2019W杯・備忘録 32
~ M16 GEO/URG ~
「アイルランド戦大勝利から一夜明けて、日本中がラグビーに染まっています」(Jスポーツ・住田アナウンサー)という大会9日目、暑い熊谷の午後、GEOの第二戦目が行われた。
試合前日の午後、熊谷に着き、市内中心部にあるファンゾーンにM13 ARG/TON戦を見に行ったら、すでに大勢の人びとが集まっていて、巨大スクリーンが見えにくい。「もはや奇跡ではない」M14 JPN/IRE戦は、ホテルで見た。
熊谷ラグビー場。今大会12会場のうち、花園とともに「ラグビー場」と名乗る専用競技場。熊谷駅から離れているが、シャトルバスが次々に走ってゆく。「スクマム!クマガヤ」まち全体をラグビーに染めようとしてきた「ラグビー・タウン」。市内の小学生が集団でバスに乗り・両国国歌を歌い・試合を観戦する。彼ら・彼女らに、どのようなレガシーが残っていくのか。早めに着いたスタジアム前で、GEOジャージを着た中年・日本人・カップルに話しかける。ラグビーは初めて見るとのこと。ジョージア美術に惚れ込み・何度もかの地に滞在し・数日後にまた赴くとのこと。ジョージアのよさをいろいろと教えていただく。
日傘をさしたご近所のおばちゃんが近づいてきて「当日券、売ってなんだってね」「で、チケットいくらなの?」と聞いてきたので答えたら「高いわね」とつぶやいて去っていく。みんなが、ラグビーに染まっている…
中3日後の花園でのFIJ戦を見据えて、第1戦・WAL戦から先発メンバーを13人入れ替えたGEO。対するは、釜石での歓喜のFIJ戦(よもやの)勝利の余韻冷めやらぬURG。URGの先発メンバーは12人が変わっていない。選手層という点では、GEO、少しは厚くなってきたのか。2003年大会・予選プールで戦った際は、24-12でURGが勝利している。今大会直前のランキングは、GEO・12位、URG・19位。
備忘録12・勝利至上主義で触れたが、外国生まれの選手がゼロのURG(Jスポーツでの藤島の解説ではアルゼンティン生まれが一人いるとのこと)と1人(モスクワ生まれ)のGEO。同質性の極めて高い・今時のW杯ではめったに見られないチーム同士の戦い。
30℃の午後2時15分、24,895人の観客の見守る中、キックオフ。この日は、試合前から、前後半・20分で「ウォーター・ブレイク」が採られることになっていた。
URGボール・キックオフで始まった試合は、4分・URGのハイタックルでPK・スクラムを選択したGEOが、その後2度続けてスクラム・コラプシングのPKを得て、3度目のスクラムでもコラプシング・アドバンテージの判定が出ている中、展開してトライ。
27分にも、同じようにスクラムを選択して、コラプシング・アドバンテージの判定が出ている中、展開してトライ。 前半を12-7とリードしてハーフ・タイム。
後半は、URGの足が動かず、42分・スクラム・コラプシングの判定が出ている中、サイド・アタックでトライ。51分は、ゴール前ラインアウトからモールで4トライ目。ボーナス・ポイントを獲得。以後、危なげなく試合を進め、33-7の快勝。
参考のスタッツにある通り、後半、URGボールのラインアウトはゼロ。これは、めずらしい。GEOの継続意識がなせる業なのか、URGの疲れの象徴とみるか。
この試合のレフリーは、バーンズ(ENG)。GEOにとっては、二試合続けてのENGのレフリー。GEOの生命線のスクラム。この試合、GEOボールのスクラムが11回。そのうちの5回でスクラム・コラプシングのPを得ている。それ以外に2回、アドバンテージが出て攻撃を継続しトライを奪っている。ただ、後半、URGボール・スクラムで二度、アーリー・エンゲージを取られ、FK(フリー・キック)を与えている
もう一つ、GEO・FWが圧倒的優位に立ったのが、モール。モール・コラプシングでもPKを三度獲得している。
唯一トライを取られたのが、ラインアウトからのスタンドオフ・内返し。WAL戦で2度トライを取られたのと同じパターン。二試合戦うことで、強み・弱みがはっきりしてくる。中3日で、どう修正して難敵・手負いのFIJと戦うか?
夕暮れ時、たくさんのボランティアの人たちとハイタッチを繰り返し、ラグビー・ロードを心地よく歩いて熊谷駅に戻った。初めて熊谷でラグビーを観戦したのは、2006年1月のトップリーグの試合。信じられない強風だけが記憶に残っている。
熊谷、東の「聖地」になってほしい。
( 参考 )
GEOボール
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
KO
|
-
|
1
|
1
|
-
|
2
|
S
|
3/3
|
3/3
|
3/3
|
2/2
|
11/11
|
LO
|
1/1
|
3/5
|
6/6
|
5/5
|
15/17
|
PK
|
4
|
3
|
4
|
4
|
15
|
FK
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
DO
|
1
|
1
|
-
|
-
|
2
|
計
|
9
|
13
|
14
|
11
|
47
|
(注) KOのうち、1回は、後半開始時のもの。
S、LOの分母は、マイボールでの投入回数。分子は、そのうちのボール獲得回数。
PKの回数は、相手チームのペナルティ(反則)によって獲得したPKの回数。
GEOの得点
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
トライ(T)
|
1
|
1
|
3
|
-
|
5
|
T後のG
|
-
|
1
|
3
|
-
|
4
|
PG
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
URGボール
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
KO
|
2
|
1
|
3
|
-
|
6
|
S
|
3/3
|
1/1
|
1/1
|
4/4
|
9/9
|
LO
|
4/5
|
2/2
|
-
|
-
|
6/7
|
PK
|
3
|
2
|
-
|
1
|
6
|
FK
|
-
|
-
|
-
|
3
|
3
|
DO
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
計
|
13
|
6
|
4
|
8
|
31
|
URGの得点
0-20min.
|
20-40min.
|
40-60min.
|
60-80min.
|
計
| |
T
|
-
|
1
|
-
|
-
|
1
|
T後のG
|
-
|
1
|
-
|
-
|
1
|
PG
|
-
|
-
|
-
|
-
|
URG・16番が、77分、危険なタックルでレッド・カード。
後半の前半、加速して突き放した試合。こういう試合展開もあるのだ。URGの意地も中3日の疲労には勝てなかった。
GEOで気になったのは、ラインアウト。相手ボール・ラインアウト後のディフェンス・ミスで、この試合1トライ、WAL戦で2トライ取られている。それと、この試合、ラインアウトで2度スチールされている。WAL戦も12/15と3度スチールされている。名高い強力プロップ⇒スクラムのGEOというイメージで、なんとなく全般的にFWは強い、と思われがちだが、ラインアウトには課題が多い。バックス、非力感は否めないが、ハイボールには強い。点はさほど取れないが、堅実に守れれば、どの国と戦っても試合になる。それが証明された試合でもあった。
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