2020年12月5日土曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 55

   2019 W杯・備忘録 55

     ~  枯れた芝生 ~

  また、冬が巡ってきた。

 ユーミンの名曲『ノーサイド』が世に出たのが1984年。W杯という国際大会が組織される前だった。

 ♪ 彼は目を閉じて 枯れた芝生の匂い 深く吸った ♪ という歌いだし。

  日本のラグビーシーンには、枯れた芝生が付き物だった。ラグビーは冬のスポーツ、俳句の季語として冬に位置づけられている。

  中村汀女監修『現代俳句歳時記(秋・冬・新年)』(実業之日本社 2003年)では、「冬 生活」の季語として ラグビーが取り上げられ、

「 ラグビーの野辺も稲城も狐色     山口誓子  」

「 書庫守に声なきラグビー玻璃戸走す  中村草田男 」

等の句が採られている。

  ラグビーは、世界的に見て、冬のスポーツ≒ウィンタースポーツなのだろうか?

そもそも、ラグビーに適した季節は「冬」なのだろうか? 雪とか氷とかが必要なスポーツではない。木枯しも、しかり。

プレーをするにしても観戦するにしても、寒からず暑からず、というのがいいのではないだろうか。

 今大会、選手にとっては暑すぎたのかもしれないが、観戦する側にとっては「サイコー」の環境だった気がする。

 W杯は、常に、春ないしは秋に行われる。今大会までの決勝の月日は次の通りである。

大会

期間

場所

決勝戦

522日~620

103日~112

525日~624

101日~116

1010日~1122

97日~1020

99日~1023

919日~1031

920日~112

ニュージーランド

イングランド

南アフリカ

ウェールズ

オーストラリア

フランス

ニュージーランド

イングランド

日本

NZ 29-9 FRA

AUS 12-6 ENG

RSA 15-12 NZ

AUS 35-12 FRA

ENG 20-17 AUS

RSA 15-6 ENG

NZ 8-7 FRA

NZ 34-17 AUS

RSA 32-12 ENG

 ラグビーがプロ化して以降は、北半球であれ南半球であれ、10月を中心に開催されている。観戦に最適な季節に設定されることによって、さらなる盛り上がりを齎すことができる。

  この秋の北半球のオータム・ネーションズカップ2020、南半球のザ・ラグビーチャンピオンシップの開催に至るまでの各国協会・リーグの利害調整の過程を見ていると、今後も6月、11月の国際マッチ月間、4年に一度の秋のW杯開催は動かない・動かせないようである。

  それを前提・与件として、さて、日本のラグビーシーズンをどうするのか、プレーヤーズ・ファーストで考えるのか、観客も考慮するのか、あるいは、学業・社業との兼ね合いに力点を置くのか…

 いつの日か、ラグビーが、春ないしは秋の季語となる日がくるのだろうか。

  ひと昔前、この国では、多くのラグビーは土の上で行われていた。「芝生の匂い」を吸いながらラグビーを行えたのは、ラグビー・エリートだけだった。こんな慣習もいつの日か、芝生のグランドが増えて変わるのだろうか。

 それとも、人工芝が恒常化して、「化学的な匂い」に変わるのだろうか。

  そんなことを空想していたら、124日付のミディ―オリンピックに残念な記事が出ていた。

『マテーラ-ペティ-ソシノ事案:人種差別で激震』との見出しで、今週、アルゼンチン代表主将のマテーラ、ロックのペティ、フッカーのソシノが、それぞれ、2011年から2013年にかけて発信した彼らのツイッターの記述の中に人種差別的表現があったとして、アルゼンチン国内で大炎上し、その結果、アルゼンチン協会はマテーラらに出場停止処分を課した、とのことである。

 解説記事の中には、アルゼンチン国内の社会階級の存在、ラグビーは富裕層のスポーツであり、今回のマラドーナの訃報に対してアルゼンチンチームが冷淡であったことなどから不満が爆発した、とある。

 マテーラらは、過去の自らの記述に対しては「間違いである」と謝罪している。

 当初のアルゼンチン協会の厳しい処分内容に反対した今遠征の選手たちは「ストを行い125日の対AUS戦をボイコットする」と活動し、処分内容が軽減され、試合はマテーラらがメンバーに入らず行われることになったようである。

  ラグビーの能力に応じて、プレーできるグランドの質に差があるのは仕方がない気がする。しかし、それ以外の要因で差ができるのはなくしていきたいものだ。              

                                                                令和2125 

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