2019 W杯・備忘録 154
〜 ANS2022 R2 〜
先週末、ANS2022第2週・6試合が行われた。僅差の試合3試合、大差の試合3試合だったが、いずれの試合も、当たり前だが見どころ満載(来年のW杯を思い描くとなおさら)面白かった。
表-1 対戦相手の前者が勝者
FRA/AUS | ARG/ENG | IRE/RSA | SCO/FIJ | ITA/SAM | NZ/WAL | |
得点差 | 1 | 1 | 3 | 16 | 32 | 32 |
勝者の得点 | 30 | 30 | 19 | 28 | 49 | 55 |
敗者の得点 | 29 | 29 | 16 | 12 | 17 | 23 |
勝者P(%) | 54 | 37 | 45 | 53 | 52 | 52 |
勝者T(%) | 52 | 27 | 44 | 43 | 55 | 38 |
来年のW杯目線で見ると…
* FRA/AUS:AUS勝ち切れなかったがプレー内容は充実している。前評判が芳しくなくて準優勝した2015W杯を思い出してしまう。
* ARG/ENG:表-2:ARGの「P(ボール保持率)」「T(地域支配率)」の表れているように一方的にENGが攻め続けた試合。それでも勝ったARGは凄い・得難い何かを身に着けた。ENGはなぜ負けたのか、ある意味はっきりしていて修正は十分に可能(=次やれば勝てる…)。来年のW杯でJPNと同組の両者(ENG/ARGは予選プール初戦に組まれている)どちらが勝つのか、今回の試合は「タヌキとキツネの化かし合い」でもあったのだろう。
* IRE/RSA:得意技がはっきりしている両チーム(=ボールを保持しラックを高速でリサイクルしフェーズを重ねるIRE、相手にボールを渡し・どっしり構え・80分の体力で勝負するRSA)この両者も来年のW杯予選同組。ということもあってか、この日の試合は両チームとも新たなこと(=得意技をヴァージョンアップすること)を試みていた。今回の「3点差」、本番のラスト10分で効いてくるのだろうか。
* SCO/FIJ:FIJの潜在力に目がいってしまった。2019W杯は不運・不幸な予選プールでの敗退だったけれど、来年のW杯では「台風の目」になる可能性は大きいと思わせてくれた。SCO、成長軌道には乗っている。予選プールを突破するためには、RSA・IREのいずれかを倒さなければならない。その域に達することができるのか。
* ITA/SAM:ITAも、SCO同様成長軌道には乗っている。来年のW杯、予選プール同組のFRA・NZに勝てるチームになることが出来るのか。SAM、FIJ同様潜在力はすごい。JPNの悩ましい相手になるだろう。
* NZ/WAL:NZ、「はまれば」無敵!? 失点「23」多すぎる。WALは不安材料だけが残った気がする。3大会連続でAUS・FIJと予選プール同組、来年の見通しは暗い。
表-2 「% Possession Kicked」「Total Passes」「Rucks Won」「Tackle Made(%)」「Attempted Tackles」
FRA | AUS | ARG | ENG | IRE | RSA | |
% P. Kick | 13.5 | 13.2 | 22.1 | 8.1 | 9.0 | 8.8 |
Total Pass | 124 | 113 | 60 | 163 | 130 | 124 |
Ruck Won | 91 | 62 | 38 | 60 | 75 | 93 |
Tackle(%) | 87.0 | 83.3 | 90.2 | 91.0 | 88.4 | 81.8 |
A.T. | 108 | 168 | 174 | 67 | 173 | 154 |
* 「% Possession Kicked」:単純化すれば、パスかキックかの選択機会にキックを選択した比率。「10」を越えると「よく蹴るなぁ」と思わせられる。その意味で、FRA/AUSは「ピンポンラグビー」の試合。ARGの「22.1」は、ある意味驚異的。これに対したENGの「8.1」意図したものなのだろうけど、本番でどう戦うのか。RSAの「8.8」、「つまらないラグビーからの脱皮」志向の表れか
* 「Total Passes」(パス総数)ARGの「60」あまりの少なさ・それでも勝ったことで、目を引く。
* 「Rucks Won」(ラック総数)IREの「75」IREとしては異様に低い。この試合、戦い方を変えていた一つの表れ。
* 「Tackle Made(%)」(タックル成功率):RSA、この試合でラッシュディフェンスを試したせいで「81.8」と低い数値になったように見えた。ディフェンスシステム、対IRE本番でどうするのか、興味深い。
* 「Attempted Tackles」(タックル総数):ENGの「67」が今回の試合を象徴している。
表-2 つづき
SCO | FIJ | ITA | SAM | NZ | WAL | |
% P. Kick | 8.8 | 7.0 | 10.0 | 8.7 | 6.6 | 6.5 |
Total Pass | 139 | 130 | 130 | 131 | 128 | 136 |
Ruck Won | 66 | 89 | 63 | 56 | 113 | 94 |
Tackle(%) | 93.9 | 82.0 | 82.9 | 77.8 | 93.4 | 89.4 |
A.T. | 165 | 139 | 105 | 126 | 166 | 235 |
表-3 「P.C.(犯したペナルティの数、()内はイエローカード) 以下は原因別内訳
FRA | AUS | ARG | ENG | IRE | RSA | |
P.C. | 10(0) | 11(0) | 10(0) | 10(0) | 10(0) | 12(1) |
うちRuck | 2 | 6 | 2 | 2 | 4 | 5 |
Maul | 1 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 |
Scrum | 1 | 0 | 3 | 2 | 1 | 3 |
Lineout | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 |
Offside | 3 | 1 | 3 | 3 | 2 | 2 |
* RSA、スクラムで3回取られるなど、レフリー(アマシュケリ(GEO))との相性が悪かったようだ。
* レフリーとのコミュニケーションという意味で感心したのはARG2番キャプテンのモントーヤ。試合開始早々、自らのオフサイドのPを取られたが明らかな誤審、そこで「事を荒げず」に「貸しを作り」レフリーと常に言葉を交わし続け(この点でFWの選手の方がレフリーとの会話する機会は多い。特に前3人は一番多そうだ)適切な圧力をかけ続けていた気がする。この試合のレフリーはブレイス(IRE)。ある意味説明責任をきちんと果たそうとよく話すレフリーだったことも関係してくる。「気の利いた(暗黙の裡に圧力をかけられる)」会話ができること、キャプテンの要件の一つになりそうだ。その点でENGのキャプテンは12番のファレル。レフリーとの接触機会が少なく、関係が「疎」に映った。
* ARG/ENG:レフリーとTMOが密にコミュニケーションを取り、ノックオンの判定が映像で覆りスクラムのボール投入チームがひっくり返ったりした(これ自体は、競技規則で定めているTMOの権限外)。両チームともストレスを溜めずに済んでいた気がする。本番に向けて、レフリー団も「ワンチーム」「アワァチーム」化していくのだろう。それでいい笛が吹かれることが望まれる。
表-3 つづき
SCO | FIJ | ITA | SAM | NZ | WAL | |
P.C. | 11(2) | 18(3) | 9(0) | 8(1) | 10(0) | 10 |
うちRuck | 6 | 8 | 4 | 4 | 5 | 9 |
Maul | 0 | 3 | 1 | 2 | 0 | 0 |
Scrum | 1 | 4 | 2 | 1 | 2 | 0 |
Lineout | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 1 |
Offside | 3 | 1 | 0 | 0 | 3 | 1 |
* SCO/FIJ:イエローカード5枚。そこまで荒れた試合ではなかったが、レフリー(ベリー(AUS))「ぶれずに」吹いた結果。FIJの選手の合法的なタックルでSCO・10番が脳震盪・交代。アイランダーのコンタクトの強度、計り知れないものがある。この脳震盪で、SCOスコッドから「干されていた」ラッセルが召集されることに。禍福は糾える縄の如し…
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フランスの放送では、数シーズン前から女性元選手(ラグビー一家の出身・元セブンズ代表・兄はトップ14のチームのコーチ)が解説している。今回、WOWOWの英語放送を聞いていたら、IRE/RSA、WAL/NZも女性が解説していた。いつの日か、ニッポンでもそうなるのだろうか。
令和4年11月12日
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