2020年9月13日日曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 42

2019 W杯・備忘録 42

  ~  試合の流れ ~

  試合の中の「流れ」は、どのようにして出来上がり、どのようにして変わるのだろうか。

M14 JPN/IRE 前半35分 自陣22mでのIREボールスクラムをJPNが押し切ったシーンは、繰り返し映像が流され続けている。流れを変えた代表的・象徴的シーンである。

 流れを変えるプレー・出来事は、さまざまある。

   この試合、IREのキックオフで始まった。すぐに「流れ」を掴んだのは、JPN。前半1分には6番・姫野のターンオーバーから5フェーズを重ね、13番・ラファエレのゴロパンがIREインゴールへ。バウンドさえ合えば、14番・松島がトライ!のシーンも、アンラッキー・バウンドでIREが押え、IREドロップアウトで再開へ。

 その後、4分、IREPで田村がPGを狙うも外す。このあたりから「流れ」はIREへ。

  キックオフからのリスタートを並べてみると、① IKO ② ILO ③ILO ④ IDO ⑤ IPJPG(外す) ⑥ IDO ⑦ JPIPK(タッチキック) ⑧ ILO ⑨ JPIPK(即座にウィングにキックパス) ⑩ JLO(自陣ゴール前のラインアウトでスチールされるもIREFWがノックバックしたボールが弾んで堀江の胸に!) ⑪ ILO ⑫ ILO と スクラムは一度も組まれずに 前半13分、この試合6回目のIREボールLOを起点としてIREの初トライが生まれる。

 1207秒 IRELO ボール投入

IRE11回のラックを連取し(9番からパスを受けた最初の選手が突進した5回、FWのピック&ゴーが3回)、10回目のラックでレフリーの腕が上がり、JP・アドバンテージが出た中で、IRE10番からのキックパス

1331秒 IRE13番トライ

 ******

  この試合のファーストスクラムは、前半18分。IREボールスクラムでJPNPIREがタッチキックを蹴り、JPN22m内のIREボールLO。これを起点としてIRE2つ目のトライが生まれる。

 1936秒 IRELO ボール投入(トンプソンがスチールしようとするもIRE5番に競り負けている。モールを組まれて前進される。)

IRE6回のラックを連取し、5回目のラックでレフリーの腕が上がり、JP・アドバンテージが出た中で、IRE10番がライン背後へのショートパント。

2050秒 IRE15番トライ。

 *******

 後半の入りもJPNペース。後半開始からのボール保持率78%と表示され、相手陣内でバックスが展開している中で13番・ラファエレがノックオン。IREのスクラムに。「流れ」が変わる。

 4643秒 IRES ボール投入 (IREがスクラムを押し崩れかけたところでボールを出す。 レフリーは流す。)

9番から12番にパス・突進 ラック 9番から5番にパス・突進 ラック の後 9番がボックスキック(初戦SCO戦で14回蹴った9番が、この試合では2回しか蹴らなかった。そのうちの1回がこのキック。)

4715秒 山中・ノックオン 山中足をつり、23番・福岡が入る。

 4803秒 IRES ボール投入前に崩れて レフリーが両チームフロントに話す

 4845秒 IRES レフリーの「crouch

4853秒 IRES ボール投入

4900秒 レフリーの笛 JPNの「Standing up in the scrum」のP

  IRE2つ目のトライに酷似したシーン。しかも、ミスが連鎖して。IREはスクラムでPKを得てJPN22m内のLOでのリスタート。

 4952秒 IRELO ボール投入。

トンプソンがスチールに成功! これは「値千金」の大ビッグプレー。JPN・ラックから9番・流は10番田村にパス。JPNの最後尾、ただ一人インゴールにいた田村がタッチキックを蹴る。JPN全員が前に出て行く。ところが、ノータッチ。

5014秒 IRE14番がキャッチしラン。リーチがタックル。ラックからIRE9番は18番にパス・突進。ラックからIRE9番は17番にパス・突進。ラックからIRE9番→10番→6番とパスされ、絶妙なゴロパントを蹴る。

5042秒 14番・松島が自陣ゴール前でキャッチし、一旦インゴールに入る(普通の選手、というか、松島以外の選手はみんな、あの場面ではグラウンディングして、IREJPNゴール前5mのスクラムで再開だっただろう)も、ランでタッチ際を駆け抜け、22mラインを越えてキック。仮に、山中が足をつらなかったら、おそらく松島のポジションには山中がいたはずである。山中が抜けて福岡がウィングに入ることにより、先発ウィングの松島がフルバックの位置に入っていた。「天の配剤」なのか… この試合、前半30分で8番・マフィーがケガで急遽20番・リーチに交代して大活躍した。「怪我も味方した」のだろうか…

5052秒 IRE11番キャッチしラン。ここから、IREがラックを5回連取し、その後、IRE10番が大きくキック。

5140秒 福岡自陣22m内でキャッチしラン。2度のラックの後、流がボックスキック。

5222秒 IRE10番ジャンピングキャッチを試み 足元で立ち止まったJPN選手と交錯し ノックオン(中村と堀江は レフリーに向って 両手を広げている) 

5225秒 ムーアが拾って突進ラックに。レフリーの手が上がる。

5232秒 アドバンテージを得ていて展開したJPNにノックオンが出たのでレフリーの笛が吹かれる。

  240秒間の「大活劇」。何度見ても見飽きない。でも、ニュースなどでは、ほとんど放送されなかった。当日のJスポーツ「デイリーハイライト」では、トンプソンのスチールのシーンのみが切り取られて放送された。WR編集の「ウィークリーハイライト」では、触れられていない。あたかも「なかったことにする」かのように…

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 『ラグビーワールドカップ2019 日本代表の軌跡』(発売元:株式会社東京サウンド・プロダクション 販売元:TCエンタテイメント株式会社)の[副音声]ゲスト:堀江翔太選手/稲垣啓太選手/福岡堅樹選手 MC:栗原徹では こう語られている。

 〇 田村のノータッチキックのシーン

栗原:ノータッチね かる~く リーチ オフサイドだったもんネ

堀江・稲垣・福岡:ハハハ(笑)

 〇 流のボックスキックのシーン

栗原:あぶないな

堀江:あぶな おーーー

栗原:これもネ

堀江:反則かな と一瞬思った

稲垣:俺も 思ったんスよ

堀江:やば イエロー出たかな

稲垣:カードかなっていうのは 思ったですけどネ

福岡:キャッチする前に落としているから

堀江:そういうことね

福岡:たぶん

堀江:意味ない 関係ない 後にやってるから

栗原:レフリーによっては なんかこう先にノックオンしていても 下に入ってひっくり返してるから 取る人もいるから

堀江:そうすネ

栗原:ここよかった と思って

堀江:絶対 イヤヤと思った

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  12-9IREがリードしていた場面。レフリーが明白な二つのPをなぜ「見過ごしたのか」何度見ても合理的な解釈が思い浮かばない。いまのところ、流れを変えたのは、「怪奇現象」だと思っている。

  「もはや奇跡ではない」感動の試合、何度見ても、両チームのグランドに立っていた全選手が、本当にノーサイドの笛まで黙々と戦いきった姿は美しい・素晴らしい。

 ( 参考 )

JPNボール

 

0-20min.

20-40min.

40-60min.

60-80min.

  計

   KO

    1       

    1       

    1       

    -       

    3       

   S

    -     

    2/2     

    1/1     

    3/3     

    6/6     

   LO

    0/1     

    4/4     

    1/2     

    1/1     

    6/8    

   PK

    2       

    4       

    1       

    2       

    9       

   FK

    -       

    -       

    -       

    -       

    -       

   DO

    -       

    -       

    -       

    -       

    -       

  計

    4       

   11       

    5       

    6       

   26       

() KOのうち1回は、後半開始時のもの。

SLOの分母は、マイボールでの投入回数。分子は、そのうちのボール獲得回数。

PKの回数は、相手チームのペナルティ(反則)によって獲得したPKの回数。

 JPNの得点

 

 0-20min.

 20-40min.

 40-60min.

 60-80min.

  計

 トライ(T)

    -

    -

    1

    -

    1

 T後のG

    -

    -

    1

    -

    1

 PG

    1

    2

    -

    1

    4

 IREボール

 

 0-20min.

 20-40min.

 40-60min.

 60-80min.

  計

   KO

    2       

    2       

    -       

    2       

    6       

   S

    1/1     

    1/2     

    4/4     

    -        

    6/7     

   LO

    7/7     

    0/1     

    0/1     

    2/2     

    9/11     

   PK

    3       

    1       

    1       

    1       

    6       

   FK

    -       

    -       

    -       

    -       

    -       

   DO

    2       

    -       

    1       

    -       

    3       

    

   15

    6

    7

    5

   33

 IREの得点

 

 0-20min.

 20-40min.

 40-60min.

 60-80min.

  計

  T

    2

    -

    -

    -

    2

 T後のG

    1

    -

    -

    -

    1

 PG

    -

    -

    -

    -

    -

  残り20分のリスタート機会の少なさ。どれだけ両チーム選手が走り続けたか、密度の濃さの象徴的数値である。

  JPNは、ワンプレー・ワンプレー、ものすごく準備されていた。細部にこだわり続けた集大成の試合。典型的なのが、3度のキックオフ。すべて、相手陣10mラインを越えたあたりのコンテストキックを蹴っていた。IREの初トライ後のJPNの初キックオフは、レメキのチャレンジもあり相手がノックオン。これを流→堀江→ムーア→稲垣とバックスのようにパスを回し突進。ラックから流→田村・内返しで山中が突進。ラックから出したところでIRE8番のオフサイド。これで得たPGを田村が決めて、ワンプレーで得点差を詰めた。

  IREボールラインアウトは、試合を通じて11回あったが、そのうちの7回は前半の前半(0-20分)に集中している。これも「流れ」の結果なのか? IREの得点がその時間帯にしかなかったことと符合するのだろうか?

                            令和295 

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