2019 W杯・備忘録 78
~ ドロップゴール ~
先週末の第58回日本選手権&トップリーグ・プレーオフ準決勝の二試合をご覧になられた方も多いと思う。パナソニックとサントリーが順当に勝ち上がった。両チームともに、1本のドロップゴールを決めている。敗者はゼロ。
第1戦:パナソニック48-21トヨタ。前半22分、トヨタが15-8とリードしている場面で、パナソニック・10番がドロップゴールを決め、15-11と点差を詰めた。
第2戦:サントリー26-9クボタ。前半19分、3-3と同点の場面で、サントリー・10番がドロップゴールを決め、6-3とリードした。
5月1日・2日に行われたヨーロッパ・クラブ選手権(ハイネッケン・カップ)準決勝では、第2戦:ラロッシェル32-23レンスター、前半18分、レンスターが7-3とリードしている場面で、ラロッシェル・10番がドロップゴールを決め、7-6と点差を詰めている。
いずれも効果的なドロップゴールで勝利に結びついている。
今大会(2019W杯)の決勝ラウンド7試合では、ドロップゴールによる得点はなかった。準決勝:RSA/WAL戦、後半34分、16-16の同点の場面で、RSA・10番が相手ペナルティのアドバンテージが出ている中でドロップゴールを狙ったが外した。直後、ペナルティゴールを決めて勝利している。このドロップゴールが決まっていたら、記録・記憶に残るドロップゴールの一つになっていたのだろう。
エレロ『ラグビー愛好辞典』「Drop」の項目では次のようなことが書かれている。
・ 「ドロップゴール」は化石化したプレーだ。ご先祖様が長きにわたって何の変更も加えられずに生き延びてきたようなものだ。我々の「亀」であり、「サイ」である!前々世紀の古代イングランド・フットボールの遺物であり、エリス少年も・ビクトリア女王下でも・1905年のオールブラックスもドロップゴールを試みた。
・ 実際、ドロップゴールは得点(3点)になる。しかし、ペナルティゴールや(トライ後の)コンバージョンゴールとは異なり、試合が動きプレーが続いている最中のキックである。「To drop」とは英語で(ボールを)落とすことである。ボールを落として、地面からはね返ったら即座にキックする。どのプレーヤーでも、誰の許可も必要なく、どの地点からでも試みることができる。もちろん、ゴールポストまでの距離などを考慮にいれなければならないが。
・ 現代のラグビーはトライ至上主義で、ドロップゴールは三流扱い、「ダサい」一つの手段に見られがちだ。
・ ドロップゴールの名手は、フロントローやパスの名手のセンターと同じように、ラグビー史にその名を残している。
・ 1995年W杯決勝では、RSAの10番・ストランスキーが延長の決勝ドロップゴールを決めている。(注:この試合、9-9の同点で延長に入り、延長2分:NZ・10番がPGを決めリード、その後12分:RSA・10番がPGを決め追い付き、14分:RSA・10番が決勝ドロップゴールを決めている。)
・ そのRSAは、4年後の次の大会では、準決勝、AUS・10番にドロップゴールを決められ大会を去っている。
エレロが書いたのが、2003年大会前。
2003年W杯決勝は、17-17の延長19分、ENG・10番が決勝ドロップゴールを決めてエディー・ジョーンズ率いるAUSに勝利したことは記憶に残っている。
それにしても、ドロップキックのためにボールを前に落とすことはノックオンにならない、というのは、エレロの書いている通り、歴史的な決め事だ、としか言いようがない。
現在の競技規則では次のように定義されている。
ドロップキック:ボールを故意に片手、または、両手から地面に落とした後、最初にはね返ったときに蹴ること。
ノックオン:プレーヤーがボールを落としボールが前方へ進む、または、プレーヤーが手、または、腕でボールを前方へたたく、または、ボールがプレーヤーの手、または、腕に当たってボールが前方へ進み、そのプレーヤーがそのボールを捕りなおす前にボールが地面または他のプレーヤーに触れることをいう。
ラグビーは、得点の積み重ねゲームで、より多くの得点を獲得したチームが勝利する。得点の引き出しは多いに越したことはない。
この週末の決勝戦2試合、どのような展開・結末が待っているのか、楽しみである。
令和3年5月22日
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