2020年7月13日月曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 33

2019 W杯・備忘録33
 ~  M21 GEO/FIJ ~

    大会12日目、聖地・花園でGEO/FIJ戦が行われた。雨降りの中、濡れながら観戦し、10-45の完敗に、雨上がりの夕方、とぼとぼ歩いて帰った記憶だけが残っていた試合。

    曇天の中、近鉄奈良線・東花園駅から通い慣れた道を歩く。いつもと変わらぬ細い沿道。冬の花園との違いは、外国人の多さか。お店の雰囲気も華やいでいる。大きく変わったのは、スタジアム前広場。W杯の置き土産なのか。スタジアムに入って待つうちに、雨が降ってくる。「ラグビー場」と名乗る花園と熊谷には、屋根がない。日本ラグビーの実力が如実に表れている。

    午後215分キックオフ。21,069人を集めて試合がはじまる。またしても、両チームのHCNZ人。おまけに(?)、レフリーもNZ人。FIJに気持ちよく走られて、7トライを献上した残念な試合。そんな記憶だけが残ったが、DVDで見返してみると、興味深い試合、味わいのある試合である。
    両チームにとって、3試合目。GEOは、3試合違う選手がキャプテンを務める。前2試合でいい出来だったスタンドオフがメンバーリストから消えている。ケガ人に悩まされている。そもそも、レジェンド・ゴルゴゼは、二列目ないしは8番の選手で、7番でプレーすることは滅多にない。中3日のハンディだけではない。

    試合のポイントは、やはりスクラム。参考でご覧いただくとわかるように、前半、FIJボール・スクラムはゼロ。これは、めずらしい。前半のハンドリング・エラーは、FIJ9回に対して、GEO1回。前半は締まった試合だった。GEOボール・スクラムは、
3分・組直しの後押し込む 
11分・FIJのコラプシングでPK獲得
16
29分・レフリーが組む前に両チーム・フロントローに何かを話している。組み合ってGEOが押し込んだところで笛。GEOのノー・バインディングが取られてPK献上。今大会、こんなP、あまり見なかった気がする。NZ人レフリーだからなのか…
31分・自陣ゴール前からサイド・アタックでボールを前に持ち出し、繋いで、相手ゴール前に迫る。この間、二度のP・アドバンテージで継続。最終的にゴール前PGを決め、3点を入れる。

  こうして、前半は、3-7と僅差の競り合った試合内容。
    局面が変わったのが後半。前半ゼロだったFIJボール・スクラムが6回。この6回のうちの4回は、PKを獲得してスクラムを選択したもの!スクラム大国・GEO相手にスクラムを選択している。スクラムは、押し合いに目が行くが、別の視点で見れば、FW8人がポイントに集まり・広いスペースが出来るBKにとって最高の機会でもある。どんな形であれボールさえ出せれば、後は無人の荒野を駆けめぐる如く、高速ランナーが奔放に走り抜ける。

 FIJボール・スクラムは、
42分・GEOノックオンによるもの。この試合のFIJボール・ファースト・スクラム。
43分・GEOPでスクラムを選択。なんとかボールを出して、展開してトライ。
59分・GEOのモール・パイルアップからのスクラム。押されるも展開してトライ。
64分・GEOゴール前でGEOノットリリースのP。スクラムを選択する。
65分・④のスクラムでのGEOコラプシングのP。再びスクラムを選択。押されるも展開
66分・GEOノットロールアウェイのP。スクラムを選択。押されるも展開してトライ。

  スクラムの押し合いでは勝るGEO。ただし、8人で押すことに集中しているだけ、ディフェンスへのスタートが遅れる。FIJの高速ランナーに追いつけない。一発でトライを取りきられる。
  象徴的なのが、タックル成功率。GEOは、前半・84%だったのが、後半・53%に。これでは、勝てない。大量失点を防げない。タックルをミスしたから負けた、と原因として捉えるのか、ミスタックルを誘ったFIJのランニング・スキルが一枚上だった、と分析するのか、あるいは、疲れから足が止まった、とするのか。いろいろな解釈が成り立ち得る。
  ともかく、素朴にFIJが挌上だった、と感じられる。
  スクラムは、FW8人対8人の力比べ、意地の張り合いだけではない。試合の流れのなかでのリスタートの瞬間、スクラムから始まる新たなページがある。その新しいはじまりを、GEOのように8人主体で考えるか、FIJのように15人全体で捉えるか、教科書に載せたい試合である。
 ********

  花園の指定管理者に日本協会などの「ワンチーム花園」ではなく、地元のサッカークラブ「大阪FC」などの共同事業体が選ばれた。これも、今の日本における日本ラグビーの実力を示している。
 ( 参考 )
 GEOボール

0-20min.
20-40min.
40-60min.
60-80min.
  計
   KO
    -       
    1       
    3       
    4       
    8       
   S
    3/3     
    1/2     
    1/1     
    1/2     
    6/8     
   LO
    3/3     
    3/3     
    3/3     
    1/1     
   10/10    
   PK
    3       
    2       
    1       
    2       
    8       
   FK
    1       
    -       
    -       
    -       
    1       
   DO
    -       
    -       
    -       
    -       
    -       
  計
   10       
    8       
    8       
    9       
   35       
() KOのうち、1回は、後半開始時のもの。
SLOの分母は、マイボールでの投入回数。分子は、そのうちのボール獲得回数。
PKの回数は、相手チームのペナルティ(反則)によって獲得したPKの回数。
 GEOの得点

 0-20min.
 20-40min.
 40-60min.
 60-80min.
  計
 トライ(T)
    -
    -
    1
    -
    1
 T後のG
    -
    -
    1
    -
    1
 PG
    -
    1
    -
    -
    1
 FIJボール

 0-20min.
 20-40min.
 40-60min.
 60-80min.
  計
   KO
    1       
    1       
    1       
    -       
    3       
   S
    -     
    -     
    3/3     
    3/3     
    6/6     
   LO
    5/5     
    5/6     
    2/2     
    1/1     
   13/14     
   PK
    1       
    5       
    2       
    5       
   13       
   FK
    -       
    -       
    -       
    -       
    -       
   DO
    -       
    -       
    -       
    -       
    -       
    
    8
   12
    8
    9
    37
 FIJの得点

 0-20min.
 20-40min.
 40-60min.
 60-80min.
  計
  T
    1
    -
    2
    4
    7
 T後のG
    1
    -
    -
    4
    5
 PG
    -
    -
    -
    -
    -

  GEO魂を見せたのが、後半・51分。FIJのトライ・ゴールで3-17と引き離された直後のGEOボール・キックオフ。これを右サイドの前目に蹴り、FIJFWが目測を誤ったところをGEO14番がクリーン・キャッチ。鋭く走り込み・繋いで・ゴール前ラックからゴルゴゼがねじ込みタッチ・ダウン。ノー・ホイッスル・トライ。ゴールも決まって、10-17と追いすがる。こういうことが、稀にあるから、KOをリスタートにカウントしたくなる。試合は、ここまで…

後半の後半、矢折れ力尽きた感のあるGEO20分間に4トライを献上。20分間に5回のペナルティ。そのうち3回はスクラムを選択される屈辱。地力の差なのか、中3日のせいなのか。何がいけなかったのか、何が足りなかったのか。

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