2019W杯・備忘録34
~ M33 GEO/AUS ~
前日、大分でのWAL/FIJ戦で、WALが勝利したことから、試合開始前で、FIJが4試合終了し、勝点・7、GEOは勝点・5。GEOが次回大会の自動出場権を得るためには、引き分けではダメで、勝つことがマストになった。
2019年年初以来、静岡県民に会うたびに「10月10日に台風が来るように祈って下さい」とお願いし続けた。「なぜ?」と聞かれると、「10月11日にエコパで、GEO/AUS戦が行われるんです。GEOが勝つためには、グランドが泥田状態になることが必要なのです。」と答え続けた。GEOが初の決勝ラウンドに進出するためには、AUS戦に勝つことが必須だと信じていたから。その頃は、みんな、ラグビーW杯、「はあっ?」という反応だった。
ともかく、人びとの祈りが通じたのか、はたまた、中途半端だったからなのか、台風がやってくることになった。残念ながら、この試合終了後に。
エコパ、とんでもない巨大スタジアムが、とんでもない山の中腹に立っている。JR東海道本線「愛野駅」から徒歩15分、「愛野駅」の存在を知っている人って、どれだけいるのか。2002・サッカーW杯のレガシー。収容人数・50,889人。今大会の試合会場では、横浜の72,327人に次ぐ2番目の大きさ。ちなみに、準々決勝の舞台となった東京は49,970人、大分は40,000人である。それにしても、こんな辺鄙なところにこれだけの収容人数を集められるビッグ・イベントって、平時に一体あるのかな、と素朴に感じる。
台風の接近を感じさせる雨が降る中、39,802人の観客が見つめる中、キックオフ。エコパ、あの歓喜のJPN・IRE戦は、47,813人、RSA/ITA戦・44,146人、SCO/RUS戦・44,123人だったから、台風で人出が減ったことは否めない。
試合は、GEOが勝つとしたら、こういう展開しかない、という理想通りのロースコアで進む。22分・ディフェンスの隙を突かれて初トライ・初ゴールを許すも、27分・PGを決めて、3-7と追いすがる。34分には、AUS・8番にイエロー・カード、シンビンで15人対14人の戦いに。しかし、その数的優位がある中で、PGを決められ、3-10でハーフタイム。後半もディフェンスで粘り続けて、両チーム無得点で過ぎてゆく。雨足は強くなり、アップセットが近づいてくる。と願っていたら、59分、トライ・ゴールを決められ、3-17に。でも、まだ諦めていない。このあたりから、帰路につく観客が目立ち始める。東京方面への最終の新幹線に乗るためには、ノーサイドが待てない。69分にトライを取り返して、8-17に追いすがる。一縷の望みがつながる。しかし、74分、78分、立て続けにトライを奪われ、8-27でノーサイド。観客は半減していた。
強くなった雨で遅々として進まない人びとの列。そんな中、AUSジャージーのサポーターたちが無邪気に、かつ、傍若無人に大声をあげて喜んでいる。残念・失望と満足が入り混じった感情を反芻しながら、往路の5倍くらいの時間がかかって「愛野駅」の駅舎が見えてくる。改札口まで長蛇の列が出来ていた。
今回、DVDでJスポーツの中継、解説・栗原徹で見返したら、栗原が前半から「AUSが、キックを封印する異常な戦い方をしている。ひょっとしたら、準々決勝、おそらくENGとの戦いが予想されるので、それを想定しての封印かもしれない」と解説している。WRのスタッツにKick from handという項目がある。この試合のAUSは10回(GEO・14回)。たしかに少ない。そこで、AUSの各試合での回数を確認すると、第1戦・12回(FIJ・19回)、第2戦・20回(WAL・30回)、第3戦・9回(URG・18回)、そして準々決勝・15回(ENG・20回)。おそらく、AUS・チェイカHCは、ランニングラグビーに賭けていたのだろう。この試合だけでなく、今大会、勝利を求めて一貫して追求していたのではないだろうか。
ちなみに、JPN/SCO戦のJPNも10回(SCO・21回)。JPNは、第1戦・33回(RUS・39回)、第2戦・19回(IRE・19回)、第3戦・27回(SAM・22回)、準々決勝・20回(RSA・30回)。こちらは、対戦相手に応じて柔軟に戦術を変えていたようである。
なお、最小回数は、M10・FIJ、M24・AUSの9回で、いずれも対戦相手は、URG。
この試合のWRのスタッツで興味深いのは、タックル回数。GEOの218回が一試合大会最多。AUSの47回が一試合大会最少。
ちなみに、JPNは第1戦・134回、第2戦・176回、第3戦・127回、第4戦・148回、準々決勝・103回。
一方的に、AUSが攻め続けて、GEOが守り続ける。だからなのか、AUSボール・スクラムは3回と少ない。一方、GEOボール・スクラムは12回。ただ、そのマイボール・スクラムで、前後半1度ずつコラプシングのPを取られている。スクラムでも優位に立てなかったGEO。目も当てられなかったのが、ラインアウト。GEOボール・ラインアウト・11回のうち、確保できたのは6回。AUSの長身選手にスチールされまくる。これだけ、セットプレーが安定していないのに試合になっていたのは、それなりの底力がついてきたからなのか。Pも相手の倍以上の15回犯している(AUSは7回)。Midolの戦評は、AUSの攻撃の稚拙さ・控え選手中心のメンバー構成をあげていた。不思議な試合が終わり、GEOは次回大会の自動出場権を得られずに去っていった。
現在のWR・ランキングで12位のGEO。12位以下で次回大会自動出場権を獲得しているのが、14位のITA。この両チームの戦い、是非見てみたいものだが、まず、実現しないだろうな、という気もする。
愛野駅から満員の浜松行の各停に乗って、二つ目の磐田で下車する。もともと、この夜・磐田に泊まって、翌日、横浜の決戦・FRA/ENGを観戦する予定だった。ところが、台風接近で、試合は中止、新幹線は翌日・全日運休が早々と告知され、磐田の駅そばホテルに連泊することに。翌日は、ホテルから一歩も出ずに過ごす。思わぬことは思わぬ時に起こるものだ…
それにしても、磐田駅前、ほんとうに何もない、というとお叱りを受けそうだが、都会の駅前の雰囲気は何もない。居酒屋が申し訳程度にパラパラあるくらい。よくこんな街で、Jリーグのチームとトップリーグのチームが存在できているな、とつくづく思う。
企業を核としたスポーツから地域に根差したスポーツへ。理想としては文句ない。ただし、プロ・スポーツとなると、どうしても集客数などが大きな要素となってくる。根差す地域が問題となってくる。フランス・ラグビーを見ていると、プロ化後、どんどん地方中小都市の名門古豪クラブが降格してゆく。日本のサッカー・Jリーグでも、甲府・湘南・鳥栖は苦戦を強いられている。
日本ラグビーの今後を考える上で、日本の特性とラグビーの特性をどう捉えるか、そこが原点だよな、と駅そばホテルの狭い一室で考えていたことを思い出す。
( 参考 )
GEOボール
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
KO
|
-
|
2
|
1
|
2
|
5
|
S
|
3/3
|
1/2
|
3/4
|
2/3
|
9/12
|
LO
|
2/2
|
1/2
|
1/2
|
2/5
|
6/11
|
PK
|
2
|
3
|
2
|
-
|
7
|
FK
|
1
|
-
|
-
|
-
|
1
|
DO
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
計
|
8
|
9
|
9
|
10
|
36
|
(注) KOのうち、1回は、後半開始時のもの。
S、LOの分母は、マイボールでの投入回数。分子は、そのうちのボール獲得回数。
PKの回数は、相手チームのペナルティ(反則)によって獲得したPKの回数。
GEOの得点
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
トライ(T)
|
-
|
-
|
-
|
1
|
1
|
T後のG
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
PG
|
-
|
1
|
-
|
-
|
1
|
AUSボール
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
KO
|
1
|
1
|
-
|
1
|
3
|
S
|
1/1
|
1/1
|
1/1
|
-
|
3/3
|
LO
|
4/4
|
3/3
|
7/8
|
4/4
|
18/19
|
PK
|
3
|
4
|
4
|
4
|
15
|
FK
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
DO
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
計
|
9
|
9
|
13
|
9
|
40
|
(注) 34分、TMOの結果、AUS・8番にイエロー・カードが出た。
AUSの得点
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
T
|
-
|
1
|
1
|
2
|
4
|
T後のG
|
-
|
1
|
1
|
-
|
2
|
PG
|
-
|
1
|
-
|
-
|
1
|
3-7で迎えた前半34分、TMOでAUS・8番にイエロー・カードが出される。このPKをタッチに蹴り出しGEOボールのラインアウト。これをスチールされてしまう。ここが大きなポイントだったのかな、と。そこからAUSに展開され、ラックで、今度はGEOがP。そして、PGを決められ、3-10に。ラインアウトの力量差で勝負が決まった気がする試合だった。
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