2019 W杯·備忘録 96
~ 第4回大会·決勝 AUS/FRA ~
前回大会後にプロ化したラグビー界(1995年)。そして、南半球のトライネーション、スーパーラグビーが始まり、戦術·戦略·フィジカル面などが急速に進化していった時代。
1999年、ある意味で現在につながる新たな時代の第1回目のW杯でもあった。5か国対抗(現在の6か国対抗の前身。ITAが含まれ6か国対抗になったのは2000年から)の各国で予選リーグが戦われた。この大会から参加チームが16から20に増え、各組4チームで構成された5グループに分かれ、1位チームは直接準々決勝に、2位チームに勝ち点の多い3位チームの上位3チームが準々決勝進出をかけた試合を戦うという方式。この2位チーム·3位チームの試合は水曜日に行われ、中2日ないしは3日で準々決勝に臨むという不公平な試合日程でもあった。
決勝は11月6日新装なったウェールズ·カーディフミレニアムスタジアムで72,500人を集めて行われた。
試合経過は次の通り。AUSの得点は「○」、失点は「●」、AUSが得点を逃したのは「×」、FRAが得点を逃したのは「*」。
分 | 得点 | 種類 | 起点となった(リ)スタート | |
● ○ × ● ○ ○ * ○ | 0 3 7 11 14 24 38 39 | 0- 3 3- 3 3- 6 6- 6 9- 6 12- 6 | PG PG PG PG PG PG DG PG | FRAのキックオフで試合開始。 キックオフを10mライン後方に蹴りラックに。AUSのP(倒れ込み)。FRA·10·PG FRAのP(ラックでのオフサイド)。AUS·15·PG タッチジャッジからのアピールでFRA·5のP+イエロー(FRA·5のノーボールタックル)。AUS·15·PG外す タッチジャッジからのアピールでAUS·5のP+イエロー(オブストラクション)。FRA·10·PG FRAのP(ラック・倒れ込み)。AUS·15·PG FRAのP(ラック・ハンド)。AUS·15·PG FRA、AUS陣内で攻め続けるも得点できず。FRA·15センターライン付近からDGを狙うもゴロになってしまう。 FRAのP(ラック・ハンド)。AUS·15·PG |
* ○ * ● ○ ● ○ ○ ○ | 41 44 47 51 55 59 62 64 80 | 15- 6 15- 9 18- 9 18-12 21-12 28-12 35-12 | PG PG DG PG PG PG PG T+G T+G | AUSのP(ノットロールアウェイ)。FRA·10·PG外す FRAのP(ラック・オフサイド)。AUS·15·PG FRAボール·ラインアウトからFWが前進し(ラック)9→7(ラック)9→10→2(ラック)9→10·DG外す AUSのP(ラック・倒れ込み)。FRA·10·PG FRAのP(ノットリリース)。AUS·15·PG AUSのP(ラック・倒れ込み)。FRA·10·PG タッチジャッジからのアピールでFRAのP(ハイタックル) AUS·15·PG FRAのリスタートのキックオフ、ゴロパントが10m届かず、AUSが拾って前進(ラック)9→10←6(ラック)9→10→13前進(ラック)20ピック&ゴー(ラック)9→12←5(ラック)15ランで前進(ラック)9→12→20→14·トライ、15·G FRAのP(ファールプレイ)AUS·PKをタッチに蹴り出しAUSボール·ラインアウト。9←20、22m走り切りトライ。15·G |
(注)「→」は順目のパス。「←」は内返しのパス。
AUSの完勝という残像が焼き付いていた試合。見返してみると、60分あたりまでは試合になっている。グランドの芝がきちんとしていれば、違った展開になっていたかもしれない。
ラインアウトのリフティングが定着したせいか、ラインアウトの回数が少なくなり「ぶつ切り」感が薄れて、見慣れた試合になってきた。ペナルティ·キックを蹴り出した後のラインアウトもマイボールになっている。毎大会ごとにルールが少しずつ変わってきている。この是非はともかく、ルール変更を柔軟に行ってきているというのもラグビーの特質なのかもしれない。「完成したラグビー!?」がどんなルールの下で行われるのか、興味深いテーマである。
ちなみに、ここまでの決勝のS、LO、P、その他のリスタートの数は次の通り。
S | LO | P | その他 | 計 | |
第1回決勝 | 38 | 44 | 17 | 15 | 114 |
第2回決勝 | 29 | 47 | 22 | 13 | 111 |
第3回決勝 | 26 | 50 | 16 | 18 | 110 |
第4回決勝 | 14 | 27 | 28 | 18 | 87 |
(注)第3回は、延長を含まず、80分間での数値。
決勝戦だけの比較ではあるが、ラインアウトのみならずスクラムの回数も減っている。ルール変更とともにプロ化してプレーヤーの技術が向上しハンドリングエラーが減ったのであろうか。負傷交替だけでなく戦術的入替によるリザーブ選手の投入が定着しつつある時期でもあった。
80分、FRAのフッカーがイパネスからダルマゾ(2015W杯·日本代表スクラムコーチ)に変わる。両者目も合わさずボディタッチもない。やはり、ダルマゾは独特な人だ。
この時代、オーストラリアの先進性は群を抜いていたのかもしれない。この大会、予選リーグ3試合·決勝ラウンド3試合の計6試合で奪ったトライが22、失ったトライは予選リーグ·USA戦の1のみ。ディフェンスの組織化で一歩先に出ていた感がある。
一方で、まだまだアマチュア時代の残滓があり、それが端的に出ているのがPの数(AUS:12、FRA:16)。しかも、前半、両チームの選手に「イエロー」が出されている。ただし、現在の10分間のシンビンではなく「(単なる)Caution」に過ぎず、試合への影響はほどんどなかった。
第1回:NZ、第2回AUS、第3回RSAと南半球3強が順にエリスカップを掲げ、AUSが2度目の優勝を飾った大会であった。
令和3年9月25日
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