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日本シリーズが楽しみな週末です
2019 W杯・備忘録 197
~ RED前後 ~
すごい試合だった。何度見ても飽きない、むしろ、次々に新たな気づきが生ずる。
あの決勝戦を一文で表すなら、現時点では「前半にレッドカードが提示されたから、1点差ゲームの稀有な決勝戦になった」と書く。
最高級のエキサイティングな試合だったことを大前提として、奇妙な試合でもあった。
レッドカードがスタジアムに提示された33分35秒以降、試合内容が激変した。34分を境目にして、試合は「RED前」と「RED後」に峻別される。
得点で見れば、 RSA前:RSA 12-3 NZ、 RED後:RSA 0-8 NZ
つまり、レッドが出されたことによって、残されたNZ選手が奮起してRSAの攻撃を完封し・効果的に加点した! ということも言いうる。
それだけだろうか?
興味深い個々のプレーは随所にある。そして、気になっているのがPのとられ方。Pを取られた数で見れば、
RED前: RSA・3 NZ・5(うちイエロー1・レッド1)
RED後: RSA・7(うちイエロー2) NZ・0
詳しい経過は(参考-1)に記載してます。
「たまたま」なのだろうか? 違う! 1回限りの楕円球の弾み方は「たまたま」かもしれない。1回の「P」は「たまたま」かもしれない。しかし7回連続でRSAが「P」を取られるのは「たまたま」ではない。両チームの選手がレッド後の試合環境を熟知していたことが大きい。
NZは数的不利の中で、Pを取られるリスクを犯さないようレフリングに順応しようとしたことが大きいだろう。バーンズの笛に馴染んでいたことも大きい。
では、RSAのPの激増をどう見るか?
たとえば、今大会決勝ラウンド7試合の勝者と敗者のPの数は以下の通り。RSA、「P」は少ないチームである。もちろん、QF4・SF2とオキーフ(NZ)が笛を吹いたことも影響している。が、数的有利の45分間で「7」は多い。
QF1 ARG/WAL | QF2 NZ/IRE | QF3 ENG/FIJ | QF4 RSA/FRA | SF1 NZ/ARG | SF2 RSA/ENG | F | |
勝者 | 7(0,0) | 10(0,2) | 10(0,0) | 6(0,1) | 7(0,1) | 8(0,0) | 10(0,2) |
敗者 | 12(0,0) | 10(0,0) | 12(0,1) | 6(0,0) | 10(0,0) | 11(0,0) | 5(1,1) |
(注) ()内は(レッド、イエロー)の数で内数。
バーンズが吹いたのが、QF2:NZ/IREとF:RSA/NZ。予選プールの試合では、4試合吹いているが、そのうちの1試合はNZ/URG。つまり、決勝戦では、NZ:3試合目。RSAは初めて。これは、バーンズ、昨秋のFRA/RSAを吹き・RSA敗北後、SNS上「殺害予告」が家族に出されたことが影響しているように思われる。バーンズとRSA、相性がよくない。
もちろん、いろいろな要因が絡み合っている。
その中でレフリーの心理状況・目線の変化が大きかったと感じている。
決勝戦のレフリー4人組、現時点で世界最良の集団である。これ以上を望むのであれば、ラグビーを根源から変えなければならない。それを前提として、むしろ、レフリングの変化・バイアスが生ずるのだということも試合の構成要素の一つだと受け止めることが重要なのだろう。
そういう観点から見ると、RSAの適応力=レフリーの目線の変化(そういうことは起こりうる・いや・必ず起こる)は織り込み済み、は特筆すべきものだ。どんな笛を吹かれ、「P」を取られ続けても、不平不満の仕草を一切見せず、黙々と次のプレーに集中している。王者の風格さえ感じられる。
これが1点差の勝利を齎した最大の要因に思える。
NZケイン、「史上初、決勝戦でレッドカードを受けた選手」ではなく「準々決勝、獅子奮迅の活躍でNZのベスト8敗退を阻止した救国の士」として記憶しておきたい。
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RSAの影のヒーロー:フーリー(1986年9月25日生、今大会期間中に37歳)
30歳前後の脂の乗り切った7シーズン、フランス2部リーグを主戦場としてきたRSA・16番:フーリーは、Midolでしばしば取り上げられてきた。なんと言っても35歳で初キャップ(南ア代表史上、最年長)、超遅咲きのインタビュー記事は胸に迫るものがある。
「4年前のW杯決勝戦、今でもよく覚えている。前日、フランス2部リーグ:ヴァンヌとの試合に敗れ、グルノーブルに帰る汽車の中、スマホで観戦していた。その時に、4年後、決勝のピッチに立ってる、なんて言われても誰も信じなかっただろう。コロナが発生し、プロラグビー生活の最後の数年を家族・友人のいる南アに戻り、ストーマーズでプレーすることにした。そこから、すべてが始まった。すべてが激変した。」
準々決勝:FRA戦、46分にピッチに立ちフランカーで29分・ラスト5分フッカーでプレーする。準決勝:ENG戦、51分にピッチに立ちフランカーでプレーしている。そして、決勝戦、開始早々のフッカーのケガ(相手選手にイエローが出されている。このプレーはレッド以上の重みを試合に与えた。南アがラインアウトで苦しんだ≒1点差に縺れた大きな要因)でピッチに立ち77分フッカーでプレーする。タックル数:20は、マンオブザマッチ:デュトイの28に次いで2位。最後まで足が止まらなかった。語り継がれるに値する選手だ。
( 参考-1 )
2023-10-28 RSA/NZ 得点・P経過表
二列目:R:RSAの得点経過
三列目:N:NZの得点経過
四列目:RP:RSAのP
五列目:NP:NZのP
Pのうち「r+」はマイボールラックでのP、「r-」は相手ボールラックでのP
「G-」はPGを狙い外したもの。
RED前
分 | 2 | 11 | 13 | 15 | 17 | 25 | 28 | 32 |
R得点 | 3 | 6 | 9 | 12 | ||||
N得点 | 3 | |||||||
R・P | F | r- | F(LO) | |||||
N・P | F(Y) | r- | r- | F(Y→R) | r+ |
28分24秒、TMOの映像で確認後、NZ・7番にイエロー・バンカー、10分間のシンビンに。32分43秒、NZにP、RSA・10番がPGを狙うべくボールをセットしようとしている時に、レフリーにバンカーの決定(レッド化)が伝えられ、一旦試合を止めて、33分35秒レッドカードが提示され、その直後、PGが決まりRSA 12-3 NZとなる。(ここまでを「RED前」と見なしている)
RED後
分 | 37 | 45 | 50 | 54 | 55 | 56 | 67 | 72 |
R得点 | ||||||||
N得点 | 6 | 11 | ||||||
R・P | OffSide | F(Y) | F | F(LO) | r- | r- | F(Y) | |
N・P |
15の「P」が吹かれたが、スクラムに由来するものはゼロ。両チームのスクラム技術の高さとともにレフリーのスクラムマネジメントも優れていた。
( 参考-2 )
2023-10-28 RSA/NZ KSLPFD図
「分」は得点時間
大文字はRSA 小文字はNZのボール支配
K:キックオフ
S:スクラム
L:ラインアウト
P:ペナルティ (PG*はPGを狙って外したもの)
F:フリーキック
D:ドロップアウト (D*はゴールライン・ドロップアウト)
- :関連するリスタート
分 | 得点 | |
2 12 16 18 33 37 | k¹ l¹ F l² p¹(Y)-PG k² s¹ L¹ f L² p²-PG k³ l³ P¹-l⁴ P²-pg K¹ p³-PG k⁴ l⁵ S¹ l⁶ l⁷ l⁸-P³-l⁹ p⁴(Y→R)-L³ S² l¹⁰ L⁴ p⁵-PG k⁵ l¹¹ P⁴-pg K² L⁵ f L⁶ | 3 – 0 6 – 0 6 – 3 9 – 3 12 – 3 12 - 6 |
58 | K³ d* d S³ l¹² P⁵(Y)-l¹³ S⁴ l¹⁴ P⁶-l¹⁵ S⁵ l¹⁶-P⁷-l¹⁷ P⁸-l¹⁸ t K⁴ L⁷ L⁸ S⁶ l¹⁹ L⁹ S⁷ l²⁰ P⁹-l²¹ S⁸ L¹⁰ P¹⁰-pg* D S⁹ s² l²² S¹⁰ | 12 -11 |
令和5年11月4日
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