やっと 11月らしい気候になってきました
2019 W杯・備忘録 198
〜 敗因 1 〜
WRのスタッツを眺めていると いろいろと気づくことがある。
スタッツは「結果」の集積でしかない、とすれば、単なる結果論でしかない。
一方 スタッツは チーム戦略・戦術 意図 意欲の具現化でもある。また、スタッツの各項目は関連性を持っている。もちろん特定のスタッツで勝敗が決まるわけではない。そうでありながら、勝者・敗者のスタッツに一定の傾向が見出せることもある。
チーム戦略が明確なIRE=「攻撃は最大の防御」・ボールを保持し続けて前進していく=スタッツの各項目に特徴的に表れてくる。 IREは、それを極め尽くして 頂点に立とうとした。そして 負けるべくして負けた。
事実上の決勝戦とも言える2試合 QF2:NZ/IRE & QF4:RSA/FRA と決勝戦のスタッツを中心に見ていく。
起点でもあり終点でもある「POSSESSION」、チーム力が同等と思われる対戦では、50%未満のチームが勝っている。「たまたま」ではない。
(表-1 POSSESSION WHOLE GAME)
QF2 NZ/IRE | QF4 RSA/FRA | F RSA/NZ | QF1 ARG/WAL | QF3 ENG/FIJ | SF1 NZ/ARG | SF2 RSA/ENG | |
勝者 | 45% | 40% | 40% | 56% | 49% | 57% | 44% |
敗者 | 55% | 60% | 60% | 44% | 51% | 43% | 56% |
「POSSESSION」が高いことは勝つチャンスを高めると同時にリスクも負う。
今回は、二つのリスクについて見ていく。
リスク1:「POSSESSION」↑ ⇒ PASSES↑ ⇒ HANDRING ERRORS↑ ⇒ 相手ボールスクラム↑
リスク2:「POSSESSION」↑ ⇒ RUCKS WON↑ ⇒ TURNOVERS↑
(表-2 PASSES)
QF2 NZ/IRE | QF4 RSA/FRA | F RSA/NZ | QF1 ARG/WAL | QF3 ENG/FIJ | SF1 NZ/ARG | SF2 RSA/ENG | |
勝者 | 137 | 82 | 84 | 142 | 123 | 214 | 67 |
敗者 | 325 | 156 | 221 | 144 | 156 | 182 | 78 |
「キックやランという選択肢の中からパスをする」ことと「パスせざるをえない」状況でのパス(苦し紛れのパス)は質的に違う。しかし、すべてのパスは「後ろに」投げなければならない。パスとは戦術的には一時的後退でもある。IREのパスの多さは際立っている。その精度も際立っている。しかし、リスクを増やしていることに変わりはない。
(表-3 HANDRING ERRORS)
QF2 NZ/IRE | QF4 RSA/FRA | F RSA/NZ | QF1 ARG/WAL | QF3 ENG/FIJ | SF1 NZ/ARG | SF2 RSA/ENG | |
勝者 | 1 | 8 | 3 | 10 | 3 | 7 | 9 |
敗者 | 8 | 11 | 13 | 12 | 8 | 10 | 10 |
それにしても QF2:NZの「1」は驚異的だ。決勝ラウンド「一段ギアを上げた」時のすごさを感ずる。
そして そのNZが決勝では「13」。レッドが出て 数的不利の中で POSSESSIONを高めざるをえず PASSESが増え・HANDRING ERRORSも増える悪循環にはまった。
(表-4 SCRUMS)
QF2 NZ/IRE | QF4 RSA/FRA | F RSA/NZ | QF1 ARG/WAL | QF3 ENG/FIJ | SF1 NZ/ARG | SF2 RSA/ENG | |
勝者 | 5/5 | 7/8 | 10/11 | 7/7 | 4/5 | 4/4 | 7/8 |
敗者 | 0/0 | 5/9 | 2/2 | 8/10 | 4/6 | 4/4 | 3/7 |
もちろん、マイボール・スララム数が多いことが勝利に直結するわけではない。しかし、QF2・IREの「0/0」、決勝のRSA「10/11」は象徴的な数値に思える。
(表-5 RUCKS WON)
QF2 NZ/IRE | QF4 RSA/FRA | F RSA/NZ | QF1 ARG/WAL | QF3 ENG/FIJ | SF1 NZ/ARG | SF2 RSA/ENG | |
勝者 | 94 | 56 | 56 | 109 | 69 | 120 | 52 |
敗者 | 129 | 103 | 115 | 58 | 90 | 115 | 67 |
RUCKを連取し フェーズを重ねることの意味 もう少し考えてみたい。
(表-6 TURNOVERS WON)
QF2 NZ/IRE | QF4 RSA/FRA | F RSA/NZ | QF1 ARG/WAL | QF3 ENG/FIJ | SF1 NZ/ARG | SF2 RSA/ENG | |
勝者 | 7 | 8 | 7 | 7 | 5 | 5 | 4 |
敗者 | 4 | 5 | 2 | 3 | 7 | 3 | 8 |
TURNOVERS WONが多いチームが勝つ というのは 納得性がある。その観点からは QF3・SF2の数値 興味深いものがある。
予選プールでのIRE 13-8 RSA (レフリー:オキーフ)
POSSESSION :IRE・49% RSA・51%
PASSES :IRE・129 RSA・121
HANDRING ERRORS :IRE・8 RSA・7
SCRUMS :IRE・5/7 RSA・9/11
RUCKS WON :IRE・74 RSA・62
TURNOVERS WON :IRE・9 RSA・3
RSA、試行錯誤を繰り返していた「跡」の気がする。この試合では、IRE的に戦おうとしていた!?
IRE革命とも言うべき 近年の戦術進化は 高く評価されるべきだ。しかし、「ここ一番」の試合で負け続けているのも事実だ。決勝ラウンドで「一段ギアを上げられる」チームには負ける・負けている現実を踏まえて、セクストンなきIRE どんなチームに変貌するのか 楽しみである。
令和5年11月11日
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