2022年4月2日土曜日

岡島レポート・ 2019 W杯・備忘録 122

                                         2019 W杯・備忘録 122

  WAL/ITA 
 
 先日、ITA7年ぶりに六か国対抗で勝利した。弱者が勝つお手本のような試合。勝負の「鉄則」が見え隠れする。
 
 ラグビー、ほとんどの試合で「ワンサイドゲーム」はない。1995W杯:NZ145点取られ・記録に残され・記憶が上書きされ続けている試合でもJPNは「17点」取っている。
 およそ、試合中には、なぜか「流れ」があり、Momentumが行き来する。
 勝つためには、勢いのある時間帯の得点を最大化し、勢いのない時間帯の失点を最小化しなければならない。問題は、「流れ・勢い」を的確に感ずるゲームリーダーが存在するか、そのリーダーの感覚をピッチ上の全員が共有しているか、なのだろう。
 
 弱者の試合は、当然のことながら、勢いのない長い時間帯と勢いのある短い時間帯とから構成される。
おのずから、勝つためには、まず、「いい」というよりも「点を取られない」ディフェンスが求められる。ITAは、今シーズン、第1FRA戦から、40分〜60分は勝負になっていた。負け続けていてもディフェンス力は向上し続けてきた。課題は、選手層の薄さ≒後半の後半で力が尽きること。それをリザーブ:FW6人;BK・2人で対応しようとした。
弱者は得点力に劣る⇒PGで得点を積み上げていく。今シーズンのITAの試合を見ていると、大差をつけられるとペナルティ・キックを得た機会に、どうしてもトライを取りに行って・跳ね返されるシーンが目についた。この試合、引き離されなかったことが大きい。近中距離は10番・ガルビシが、遠距離は14番・パドヴァーニと良質なキッカー二人がピッチ上にいることも大きい。
 
 逆に、強者は、早い時間帯から「痛めつけて≒点差を開いて」相手の戦意を喪失させることが肝要である。ここで凌がれると試合がもつれる。
 
 試合中には流れがある。流れが変わるきっかけの一つがP
 このレベルの試合だと、両チーム、おおむね10回程度のPを取られている。ただし、順繰りに取られているわけではない。なぜか、連続して取られる。好循環⇔悪循環が生まれやすい。Pが連鎖するとMomentumが増幅される。流れにMomentumの圧が加わると、時として「激流」になる。
この試合のPITA:9、WAL11。どういう順番で取られたかは、(参考1)の4段目(ITAP)、5段目(WALP)にあるとおり。
ITAは、WALPで得た機会に狙えるところでは必ずPGを選択し、結果として15点を得ている。しかし、PGで試合が途切れるとMomentumも萎む感がある。
一方、WALは、PGを狙えるところでもトライを取りにタッチキックからのラインアウトを選択し続けた。彼我の力の差を考えれば、合理的な選択ではある。まして、ホームゲームの大観衆が待ち望んでいる。相手ゴール前マイボールラインアウト、スタジアムは熱狂に包まれる。「山場」であり、「見せ場」になる。
 
 この試合の「山場」の一つが前半16分からの攻防。(参考2)で、「k P-l P-l-P-l S l P-S S p-L tg」と表記されている。ITA(=大文字のアルファベット)のPで「-WAL(=小文字のアルファベット)のlとなる連鎖。ここでWALが取り切れなかったのが大きかった。それでも、ITAが一旦は凌いだ(ある意味では、Pで凌いでいる)後にWALはトライ・ゴールし逆転している。
後半も、ほぼWALの時間帯。攻め続けている。後半開始からの「K l P-l l l P-l s-P-l-tg
」、68分、15-14と逆転された後の「K P-l G* l S p-L TG」に猛攻で再逆転し、その後も攻め続けていた。けれども追加点は生まれなかった。WALの得点は、7(点)×3(回)=21点で、PGDGを一度も狙わなかった。プライドが邪魔をしたのだろうか…
 
 「幕切れ」は誰も予想出来なかったであろう。WAL6点リードで迎えた最終盤。ITAボールラックでWALPWAL11番がレフリーにクレームをつけたらしくPの位置が10m下げられる。そこからITAがタッチキック⇒ITAボール・ラインアウト。このラインアウト、WALがスチール! WAL22m内のラックからWAL21番が長めのボックスキック。これをキャッチしたITA14番が15番にパスしビックゲイン、14番に内返しのパスをして中央にトライ。7838秒。逆転ゴールが決まったのが80分のサイレン後の8005秒。禍福は糾える縄の如し…
 それにしても、㈰WAL11番がクレームをつけなかったら(見ていて、何がPだったのか理解できなかった=クレームをつけたくなるのは理解できる=レフリーは丁寧に説明すべきだろう) ㈪ITAラインアウトでWALがスチールなんてしなければ ㈫WAL21番、タッチに蹴り出していれば ㈬トライが10秒早ければ、ラスト・ワンプレー、WALのキックオフで再開されていたのに…
 
 WALに「奢り≒油断」はなかったと思いたい。ただ、試合開始前、この日100cup目の主将・ビガ−が、まず入場し、続いて、150cupのレジェンド・アラン・ウィン・ジョーンズが二人の子供とともに入場し・子供たちとの写真撮影まで行っていた。これには違和感を覚えた。何か、違う気がしている。
 
 「運」も勝負を分ける。この試合のレフリーはブレイス(IRE)。フランスが嫌っている謎のIREレフリー。TMOはジョイ・ネヴィル(IRE、テレビ音声で聞く限り女性。今シリーズ初めてのTMO≒経験値が低い)。この試合、2TMOが生じたが、2度ともレフリーの言いなりだったように思える。そして、二度ともITAに有利な=WALに不利な判定が下された。この二度の判定、見ている限り、誤審だと感じた…
 
 弱者が強くなるための鉄則は、強いチームと試合を重ねることだ。ITAは、六か国対抗のメンバーで居続けることで鍛えられている。JPNには、そういう機会が乏しい。「ないものねだり」をしても詮無い。どうして、勝つのか、知恵の出しどころなのだろう。
 
***************
 
 327日(日)六か国対抗(女子)第1節が行われた。FRA/ITAはグルノーブルで13,728人の観客を集めている。フランス・テレビ・ニュースの映像で見ると、スタンドは満席。この日、リーグワン6試合の観客総数は19,448人=1試合平均:3,241人。考え込んでしまう数字だ…
 
( 参考-1 )
2022-6-5 WAL/ITA経過表
二列目:IITAの得点経過
三列目:WWALの得点経過
四列目:IPITAP
五列目:WPWALP
Pのうち「R+」はマイボールラックでのP、「R-」は相手ボールラックでのP
G-」はPGを狙い外したもの。
 
前半
 
6
8
11
15
16
17
18
21
24
25
30
32
42
I
 
3
6
9
12
W
 
7
IP
 
R+
 
 
R+
R-
M
O
 
 
 
 
 
WP
O
 
F
R+
 
 
 
 
O
 
R-
R+
S
 
後半
 
 
42
47
50
51
55
57
61
68
69
76
78
I
 
15
G-
 
22
W
 
14
 
21
IP
R+
O
S
 
 
 
 
 
R+
 
 
WP
 
 
 
 
R+
R+
O
 
 
R-
 
 
 
( 参考-2 )
2022-6-5 WAL/ITA KSLPFD
「分」は得点時間
大文字は勝者 小文字は敗者のボール支配
K:キックオフ
S:スクラム
L:ラインアウト(L*は、50:22
P:ペナルティ (PG*PGを狙って外したもの)
F:フリーキック
D:ドロップアウト (D*はゴールライン・ドロップアウト)
- :関連するリスタート
 
 
得点
12
15
27
31
33
k S L f F p-L P-l d* p=PG
k p=PG
k P-l P-l-P-l S l P-S S p-L tg
K p=PG
k p=PG
k l L L f S-p-L
3- 0
6- 0
6- 7
9- 7
12- 7
51
56
68
78
K l P-l l l P-l s-P-l-tg
K p=PG
k p S p=PG* d L F S tg
K P-l G* l S p-L TG
12-14
15-14
15-21
22-21
 
平成442
 

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