も含まれていたのかと思われる。

 一方、オフロード大国のNZFIJでは、子どもの頃からオフロードにチャレンジしている。そして、代表に召集される選手一人ひとりの基礎技術の中に入っている気がする。これに対して、日本の高校・大学ラグビーの現状は、どちらかというと「封印・禁止」している感がある。

未来のジャパン・ラグビーを担っていくジュニア層でオフロードがどのように取り入れられてゆくのか、興味深いものがある。

 *************

  先週末、フランス・ラグビー協会の一年半以上の選挙戦が終わり(なんとW杯前から対立候補の全国遊説が始まっていた)投票の結果、ラポルト会長の再任が決まった。しかし、得票割合は、ラポルト・51.47%、対立候補のグリル・48.53%という僅差であった。

 一年半の選挙期間で、①各候補の主張は鮮明になり、②フランス・ラグビーの方向性が明示的に議論されたこと、③リストによる選挙ということで会長候補者だけでなく他の役員になる候補者も併せて提示されていることから「誰(どの有力者)がどの会長候補を支持しているか」が明らかになっていること ④投票権を持つ組織(基本は地域のクラブ)の意向が反映されている等の点で参考にすべき事例だと思われる。

  今年に入って出版された『あの感動と勇気が甦ってくる ラグビー日本代表 ONE TEAMの軌跡』(藤井雄一郎 藪木宏之著 伊藤芳明文・構成 講談社)では 「森の乱」という小見出しでこんな文章が綴られている。「そんなときにメディアを驚愕させる事態が起きました。背景はいまだに不明な部分が残りますが、ワールドカップ開催を目前に控えた時期の異様な出来事ではあるので、事実関係を記しておかないわけにはいかないと思います。」(p69)として、昨年の日本ラグビー協会の役員改選の表面的な経緯が書かれている。よくぞ、この件に触れてくれたという気がすることも事実である。しかし、日本ラグビーの運営責任者が、誰のどのような考えで決められているのかすら明らかでないというのは、いかがなものか、と感じている。

  何といっても、日本ラグビー協会は、英語では、JRFUJapan Rugby Football Union)であるが、人的結合体としてのUnionではなく、財団法人として法人格を取得している。この点は、組織論(あるいはガバナンス)の原点でもあり、まずは、財団法人であることの是非・その適否についてきちんと議論すべきだと感じ続けている。

                              令和21010日 

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