2019 W杯・備忘録 79
~ 5点差 ~
先週末のヨーロッパ・クラブ選手権決勝(以下、「HC」)、日本選手権決勝、いずれも5点差の試合だった。ノーサイドの笛が吹かれるまでの5点差での戦い、スリルがあった。PGやDGでは追い付かない。負けているチームは、遮二無二トライを取りに行く。「下駄を履くまでわからない」試合だった。
試合展開だけを見れば、いずれの試合もある時点では「勝負あった」と感じさせるものだった。
パナソニック/サントリー、27分に20-0、54分に28-12、72分に31-19とセーフティー・リードとも言える点差があった。敗色濃厚の中、76分・サントリーのトライ・ゴールで31-26の5点差に詰める。
HCトゥルーズ/ラ・ロッシェル、27分にラ・ロッシェル・12番にレッドカードが出され、15人対14人の戦いに。68分には22-12と引き離される。72分・ラ・ロッシェルのトライ・ゴールで22-17の5点差に。
80分間を通してみれば、終始優勢だったチームが順当に勝ったとも言える。ただし、「判定・優勢勝ち」が存在しない点数ゲーム。ラストワンプレーの大逆転が起これば、どう語り継がれたのか…
敗者・サントリー、10番・バレットがPGを1本、トライ後のゴールを1本外した。これだけで5点。HC・敗者・ラ・ロシェル・10番はPGを2本外していた。もちろん、これらが決まっていれば、その後の試合展開も全く異なっていたのだろうが。
ちなみに、2019W杯・45試合では、5点差の試合はなかった。
決勝の4チームを見ていて、どのチームにも「ガイジン」選手が多かった。フランス・トップ14、日本のトップリーグの現状を表している。先発15人の出身国・代表歴は次の通り。
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
T |
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| N | A | A | R |
| N |
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| N | Ar | R |
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L |
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| n F |
| A |
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| N | N | N | R | F |
| R |
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P |
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| A | E | t J |
| a J |
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| W | a | a |
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S |
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| e | a | n J |
| a |
| N |
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(注)1. 最左列はチーム名
T:トゥールーズ L:ラ・ロシェル P:パナソニック S:サントリー
2. 最上段列は、ポジション。大文字は、外国代表歴。小文字は、出身国。
N:ニュージーランド A:オーストラリア R:南アフリカ Ar:アルゼンティン F:フィジー E:イングランド T:タイ W:ウェールズ
3. 小文字+大文字は、出身国+自国代表
どのチームも世界中(と言っても、南半球3か国)から選手を集めている。特に、FWの二列目・三列目は、ガイジンが占めている。フランス代表No.8でプレーすることの多いアルドリッドは、ラ・ロシェルでは元オールブラックのヴィトに譲り6番でプレーしている。(話は飛びすぎるかもしれないが、姫野がNZのチームでNo.8を務めているのは「革命的」なことかもしれない。)
そして、HCもガイジンだ。トゥルーズ:モラは生え抜きだけれど、ラ・ロシェル:ギブス(FW担当、NZ、来シーズン松島の所属するクレルモンのHCに)+オガーラ(BK担当、IRE、NZでコーチング歴) パナソニック:ディーンズ(NZ、7年目) サントリー:ヘイグ(NZ、2年目)。ここでも ガイジンというか NZ人が活躍している。
一方で、大きく異なるのが、シーズンを通じての試合数。日本の両チームは、予選プール:7試合+決勝ラウンド4試合(サントリーは、準々決勝対リコー戦が不戦勝)で、11試合。
HC決勝に進出したフランスの両チームは、コロナ禍で変則開催となったHCは、予選プール:2試合+決勝ラウンド4試合だけだったが、フランス選手権では、現時点までに24試合戦っている。フランス選手権の決勝まで進出するとリーグ戦:26試合+決勝ラウンド2ないしは3試合戦うことになる。ほぼ1年間、毎週に近い試合、かつ、シーズン途中の6か国対抗などもあり、強豪チームは選手のやりくりに頭を悩ませている。フランス・トップ14には「joker medical」(シーズン途中にケガ人が多発した場合に、新たに「ジョーカー」として選手を加入させる制度)が存在する。HC決勝でトゥルーズのトライをあげた13番・マリアは、この制度で今年1月にチームに合流したアルゼンティン人。
日本のトップリーグは17年の歴史を閉じ、次なるステージに。開幕した17年前:2003/04は、12チームで構成されていた。そのうち、9チームは最後のシーズンもトップ14に名を連ねていた。一方、5位:ワールド、11位:セコムはチームが消滅し、10位:近鉄は下部リーグで戦っている。企業業績に左右される日本ラグビー。
フランスでは、2003/04シーズン、16チームで構成されていた。この16チームのうち、半分の8チームはトップ14から姿を消している。アマチュア時代に優勝を争い・伝説の選手を輩出した小都市の伝統チームである。まさに「地域密着」の典型的なチームが「おカネ」の力に抗しきれず脱落している。フランスのオールドファンは、これを嘆いている。そして、ガイジンが多くなっている現状を嘆いているのはノスタルジーだけではなく、代表強化の観点からも非難の声があがっている。
無目的・気晴らしのスポーツが、資本主義の高度化とともに、どんどん変質していく。それ自体は、歴史的必然なのだろうか。
日本の新リーグがどうなっていくのか、それは代表チームの成績にも影響する。ラグビーファンとしては、ジャージを買い・スタジアムに行き、おカネが回ることに貢献するしかないのだろうか…
令和3年5月29日
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