2019年10月23日水曜日

ムシュー岡島さんからの便り・・・

負けちゃいましたね…日本は力負けしたので ある意味 さばさば できます。
フランスの負け いまだに うまく消化できません。ノーサイドではなく 負けるが勝ち 次のフランス大会で より強くなるための 一里塚 ということなのでしょうね。準々決勝の雑文を書きました。

負けに不思議の負けなし(準々決勝篇)
 【 4試合を通じて 】
対戦相手の組み合わせ、試合内容ともに異なる4試合。現在のワールドラグビー実力国を二分すると、
① 六か国対抗構成国(ENGWALIRESCOFRAITA: 北半球ティア1)
  勝ちに拘る堅実なラグビー
② ザ・ラグビーチャンピオンシップ構成国(NZSAAUSARG: 南半球ティア1)
 ラグビーは①ボールゲームであり②格闘技でもある。ボールゲームの側面を重視する展開ラグビー・ランニングラグビー志向(NZAUS)と格闘技を重視するSA 、ARGは、南半球グループに属する前は、どちらかというと格闘技重視型、現在は展開ラグビー型へ移行中 (特に 4カ国で組織されているSANZAARが運営する「スーパーラグビー」(日本を拠点とするサンウルブズも来年まで参加)は、エンターテインメント性を追求していると言われている。)と言われており、これら10カ国のうち7カ国にティア2の日本が加わった8カ国で準々決勝が行われた。
QF1 : ENG(北)   vs AUS(南)
QF2 : IRE (北)   vs NZ(南)
QF3 : WAL(北)   vs FRA(北)
QF4 : JAP(ティア2) vs SA(南)
(注)日本は、北半球国であるが、プレースタイルは、どちらかというと南半球的。
 敗因を一言でいうと
AUS:ファンタジーを求めるも精度に欠けた
IRE:ラグビー総合力の差が出た
FRA:レッドカード
JAP:自力差(ティア1とティア2の差が如実に出た)
(注) たしかに 日本は アイルランド、スコットランドに勝った。勝因は、天の時:高温多湿 + 地の利:有利な(不可解な)レフリング + 人の和:長期間にわたっての合宿を積み重ねた(もちろん、これを成し遂げた人びとは称賛されてしかるべき。一方で、他のチームは、それができない金銭的・ビジネス的制約があったことも事実)の三点が 見事に結集されたことにあると理解している。したがって、日本がティア1にどこまで近づいているか、その試金石が対南アフリカ戦だった気がする。そして、勝つチャンスらしきものがなかったのも事実。
【 QF1 : ENG 40 vs 16 AUS 】
興味をひくスタッツから
ボール保持率 ENG 36%   AUS 64% (ゲームを通じて AUSがボール支配)
ランメーター ENG 275m  AUS 578m (AUSが走り回る)
ラン回数   ENG 71   AUS 153
パス回数 ENG 90   AUS 153 (AUSは走るとともにパスでボールもつなぐ)
キックで獲得した距離 ENG 731m AUS 391m
タックル数 ENG 193  AUS 86 (ちなみに ENGは準々決勝8チーム中最大)
他のチームは、QF2 NZ 145 IRE 147、 
       QF3 WAL 152 FRA 103
       QF4 SA 148 JAP 103
 AUSがボールを保持し、走り・パスするも、ENGが的確にタックルして止め、効率よく得点を重ねる。逆に、AUSのタックル数86は最小。唯一二ケタ。

ENGの「リアリズム・勝利重視」が如実に表れているのが、
ラック獲得数 ENG 48 AUS 113 (ちなみに ENGは準々決勝8チーム中最小
他のチームは、QF2 NZ 100 IRE 98、 
       QF3 WAL 75 FRA 90
       QF4 SA 68 JAP 87 )
 相手にボールを持たれて継続されることを厭わない・恐れない。むしろ、相手にボールを渡して走らせて、仕留めるポイントで確実に仕留める。無理にジャッカルを狙わない。マイボールは、素早く相手ゴール目ざして運び、無理にフェーズを重ねない(=ラック数の少なさ)
【 QF2 : NZ 46 vs 14 IRE 】
興味をひくスタッツから、
ペナルティを取られた数 NZ 13 IRE 6
他のチームは、     QF1 ENG 8 AUS 5、  
            QF3 WAL 6(イエロー1) FRA 8(レッド1
            QF4 SA 8(イエロー1)  JAP 8
8チーム中 NZは 最大のペナルティを取られている(しかも そのうちの一つは イエローカード)
 反則を犯さないことも大切だけど、反則を犯さないだけでは勝てない。
 スクラム   NZ 6/6 IRE 7/7
ラインアウト NZ 7/8 IRE 15/15
 セットプレー、IREは確実にすべてを確保。でありながら、なぜ完璧に敗れたのか?
 スタンドで見ていて、「手も足も出ない」と痛感した。
 仮説として、① 勝利のためのXファクターに欠けている(「教科書」通りのプレーは出来るが、すべて相手に読まれてしまっている。だから、セットピースからボールは確保できて、パスをしてみたものの、手詰まりになって苦し紛れにキックする…)
② 世界ランキングにさほど意味がない。
 エディー・ジョーンズがラグビーマガジン誌上で「ランキングに意味があるのは、ワールドカップの組み合わせ抽選まで(すなわち、ランキングに応じて組み分けが決まる。それ以降ワールドカップまでは(およそ2年間)選手選考チームの熟度を増してゆくリスク対応度の向上などに当てる)と言っていたが、まさに直近までアイルランドは好成績を上げ続けたが、チームの完成度は一年前にピーク、選手層は厚みを増さず(これはラグビー小国としては致し方ない、か)、リスク対応度も上げることができなかった。
  ワールドカップ・決勝ラウンドの試合は別物。
 ③ 1995年プロ化以降2000年を過ぎて ビジネスモードの現代ラグビーは ある種「総力戦」であり その国の「ラグビー力」がものをいう。
ラグビーは選手だけでなく、指導者・レフリーも重要であることはいうまでもない。
今大会のヘッドコーチの国籍は、以下の通り。
国籍
20チーム中
準々決勝8チーム中
準決勝4チーム中
NZ
7(NZ,WAL,IRE,JAP,SAM,GEO,FIJ
    4
       2
AUS
3(AUS,ENG,TON)
    2
       1
WAL
3(NAM,CAN,RUS)


ARG
2(ARG,URG)


SA
2(SA,USA)
    1
       1
FRA
1(FRA)
    1

SCO
1(SCO)


IRE
1(ITA)



 NZHCが幅を利かせている。
  ENGHCが一人もいないのは興味深い。
  ちなみに、自国籍人にしかチームを任せていないのは、SAFRAARG
  日本人コーチが海外で活躍する日は来るのか?
 また、今大会のレフリーの国籍は、
主審 : FRA 4, ENG 2, NZ 2, AUS 2, WAL 1, SA 1 12
準々決勝の笛を吹いたのは、QF1FRA QF2WAL QF3SA QF4ENG
 副審 : ENG 2, FRA 1, IRE 1, NZ 1, ARG 1, JAP 1 7
TMO   : ENG 2, NZ 1, SA 1 4
  たしかに IREは一時期ランキング一位に上り詰めたが、ラグビー力には欠けている。
  IREは日本と同じく 副審に一人出せているだけ。(ちなみに、SCOはゼロ)
  今後、日本がワールドラグビー界でどのような地位を占めてゆくのか、戦略が求められる。
 * 準々決勝4試合の主審は、QF1 ガルセス(FRA) QF2 オーウェンス(WAL
                                                  QF3 ペイパ―(SA) QF4 バーンズ(ENG
 このうち 第3戦のペイパーは、試合後ウェールズサポーターと共に 笑いながら肘打ちしている写真がSNS上で広まり フランス協会が猛抗議し ペイパーは謝罪し 準決勝の笛を吹かない(吹けない)ことになった。(このペイパーさん 日本vsサモアの主審です。)
  「外交力」って こういう時に どう動けるか・どう動かせるか。
  スコットランド・アイルランド そういう力がまったくなかったのも事実。
  準決勝 SF1 オーウェンス  SF2 ガルセス と決まったらしい。
 【 QF3 : WAL 20 vs 19 FRA 】
レッドカードさえなければ、あんな「おバカなこと」をしなければ…
ただし リスク管理的観点からすると ① 事前に 乱暴者をどう躾けるか。危ない選手を出さないという選択肢を持つべきでは と ② 事後措置として 14人で どう戦うか を 落とし込めていたのか など 教訓満載の試合です。FRAは、14人になっても20分以上は持ちこたえていたわけだし…
 興味をひくスタッツは、キックの距離メーターが、他の試合とは隔絶して大きいこと。
WAL 1,182m  FRA 1,163m        
他のチームは、 QF1 ENG 731m  AUS 391m
        QF2 NZ  837m    IRE   537m
                             QF4   SA     625m    JAP   408m
 一人減る前から 蹴り合いを繰り返している。いかにも、北半球の試合の典型。

【 QF4 : SA 26 vs 3 JAP 
力の差ははっきりしていた。
セットピース、特にラインアウトは弱すぎた(日本ボールラインアウト13機会のうち、4回スチールされている)。

 QF2:NZvsIREは スクラム・ラインアウトがきちんと取れた上で、それでもIREは「手も足も出なかった」。JAPは、それ以前に「手も足も出ない」…

興味をひくスタッツは、オフロードの回数
SA 2  JAP 12
他のチームは、 QF1 ENG 2  AUS 8
        QF2 NZ  14   IRE   3
                QF3  WAL  3    FRA  11
 明らかに ラグビー観が違う。
 一言でいえば、堅実さを志向する(すなわちオフロードの少ない)SAENGIREWAL と リスクをとる(?) NZAUSFRA

 これは国民性の表れでもあるが、HCの志向性でもある。
  日本は、エディ下ではほぼ厳禁だったのが、現ジェイミー下では推奨(もちろん、単に推奨するというのではなく、そのスキルアップに時間をかけている)されている。うまく「嵌まれば」スコットランド戦の稲垣のトライのように拍手喝采だが、リスクが高いことは厳然たる事実。
  今後の日本ラグビー、どうなっていくのか? 興味深い。
【 蛇足1 勝ちに不思議の勝ちあり(?) 】
でも 今回の4試合 勝つべきチームが勝った と感じている。
QF1:ENG 周到な準備・冷徹なリアリズム
QF2NZ ラグビー大国の実力
QF3WAL 負けないチームの真骨頂
QF4SA フィジカルの強さを前面に出して戦いきる

【 蛇足2 準決勝は? 】
不確定要素としての ①ケガ(試合前、試合中) ②カード ③レフリング
そして ④ポカ・おバカなプレー ⑤ビッグプレー
 SF1 : ENGNZともに隙がない(23人全員が高いレベル)。緊迫した試合が続くのか、それとも、不確定要素で試合が壊れるのか?
 SF2 : WALは もともと選手層が薄いのに加えて けが人続出。総合力でSA優位は動かない。 ただ 常に逆境下にありながら 勝ち続けてきた(というより 「敗けずにきた」と言う方が正確) 負けないチームWALの真骨頂が出るか? SAは 今大会 負けられない試合・勝つために全力で戦った試合がない(唯一 大会初戦の NZ戦があるが あの試合も 勝ちに執着する必要もなく 現に いい試合をしたけど 負けちゃってる) という経験不足が 緊迫した局面で どう出るのか?

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