2019 W杯・備忘録33
~ M21 GEO/FIJ ~
大会12日目、聖地・花園でGEO/FIJ戦が行われた。雨降りの中、濡れながら観戦し、10-45の完敗に、雨上がりの夕方、とぼとぼ歩いて帰った記憶だけが残っていた試合。
曇天の中、近鉄奈良線・東花園駅から通い慣れた道を歩く。いつもと変わらぬ細い沿道。冬の花園との違いは、外国人の多さか。お店の雰囲気も華やいでいる。大きく変わったのは、スタジアム前広場。W杯の置き土産なのか。スタジアムに入って待つうちに、雨が降ってくる。「ラグビー場」と名乗る花園と熊谷には、屋根がない。日本ラグビーの実力が如実に表れている。
午後2時15分キックオフ。21,069人を集めて試合がはじまる。またしても、両チームのHCはNZ人。おまけに(?)、レフリーもNZ人。FIJに気持ちよく走られて、7トライを献上した残念な試合。そんな記憶だけが残ったが、DVDで見返してみると、興味深い試合、味わいのある試合である。
両チームにとって、3試合目。GEOは、3試合違う選手がキャプテンを務める。前2試合でいい出来だったスタンドオフがメンバーリストから消えている。ケガ人に悩まされている。そもそも、レジェンド・ゴルゴゼは、二列目ないしは8番の選手で、7番でプレーすることは滅多にない。中3日のハンディだけではない。
試合のポイントは、やはりスクラム。参考でご覧いただくとわかるように、前半、FIJボール・スクラムはゼロ。これは、めずらしい。前半のハンドリング・エラーは、FIJ・9回に対して、GEOは1回。前半は締まった試合だった。GEOボール・スクラムは、
①3分・組直しの後押し込む
②11分・FIJのコラプシングでPK獲得
③16分
④29分・レフリーが組む前に両チーム・フロントローに何かを話している。組み合ってGEOが押し込んだところで笛。GEOのノー・バインディングが取られてPK献上。今大会、こんなP、あまり見なかった気がする。NZ人レフリーだからなのか…
⑤31分・自陣ゴール前からサイド・アタックでボールを前に持ち出し、繋いで、相手ゴール前に迫る。この間、二度のP・アドバンテージで継続。最終的にゴール前PGを決め、3点を入れる。
こうして、前半は、3-7と僅差の競り合った試合内容。
局面が変わったのが後半。前半ゼロだったFIJボール・スクラムが6回。この6回のうちの4回は、PKを獲得してスクラムを選択したもの!スクラム大国・GEO相手にスクラムを選択している。スクラムは、押し合いに目が行くが、別の視点で見れば、FW8人がポイントに集まり・広いスペースが出来るBKにとって最高の機会でもある。どんな形であれボールさえ出せれば、後は無人の荒野を駆けめぐる如く、高速ランナーが奔放に走り抜ける。
FIJボール・スクラムは、
①42分・GEOノックオンによるもの。この試合のFIJボール・ファースト・スクラム。
②43分・GEOのPでスクラムを選択。なんとかボールを出して、展開してトライ。
③59分・GEOのモール・パイルアップからのスクラム。押されるも展開してトライ。
④64分・GEOゴール前でGEOノットリリースのP。スクラムを選択する。
⑤65分・④のスクラムでのGEOコラプシングのP。再びスクラムを選択。押されるも展開
⑥66分・GEOノットロールアウェイのP。スクラムを選択。押されるも展開してトライ。
スクラムの押し合いでは勝るGEO。ただし、8人で押すことに集中しているだけ、ディフェンスへのスタートが遅れる。FIJの高速ランナーに追いつけない。一発でトライを取りきられる。
象徴的なのが、タックル成功率。GEOは、前半・84%だったのが、後半・53%に。これでは、勝てない。大量失点を防げない。タックルをミスしたから負けた、と原因として捉えるのか、ミスタックルを誘ったFIJのランニング・スキルが一枚上だった、と分析するのか、あるいは、疲れから足が止まった、とするのか。いろいろな解釈が成り立ち得る。
ともかく、素朴にFIJが挌上だった、と感じられる。
スクラムは、FW・8人対8人の力比べ、意地の張り合いだけではない。試合の流れのなかでのリスタートの瞬間、スクラムから始まる新たなページがある。その新しいはじまりを、GEOのように8人主体で考えるか、FIJのように15人全体で捉えるか、教科書に載せたい試合である。
********
花園の指定管理者に日本協会などの「ワンチーム花園」ではなく、地元のサッカークラブ「大阪FC」などの共同事業体が選ばれた。これも、今の日本における日本ラグビーの実力を示している。
( 参考 )
GEOボール
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
KO
|
-
|
1
|
3
|
4
|
8
|
S
|
3/3
|
1/2
|
1/1
|
1/2
|
6/8
|
LO
|
3/3
|
3/3
|
3/3
|
1/1
|
10/10
|
PK
|
3
|
2
|
1
|
2
|
8
|
FK
|
1
|
-
|
-
|
-
|
1
|
DO
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
計
|
10
|
8
|
8
|
9
|
35
|
(注) KOのうち、1回は、後半開始時のもの。
S、LOの分母は、マイボールでの投入回数。分子は、そのうちのボール獲得回数。
PKの回数は、相手チームのペナルティ(反則)によって獲得したPKの回数。
GEOの得点
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
トライ(T)
|
-
|
-
|
1
|
-
|
1
|
T後のG
|
-
|
-
|
1
|
-
|
1
|
PG
|
-
|
1
|
-
|
-
|
1
|
FIJボール
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
KO
|
1
|
1
|
1
|
-
|
3
|
S
|
-
|
-
|
3/3
|
3/3
|
6/6
|
LO
|
5/5
|
5/6
|
2/2
|
1/1
|
13/14
|
PK
|
1
|
5
|
2
|
5
|
13
|
FK
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
DO
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
計
|
8
|
12
|
8
|
9
|
37
|
FIJの得点
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
T
|
1
|
-
|
2
|
4
|
7
|
T後のG
|
1
|
-
|
-
|
4
|
5
|
PG
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
GEO魂を見せたのが、後半・51分。FIJのトライ・ゴールで3-17と引き離された直後のGEOボール・キックオフ。これを右サイドの前目に蹴り、FIJ・FWが目測を誤ったところをGEO・14番がクリーン・キャッチ。鋭く走り込み・繋いで・ゴール前ラックからゴルゴゼがねじ込みタッチ・ダウン。ノー・ホイッスル・トライ。ゴールも決まって、10-17と追いすがる。こういうことが、稀にあるから、KOをリスタートにカウントしたくなる。試合は、ここまで…
後半の後半、矢折れ力尽きた感のあるGEO。20分間に4トライを献上。20分間に5回のペナルティ。そのうち3回はスクラムを選択される屈辱。地力の差なのか、中3日のせいなのか。何がいけなかったのか、何が足りなかったのか。
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