2019 W杯・備忘録 58
~ Te・Po率 ~
ワールド・ラグビーのホームページ(以下「HP」)の試合ごとのチームスタッツは、Territory(以下「Te」)率と Possession(以下「Po」)率で始まる。
北半球・6か国対抗、オータム・ネーションズ・カップのHPも同様である。
南半球・SanzarのHPのチームスタッツでは、トライ数から始まり、末尾にTeとPoが示されている。
それぞれの志向・興味関心の優先順位が表れている気がする。
ラグビーは点取りゲームではあるが、陣地取りゲームでもある。ボールを保持したまま敵陣に居座れればそれに越したことはない。
ところが、厄介なことにボールを前にパスできない。ボールを持っているだけではタックルされる。倒される。パスをすれば、陣地的には後退する。キックをすれば、ボールを前に運ぶことは出来るが、相手にボール(支配権)を渡してしまうことにもなる。
「Te」を優先するか、「Po」を優先するか、チーム戦略の根幹を規定する。
そもそも試合前の両チームのキャプテンによるコイントス(じゃんけん)でも、「ボール」を取るか「陣地」を取るかを決めている。
力の拮抗するチーム間での試合では、Te率とPo率は、50%を境に反比例の関係になると想定されうる。
今大会・決勝ラウンド7試合の勝者の率は次の通り。
| QF1 | QF2 | QF3 | QF4 | SF1 | SF2 | F |
Te率 | 38 | 56 | 44 | 50 | 62 | 38 | 44 |
Po率 | 36 | 50 | 48 | 46 | 56 | 39 | 44 |
特に興味深い数値が、QF1:ENG/AUS戦、SF2:RSA/WAL戦、F:RSA/ENG戦。
Te率もPo率も低いにもかかわらず、いや、どちらの率も低いから勝利している。
大会後の新生フランスのオリヴォン主将は、ミディオリンピックのインタビューで次のように発言している。
「現代ラグビーにおいて、アタックはディフェンスの3倍のエネルギーを要する。それが事実だ。エネルギー使用の最適化のために、各チームは、そのチームに適した攻守のバランスを見つけ出す必要がある。我々は、それを見つけたと思う。」
オリヴォンの言う「それぞれのチームに最適のバランス」を維持し続けたのがRSAであった、ということが言えそうである。
ちなみに、予選リーグ4試合のJPNの数値は次の通り。
| 対RUS | 対IRE | 対SAM | 対SCO |
Te率 | 48 | 48 | 51 | 57 |
Po率 | 50 | 51 | 50 | 55 |
*******************************
元ENG代表選手を含む百名以上の元選手が、「脳震盪に対する適切な対策を講じてこなかった」として、ワールド・ラグビー、ENG協会、WAL協会を相手に訴訟を準備している。他国でも同様の動きが出てきている、との報道もある。
選手たちの代理人からの書簡を受け取ったワールド・ラグビーのHPには、12月17日にWR、イングランド協会、ウェールズ協会の合同の声明文(Joint statement)がアップされた。そして翌日にはボウモン会長の長文のOpen letterがアップされた。ワールド・ラグビーの危機感が伝わってくる。
数年前に、USAでアメリカン・フットボールの脳震盪での集団訴訟が起き、NFLが巨額の賠償金を支払うことで和解した前例がある。
スポーツに伴う負傷・後遺症のリスクを誰がどのようにマネジメントしていくべきか、特に、近年筋トレ・サプリが当たり前になり、肉体改造が進むことによる重傷化が顕在化している。これからの推移が気にかかる。
********************************
松島のクレルモンがマンスターに逆転負けした12月12日(土)・13日(日)に行われた欧州ハイネッケンカップ(欧州各国のクラブチャンピオン決定戦)・ラウンド2・12試合のうち、4試合がコロナ不戦となり、0-28でコロナ感染者を出したチームが不戦敗、相手チームはボーナスポイント付きの勝ち点5を得ている。
グランドレベル以前に、コロナとの戦いを制することが求められている。
これから大学選手権が佳境に入り、花園も始まる。とにかく、試合が行われることを願っている。
*********************************
大学選手権は準決勝へ。二年前の決勝戦、明治/天理を見ていて、花園でやっていれば天理が勝利していただろう、と感じた。今回も秩父宮、どんな戦いが待っているのか。
気になっていることの一つが、誰がレフリーを務めるのか。吹いてもらったことのある人にレフリーを務めてもらえるか否かは、かなりの差になる気がしている。たとえば、スクラムを組む際の「クラウチ」「バインド」「セット」の各コールの間隔が、レフリーの個性なのか、一人ひとり微妙に違っている。
ちなみに、準々決勝のレフリーにそれ以前の試合で吹いてもらったのは、
早稲田2回(梶原:帝京戦、明治戦)、慶応1回(梶原:筑波戦)、天理1回(久保:同志社戦)で、それ以外のチームは初めてのレフリーであった。
準決勝・決勝と誰がレフリーを務めるのか、気になっている。
ちなみに、来年2月6日~3月20日の間に行われる予定の6か国対抗のマッチオフィシャルが12月23日に公表されている。先のオータム・ネーションズ・カップの決勝戦のレフリー、Brace(アイルランド協会)はフランス・メディアから「イングランドに偏った笛を吹いている」としてバッシングされており、来年の6か国対抗ではフランス戦は吹かないことになっている。
令和2年12月26日
0 件のコメント:
コメントを投稿