2020年12月26日土曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 58

     2019 W杯・備忘録 58

         ~  TePo率 ~

  ワールド・ラグビーのホームページ(以下「HP」)の試合ごとのチームスタッツは、Territory(以下「Te」)率と Possession(以下「Po」)率で始まる。

 北半球・6か国対抗、オータム・ネーションズ・カップのHPも同様である。

 南半球・SanzarHPのチームスタッツでは、トライ数から始まり、末尾にTePoが示されている。

 それぞれの志向・興味関心の優先順位が表れている気がする。

  ラグビーは点取りゲームではあるが、陣地取りゲームでもある。ボールを保持したまま敵陣に居座れればそれに越したことはない。

 ところが、厄介なことにボールを前にパスできない。ボールを持っているだけではタックルされる。倒される。パスをすれば、陣地的には後退する。キックをすれば、ボールを前に運ぶことは出来るが、相手にボール(支配権)を渡してしまうことにもなる。

 「Te」を優先するか、「Po」を優先するか、チーム戦略の根幹を規定する。

 そもそも試合前の両チームのキャプテンによるコイントス(じゃんけん)でも、「ボール」を取るか「陣地」を取るかを決めている。

 力の拮抗するチーム間での試合では、Te率とPo率は、50%を境に反比例の関係になると想定されうる。

  今大会・決勝ラウンド7試合の勝者の率は次の通り。

 

 QF1

 QF2

 QF3

 QF4

 SF1

 SF2

   F

Te

  38

  56

  44

  50

  62

  38

  44

Po

  36

  50

  48

  46

  56

  39

  44

  特に興味深い数値が、QF1ENG/AUS戦、SF2RSA/WAL戦、FRSA/ENG戦。

 Te率もPo率も低いにもかかわらず、いや、どちらの率も低いから勝利している。

  大会後の新生フランスのオリヴォン主将は、ミディオリンピックのインタビューで次のように発言している。

「現代ラグビーにおいて、アタックはディフェンスの3倍のエネルギーを要する。それが事実だ。エネルギー使用の最適化のために、各チームは、そのチームに適した攻守のバランスを見つけ出す必要がある。我々は、それを見つけたと思う。」

  オリヴォンの言う「それぞれのチームに最適のバランス」を維持し続けたのがRSAであった、ということが言えそうである。

  ちなみに、予選リーグ4試合のJPNの数値は次の通り。

 

RUS

IRE

SAM

SCO

Te

  48

  48

  51

  57

Po

  50

  51

  50

  55


 試合中の「メリハリ」の付け方、次回大会に向けて、どんな戦い方をするのか、楽しみである。

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  元ENG代表選手を含む百名以上の元選手が、「脳震盪に対する適切な対策を講じてこなかった」として、ワールド・ラグビー、ENG協会、WAL協会を相手に訴訟を準備している。他国でも同様の動きが出てきている、との報道もある。

 選手たちの代理人からの書簡を受け取ったワールド・ラグビーのHPには、1217日にWR、イングランド協会、ウェールズ協会の合同の声明文(Joint statement)がアップされた。そして翌日にはボウモン会長の長文のOpen letterがアップされた。ワールド・ラグビーの危機感が伝わってくる。

 数年前に、USAでアメリカン・フットボールの脳震盪での集団訴訟が起き、NFLが巨額の賠償金を支払うことで和解した前例がある。

 スポーツに伴う負傷・後遺症のリスクを誰がどのようにマネジメントしていくべきか、特に、近年筋トレ・サプリが当たり前になり、肉体改造が進むことによる重傷化が顕在化している。これからの推移が気にかかる。

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  松島のクレルモンがマンスターに逆転負けした1212日(土)・13日(日)に行われた欧州ハイネッケンカップ(欧州各国のクラブチャンピオン決定戦)・ラウンド212試合のうち、4試合がコロナ不戦となり、0-28でコロナ感染者を出したチームが不戦敗、相手チームはボーナスポイント付きの勝ち点5を得ている。

 グランドレベル以前に、コロナとの戦いを制することが求められている。

 これから大学選手権が佳境に入り、花園も始まる。とにかく、試合が行われることを願っている。

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  大学選手権は準決勝へ。二年前の決勝戦、明治/天理を見ていて、花園でやっていれば天理が勝利していただろう、と感じた。今回も秩父宮、どんな戦いが待っているのか。

 気になっていることの一つが、誰がレフリーを務めるのか。吹いてもらったことのある人にレフリーを務めてもらえるか否かは、かなりの差になる気がしている。たとえば、スクラムを組む際の「クラウチ」「バインド」「セット」の各コールの間隔が、レフリーの個性なのか、一人ひとり微妙に違っている。

 ちなみに、準々決勝のレフリーにそれ以前の試合で吹いてもらったのは、

早稲田2回(梶原:帝京戦、明治戦)、慶応1回(梶原:筑波戦)、天理1回(久保:同志社戦)で、それ以外のチームは初めてのレフリーであった。

 準決勝・決勝と誰がレフリーを務めるのか、気になっている。

  ちなみに、来年26日~320日の間に行われる予定の6か国対抗のマッチオフィシャルが1223日に公表されている。先のオータム・ネーションズ・カップの決勝戦のレフリー、Brace(アイルランド協会)はフランス・メディアから「イングランドに偏った笛を吹いている」としてバッシングされており、来年の6か国対抗ではフランス戦は吹かないことになっている。

                        令和21226 

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