2019 W杯・備忘録 42
~ 試合の流れ ~
試合の中の「流れ」は、どのようにして出来上がり、どのようにして変わるのだろうか。
M14 JPN/IRE 前半35分 自陣22mでのIREボールスクラムをJPNが押し切ったシーンは、繰り返し映像が流され続けている。流れを変えた代表的・象徴的シーンである。
流れを変えるプレー・出来事は、さまざまある。
この試合、IREのキックオフで始まった。すぐに「流れ」を掴んだのは、JPN。前半1分には6番・姫野のターンオーバーから5フェーズを重ね、13番・ラファエレのゴロパンがIREインゴールへ。バウンドさえ合えば、14番・松島がトライ!のシーンも、アンラッキー・バウンドでIREが押え、IREドロップアウトで再開へ。
その後、4分、IREのPで田村がPGを狙うも外す。このあたりから「流れ」はIREへ。
キックオフからのリスタートを並べてみると、① I・KO ② I・LO ③I・LO ④ I・DO ⑤ I・P→J・PG(外す) ⑥ I・DO ⑦ J・P→I・PK(タッチキック) ⑧ I・LO ⑨ J・P→I・PK(即座にウィングにキックパス) ⑩ J・LO(自陣ゴール前のラインアウトでスチールされるもIRE・FWがノックバックしたボールが弾んで堀江の胸に!) ⑪ I・LO ⑫ I・LO と スクラムは一度も組まれずに 前半13分、この試合6回目のIREボールLOを起点としてIREの初トライが生まれる。
12分07秒 IRE・LO ボール投入
IREが11回のラックを連取し(9番からパスを受けた最初の選手が突進した5回、FWのピック&ゴーが3回)、10回目のラックでレフリーの腕が上がり、JのP・アドバンテージが出た中で、IRE・10番からのキックパス
13分31秒 IRE・13番トライ
******
この試合のファーストスクラムは、前半18分。IREボールスクラムでJPNがP。IREがタッチキックを蹴り、JPN22m内のIREボールLO。これを起点としてIREの2つ目のトライが生まれる。
19分36秒 IRE・LO ボール投入(トンプソンがスチールしようとするもIRE・5番に競り負けている。モールを組まれて前進される。)
IREが6回のラックを連取し、5回目のラックでレフリーの腕が上がり、JのP・アドバンテージが出た中で、IRE・10番がライン背後へのショートパント。
20分50秒 IRE・15番トライ。
*******
後半の入りもJPNペース。後半開始からのボール保持率78%と表示され、相手陣内でバックスが展開している中で13番・ラファエレがノックオン。IREのスクラムに。「流れ」が変わる。
46分43秒 IRE・S ボール投入 (IREがスクラムを押し崩れかけたところでボールを出す。 レフリーは流す。)
9番から12番にパス・突進 ラック 9番から5番にパス・突進 ラック の後 9番がボックスキック(初戦SCO戦で14回蹴った9番が、この試合では2回しか蹴らなかった。そのうちの1回がこのキック。)
47分15秒 山中・ノックオン 山中足をつり、23番・福岡が入る。
48分03秒 IRE・S ボール投入前に崩れて レフリーが両チームフロントに話す
48分45秒 IRE・S レフリーの「crouch」
48分53秒 IRE・S ボール投入
49分00秒 レフリーの笛 JPNの「Standing up in the scrum」のP
IREの2つ目のトライに酷似したシーン。しかも、ミスが連鎖して。IREはスクラムでPKを得てJPN22m内のLOでのリスタート。
49分52秒 IRE・LO ボール投入。
トンプソンがスチールに成功! これは「値千金」の大ビッグプレー。JPN・ラックから9番・流は10番田村にパス。JPNの最後尾、ただ一人インゴールにいた田村がタッチキックを蹴る。JPN全員が前に出て行く。ところが、ノータッチ。
50分14秒 IRE・14番がキャッチしラン。リーチがタックル。ラックからIRE・9番は18番にパス・突進。ラックからIRE・9番は17番にパス・突進。ラックからIRE・9番→10番→6番とパスされ、絶妙なゴロパントを蹴る。
50分42秒 14番・松島が自陣ゴール前でキャッチし、一旦インゴールに入る(普通の選手、というか、松島以外の選手はみんな、あの場面ではグラウンディングして、IREのJPNゴール前5mのスクラムで再開だっただろう)も、ランでタッチ際を駆け抜け、22mラインを越えてキック。仮に、山中が足をつらなかったら、おそらく松島のポジションには山中がいたはずである。山中が抜けて福岡がウィングに入ることにより、先発ウィングの松島がフルバックの位置に入っていた。「天の配剤」なのか… この試合、前半30分で8番・マフィーがケガで急遽20番・リーチに交代して大活躍した。「怪我も味方した」のだろうか…
50分52秒 IRE・11番キャッチしラン。ここから、IREがラックを5回連取し、その後、IRE・10番が大きくキック。
51分40秒 福岡自陣22m内でキャッチしラン。2度のラックの後、流がボックスキック。
52分22秒 IRE・10番ジャンピングキャッチを試み 足元で立ち止まったJPN選手と交錯し ノックオン(中村と堀江は レフリーに向って 両手を広げている)
52分25秒 ムーアが拾って突進ラックに。レフリーの手が上がる。
52分32秒 アドバンテージを得ていて展開したJPNにノックオンが出たのでレフリーの笛が吹かれる。
2分40秒間の「大活劇」。何度見ても見飽きない。でも、ニュースなどでは、ほとんど放送されなかった。当日のJスポーツ「デイリーハイライト」では、トンプソンのスチールのシーンのみが切り取られて放送された。WR編集の「ウィークリーハイライト」では、触れられていない。あたかも「なかったことにする」かのように…
***********
『ラグビーワールドカップ2019 日本代表の軌跡』(発売元:株式会社東京サウンド・プロダクション 販売元:TCエンタテイメント株式会社)の[副音声]ゲスト:堀江翔太選手/稲垣啓太選手/福岡堅樹選手 MC:栗原徹では こう語られている。
〇 田村のノータッチキックのシーン
栗原:ノータッチね かる~く リーチ オフサイドだったもんネ
堀江・稲垣・福岡:ハハハ(笑)
〇 流のボックスキックのシーン
栗原:あぶないな
堀江:あぶな おーーー
栗原:これもネ
堀江:反則かな と一瞬思った
稲垣:俺も 思ったんスよ
堀江:やば イエロー出たかな
稲垣:カードかなっていうのは 思ったですけどネ
福岡:キャッチする前に落としているから
堀江:そういうことね
福岡:たぶん
堀江:意味ない 関係ない 後にやってるから
栗原:レフリーによっては なんかこう先にノックオンしていても 下に入ってひっくり返してるから 取る人もいるから
堀江:そうすネ
栗原:ここよかった と思って
堀江:絶対 イヤヤと思った
**************
12-9とIREがリードしていた場面。レフリーが明白な二つのPをなぜ「見過ごしたのか」何度見ても合理的な解釈が思い浮かばない。いまのところ、流れを変えたのは、「怪奇現象」だと思っている。
「もはや奇跡ではない」感動の試合、何度見ても、両チームのグランドに立っていた全選手が、本当にノーサイドの笛まで黙々と戦いきった姿は美しい・素晴らしい。
( 参考 )
JPNボール
| 0-20min. | 20-40min. | 40-60min. | 60-80min. | 計 |
KO | 1 | 1 | 1 | - | 3 |
S | - | 2/2 | 1/1 | 3/3 | 6/6 |
LO | 0/1 | 4/4 | 1/2 | 1/1 | 6/8 |
PK | 2 | 4 | 1 | 2 | 9 |
FK | - | - | - | - | - |
DO | - | - | - | - | - |
計 | 4 | 11 | 5 | 6 | 26 |
(注) KOのうち1回は、後半開始時のもの。
S、LOの分母は、マイボールでの投入回数。分子は、そのうちのボール獲得回数。
PKの回数は、相手チームのペナルティ(反則)によって獲得したPKの回数。
JPNの得点
| 0-20min. | 20-40min. | 40-60min. | 60-80min. | 計 |
トライ(T) | - | - | 1 | - | 1 |
T後のG | - | - | 1 | - | 1 |
PG | 1 | 2 | - | 1 | 4 |
IREボール
| 0-20min. | 20-40min. | 40-60min. | 60-80min. | 計 |
KO | 2 | 2 | - | 2 | 6 |
S | 1/1 | 1/2 | 4/4 | - | 6/7 |
LO | 7/7 | 0/1 | 0/1 | 2/2 | 9/11 |
PK | 3 | 1 | 1 | 1 | 6 |
FK | - | - | - | - | - |
DO | 2 | - | 1 | - | 3 |
計 | 15 | 6 | 7 | 5 | 33 |
IREの得点
| 0-20min. | 20-40min. | 40-60min. | 60-80min. | 計 |
T | 2 | - | - | - | 2 |
T後のG | 1 | - | - | - | 1 |
PG | - | - | - | - | - |
残り20分のリスタート機会の少なさ。どれだけ両チーム選手が走り続けたか、密度の濃さの象徴的数値である。
JPNは、ワンプレー・ワンプレー、ものすごく準備されていた。細部にこだわり続けた集大成の試合。典型的なのが、3度のキックオフ。すべて、相手陣10mラインを越えたあたりのコンテストキックを蹴っていた。IREの初トライ後のJPNの初キックオフは、レメキのチャレンジもあり相手がノックオン。これを流→堀江→ムーア→稲垣とバックスのようにパスを回し突進。ラックから流→田村・内返しで山中が突進。ラックから出したところでIRE・8番のオフサイド。これで得たPGを田村が決めて、ワンプレーで得点差を詰めた。
IREボールラインアウトは、試合を通じて11回あったが、そのうちの7回は前半の前半(0-20分)に集中している。これも「流れ」の結果なのか? IREの得点がその時間帯にしかなかったことと符合するのだろうか?
令和2年9月5日
0 件のコメント:
コメントを投稿