2019 W杯・備忘録 134
〜 移籍 〜
先週末(金・土、午後9時キックオフ)、フランスTop14・準決勝2試合が、異様な猛暑に見舞われているフランス・ニースで満員の観客を集めて行われた。
第1戦:カストル(以下「CAS」)vsトゥールーズ(以下「TOU」)、TOU・6番:ジュロンシュ・9番:デュポン、いずれも今年の六か国対抗優勝のFRA代表であり、かつ、オーシュのジュニアからCASでプロになりTOUに移籍している。
第2戦:モンペリエ(以下「MON」)vsボルドー・べグル(以下「UBB」)、UBB・18番:ピカモール・21番・トランデュック、2011・2015W杯で活躍した元FRA代表、いずれもMONで育成・プロ初契約をした選手。
なんとなく「巡り合わせ」を感じる。昔、そうプロ化以前は、こんなこと(元所属したチームと対戦すること)は滅多に起きなかった。なぜならば、選手の「移籍」は存在しなかったから。選手もコーチもサポーターも、みんな、地域に根差した人びとだった。「移る」ことは稀なことだった。
プロ化によって出現したのが「選手を買う」という表現。選手は「商品」となり、売買の対象=トレードが出現した。
そして、選手の売買は国境を越える。
準決勝2試合の9番・10番は次のとおり。パイヨーグを除いて全員2019W杯メンバー。
CAS | TOU | MON | UBB | |
9番 | アラタ (URG) | デュポン (FRA) | パイヨーグ (FRA) | ルクー (FRA) |
10番 | ウルダビジェタ (ARG) | ヌタマック (FRA) | ガルビシ (ITA) | ジャリベール (FRA) |
MONは、67分に9番を21番:アプラシーゼ(GEO)、78分に10番を22番:ポラード(RSA)に交代させている。
CAS・TOU・UBBの5番は、いずれもAUSの選手。TOUは二列目二人がアーノルド兄弟。
テストマッチでは、選手の国境を越える「移籍」も再び認められるようになった。次回のW杯、これまでの各国勢力図が大きく変わる可能性がある。
フランスラグビー界の勢力図もプロ化によって大きく変わった。かつては、南西地方中心に大中小、さまざまなコミューン(日本の「市町村」に相当する)に根差したクラブが競い合っていた。1980年代のフランス選手権1部は80チームで競われていた。
プロ化によってチームを財政的に支えるための関係人口の規模が大きくなった。すなわち、大都市でなければプロチームを維持することが困難になってきた。
準決勝進出の4チームの所在コミューンの人口は以下のとおり。
カストル | トゥールーズ | モンペリエ | ボルドー | べグル |
42,079 | 493,465 | 295,542 | 260,958 | 78,308 |
古豪カストル、現在の1部リーグ14チームの中で財政規模は11番目。小都市の伝統チームとして、孤軍奮闘している。
MON・UBBは、新興チーム。
MONは、1986年に設立され、2003年以降、1部リーグにいる。
UBB、日本語に直訳すると「ボルドー・べグル連合」。べグルは、ボルドーに隣接するコミューン。ラグビー界の名門古豪の1チームで、1969年・1991年にはフランス選手権で優勝している(1991年の主将はラポルト現FRA会長)。プロ化以降財政難に陥り、強くはないボルドーのチームと統合してUBBが発足したのが2006年。
一口に「地域密着」と言っても、かつての「選手・コーチ・サポーター」全員密着型から大きく変質してきている。
( 参考 )
2022/6/17 CAS/TOU KSLPFD図
「分」は得点時間
大文字は勝者 小文字は敗者のボール支配
K:キックオフ
S:スクラム
L:ラインアウト(L*は50:22)
P:ペナルティ (P*はイエロー(orレッド) PG*はPGを狙って外したもの)
F:フリーキック
D:ドロップアウト (D*はゴールライン・ドロップアウト)
- :関連するリスタート
分 | 得点 | |
1 16 19 26 39 | k P tg K P-l L L L s L l* dg* D L f s-P-pg K P p-PG K p*-L P-l l f L p-PG k l S-p-L P-l p-L l p* p-PG | 0-7 0-10 3-10 6-10 9-10 |
42 44 60 69 76 | K S TG k tg K S L P p-L s L l s-f s-P-pg K l l L S-F L p-PG k l P-pg* D L T k s | 16-10 16-15 16-18 19-18 24-18 |
TOUにイエローカード2枚。
2022/6/18 MON/UBB KSLPFD図
分 | 得点 | |
5 5 12 15 40 | k l p-L P-l-P-pg K TG k F l s-f-s L DG k l-P-l tg K L l l F l P-l D F l-S l p-L L s p-PG* d S P-l s-p-l DG | 0-3 7-3 10-3 10-10 13-10 |
68 78 | K l S l l* p-L-p-L l L f l S-F L* s-P l-P dg* l l P-l L P-l L p-PG k l l p-L DG* d s-P-l p-PG k S | 16-10 19-10 |
MON後半の後半PG2本とも自陣から狙いアプラシーゼ(GEO)が決めた。
2試合とも猛暑の中、20分経つと「ウォーターブレイク」で水分補給。フランスの場合、HCを中心に戦術を話し合っている。
猛暑の影響のせいか、㈰CAS(リーグ戦:1位)vsTOU(同4位)、MON(同2位)vsUBB(同3位)いずれもリーグ戦の結果が反映されている。3〜6位によるBarrageの試合のなかった(=1週間試合間隔の空いた)チームに有利に働いた ㈪省力化(?)の有力手段がドロップゴール。TOU(ヌタマック)・UBB(ジャリベール・トランデュック)が外し、MON(ガルビシ・ブティエ)が決めた ㈫試合は70分過ぎても勝敗は見えず、疲労度の少ないチームが勝利した、と解説者が語っていた。
令和4年6月25日
0 件のコメント:
コメントを投稿