2019 W杯・備忘録 156
~ ANS2022 第4週 ~
先週末、ANS2022第4週・6試合が行われた。引き分け1試合、僅差の試合2試合、大差の試合3試合。
* ENG(25-25)NZ。得点経過は、3分:0-7 8分:0-14 24分:3-14 40分:3-17
41分:6-17 49分:6-22 70分:6-25 71分:11-25 73分:18-25 79分:25-25。
70分戦って、19点差でNZリード(この時点まで、ENGはノートライ)。残り10分間でENG3トライ。NZ、強いのか、弱いのか、ともかく「脆い」気がする=本番で勝ち切る・勝ち抜く何かが欠けている。
一方のENG、ラスト10分の猛攻・大量点で追いついたことで、欠陥が見えにくくなり、好印象が残っているが、真の実力、測りがたい。
* WAL(12-13)GEO。得点経過は、1分:0-3 19分:7-3 23分:12-3 60分:12-10
77分:12-13。WAL、前半20分前後の2トライ・1ゴールのみ。点が取れない。どんどん「凡庸」なチームになってきている。
GEO、今秋、ホームで7日ウルグアイに34-18で勝利、13日サモアに19-20で敗北、たしかに着実に成長してきているようだ。
そしてサモア、この時期に3試合代表チームで戦えるのはめずらしい=本番に向けて、これまで以上の準備ができる=JPNにとって脅威になりそうだ(来年の本番でJPNと同組)。サモア、GEOに勝利した翌週、ルーマニアの地でルーマニアに22-0で勝利している。
表-1 対戦相手の前者が勝者
ENG/NZ | GEO/WAL | IRE/AUS | FRA/JPN | SCO/ARG | RSA/ITA | |
得点差 | 0 | 1 | 3 | 18 | 23 | 42 |
勝者の得点 | 25 | 13 | 13 | 35 | 52 | 63 |
敗者の得点 | 25 | 12 | 10 | 17 | 29 | 21 |
勝者P(%) | 54 | 54 | 44 | 59 | 54 | 58 |
勝者T(%) | 63 | 46 | 48 | 51 | 55 | 53 |
(注) ENG/NZは引き分け。「勝者P」「勝者T」はENGの数値。
* このシリーズ、僅差の試合を演じ続けているAUSが、またも3点差負け。「歯車が一つ嚙み合っていない」のだろうか。
* 前2試合フラストレーションの溜まったRSA(IREに3点差、FRAに4点差で敗北)が「弱いもの虐め」でITA相手に後半7トライ。ENG/JPN戦の大差もさもありなん、という気分にさせてくれた。
表-2 「% Possession Kicked」「Total Passes」「Rucks Won」「Tackle Made(%)」「Attempted Tackles」
ENG | NZ | GEO | WAL | IRE | AUS | |
% P. Kick | 6.0 | 7.9 | 15.8 | 12.6 | 10.1 | 8.6 |
Total Pass | 147 | 106 | 116 | 148 | 138 | 172 |
Bad Pass | 4 | 9 | 11 | 8 | 5 | 10 |
Ruck Won | 99 | 62 | 77 | 67 | 72 | 106 |
Tackle(%) | 81.3 | 89.9 | 93.6 | 91.3 | 86.8 | 88.9 |
A.T. | 123 | 179 | 125 | 161 | 205 | 135 |
* WAL/GEO、キック率の高さ=蹴りあい、タックル成功率の高さ≒両チームのアタック力の低さの象徴のような数値だ。
表-2 つづき
FRA | JPN | SCO | ARG | RSA | ITA | |
% P. Kick | 13.4 | 12.3 | 5.6 | 13.5 | 8.1 | 10.7 |
Total Pass | 156 | 146 | 173 | 81 | 167 | 110 |
Bad Pass | 8 | 9 | 8 | 5 | 11 | 7 |
Ruck Won | 92 | 56 | 58 | 78 | 73 | 54 |
Tackle(%) | 89.4 | 79.7 | 92.2 | 77.7 | 78.0 | 88.5 |
A.T. | 104 | 187 | 141 | 188 | 118 | 139 |
* FRA/JPN、試合開始からの雨がどの程度影響したのだろうか。
表-3 「P.C.(犯したペナルティの数、()内はイエローカード、レッドがARGに一枚出された) 以下は原因別内訳
ENG | NZ | GEO | WAL | IRE | AUS | |
P.C. | 15(0) | 14(1) | 10(0) | 10(1) | 12(0) | 12(1) |
うちRuck | 4 | 7 | 2 | 5 | 5 | 7 |
Maul | 3 | 0 | 1 | 0 | 1 | 1 |
Scrum | 2 | 1 | 2 | 3 | 1 | 1 |
Lineout | 1 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 |
Offside | 4 | 5 | 1 | 1 | 1 | 1 |
* ENG/NZ この週6試合の中で最多の「P」、中でもオフサイドによる「P」が最多。両チームの選手の規律が他のチームに劣っているのだろうか、それとも、熱い試合に「我を忘れて」しまったのだろうか? 気になったのは、この試合のレフリー・レイナル(FRA)、夏のチャンピオンシップAUS/NZ戦の最終盤にAUS・10番の遅延行為を取り・AUSのPKを取り消した人でもある(一月ほど前に発表されていたWRのレフリー割り当て予定では、この試合のレフリーはベリー(AUS))。とにかく「独特」「個性的」な笛を吹く(ただし、純粋主観的に吹いていて、どちらかのチームに「偏向」することはないのが救いだ)。
* WAL/GEO 73分:レフリーが一旦はWALのトライの笛を吹くもTMOで直前にノックオンが認められ・GEO陣22m内のGEOボールスクラム→このスクラムでWAL「P」→GEOタッチに蹴りだし・GEOボールラインアウト→GEO展開するもノックオン・WAL陣に入ったあたりでWALボールスクラム→このスクラムでWAL「P」→GEO:PGを決めて逆転→WALキックオフ・GEOキャッチするもラックアンプレヤブルでWALボールスクラム→このスクラムでWAL「P」。ここだけ取り出すと、「GEOのスクラムの強さが爆発した試合だった」となり、おそらく記憶に刻み込まれることになる。しかし、このシーンまでの試合開始からの70分余では、WALボールスクラム5回(うち1回でGEOに「P」)、GEOボールスクラム9回(うち1回でGEOに「P」)とWALがスクラムで圧倒していたかの記録が残っている。
表-3 つづき
FRA | JPN | SCO | ARG | RSA | ITA | |
P.C. | 7(0) | 8(0) | 11(2) | 12(3) | 11(0) | 10(0) |
うちRuck | 4 | 5 | 6 | 6 | 6 | 6 |
Maul | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
Scrum | 0 | 1 | 1 | 3 | 0 | 1 |
Lineout | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 1 |
Offside | 2 | 0 | 0 | 1 | 1 | 2 |
* ARG、「レッド1枚にイエロー3枚」これだけ見ると「荒い」チームの印象を受ける。しかし、具に見てみると、レッドが出されたのは23分:ARGボールスクラムでSCOの「P」、アドバンテージが出ていてARGが展開し・ラックが出来た後でのスイープに入ったARG・7番がヘッドコンタクトで「レッド」。イエロー1枚目は48分:SCOボールラインアウトをスチールし・SCOのノックオンがあり・アドバンテージの中・ラックでの入り方でARG・4番にイエロー。つまり、最初の2枚は、相手チームのミス・反則がありアドバンテージが出ている中でのもの。「とっとと笛を吹いてくれていたら、こんなことにはならなかった…」。このイエローで15人対13人になってた直後のSCOボールラインアウトからのモールでコラプシングを犯し、ARG・5番にイエロー(なんと、二列目二人がイエローでシンビン!)。15人対12人になり、SCOはARGゴール前で得たPKでスクラムを選択。なんとこのスクラムからSCOにschool boy’s rugbyのドタバタがあり、ARGがトライ!ゴールも決まって、24-22と追い上げる。さすがに直後のキックオフからSCOがトライ・ゴールで突き放す。62分、ARGゴール前タッチラインで「大乱闘」。喧嘩両成敗で、SCO・7番(主将)とARG・1番にイエロー。80分過ぎ、ARGの猛攻でSCO・12番にイエロー。14人対14人で86分にARG・トライ&ゴール。ARGの「意地」を見た気がする。かつてのARGは確かに粗削りだった。しかし、近年のARGは洗練され・規律が行き届いている気がする。来年の本番、JPN/ARG、どんな試合になるのだろうか。
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Midol(11月25日付け)では、海外の噂として、来年のW杯終了後、①ジョセフ:現JPN・HCがNZ代表・HCに ②ロバートソン:現クルセイダーズHCがENG代表・HCに ③エディー・ジョーンズ現ENG・HCがアメリカ代表・HCに(アメリカ代表は、来年のW杯最終枠をポルトガルと争ったが、ラスト4分で同点に追いつかれ敗退。2031年W杯開催が決まっており、ビックネームを招致しようとしている)と報じている。FRA代表のコーチ陣は、ガルティエHCは続投(2028W杯まで)、ガルティエは「現行体制の続行」を望むも、何人かはW杯後・別のチーム・ポストに就くことが明らかになっている。W杯後のHC・コーチ陣の人事、当然のことながら、水面下では蠢いているようだ。「来年のことを言ったら鬼に笑われてしまう」無計画「出たとこ勝負」ニッポン人には理解しがたい契約社会のお話しのような気もする…
令和4年11月26日
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