2020年3月1日日曜日

岡島レポート・2019W杯・備忘録15

                 2019W杯・備忘録15
   ~ Set pieces ~
  World Rugbyのスタッツには Set piecesという項目がある。それは、① Set pieces won (以下、「SPW) ② Scrums(以下、「S」) ③ Lineouts(以下、「L」) ④ Lineout steals (以下、「LS」)の4細目からなっている。
  ②Sと③Lは、分数で表記され、分母が与えられた数・分子が(分母の内)ボールを獲得した数となっている。①SPEは、Sの分子+Lの分子である。理由は不明であるが、SPWには④LSの数が含まれていない。
 また、Attackの項目には、⑤ Mauls won(以下、「MW」)、⑥ Rucks won(以下、「RS」)という細目がある。これは、プレー中の密集で、どれだけボールを獲得したかを表している。
 これらの数値を見ていくと試合の個性が浮き彫りになる。
また、同一チームの数値を時系列に並べるとチームの大会期間中の進化が見て取れる。
 Set pieceとは、レフリーが笛を吹いて・一旦ゲームを停止し・両チームの選手が規則に従ったポジションにつき・レフリーが笛を再度吹いて再開する「試合中の1シーン」である。その意味では、スクラム、ラインアウト以外にキックオフ、ドロップアウト、ペナルティキックもある。
一般論で言えば、スクラムは、ボールを落とす(ノックオン)・ボールを前に投げる(スローフォワード)などの「ミス」で相手チームに与えられるので、自らのスクラム数は多く・相手のスクラム数は少ないのが有利になる。もちろん、相手がペナルティを犯して与えられたペナルティキックでスクラムを選択することもある。
ラインアウトは、彼我の身長等に左右されるし、各チームの戦術に関係してくる。キックを選択して、相手にボール支配権を渡すことの意味をどう考えるか?キックをラインの外に出して・ゲームをいったん切るのか、それともコンテスト・キックを蹴って・ボール争奪を試みるのか、ロングキックを蹴って・地域を一時的に獲得するのか、などその数をある程度コントロールすることができる。近年では、ペナルティキックを得て・タッチキックを蹴って・マイボールラインアウトで再開するケースもしばしば見られる。これらの結果として、ラインアウトの数字が積みあがる。
モール・ラックは獲得数が多いに越したことはない。
これらを日本戦で見てみると、次のようになる。
M1 JPN/RUS

SPW
   S
   L
   LS
   MW
   RW
JPN
   17
   4/4
  13/14
    -
    1
   96
RUS
   21
  13/13
   8/9
    -
    1
   89
 驚くのは、ロシアのスクラム13回(今大会最多。M11ITA/CANITAM15RSA/NAMNAMM22IRE/RUSRUS13回)。この試合、いかに日本選手のミスが多かったのか。相手の圧力、というよりも、緊張感からのミスだった。その後の日本の躍進を知っているので、それだけの重圧がかかっていたと今だから懐かしく思い返せる。
 M14 JPN/IRE

SPW
   S
   L
   LS
   MW
   RW
JPN
   13
   6/6
   7/8
    2
    -
  115
IRE
   15
   6/7
   9/11
    1
    -
  107
 日本のラインアウト機会の8回、これをどう解釈するのか?IREが意識してタッチキックを蹴らなかったのか?日本のLS2回が大きな意味を持ったのか?日本のLSは、今大会5試合で、この2回のみ。MWが両チームとも「0」というのもめずらしい。IREMWは、他の試合では、M6SCO戦)・6回、M22RUS戦)・6回、M36SAM戦)・9回、M42NZ戦)・7回であった。なぜ、モールを組まなかったのか、あるいは、モールが組めなかったのか?
ラック獲得数・115IRE107も含めて、もはや奇跡ではない、ボールが動いた好ゲームだった。
 M26 JPN/SAM

SPW
   S
   L
   LS
   MW
   RW
JPN
   18
   4/4
  14/14
    -
    2
   65
SAM
   12
   5/6
   7/7
    -
    4
   72
 今大会の日本の5試合の中で、SPW18回は最高値、RW65回は最低値。この試合は、不思議な試合だ。
 M40 JPN/SCO

SPW
   S
   L
   LS
   MW
   RW
JPN
   10
   6/7
   4/5
    -
    1
  114
SCO
   17
   6/7
  11/11
    1
    4
   87
日本のラインアウト数・5回。今大会・全試合・全チームの最小値である。(6回のチームは、M3FRA/ARGFRAM27NZ/NAMNZM39WAL/GEOGEOM46RSA/WALRSA。これらは、ラインアウト力の比較から、戦術的に、ラインアウトを避けたものと推測できる。)SCOは、なぜ、日本のラインアウトを避けたのだろうか?
 感動を与えてくれた試合。
 M44 JPN/RSA

SPW
   S
   L
   LS
   MW
   RW
JPN
   16
   8/9
   8/13
    -
    -
   87
RSA
   16
   6/7
  10/10
    4
   10
   68
 決勝ラウンドに入って、RSAが一段ギアをあげた感じがする。RSALS4回(M20NZ/CANNZM30ARG/USAARG5回が今大会最多)、MW10回(M2AUS/FIJAUSM23RSA/ITARSA10回で今大会最多)。RSAFWの「壁」が立ちはだかった。次回大会までに、日本は予選ラウンドと決勝ラウンドの戦い方を変えられるぐらい強化できるのだろうか?また、日本の強みをどこに創り出すのだろうか?
参考までに、準々決勝の他の3試合のスタッツは次の通り。
M41 ENG/AUS

SPW
   S
   L
   LS
   MW
   RW
ENG
   16
   8/9
   8/9
    -
    3
   48
AUS
   10
   3/4
   7/7
    1
    -
  113
 M42 NZ/IRE

SPW
   S
   L
   LS
   MW
   RW
NZ
   13
   6/6
   7/8
    -
    1
  100
IRE
   22
   7/7
  15/15
    1
    7
   98
M43 WAL/FRA

SPW
   S
   L
   LS
   MW
   RW
WAL
   15
   4/4
  11/11
    -
    7
   75
FRA
   17
   4/4
  13/13
    -
    7
   90

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