2021年9月4日土曜日

岡島レポート・ 2019 W杯・備忘録 93

2019 W杯・備忘録 93
 2回大会・決勝 AUS/ENG 

 1991年秋、第2W杯が北半球で開催された。1991年、年初には湾岸戦争、年末にはソ連崩壊、世界の枠組みが揺らいだ年であった。そして、平成初のW杯でもあった。
第1回大会と同様、16チームが4組に分かれて予選リーグを戦い、上位8チームによる決勝トーナメントで競われた。プロ化以前の緩い時代、予選リーグは、ENGWALSCOIREFRAのそれぞれの地元で行われた。
JPNは、第1戦:SCOとエディンバラで(3-47・敗北)、中3日、第2戦:IREとダブリンで(16-32・敗北)、中4日、第3戦:ジンバブエとベルファストで(52-8・勝利)戦っている。この時代、強豪国も同じような間隔で試合が組まれていた。アマチュア時代で、どのチームの選手も「仕事を休んで」大会に参加していて、テレビ視聴率を考慮することもなく平日に試合が組まれ、どのチームもほぼ等間隔で試合が行われていた。だから今より公平・平等だったと言えるかは疑問だが

 開幕戦、ENGNZ12-18で敗れ、予選リーグ2位通過ながら、FW戦+キック中心の勝ち切るラグビーで決勝に進んだ。対戦相手はNZを準決勝:16-6で破ったAUS。第1回決勝に続いて、南半球vs北半球の決勝となった。112日、トゥイッケナムに56,208人の観客を集めて決勝が行われた。

 試合経過は次の通り。AUSの得点は「○」、失点は「」、AUSが得点を逃したのは「×」、ENGが得点を逃したのは「*」。

得点
種類
起点となった(リ)スタート

×





19

25

29

35

40



 3- 0

 9- 0



PG

PG

TG

PG

PG
AUSのキックオフで試合開始。
ENGP(ラック・倒れ込み)。正面の簡単なPGAUS10が外す。
ENGP(ラインアウト・オブストラクション)。AUS10PG
ENGゴール前のAUSボール・ラインアウト。両手でキャッチしモールをずらしてAUS3T10G
AUSP(ラインアウト・オブストラクション)。かなり遠い位置でENG15PG、届かず。
AUSP(倒れたままでプレー)。入れてもおかしくないPGENG15外す。


46

60

67
70


 9- 3

12- 3
12- 6
DG

PG

PG
PG
AUSゴールポスト前のENGボール・スクラム。910DGも外す。
AUSP(ラインアウト・オブストラクション)。ENG15PG
ENGP(ラック・倒れ込み)。AUS10PG
AUSP(故意のノックオン)。ENG15PG
(注)「→」は順目のパス。「←」は内返しのパス。

 35分からハーフタイムをはさんで46分までに3回のPGDGを外している。特に、3番目のDG22m内ゴール正面、入れなければならないゴールだった。そして、いずれかが入っていれば試合経過・結果は大きく変わっていただろう。

 先月末に発売されたラグビーマガジン202110月号「エディー・ジョーンズ[イングランド代表監督]コラム」(p153)の中に『これまでも、「華のあるラグビー」というナンセンスがメディアを中心に語られてきました。』という文章がある。(この文章に続いて、ガットランドのラグビーを書き込んでいる。)
 第2回大会の決勝に至るまで、ENGは「華のないラグビー」をしていると批判され続け、決勝では、それまでの戦い方とは全く異なったバックスに展開するプレーを多用していた。この試合、センターがパスを受けてゲインするシーンがそれなりに出てくる。ENGの積極果敢なアタック、それなりに見応えがある。彼らなりに「華のあるラグビー」を実践したのであろう。だから or でも 負けた 誰かに褒められるためにプレーするわけではない。アマチュア時代、視聴率・観客動員数を気にする必要もない。彼らの戦術の選択をどう評価すればいいのだろうか? そして、仮に準決勝までと同じように普段着の「華のないラグビー」を行っていたらどうなっていたのだろうか? それが気になった。
 そして、「華のないラグビー」を批判していた人びとは、この試合をどう評価しているのかも気になった。おそらく、ENGの選手たちは、よくぞ果敢に攻撃し続けたと称賛した人たちと、たんなる「おバカ」と冷笑した人たちに二分されたのであろう。
 勝利至上主義を全面的に支持する気にはなれない。かといって、勝者を差し置いて敗者の美学を語り継ぐのも違う気がする。となると、やはり勝たなければ意味がないのか。
 「手の平を返せる」人びとと「結果が残る」選手たち。何を見、何を感ずるのか、人それぞれ、その立場によるということか。
 それにしても「華のあるラグビー」って、ナンセンスなのだろうか? おそらく、勝利を義務付けられたHCにとってはナンセンスなのだろう。では、観客としてファンタジーを求めることはいけないこと≒ナンセンスなのだろうか
 たとえば、ラグビーの本質を ①15人対15人の同数での戦い ②一つのボールの争奪と継続 ③相手チームより多くの得点をあげること だと考えてみる。だとすれば、「華があるか否か」を評価・判断するのは、「見ている人」「第三者」であって、本質から離れている。そんなこと言ったって、観客は観客で感想を抱き、願望を語り出す。プロ化時代、観客も本質に含まれてくる。観客は「華のあるラグビー」を夢見るようになる。勝利と「華」、これからも続く論点なのであろう。

 この試合では、S29回(第1回決勝:38回)、L47回(同:44回)、P22回(同:17回)であった。これにリスタートのキックオフ:5回(同:10回)、フリーキック:1回(同:1回)、ドロップアウト:7回(同:5回)を加えると、レフリーの笛が吹かれて、試合が止められたのは、111回(同:115回)。ほぼ40秒に1回は試合が止まっている。
 第1回大会から大きな変化は生じていない。あいかわらず「ぶつ切り」感があった。

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 前大会後から、会長人事・HC人事などなど、ゴタゴタ続きのFRAは、準々決勝パリでの対ENG戦の数日前、ブランコ主将はじめ主要選手がそれなりの(休業)手当の支払いをFRA協会に求めて、「応じない場合には試合に出場しない」と通告していた。それに対してフェラス会長は「それだったら、他の選手が出場すればいい、出たい奴は国中にいくらでもいる」と取り合わず、結局、ブランコが矛を収めて当日を迎える。試合は、ENGの「華のないラグビー」+徹底したブランコ潰しが効いて1910ENGの勝利。プロ化以前の悲喜劇の一幕 なお、「手当」は、後日、タニマチが支給したと言われている。

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 マルク・デュザン『W杯でのFRAチームの裏話』の中で、カナダのU-20のバージャス・コーチがキックティーを開発して、この大会でカナダとフランスのキッカーが使用し、以後、急速に広まったとしている。

令和394

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