2019 W杯・備忘録 191
〜 FIJI 〜
ダニエル・エレロ『プレー精神・人びとの魂(L’esprit du jeu l’ame des peoples)』の中でラグビー主要各国の様々な興味深い点に触れている。FIJIの件では、1987年W杯第1回大会準々決勝FIJ/FRA戦でFRAが苦しめられた場面から書き出されている。FIJの華麗な展開ラグビー(当時から今に至るまで、セブンスの雄)に対してFRAはひたすらFWをゴリゴリ当てて勝利をものにした、と(31-16)。
歴史的には、かつて英国の植民地になり・綿花、サトウキビのプランテーションが経営され・労働力としてインド人が連れてこられ・現在でも多くのインド系住民が住んでおり・彼らが経済を支配しているがラグビーは行わない…と紹介されている。前回の備忘録:フィジーの宗教欄「ヒンズー教(28%)」は、こういうことだと納得する。
さて今秋、爆発力を有している最右翼がフィジーではないだろうか。バックスには桁外れの瞬発力+突進力を有するランナーが並んでいる。
22/23フランスTop14終了後にMidolが格付けした各ポジション別の活躍選手、センターでは、㈰ツイソバ(FIJ、先週のJPN戦は欠場) ㈪ダンティー(FRA) ㈫フィクー(FRA) ㈬ガイトン(FRA 先週のSCO戦初キャップ。20歳で今夏のU20W杯を欠場し・フル代表合宿に参加している) ㈭セウティニ(SAM JPN戦に出場) ㈮アキ(元NZ 現SAM)㈯チョコバレス(ARG) ㉀マンガラ(FIJ JPN戦フルバックで出場) ㈷ナカヤレブ(FIJ JPN戦主将) ㉂ワード(RSA)の順になっている。
また ウィングでは ㈰ワイニコロ(FIJ JPN戦出場) ㈪ラカ(FRA FIJ系) ㈫リード(RSA) ㈬プノー(FRA) ㈭デュモルティエ(FRA) ㈮ラポルト(FRA) ㈯イモフ(ARG) ㉀ルベル(FRA) ㈷コルデロ(ARG) ㉂ルティエール(FRA)の順となっている。こういう選手を毎週見ているから、MidolでのFIJの評価は高い。
フィジーと同組のジョージアのフルバック・ニニヤシュビリ(21歳・リヨンでツイソバとプレーしている。Midolのフルバック・ランキングで8位)は、W杯におけるジョージアの最大の敵はAUSでもWALでもなくFIJだと語っている。
FIJの問題は、綺羅星のごとくいるランナーを揃えたバックス陣に対してFWが見劣りすること。ここが「そこそこ」戦えれば、「1抜け」が視野に入ってくる。
2019大会終了後、フィジー代表HCに欧州で活躍し続けてきたコッター(NZ人、2015大会SCOHC)が就任し、その「本気度」が喧伝された。が、そのコッターが、今年2月、「一身上の都合で」退任した。そのコッター、来シーズンはスーパーラグビー・ブルーズのHCに就任することが決まっているが、最近、ルーマニア協会から「2023W杯ルーマニア代表のコンサルタント」に就任することが発表された。それに関連してのMidolのインタビューで「フィジー内の政変により、「フィジー人によるフィジー」・外国人排斥機運が支配的になり辞めざるをえなかった(=一身上の都合≒自己都合でやめたのではない)」と発言している。こういうこともフィジー・ラグビーの一側面のようだ。
ともかく、2023W杯PoolCの三強:WAL・AUS・FIJは、ともにHCの交代劇を受けての代表選考で臨む急造チームである。そこに、ジョージアが加わり(他の1チームは世界最終予選で勝ち上がってきたポルトガルで、戦力的には劣る)拮抗した試合が続きそうだ。
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先週末のSCO/FRA、SCO・3番がイエローでシンビンに、数分後「バンカー」でレッドに決定。「バンカー」に関して、2019W杯決勝を吹いたガルセス・現FRAコーチは、Midolの取材に対して「「バンカー」によってレフリーは重責から解放される・一方で、チームはイエローがレッドに変わるリスクを10分間負わされる・自分(ガルセス)の務めは素早く「色」の判断しHCに説明することだ」と言っている。今大会では、「バンカー」とともにゴールキックの際の時間表示がなされることになった(フランスTop14では採用済)。これも微妙に影響がありそうだ。
さて「バンカー」で色の変わったSCO・3番・ファーガソンは3週間の出場停止になり、W杯初戦(対RSA)は欠場する見込みのようだ。
ところで、この試合を吹いたオキーフ(NZ)、FRAに向かってはフランス語で話し・説明していた。彼は2年前あたりからフランス語も話すようになっている。現時点では、ENGのレフリーたちとともにフランス語を話している希少価値を有するレフリーである。決勝にFRAが進むと、史上初、決勝戦のピッチでフランス語も話されることになるのかもしれない。
ENGのメディアでは、開幕戦:FRA/NZのレフリーはペイパー(RSA)に決まったと報じたようだ。ペーパー、2019大会準々決勝FRA/WALの主審を務め、試合後のWALサポーターとの不適切な「戯れ」でFRAから非難を浴びていた。今年の欧州クラブ選手権の決勝も吹き、試合メンバー外のセクストンから不適切な暴言を受けたと証言し・その結果セクストンは3試合出場停止処分を受けているところである。大会の注目レフリーの一人である。
令和5年8月12日
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